神の逆鱗 〜逆らう人間の知恵と協力者〜   作:S.Hitta.

15 / 17
好きでやってるのですが
戦闘の描写ってものすごい難しいですね。
その辺りも感想やアドバイスなど頂けたら嬉しいっす。


拾伍 組手

心央眼(しんおうがん)》の修行を始めて一週間が経った。未だに制御が出来ずに嘆いているものの、とりあえずはSP(シミュレーションプラクティス)ルーム内での範囲の誤差にはなっている。たまにSPルームから出てすぐの更衣室まで行ってしまい、何も知らない人達を驚かせることもあった。だが初日の様な気を失ったり、卑猥なミスは全くしなくなった。

それはともかく、神楽は初日から丸二日その場に座って《会話》を続けていた。三日それが続く様なら無理やりにでも休ませようと思ったがこんな事、神楽に限っては希にも無い事だったので、誰にも関わらせない様にして放置しておいた。すると三日目の修行の為、僕がSPルームに入り柔軟をしていると、

 

「レント〜、腹減った〜。」

「•••でしょうね。」

 

丸二日座り続けた男の第一声がこれである。まぁ、神楽らしいと言えば神楽らしいのだが。そうして神楽に食事を摂らせて、神楽が丸二日《会話》をしていた事を伝えると、

 

「うわ〜、昨日の曜日クエやりそこねてんじゃんか〜。」

 

とiPhoneを弄りながら訳の分からない事を言われたので無視して、その日、一日自宅で休ませた。

そして、今は新しく使える様になった能力を使いこなせる様、半日は個人で修行、その能力を戦闘に組み込む為の修行で組手を半日続けて今に至る。組手では神楽に負る事の方が多かった。外での対戦であれば五分になるかどうか、正直勝てるかどうかは怪しい。それくらい神楽の新しい能力は厄介だった。

神楽の新しい能力の一つは、《土鑼生之腕輪(どらうのうでわ)》という右の二の腕に付けられた金色の腕輪。能力内容は見る限り"大地操作"?と言えばいいのだろうか。地面や壁がまるで生き物の様に動き襲ってくる。そこに神楽の戦闘センス、元ある炎の能力と鞭、実に幅の広い戦略であった。そして、何より相性が抜群に悪い。僕が氷を使うのに対して神楽は炎。完璧な優劣関係にある。もう一つの風の能力も神楽の炎を大きくしてしまう。

更に腹が立つのは神楽にはもう一つ使っていない能力がある。以前は確かに使えなかったのだろうが、今は使えるらしい。だが使わない。理由を聞いても、

 

「さすがにレントがかわいそうでしょ〜」

 

としか言わない。事実、僕は今負けに負けている。たまに勝てる時と言えば調子に乗った神楽が自らミスをした時だけだった。これが組手ではなく戦闘であるならばまだ分からない。僕もまだ《心央眼》が拙いレベルだったとしてもアゼルの右目と左目は殺傷レベルまで扱うことが出来る。本来そうでなければ本当の実力差が分からない。だがそれは神楽も同じ。炎の威力は殺さない程度にする為、脅し程度に使う位で殆ど使っていない。やはり戦闘になったとしても負けるのか。早く実力差を埋めなくては何時

 

「俺よりも弱いのに指図すんなよ雑魚〜」

 

と言いだしかねない。よって僕は今とても焦っている。なのでまだ今は個人修行の時間だが僕は切り出す。

 

「さて、そろそろ組手の時間だね。」

「んー?早くねー?まぁ、良いけど〜」

「今日は勝ち越すよ。」

「にししっ、寝言は寝てからおねしゃ〜♡」

 

軽口を叩き合いながら向かい合ってさっと、柔軟をする。

 

「アゼル、行くよ。phase5。」

「ロキ〜、phase5。」

 

