神の逆鱗 〜逆らう人間の知恵と協力者〜   作:S.Hitta.

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拾壱 海神

 

暗闇の中、強く白い発行する光を追いながら歩く。もう既に歩いて一時間は経とうとしている。島根県の北西部に位置する無人島《蝋燭島》

島と言うよりも岩だ。岩が二十メートル程の高さでそびえるその形がまるで蝋燭の様な事からその名が付いたとされている。その島の地表に穴が開いていて、中には広い洞窟が出来ている。

 

「こんな所に本当に偉い神様がいるのかぁ?」

 

シュガーさんの疑問は間違いない。何を好き好んでこんな所に寝城を築くのか、謎でしかない。

 

「此処の海はとても綺麗で、人が来ない事からお気に召した様で《海神エギル様》の寝床となられているんです。」

 

海神エギル

その名の通り海を司る神。海難事故で亡くなった魂はエギルの元に集まり、その後天に召される様になっているらしい。僕はこの状況下でも未だに死後の世界は信じられない。神や悪魔が居たとしても死んだ後、神に会って来世が与えられるなんて話とてもじゃないが理解できない。そもそも、そんな神がこの世界に嫌気がさして世界ごと塗り替えようなんてそんな都合の良い話堪ったもんじゃない。余計に主神とやらに会ってみたいものだ。

 

「しかし広いな。この奥はどこまで続いてるんだ。ネビロスは知ってるの?」

「もう少しで着くと思います。私も来るのは初めてですが、力を強く感じます。もう間も無くかと。」

「なんの力かしら?」

 

もっともな意見だ。だが何故か此処に花音が居る。理由は長官に.....

 

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六時間前、本部にて。

 

「此奴等が調査?そんな事出来る訳ないじゃない。結局何時もの阿呆がターゲットに襲いかかって調査任務が捕縛任務に変わるだけだわ。それならあたしが付いて行った方が効率的だと考えますが、長官いかがですか?」

「辛辣だな。分かった、それならソルトが残れ。本部の警備が甘くなりすぎるのも問題だ。」

「•••分かりました。」

 

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という流れだった。神楽は例の如く全く気にしていない。寧ろ誇っている様にも見えた程だった。神楽の傷はやはり一瞬にしてフレイヤの手によって治った。傷を見て、息を吹きかけるだけ。ただそれだけで傷か治る。全くもって理解出来ないが、そこら辺はもう慣れた。

 

「なんの力、ですか。そうですね、オーラみたいなものでしょうか。説明しにくいですが、感じた事はありませんか?東雲殿や神楽のオーラみたいなもの。」

「さぁ。分からないわね。」

 

なんと無く僕は分かる気がした。アゼルの力を解放した時に神楽の力や、相手にした神や悪魔の力量を目視出来ていると思う。と思う、と言うのも言われて振り返ってみるとそういう類のモノだったと思える程度という事だ。しかし神楽だけ呼び捨てとは、僕もなんと無く気まずく感じる。

 

「悪魔ってさぁ、普段何食ってんの〜?」

「人の魂です。」

「まじでっ?!クソウケんだけど!なに、美味いの?」

「冗談です。私も媒体は人間ですから、あなた方と同じ物を食べています。」

 

やはり神楽は気にも留めていないようだ。

ネビロスの容姿はブロンドの長髪を後ろで結んでいる、とても美しい顔立ちだ。黒皮のパンツにブーツを履いて黒革のローブみたいな物を羽織っている。今はフードを外しているが普段は被って顔を隠しているのだろう。理由は瞳が紅いからだろう。カラコンみたいな物ではなく白目も黒目も無く眼球自体が真っ赤なのだ。恐らく悪魔が人に憑依しているからと考えているが、皆んな口には出さないでいる。

 

「間違い無くこの奥ですね。東雲殿と神楽も力を準備して下さい。何が起きるか分かりません。」

「アゼル、力を貸してくれ、今までとは違うみたいだ。最初から飛ばすよ、phase5」

(おう。)

