神の逆鱗 〜逆らう人間の知恵と協力者〜 作:S.Hitta.
昨日は早く寝てしまった事もあり、まだ空が白んで間もない内に目が覚めた。起きてすぐにやる事もなく、気分的に風呂を貯めて久々に湯船に浸かる事にした。風呂に入って考える事といえば昨日の出来事とこれからの事。兎に角今日である程度コミュニケーションを取り、必要や物を揃えて明日から、《十神イベント》に向けての修行に入りたい。考えてみるともう来週にはイベントのX Dayになる。それまでにはなんとか《
「おはよう。起こしちゃったかな?」
「おはようございます。」
おっ。
「良く眠れた?」
「あの、ベッドありがとうございました。お陰さまで良く眠れました。」
「気にしなくて良いよ。努くんのベッドも今日買うしね。」
「あの、•••」
「ん?どした?」
「あの、昨日はすいません。」
「何も、気にしなくて良いよ。これからどうなるか分からないけど、僕たちは家族になるんだから。」
「家族、ですか?」
「そう。一つ屋根の下で寝食を共にする家族。だからきをつかう必要も、遠慮する事も無い。努くんも、もちろん僕もね。」
「僕の事全く知ら無いですよね?」
「そんなものはこれから知っていけば良い。好きな食べ物、嫌いな食べ物、得意な事、苦手な事。だから少しづつ教え合っていこうね。」
「•••ぐずっ、」
「え、嘘、ちょと、どした?」
僕がてんぱってると努くんは僕の足元に顔を埋めてきた。良く分からないけど優しく頭を撫でてみた。どうもぼくは人の涙は苦手だ。それも子供に泣かれるのは初めてだし、対応に困る。暫くそうしていると
「ありがとう。東雲さん。もう大丈夫です。」
「んー。取り敢えず、僕の事はレントって呼ぼうか。敬語も金輪際、僕相手には禁止ね。」
「そんなぁ、急には無理だよ。レントー。」
「•••やるじゃん。」
こうして僕は初めて努くんの笑顔を見る事が出来た。その笑顔はとても眩しく、初めてしっかりと努くんの顔を見れた気がした。クルクルの天然パーマに、細い目、透き通るような白い肌。なんとなくスヌ◯ピーを連想させる抜けた顔。
この後、二人で買い物に出かけて必要な物を買い揃えた。その中でたくさんの話をして、ある程度努くんの事を知る事が出来た。家に着くと業者が直ぐに来てベッドの搬送と組み立てをサクッと終わらせて努くんの部屋が出来た。
「疲れたねー。」
「でも楽しかったよ!」
そう言いながら二人で横並びにソファに腰掛ける。
「それは良かった。あっという間に一日が終わったね。」
「うん。明日は何するのー?」
「その事なんだけどね。明日から、また神楽と修行をしなきゃならないんだ。」
「修行?」
「そう。来週、大きな任務があるんだ。それに向けての修行。」
少し寂しそうな顔をして、思いついたように体ごと顔を僕に向ける。
「そうなんだ。じゃあ僕も行っていい?邪魔しないから!」
「うーん。じゃあ一緒に行こうか。でも退屈だと思うよ?」
「その間、僕も一人で修行するから大丈夫!」
「そっか••••分かった。」
いよいよ気になるな。この子の《
「努くん、お腹空かない?」
「お腹空いたー。」
「じゃあ、なんか出前取ろうか。何食べたい?」
「ハンバーグ!」
「そゆとこはまんま子供っぽいね。」
「うるさいレント。」
「はいはい。」
そんなやりとりをしてiPhoneをとり電話をかけようと開くとLINEが来ていた。相手は保苅さん。ん、任務か?と思うと同時にインターホンが鳴る。玄関から顔を出すと。
「久し振りね。」
「ご無沙汰してます。もうこっちに帰ってたんですね。今日はどうしたんですか?」
相手はLINEと同じく保苅さんだった。保苅さんは僕らが第一部隊に入隊した半年後にアメリカ出張に出ていた。
「えぇ、今日帰ってきて長官から最初に言われたのがあなた達を連れてこい。だったの。連絡しても帰ってこないから直接迎えに来たって事。」
「それは、すいません。神楽はもう行ってるんですか?」
