人は皆、十字架を背負う
「ハァ…」
何度目の溜息だろうか。床には空になった缶ビールが何本も落ちている。
あの日、何もかも失ってしまった。
最早、何もなくなってしまった。
最初の方こそ小町からの電話もかかってきたが、飽きたのか、呆れたのか、最近はかかってこない。
新しい缶を開けた。タバコは吸っちゃいない。まだ、まだ、ましなのかもしれない。
俺は静かに笑っていた。言い訳を考えていたのだ。そうだ、言い訳でしかないのだ。
所詮自分は、何一つ出来ないのだ。
愉快だった。俺は、、、
そこは部室だった。雪ノ下は静かに本を読んでいた。彼女はこちらを向いて静かに言った。「あら、比企谷くん、よんでいないのだけれど。」
「えー!ゆきのんひどいよ!ヒッキー!来てくれたんだね」
由比ヶ浜…
いつもと変わらない日々だった。
「ヒッキー、ゆきのんも、私も、待ってたよ。もう、どこにも行かないでね」
彼女は大人びていた。いつかの文化祭のように。
「お前ら…」
俺は、彼女らに返答した…
知らない間に眠りについていた。
今日は月曜日だと言うのに。
頭がズキズキと痛んだ。二日酔いだろう。寝ている間に電話がかかってきていた。
小町からだった。何ヶ月かかってこなかっただろうか。頭痛に耐えながら小町に電話をかけた。
「ふぁ…もしもし、小町です。」
「悪い、小町、寝てた。」
「あゝ、お兄ちゃん…」
彼女の声は奇妙に沈んでいた。
「昨日はどうした?突然電話なんかかけてきて」
「うん…、あの…」
歯切れが悪い。
「小町のいうことならなんでもきくぞ」
「お兄ちゃん、今はそんな冗談、言える気分じゃないんだ…」
嫌な予感がする…
「どうした?」
「あの…あのね、お兄ちゃん、結衣さんがね…」
「ああ。」
「一昨日、襲われて…」
由比ヶ浜のことだからいつかは襲われるのかもしれない、と薄々感じていた。そんなことを感じながら、ないだろう、と楽観的でいた自分を恨めしく思った。
「ああ…」
自分の声に驚いた。それは掠れていた。
「結衣さんが、亡くなったの、昨日。」
「…」
声を失った。
「お兄ちゃん!」
「お兄ちゃん!」
小町の俺を呼ぶ声が虚しく響く。
これさ何かの悪夢だ、悪夢に違いない。
壁に頭を叩きつけた。何度も、何度も。狂ったように。
鈍い音がした。気がつけば頭から血を流していた。
何も、何一つ守れなかったのだ。
「うわああああ!」
激しい後悔に襲われた。
慟哭した。泣き叫ぶ声だけが、部屋を木霊する。
筆者は時に思う。
現実ほど残酷なものはあるまい。
彼は帰るべき場所を失ったのである。
今回のお話はとても暗い話となっています…実は構想段階から由比ヶ浜さんはこうなる予定でした。
なぜなら、結衣のキャラとしての役割は、彼の「永遠の人」とすることでしたから。
忘れられない人、一番影響を与える人として描きたかったんです。
次話もお楽しみください!