神の逆鱗 〜逆らう人間の知恵と協力者〜   作:S.Hitta.

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ここから本題になる形です。


伍話 理解

地面に落下する直前で、神楽に助けられたのだが、神楽に掴まれたのではなく神楽の何かに掴まれていた。神楽の右手から伸びているのは鞭?だが鞭と思われる部分が幾つも分岐している。そのまま引っ張られ神楽の前で下ろされた。

 

「助かった。流石に死んだかと思ったよ。ありがとう。」

「いーえっ!てかさぁ、これすごくね〜?」

 

と言われて改めて見ると、、すごい。馬鹿みたいな一言の単語で終わらせてしまうのは惜しいくらいだが、表現が出てこない。敢えて言うならば美しい。薄く光る朱色の半透明な物質。何で構成されてるか想像もつかない。まるで生き物のような生気すら感じる。

 

「それ、何だ?」

「え〜っと、悪心之鞭撻(あくしんのべんたつ)って言ってた。」

「アクシンノベンタツ?」

 

ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!

 

トロールが此方に突っ込んでくる。

 

「慌てなくて平気だよ〜。多分コレ超つえーから〜、ニシシッ」

「舐めない方がいい。本当に強いぞ。」

「俺は、もっと強いよ〜」

 

そう言うと、右手を抱え込むように腕を回し、勢い良く腕を振るう。すると複数の鞭が二つに纏まり二体のトロールの顔面に直撃した。かと思うと首から血が吹き出て頭が飛んだ。

 

「なっ、それはロキ様の⁉︎何の真似事だ、人間風情が。神を愚弄する愚か者め。死を持って償えぇ!!」

 

トロールを一撃で沈めたからか、ネビロスが逆上した。吹き抜けで三階まである天井ギリギリまで浮遊し右手を此方に翳す。

 

「《栄光の掌腕》発するは魔針樹!串刺してくれるわぁ!」

 

右手の歪んだ空間から、白い枝の様なものが夥しい数の分岐をしながら下に迫ってくる。

 

「うわっ!すっげー!!」

「なんて面積だ。躱し様が無い。」

「負けないよ〜。焔よ、俺の一部と成れ」

「?!」

 

そう言うと神楽が、燃えた?と言うより炎を纏っている。謂わば炎の羽衣。これはまた美しい。

 

「コレ、調子いいね〜♡」

「なん、だ•••それ。」

「レントも天具と話してみなよ〜。おもしろいよ〜♡」

「おっ、おい!」

 

白い枝が幾重にも成り迫る。柄にも無く僕はテンパったが、杞憂で済んだ様だ。ネビロスの顔を見て安堵する。神楽の持つ鞭にも炎が纏い鞭が炸裂する。一気に白い枝が灰に成って行き、鞭の勢いはまだ死なない。そのままネビロスに襲いかかる。

 

「ヤったか。」

「俺強いでしょ〜♡」

「あぁ。本当に色々驚いたよ。」

[お疲れ様。車を回すから出て来て。]

 

保苅さんの声で任務の終わりが告げられた。僕は満身創痍の状態で神楽に

「肩貸そうか?」

と言われたが、顔が腹立ったので断った。そんな下りがありつつ外に出ると車が既に目の前に停まっており、乗り込んだ。車内では兎に角、保苅さんが怒っており

「なんで逃げろって言ったのに逃げなかったの!?何を楽しんでんの?相手は悪魔だって言ったでしょ?そして見たんでしょ?あり得ない出来事が起きたら怖いでしょ?人が空飛んでんのよ?しかもそれは人じゃ無くて悪魔なのよ?怖く無いの?なんなの?............」

一生続くかと思われる長い説教を受けた。それを宥める郷原。まるでチープな寸劇を見てる様な気分になったが。不思議と悪い気分では無かった。なんにせよ終わった。僕の今まで学んできたことを全否定されてる様な1日だった。そして、そのまま飛行機に乗り日本に帰るみたいだったが機内に入って座った瞬間寝てしまった。

 

飛行機が着陸する時の衝撃で目が覚めた。飛行機を降りると其処はJOGの本部に着いていた。敷地は圧巻の広さだ。なんせ飛行機を飛ばせる程の広さだ。郷原に聞くと東京ドーム5つ分と言う、なんとも聞かれ慣れた対応をされ少しイラついた。先導されるままに僕と神楽は着いて行くと、医務室に通された。そこで粗方、医者が身体を見ると肋二本と左腕が折れていた。治療を終え、車椅子が用意されていたが普通に歩けるので断った。一時間程治療に掛かりその後、案内されたのは本部司令室だった。

 

「諸君、手を止めて聞いてくれ。紹介しよう。東雲君と神楽君だ。所属は第一部隊に入れることにした。異存の有る物は居るか?」

 

•••••••パチパチパチパチパチパチパチパチ

 

含みのある間が気になったが、一応拍手で迎えてくれた。のは良いが、まだ何の話をしているか良く分から無い。紹介されるのは分かる。だが所属?なにも聞いていない。つくづく思うが此の郷原と言う男、何に関しても説明が少ない。そして遅い。訳の分から無いまま歓迎ムードで神楽は手を挙げて少し誇らしげにしている処にも少し腹が立つ。そこで所員達が郷原に挨拶を終えると直ぐに別の部屋に移動した。『殲滅部隊会議室』と書かれていた。中に入ると二人の男が椅子に座っていた。

