ですが、最後の出番という訳ではないのでファンの方はご安心を。
一年一組教室………
「………もう一度確認しよう。織斑。入学前に渡された参考書はどうした?」
「古い電話帳と間違えて捨てました」
スパァンッ!!
気持ちのいい音を私は目の前にいる弟を出席簿でしばくことで出した。
………私の名前は織斑千冬。このIS学園………女性にしか動かせないパワードスーツについての教習所のようなところだ………の教師だ。
………今は新入生の入学式の後の二時間目の授業だ。
昨日は散々だった………何故か空中から降ってきたちんちくりん………ガンダムが練習機の打鉄の動作テストをしていた私に降ってきて、なぜかキレた私の受け持っているクラスの副担任の山田君に一晩かけて説教をされ。
正直寝不足である。
さらに。どういうわけか今年は何故か男性には動かせないはずのISを動かしてしまいIS学園に入学してきた弟がいる。
正直ガンダムの存在よりも頭を抱えたかった。
………そもそもあいつはあれほど散らかっていた私の部屋を見事に片付けてくれたからな。悪口も言ったのだろうが、まだどういうわけか参考書を捨てた弟よりかはマシだ。
後の対処が面倒だが………どうやってガンダムのことを説明するか。ふむ。大体兎のせいにしよう。そうすれば問題ないな。
ひとまず私は教室内に設置されている内線用の電話をとって私の部屋………寮長室にかける。
「………ああ、私だ」
『俺の知り合いに私だと開口一番に言うやつはいません』
ガチャリ。
「………」
ピキッ。
「お、織斑先生落ち着いてください!確かに私もいきなり『私だ』って電話されたら戸惑いますから!お願いですから受話器から手を離してくださひぎゃあぁ!!」
隣の緑がやかましいのでアイアンクローをした私は悪くない。
寮長室
うーん。いきなり部屋に電話がかかってきて、『私だ』なんていうもんだからついそんな知り合いはいないだなんて言って切っちゃったけど。
多分相手は千冬さん。俺の命は大丈夫だろうか。
「………よくわかんないんですけど、大丈夫じゃないんすか?」
「それが自信がなくて。この世界女の子の立場強いみたいだし。俺後でボコボコにされるかも。ま、どうにかなるよ、多分」
多分ってなんなんですか………などと言っているのはとりあえず俺が例の電話で呼び出したガンダムMK-2のガン三郎だ。今後はマーク2と表記する。
マーク2は『えぅーご』のメンバーで、俺からしてみれば初めて会った、俺以外のガンダムで、原作一巻からの色々と長い付き合いだ………ん?リッキー?あれはノーカン。登場三巻からだし。
「ちなみにマーク2は彼女持ちの元ヤンキー………き、気にしてないんだからね!?」
「男がツンデレになってどうするんだ!?………というか。なんで俺を呼び出したんですかガンダムさん」
「何、この部屋の持ち主の人の弟は無自覚の女たらしらしいから。そいつをボコボコにするのに当たって彼女持ちの人に何かヒントを貰おうかと。後ついでにサイコちゃんに間違っても他人の電話をとらないように伝えて貰おうかと」
「後者は了解です。こんな狭いところにいきなりサイコが出たら部屋崩壊しますし。というかガンダムさん相変わらずっすね。そもそもそんな鈍感なやつ俺なんて参考になりませんし。うちの鈍感の代表格もいうほど女たらしじゃないですし」
「うーん。前途多難だなぁ………」
「というかその弟さん哀れすぎますよ。ガンダムさんもそんなんで暴力ふるっていいんすか?」
「ん、どうせこの世界は『法律?なにそれおいしいの?』状態だから大丈夫だよ!」
「説得力がねえ!?」
トゥルル………
「あ、また電話だ………もしもーし?」
『後で貴様は命を捨てる覚悟をしておけよ。すぐに一年一組の教室に私の部屋にあるはずのISの参考書を持ってこい。さもなくば貴様の未来の選択肢に生きるという文字はない』
「いきなりの死亡宣告!?」
しかももう電話切られてるし!?理不尽すぎるよ千冬さん!?