「あいつ、、神楽くんは関係ないわ。呼ばれているのはあなたと佐藤努くんよ。私はもう行くから、準備して早く本部のエントランスに来て。」
「了解です。」
僕と努くんが呼ばれたって事は恐らく、なんかしらの説明があるという事だ。いつもいつも、長官こと郷原は説明が遅くて少なすぎる。腹がたつのを抑えて、努くんに事情を説明して、一応僕はスーツに着替え、エントランスに向かう。
着くとそこには郷原と保苅さんが並んで座っていた。テーブルを挟んで対面に僕と努くんが座る。
「どうだ。修行の方は?」
「ぼちぼちですね。修行を見てくれる話はどうなったんですか?」
そう。僕はこの人に修行をお願いしたんだ。シュガーさん曰く地球人最強はこの人だと教わったからだ。確かに長官の職務で忙しいだろうが、仕事をばっくれる癖があるこの人は一日一時間から二時間程度は時間を空けられる。そう思ったからというのもある。
「悪いな。なかなか時間が空かなくてな。」
「まぁ、それはいいとして。他に話があるんじゃないですか?」
「東雲くん、口の利き方に気を付けなさい。」
どうしてもこの人に対して、ちゃんとした上司の感情が芽生えない。まぁ、郷原に限ったことではないのだが。
「保苅くん、良いんだよ。そうだな。急にこんな形になって、まずはすまない。こう見えてもこの子は《喚卵》を持っている。」
「知っています。」
「そうか。なら来週の《尊最十神》の会合にこの子を連れて行くことも知っているか?」
「は?」
「東雲くん!」
「保苅。少し黙ってろ。」
一瞬にしてその場が凍った。流石は長官。だがつい、口を突いて出てしまったにしても、少々保苅さんに罪悪感が湧く。でも、気にせず自分の気になる事を聞く。
「どういうことですか?」
「君は私が一を話したら十を理解する人間だと思い話す。なので質問は受け付けん。」
「構いません。」
いつもあんたはそうでしょうが。
「よろしい。この子は孤児だ。我々はこの子を始めとしてJOGに孤児を集め訓練を施し、更に適性のある者には《天具》を与えている。この子は天才だ。格闘センスもさることながら、何より賢い。この子を見つけた時に、中村に聞いていた君の様だと思ったよ。だから君の元に、この子を引き渡した。話を戻そう。この子は《喚卵》移植後、半年でphase4まで開いている。体術のみなら君との修行に役に立つまである程だ。頭の方は神楽よりは既に出来は良いだろう。だが、実戦に出していない分、経験値がまるでない。そこをなんとか君の手で七日後の任務までに仕上げろ。。明日二十時よりブリーフィングが開かれる。詳しい任務内容はその時説明がある。以上だ。解散。」
そう言い放って郷原と、少し遅れて保苅さんが席を離れた。考えるのは後だ。今はこの子にあんまり考えさせてはいけない。
「いよいよ、お腹空いたね。早く帰ってご飯を食べよう。」
「うん。」
帰りながら出前の電話をして家に着くと
「レントー。僕もレントみたいなスーツ欲しい!」
「スーツ?」
「そう!今日買ってくれたジャージもレントと同じナ◯キでしょ?仕事の服もレントと同じがいい!」
「そっか。じゃあ、近いうち仕立てに行こう。それでも多分努くんの初任務には間に合わないよ?」
「えー。そうなんだぁ。」
この感じだと先の話で何かマイナスな事を感じている様子はなさそうだね。どちらかというとワクワクしてる感じか。そう見せてるだけじゃ無ければいいんだけど。
「だから、来週の任務はジャージだね。」
「まぁ、いっか。」
「明日から本格的な修行もあるけど、大丈夫?」
「もしかしたら僕、レントよりも強いかもね!それでも泣かないでよ?」
「ふふっ、言ったなこの野郎。」
そうこう言う内に出前が届き、努くんと僕は食事を摂った。その後、努くんを風呂に入れて、僕は一人ソファに深く腰掛け、考えに耽る。
この子が《喚卵》を持ってた理由はある程度は予想できた。そこからJOGがもしくは長官がどうしたいのかも見当は付いていた。かと言って、こんなにも早く、それもこんなでかい任務に出るとは思わなかったな。兎に角、明日この子の力と様子を見たら課題も見えてくるだろう。それまではこの話に触れずに過ごそう。