お互いに直立しながら薄く笑顔を浮かべながら睨み合う。暗黙の了解として、先手はまちまちになる。変化を終えた後、神楽がすぐさま向かってくる事もあれば、しばらく見にまわる事もある。今回は僕からだ。ある程度、組手もやり込んでいて、なおかつここ暫く共に任務をこなして来た二人。お互いに戦いの癖や傾向は見えている。僕が地から突っ込めば大概、神楽は空に逃げる。僕が空から攻めると神楽は更に高く空に舞う。まぁ、昔から言う所の"なんちゃらは高い所が好き"と言うのはよく言ったものだと思う。とにかく地上戦よりも対空戦を神楽は好む。

力強く右の軸足で地面を蹴り翼を使い体制を低くして地面と平行に身体を傾け突っ込む。予想通り神楽は空にに逃げる。恐らくこのまま放っておけば鞭が叩き込まれるだろう。なので、神楽が飛ぶ寸前、やっと反応した瞬間にアゼルの右目に力を込める。そして飛び出した瞬間に右手を地面に向けて風を叩きつける。六対の翼にその反動を利用させて急上昇し、更に右手の風を放出し続け、スピードを殺さず左手を神楽に向けて突っ込む。肉薄する僕のスピードに気付いた神楽は瞬間的に炎を自身の周りに纏い防御体制に入る。

計算通り。

 

「《摂氏零閃(せっしれいせん)》」

 

左手のアゼルの左目から一筋の閃光が、神楽の纏う炎に触れる。が、煙となって消える。

 

「いやいや、なにやってんの〜?負けすぎてトチ狂った〜?ニシシ」

「••••」

 

そのまま炎を無視して突っ込む。左手で神楽の首を掴み、尚スピードを落とさず上昇。バタバタと神楽は暴れながら炎を繰り出さそうとするも出せない。僕がゼロ距離に居られればアゼルの右目を使い、真空状態を作り出すことは可能。燃える酸素がなければ炎を出せないのが道理。

このまま気を失うまで振り回し続けてやる。

と思った刹那。《尾蛇喰(びじゃく)》の目の端で何かを捉えた。何かに気付いた時には翼が何かに絡まり言うことを聞かない。目を翼にやると神楽の鞭が翼に巻きつかれていた。

うん。まずいね。

そのまま地面に落ちる瞬間に右手を地に向けて風を放出し落下を阻止するも、やはり地面が複数箇所、隆起して僕を囲うようにせり迫る。神楽を投げ飛ばし自由になった翼で空へ回避。

 

「その鞭やっぱり反則だよ。性能が良すぎる。」

「げほっ、かはっ、ふぅ。•••••いや〜、殺されるかと思った〜♡」

「嘘吐け馬鹿野郎。まぁ、そんな簡単にいくとは思ってないよ。」

「今度はこっちから行くよ〜。」

 

神楽が少し身を屈めると爆発的なスピードで僕より高い位置へ上昇する。

神楽には翼がない。その代わりに足に纏っている炎で形成されたブーツの様な物で空を駆ける事が出来る。僕と違って翼で飛ばない分、トップスピードは大した事無いものの、瞬間速度は 僕の比では無い。更に小回りの効き方は異常な程だ、ブーツの性能と神楽の柔軟性が無いと出来無い動きである。

 

「《悪戯•我武射羅(あくぎ•がむしゃら)》」

「また新技ね。それよりなんて数だよ。」

 

神楽の炎を纏う悪心之鞭撻が夥しい数に根元から別れ、一本一本が独自の動きをして八方から此方に襲い掛かってくる。僕の目でもこの数は捉えきれ無いな。となると躱すのはかなり厳しい。

 

「《歪冥•開(わいめい•かい)》」

 

心央眼から出現する空間転移の穴を真上に大きく展開し、神楽の攻撃を穴へと突っ込ませていく。自分を転移させると何処に出るかまだ完璧に把握出来ていないから、しょうがなくこの方法を取る。穴から漏れた下方向からの攻撃は

 

「《天戯•舞雹(てんぎ•ぶひょう)》」

 

