その至高、正体不明【完結】   作:鵺崎ミル

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よくある至高の41人にオリ主が混ざっているパターン。
ただし同時転移ではない。別土地転移でもない。


2022年7月31日追記
大筋は一切変わらないけど、各話の細々とした部分をゆっくり修正予定。
独自設定部分の明記や一部用語解説追加程度の予定です。


正体不明の死生

 西暦2138年。

 環境と言う環境は破壊し尽くされ、

 それでも人類は致命的な代償を物ともしない科学の上に成り立っていた。

 それは娯楽においても例外はない。

 否、失われた自然は大きな娯楽要素でもあり、娯楽への注視が高まるのは当然と言えた。

 

 DMMO-RPG。

 

 ゲームの世界に直接入ってアバターに乗り移り、遊ぶ。

 そんな100年以上前から創作のネタとして使われていた題材はここでは現実だ。

 

 その中でも、日本国内に於いて絶大な人気を誇ったゲーム、ユグドラシル。

 比類なき自由度、運営の暴走度、脅威の課金要素とあらゆる面で日本人の心を掴んだ神作。配管工ほどとは言わないが、プレイヤーの誰もが後世に語り続けるゲームだと確信する。

 そんな人気と栄華を誇ったゲームも、遂に終焉を迎える。

 より高性能なゲーム、より革新的なシステム。ユグドラシルは既に旧式の型落ちであり、運営はとうとうサービス終了を告知した。

 

 最後をユグドラシルで。

 サービス終了日、最後の輝きと賑わいをみせるユグドラシル。

 それでも引退した者が復帰することは珍しく。寂寥の雰囲気が払われることなく、偉大なゲームの歴史は閉じられたのだった。

 

 

 

 ─某所、工場にて─

 

 

「……ッ」

 

 声が全く出ない。それどころか呼吸すらできない。

 人工呼吸器は完全に破壊されている事は身を以て理解した。

 

(息が、息が……!!)

 

 この世界で人類が大気を直接吸うことは重篤な状態に陥る危険性がある。

 星空すら全く見えないほど淀んだ空気は、生命維持装置の類でようやくクリアされるのだ。

 

 今地べたに倒れている彼は、企業間の争いに巻き込まれ、こうして死に絶えようとしている。

 各々の企業が開発した人型決戦兵器同士の戦闘。

 流れ弾からの爆風で即死した同僚がまだ幸せに思える。

 自分は苦しみ抜いて死なねばならないのだ。

 

「かっ……あっ……!?」

 

 助けなど絶望的だ。戦闘がまだ続いている中で、いったい誰がこの平社員の命を救おうとするだろうか。死後にあるという地獄はこれより苦しいのだろうか。

 もはや考えることは、生存に繋がる事ではなく、雑多な感想。

 男は諦めた。ふと、死は慈悲なのだと、RPを熱演していた仲間を思い出す。

 

(確かに、慈悲です……ウルベルトさん)

 

 かつての仲間、ユグドラシルでのギルドメンバーが脳裏に浮かぶ。

 メンバーの中で『悪』に最も拘った男。

 彼を心から尊敬し、同じく『悪』に拘っていた者として意見もぶつけ合った。

 

 一度仲間を思い出せば、雪崩れ込むようにギルドメンバー全員が脳裏に浮かんでくる。

 家族や同僚の事ではなく、彼らを最期に想うとは。

 男は理解し、後悔した。

 一番幸せだったのは、あの時だったのだと。

 

 100年以上前の娯楽文化をサルベージすることが趣味だった。ユグドラシルでは自分のような存在など珍しくもなく、運営も明らかに1世紀前の人気創作物を元ネタにしたようなモンスターを実装することもあった。

 

 サルベージしていった中でも、自分が特に惚れ込んだキャラクター。

 

 それをアバターとして再現できるかもしれないと知った男の行動は早かった。

 実現に要するための設備、ツールはすべて手に入れた。

 著作権は切れている、何も問題はない。徹底再現のために異形種を選択した。

 そこからは誤算だった。PKに次ぐPK。完全再現に必要なアイテムが入手できない。

 

 半ば絶望していたその時、苦難から救ってくれたのが彼ら、“アインズ・ウール・ゴウン”。手をさし伸ばされ、迷いもなく掴んでからは早かった。

 望む能力再現、望む外装データ、望む神器級アイテム。

 ユグドラシル一素晴らしいギルドだと胸を張って言えるホームも、仲間らと一緒に作り上げた。

 間違いなく、望みを叶えた自分があの時いたのだ。

 

 幸せだった。なのに何故自分はここにいるのか。

 馬鹿を言う、それを捨ててしまったからこそ、お前はこうして無様に死ぬのだ。

 