「ガンダムさん………骨は拾っておきます」
「………いや、死なないからね………多分」
一年一組教室………
「全員準備はいいな?この時間は実践で使用する各種装備の説明をする」
………三時間目が始まった。ガンダムはまだ来ていない。まあ、道を教えていないからな。仕方あるまい。
そんなことを考えながら私は授業を進める。
ちなみに山田君は燃え尽きて余った椅子に座っている。あの程度でその体たらくとは………
「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出場する代表者を決めないといけないな」
朝の寸劇で結局SHRで決めるはずだったが、どこぞの愚弟のせいでお流れになったからな。
「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく生徒会の開く会議や委員会への出席………まあクラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点では大した差はないが、競争は向上心にを生む。一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」
そういうと生徒達はざわめく。まあ、責任重大だからな。簡単に決まるとは私も思ってはいない。
「自薦他薦は問わん。誰かいるか?」
私が問いかけると、次々に手が挙がり、「織斑君を推薦します!」「私も織斑君を推薦します!」
という声があがる。
やはり男子が一人だとこうなるか…………愚弟を見ると能天気に黒板を眺めていた。理解していないな。
「ふむ、では代表候補者は織斑 一夏だな。他に立候補者はいるか?」
「俺ぇっ!?」
すっとんきょうな声を出し、ようやく自分が選ばれている事に気がついたようだ。
だが、
「席に着け織斑。邪魔だ」
迷わず私は出席簿でしばく。
女子がキャーキャー騒いでいると、やはり、今にも怒りを爆発させそうな勢いで立ち上がる生徒が現れた。
イギリス代表候補生、セシリア・オルコットである。
代表候補生について軽く解説しよう。
ISを使った種目には大会がある。その大会は国際レベルで行われており、国ごとに代表も選出される。その代表の候補のことを代表候補生、という。一種のエリートのようなものだ。
ちなみに私は元日本代表で、山田君も元日本の代表候補生だ。
「待ってください!納得いきませんわ!!」
一夏には救世主が現れたか、のような表情をしてオルコットを見ているが。
違う。こいつの性格からしてそうじゃない。
「そのような選出、認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥晒しですわ!この貴族であるわたくしに一年間屈辱を味わえと言いますの!?」
………やはり、な。セシリア・オルコットは確かに代表候補生だ。それにふさわしい実力もあり、手加減していたとはいえ、山田君を試験で倒している。
だが、性格は非常に難がある。
自国に対しての愛国心に加えて、自尊心も強い。
さらにISが広まった今のこの世界の風潮………女尊男卑に染まっている。
それゆえか、男を含めた他人を見下している節があるのだ。
それはこのクラス内で孤立することに繋がる。
このクラスは男子………それが日本出身であることに配慮し、他のクラスと比較すると日本出身の生徒が多い。
イギリス出身のオルコットはその時点で浮いているとも言える。
その状況を自ら悪化させていることに、こいつは気づいていない。
「実力から考えればわたくしこそがクラス代表に相応しいのです!それを珍しいからと言って無能な極東の猿にされてはーー」
………私は教師である以上、オルコットをそろそろ止めなければならないと感じていた。
しかし、それは外からの乱入者に役目を奪われた。
バアンッ!、と。ドアが勢いよく開け放たれた。
次の瞬間、廊下から一冊の本………ISの参考書が飛んできた。
「キャアッ!?」
それはオルコットにゴンッ、と鈍い音をたてて見事に命中し。
「ひぎゃん!?」
そのあと反射して椅子に座っている燃え尽きていた山田君に命中した………哀れな。
そして、本を投げた犯人はこう叫んだ。
「悪い子はいねえかぁぁ!!人の悪口ばっかりいう悪い子はいねえかぁぁ!!!」
「それはなまはげのセリフだろう!?」
と。柄にもなく私は犯人………ガンダムにツッコミをいれた。
新訳のサイコとセシリアは中の人が一緒なんですね。
知らなかった………