「お風呂広いねー!溺れるかと思ったよ。」
「喜んでくれて光栄です。じゃあ僕も風呂に入るからテレビでも見て寛いでて。」
「うぃー。」
さっと、シャワーだけ浴びてナ◯キのハーフパンツと、Tシャツに、これまたナ◯キのフルZIPパーカーを上に着て、全身黒ずくめの格好でリビングに出ると、つまんなそうな顔で努くんがテレビを見ている。
「お風呂早っ!」
「僕はシャワーだけだからね。」
「ふーん。」
お茶を二人分グラスに入れて努くんの隣に腰掛ける。
「ふぅ。」
「ねぇレントー。」
「ん?」
「なんか僕に色々聞きたい事あるんじゃ無いの?」
全部お見通しって事か。やっぱりこの子は賢いな。僕は今から末恐ろしいよ。
「まぁね。でも僕から努くんに何か聞く事は無いよ。自分から話したくなったら話してくれればそれでいい。」
「一番気を使ってるのはレントって事だね。」
「いや、違うよ。僕が仮に努くんの立場なら聞かれたく無いから、そうしてるだけ。」
「なるほどね。そういう言い回しも出来る訳だ。」
「ふふっ、さっきから、随分意地悪だね。」
「ごめん。そうゆうつもりじゃない。」
「分かってるよ。それで、何か話したくなったんじゃないの?」
「うざー!もう!••••••僕は生まれた時から孤児なんだ。親も知らないし、今となっては知ろうとも思わない。僕が三歳の頃から孤児院にある人が勉強を教えてくれる様になったんだ。」
うざいと言って暫くの間を空けて真顔でつらつらと話し始めた。
「随分と早いね。それがJOG職員て事か。」
「そう。それからある程度、勉強して僕が五歳になった時にIQテストと身体能力測定をされて、僕が一番になったんだ。その時は単純に嬉しかったんだけど、そのまた二年後、僕が7歳になった時に此処の地下にある研究施設に連れてこられたんだ。」
「そこで適正検査を受けたと。」
「うん。その時僕に対して、身体に悪いところがないか調べるだけって言ったんだ。その検査に何日か掛かって、終わった時に郷原のおじちゃんと会った。そこで君は「合格した」•••!?」
「なるほどね。」
「レントも同じだったんだ。」
「まぁ、似た様なもんだよ。」
「そう。それでもまだ身体が成長していないからって言われて、孤児院に戻って、今年改めて来て検査を受けて、気付いたら《喚卵》を移植されてたんだ。えぐくない?」
「同感。僕も同じ口だからね。」
「でも、僕はこれで良かったと思ってる。少なくとも今はレントと家族になれたし、花音姉とも会えたから。」
「そういえば花音にやけに懐いてるみたいだけど何かあったの?」
「それはひ•み•つ。」
「そう。なるほどね。でもphase4まで開けるなんてすごいじゃないか。」
「まぁ、言うなればセンス、かな。ふふっ」
「そうだね。でもphase4まで開けても使えない能力があったりするんじゃない?」
「えっ!?そう!そうなんだ!phase4の能力が僕でも分からないんだ。レントもそうだったの!?」
「まぁね。じゃあ明日、僕と神楽がやった方法で出来るかどうかは分からないけど、やってみよう。」
「うんっ!レントありがとう!」
「いいえ。じゃあ、努くんは新しい部屋で今日も早めに寝ましょうか。」
「レントー。」
「ん?」
「新しいベッド買って貰ってごめんだけど、今日は一緒に寝て欲しい。」
「よしっ!」
昨日と同じ様に努くんを抱えて、電気を消して寝室に移動する。やっぱりまだ可愛い子供なんだな。口に出したら怒るから言わないけど。
「あ、レント。花音姉には秘密だよ。」
「なんだ、花音の事が好きなのか?」
「それも、ひ•み•つ。」
「はいはい。」
こうして僕まで早い就寝になった。正直、僕も努くんの能力を知るのが少し楽しみになって、眠りに落ちるまで、あれこれ考えていたりしていたけど、暫くすると先に隣から、可愛い寝息が聞こえてきた。その心地良いBGMの中、僕はそっと瞼を閉じた。