(ごめんなさい……ごめんなさい……)

 

 メールは読んだ。それでも仕事を優先した。

 恩義あるギルドマスターに応えなかった罰。

 男は骸骨の魔法詠唱者(マジックキャスター)に謝罪しながら、その命を終えた……。

 

 

 

 

 

 ─ナザリック地下大墳墓─

 

 

「シャルティアを洗脳した愚か者についてはまだ掴めぬのか?」

「申し訳ありません、アインズ様」

 

 アインズの執務室にて、モモンガ──アインズ・ウール・ゴウンは近況報告の書類に目を通すと、溜息をついた。

 傍に控えているアルベドが、静々と頭を下げる。

 主の期待に応えられぬ不甲斐なさから謝罪を続けようと口を開くが、アインズはそれを手で制した。

 

「よい。長引けば、報復の愉悦が高まるものだ。違うか?」

「至高の御方の判断に、間違いなどあるはずがございません」

 

 これだよ。

 内心、アインズは頭を抱える。

 いい加減慣れもしたが、それでも自分の中にある鈴木悟の残滓が疲労を訴えていた。

 先の謝罪も制さねば、更に続いた確信があり、事実だった。

 守護者統括、事実上ナザリックのNo.2であるアルベドでこれである。

 守護者未満の面々などアインズが不満や落胆を吐き出せば自害すら実行しかねないほどだ。

 実際、ナーベラルはやりかけた。

 

(早くアインズ・ウール・ゴウンの名を広めないとな……名が広まって、いるかもしれない仲間に届いたなら、きっとナザリックに来てくれる。そうすれば少しは楽に……)

 

 何度期待したかわからない、だが叶うはずもないとどこか諦めている……そんな願望を心中に浮かべる。

 

 

 その時であった。

 

 

 どさり、と何かが執務室で倒れる音がした。

 

「は?」

「!?」

 

 八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)*1が落下でもしたのかとアインズは一瞬考えた。

 アルベドは不測の事態に備え、一瞬で警戒態勢に入った。

 

「「!!!?」」

 

 そんなものは全て衝撃で吹き飛んだ。

 今、視界に映っているうつぶせに倒れた女性。

 左右非対称が特徴的な黒髪のショートボブに黒地のワンピース。

 異形である証明として際立つ、奇妙な3枚の紅い右翼に奇怪な3枚の蒼い左翼。

 その瞳は閉じられているが、開けば真紅が映えるだろう。

 

「ぬえさん!?」

「ぬえ様!?」

 

 その日、ナザリック地下大墳墓は未曽有の大混乱に包まれることとなった。

 

 

*1
(人間サイズの蟲型モンスター。レベル49のシーフタイプであり、不可視化状態で敵に8連続攻撃を仕掛け、首を刈る。何体かはアインズの身辺警護役についており、執務室では天井に貼り付いている。アニメでも結構出番あり。)




オバロのオリ至高が介入するタイミングって
1.サービス終了日
2.書籍1巻終了後
3.書籍3巻または4巻終了後
が楽な気がします。
2や3だと、ログイン事故だとか死亡転生だとかが基本になりそう。

どこに転移するか、だと大墳墓以外では王国よりも帝国とか聖王国とかが多い印象あります。
カルネ村に先に転移したら、割と話がずれていって大変になりがち。

・荒廃した未来
人型決戦兵器の存在は独自設定ですが、多分原作にもいる。
執筆当時は、原作の僅かな描写から某アーマードコアな世界観を採用していたのですが、後に原作者様が語った情報がディストピア全開な終末世界観だったので驚きました。

・アインズ(モモンガ)
みんな大好き主人公。チョロイン、常人の皮被った狂人、ポン骨、ゲーム脳と数多の属性を持つ。迂闊なキャラを見せる一方で『ゲーム思考』に入った時のガチっぷりは必見。
現時点時系列は3巻終了時であり、シャルティアとの決戦が終わったタイミング。
既にナザリックは世界征服方針へ(アインズの自覚ないまま)舵を切り進行している。

・アルベド
みんな大好きメインヒロイン。モモンガに対してのみチョロイン、常人の振りをしたヤンデレ、天才、モモンガ脳、大口ゴリラと数多の属性を持つ。長文キャラ設定が詰め込まれていたが、ユグドラシルサービス終了時にモモンガが「ちなみにビッチである」を「モモンガを愛している」と書き換えた為に、愛情がバグった。

・ギルド“アインズ・ウール・ゴウン”に所属していた男
モモンガのお誘いメールを蹴って、仕事に従事した結果、無様に死ぬ羽目となったオリ主。

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