「ロキ〜、行くよ、お楽しみの時間だ〜♡phase5」

 

 

ネビロスが立ち止まった先に広まった空間がある。この中に海神エギルが居るみたいだ。やはり言われてみて分かったが、感じる。それも半端じゃない。僕や神楽の力なんて比べ物にならないぞ。立っているだけで息苦しくなる。

 

「ふふふ、神楽、これはヤバくないか?」

「いやぁ、半端じゃねーな〜、やっと本当の命の取り合いが出来るね〜」

 

そう言いながらも神楽の額から雫が垂れて羽衣に触って蒸発する。

 

「一度だけ言うぞ。今回は二人でやろう。元々は調査のみだったんだ。勝手して僕達が負けたとなれば十神に情報が漏れる恐れがある。更に、僕達が仮に、死んでしまった場合JOGの被害は甚大だ。僕から言ったんだ、神楽付き合ってくれ。」

「ん〜、今回だけな。次の十神が集まる時は勝手にやるからな。」

「了解。」

 

神楽もこのヤバさは理解出来たみたいだ。意地も張らず僕から持ちかけたとは言え、多対一を嫌う好戦的な神楽がそれを飲むというのはあり得ない事だ。だが、それくらい海神はすごいオーラを発している。

 

「まぁ、勝手にお前等が纏めちゃってるけど、異論はねぇ。お前等だけで取り敢えずはやらせてやる。だが、危ないと判断した場合俺も参入する。それと一つだけ俺の命令を聞け。」

「「?」」

「勝手に死ぬな。以上。」

 

初めて、シュガーさんが隊長らしい事を行って僕は少し驚いた。だが、シュガーさんには悪いが、喚卵持ちが勝てない相手ならば、破鬼持ちではどうにもならない。だから、副音声として、どうにかしろ。と聞こえた。

 

「行きますよ。」

「はい。」

「お〜♡」

 

ネビロスの一言で穴に踏み入れる。そこはとても広い空間だった。高さも認識できない程岩の天井は高く、投光器の光でも奥行きが測れない。そこには、何も•••居ない?

 

「いねーな〜。」

「そんなはずは無いよ。油断したらダメだ。」

「•••居ますよ。目の前に。」

「「えっ」」

 

目の前にあるのは大岩?•••おいおい、そうゆう事か。

 

悪心之鞭撻(あくしんのべんたつ)•••羅焔(らえん)•••」

 

そう呟くと複数に別れた鞭が神楽の頭上で合流し赤く光る大きな玉を作っている。

 

「え!ちょっ、皆下がって、僕の後ろに隠れて!」

降誕(こうたん)!!!」

 

神楽がいきなり大技を繰り出す。複数に別れている鞭の先を丸めて硬質化させ、ロキの力で炎を高火力で纏う。その様はまるで太陽だ。

僕は少し下がり六対の翼を体の前に閉ざし、更に翼に右手の風で厚い風壁を作り体を守る。ものすごい熱気が洞窟全体に蔓延し、強い光が全てを照らした。神楽の炎球は大岩かと思っていた、海神に直撃する。瞬間、鼓膜を劈くような重低音が響いた。洞窟の天井からはパラパラと大小問わず落石し、足場が揺れに揺れた。

 

「ニシシシシッ!どうだこの野郎〜♡」

 

翼を広げて舞っている煙を払い、辺りを確認する。海神は地面を抉り陥没している。後ろを振り向くと、ネビロスが背を向けて大の字になって壁になり二人を庇い、その前でシュガーさんが花音を抱えて守っている。

 

「全く、協調性に欠ける人だ。」

「ふざけてんな。」

「ありがとう••ございます。」

 

ネビロス、シュガーさん、花音の順で言葉を発した。なんとか皆、無事みたいだ。

 