アゼルの左目から雹を適当に創り出し丁寧にぶつけていく。雹は氷といえども直径十センチ程の大きさとなれば溶けるよりも早く鞭の勢いを殺せる。

 

「んだよ。それめんどくせ〜よ〜。」

 

神楽がそう嘆きながら鞭を引っ込める。正直早く引っ込めてくれないと呼吸が保たず、閉じてしまうと何処か訳の分からない所に神楽の攻撃が猛威を振るわせてしまう。修行を続けていて気付いたのだが、《歪冥》の中に自分が入っていなくても出現させるだけで呼吸が出来なくなり、また身体が重くなる。なので、やたらに使う事は出来ない。尤もこの事は神楽も知らない。

 

「めんどくさいのはお互い様でしょ。《暴威風塊(ぼういふうこん)》!」

「レントの技は回りくどくて面倒くさいって意味だよ〜。《土鑼生•硬壁(どらう•こうへき)》」

 

神楽が天井に片手で触れると天井から床が神楽を守る壁の様に伸びて、僕の風魂と衝突し激しい衝撃音を響かす。

 

「まだだよ〜。《土鑼生•刺壁(しへき)》」

「やっぱりお互い様だよ。《氷牟礼(こおりむれ)》」

 

せり上がった壁の面から幾つもの棘が真っ直ぐ此方に伸びてくる。それを防ぐためにアゼルの左目から直径五メートル程の"氷塊"を作り出し、次々と氷塊に棘が刺さりガラガラと音を立てて崩れていく。即座、アゼルの右眼から旋風を巻き起こし崩れた氷を巻き込んで

 

「《天戯•嵐雹(てんぎ•らんぴょう)》」

 

大小バラバラの雹の様な氷の礫を風の勢いで神楽にぶつける。直撃したかに見えたが、神楽の周りを白い煙が覆った事で当たっていない事に気付く。

 

「相性が嫌になる程悪いね。」

「相性占いなら俺逹悪くないと思うんだけどね〜♡」

「どうでも良いよ。」

「今日は何時になく長引くね〜。疲れたし次で終わりにしない?」

「その口車、乗りたくないんだけどね。いいよ。」

 

神楽の絶対に負けがない様な言い回しが、割と癇に障って売り言葉に買い言葉で引き受ける。だが、負ける気もない。

 

「《悪戯•火流魔(かるま)》」

「《天戯•嵐堂(らんどう)》」

 

神楽は鞭を丸めて両手の中で炎と共に圧縮して、僕は右手の上で風を巻き上げて威力を溜める。

 

「死んだらだめだよ〜♡」

「神楽も気を付けなよ?此れは君対策で作った真空の塊だから相性関係ないからね。」

 

お互い力を溜め終わり、ニヤッと擬音が付く様な笑みを浮かべる。刹那にお互い溜め込んだ力を相手にぶつけ合う。

事は無かった。

お互いが同じタイミングで視界の端に先程まで無かった影を見つけていた。僕の場合は技を打ち合った時の被害がその影に及ぶ事を考慮して。神楽は恐らく興が削がれたのだろう。力無く両者の手にいた風と炎が消えていく。

 

「あれ?お邪魔しちゃいました?」

「君は迷子かな?」

「違うよ。子供扱いすんな。お前もまだガキだろ。」

「一応、成人は超えてるんだけどね。取り敢えず危ないから此処から出て行ったほうがいい。」

「だからガキ扱いすんなっつってんだろ、馬鹿かてめぇ。」

「神楽、今日は此処までにしよう。」

「このガキうけんね〜♡でもまだケリついて無いんだけど。」

「頭来た。phase4。力を貸せ、"バアル"。」

「「!?」」

 

小学生くらいの少年がふて腐れた顔でそう呟く。耳を疑ったが直後の少年の変異で腑に落ちる。体中に漆黒を纏い、頭に二本の渦巻く角が生えて、日本人特有の真っ黒な黒目が血赤に染まる。

 

「《忌音弓•••》

「止めなさい。努くん。」

 

少年が何か呟くのを遮ったのは花音だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。