「神楽、いい加減にしてくれ。協力して戦うと言っただろ。」

「レント、油断はダメなんだろ〜?目を離さないほうが良いよ〜。」

「なっ、」

 

大岩の様な背中を見せて仁王立ちするソレは最早、生物の域から、はみ出すほどの存在感を示していた。地鳴りを伴いながら此方を振り向く面構えはまるで、、鬼をイメージさせられる様な表情、俄か神だなんて思えないほどの憤怒を感じる。先程まで感じていたオーラは眠っていたもの。起きているソレはやはり海神エギルだ。

 

「貴様らどういう了見で儂の眠りを妨げる。覚悟は出来ておろうな。」

 

低く。限りなく低いその声色に誰一人反応する事は出来なかった。まさに蛇に睨まれた蛙乗る状態。

 

(しっかりしろ、レント。そろそろ俺を信じて突っ込んでみろ。お前の下す敵の評価は正しい。だがお前自身の評価は誤ってる。突っ込め。そうすれば俺の言ってる意味も解る。お前は誰よりも強い。俺を宿したんだ、そうでなくては困る。)

 

アゼルが頭の中で僕を諭してくれたお陰で正気に戻れた。そうだ。僕は強くなくてはならない。海神だろうがなんだろうがアイツを殺すまで僕は立ち止まらない。

 

「ありがとうアゼル。神楽、聞こえていたら聞いて。僕が突っ込む、隙を見つけたら援護しつつデカイのかまして。•••ふぅ。行くぞっ!」

 

六対の翼をはためかせ空を舞う。エギルはざっと見積もって体調五メートルは超えている。先程の炎球を食らって無傷の所を見るとやはり皮膚が硬いのだろう。一年前のトロールを思い出すな。あの時は硬い皮膚如きで何も出来なかったけど、今は違う。アゼルが居る。戦い方を知っている。戦う術も、経験も積んだ。後はこいつを倒して実績とする。右手の眼から風を生む。大きく、大きく、もっと大きく。沢山の風を生み出し回転させる。直径三メートルを超える風の塊を更に風を生み圧縮する。強く。強く。もっと凝縮させる。三メートルあったソレは掌大の大きさになる。

 

「エギル、待っててくれたの?別に良いのに攻撃してきても。まぁ、当たらないと思うけど。」

「儂の名を知っとるという事は、儂を消しに来たのか。それにその力。貴様何者だ。」

「僕の名前は東雲蓮刀、海神を倒すもの也」

「小僧。度胸だけは認めてやる。その礫を投げるんじゃろ?避けも防ぎもせん、投げてみぃ。」

「投げるんじゃないよ。放つんだ。それに避けも防ぎも出来ないよ。」

 

爆威嵐塊(ばくいらんこん)

 

暴威風塊の究極形。風の塊を風で纏い風で放つ。シンプルな攻撃に見えて内容は至極複雑。故に強力。不可避の殺傷能力抜群の一撃。塊の速さは音を置き去りにし、威力は空に放てば星を割る。僕の幾つかある能力の中で、一番得意な風の力を最大限に生かした、まさに必殺技をエギルの土手っ腹にぶちかます。

砂煙が舞い上がり、一帯の視認が困難になるが暫くして砂煙が治る。そこには両手を翳し俯く海神が居た。

 

「うわぁ、やっぱすごいね。」

「大した小僧だ、一瞬でも儂に危ういと思わせよった。お主、人では無いな?もしくは身体の中に何か居るな。」

「神のくせに、行った事曲げてしまうんですね。みっともない。お喋りはまだ、するつもりはないです。行きますよ。」

 

怯んじゃダメだ。前を向け。まだ負けてない。防いだって事は防がなくてはならない状態だったという事。力はまだまだ残ってる。馬鹿でかいオーラだろうが、死線を抜けてきた数は負けない。勝てなければ今すぐ進化すればいい。僕なら出来る。いや、やってやる。

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