 

「長旅ご苦労様です、長官。」

「お疲れ様です。」

「あぁ、それでだが今日から第一部隊に入る東雲君と神楽君だ。シュガーは実験室で一度会ってるな。」

 

一通り二人の男が郷原に挨拶を交わし、郷原が僕等を紹介した。そうすると僕等に目を向けてきた。シュガーと呼ばれる男は白髪混じりの眠そうな目をした、なんというかダラけた奴だ。もう一人は動くだけでビシッて言う効果音が付きそうな程の真面目そうな奴。そいつは僕達に冷たい視線を向けてくる。

 

「長官は何故、私達ではなく此の者達をお連れになりソマリアへ行かれたのですか?」

 

なるほどな。自分達が連れて行かれず、何処の馬の骨とも知れぬ小僧共が連れて行かれたのが相当不服らしい。

 

「此奴等は喚卵(かんらん)適性者だ。」

「なっ、!?」

「カンラン?何だそれは?」

「後で説明する。それに君はまだ覚醒していないだろ?《会話》もその時済ませてもらう。」

 

まただ。この人は説明が遅すぎる。恐らくは天具の事だろうが。カンランなんて聞いてすらいない。

 

「まっ、とりあえずソルト。そゆことらしいから、そう熱くなりなさんな。」

「隊長がぬるすぎるんです!喚卵なんてただの伝説かと思っていましたよ。それもこんな犯罪者が。」

「あ〜?」

「神楽。止めなよ。この人達の憤りは僕達には理解できないだろう。それに、此処で揉めても良い事は一つもないと思うよ。」

「そういう事だ。ソルトも止めろ。」

 

郷原がそう言うと。納得はいっていない顔とはいえスンナリ引き下がった。そして『犯罪者』とソルトとか言う男が言った。僕等の事はある程度情報として入っていたのだろう。それよりもシュガーとソルトって。

 

「まぁ、なんだ。こんな感じになってしまったが、一応これから俺達はチームだ。んで、俺がこの部隊の隊長のシュガーだ。よろしくなっ。それと此奴がソルト。」

「よろしくお願いします。」

 

何故か良く分からない内ににチームになってしまっている。ソルトって人の顔と言っている事の矛盾がものすごいが放っておこう。

 

「では、行くぞ。東雲君の《喚卵覚醒》をさっさと済ませてしまおう。」

「先ずその前に全ての説明を済ませてください。」

 

そうして殲滅部隊会議室を後にした。次に向かった所は地下にある、だだっ広い体育館のような場所。郷原曰くシミュレーションプラクティクスルームと言うらしい。この中で鬼との擬似戦や隊員同士の模擬戦などを行う所みたいだ。中に進み部屋の真ん中の辺りで止まると。

 

「さぁ、会話しなさい。」

「•••先ずは説明をお願いしているんですが。」

 

いきなり、シレッと何を言いだすんだ。良い加減説明の無さに腹が立って来た。

 

「そうだな。何の説明から始めようか。」

「全て納得いくようにお願いします。」

「まぁ、そうツンケンするな。じゃあ、先ずは此の組織の目的から始めよう。今、人類は、殆どの国が目紛しい発展を遂げた。そしてその発展は留まることを知らず、此の世の中は素晴らしく便利になった。だが、国が発達するということは戦争の種が増えているのと同じってことは分かるか?」

「わかりませ〜ん。ふぁぁあ。」

「僕だけ分かってれば問題無いと思うので続けて下さい。」

「そうか。要は今、何処も仲の良い国なんて無いんだ。アメリカと日本が良い例だな。そして国々の貧富の差がとても開いている、それを見た神は人間を良く思っていないんだよ。そこで人間にはこの地球は勿体無いという事で人間から地球を取り上げるつもりらしい。」

「神、、ですか。」

「そうだ。もう面倒だから疑うのはやめてくれよ。ウチは《日本鬼狩り連盟》と言ったが、これは国の上層部に対して、それと一般に公になった時、混乱を招かない為に《鬼狩り》と成っているが、実際の打倒は神だ。その神を倒し得る力を持つのが《天具》。」

「神を殺すのか?」

「殺さんし、恐らく殺せん。話しをするだけだ。だがやすやすと話を聞いてもらえなくてな。力尽くで話をしようと言う事になった。」

「ふぁぁあ。終わったら起こして〜。」

 

興味も無ければ、理解もしようとしないのだろう。ここで神楽は寝てしまった。無視しよう。

 

「天具とは何なんですか?」

「先ず天具は2種類ある。一つは《破鬼》。古に眠っていた、神器と呼ばれる、神が実際に使っていた道具をJOGの技術部が特殊加工した物だ。もう一つは《喚卵》。簡単に言えば悪魔や神の卵だ。それを体に宿し協力させる。」

「さっきの話だと、僕と神楽の天具は喚卵なんですね?」

「そうだ。」

「何の卵なんですか?」

「わからん。」

「は?」

「先に言った通り、破鬼はうちの技術部が作っている。だが喚卵はまた別のもんなんだ。崩して話すとお前ら個人個人に合ったモノを宿している。だから今の段階では全くもって皆目見当も付かん。」

「はぁ。出処を誤魔化すと言う事は話す気は無いんですね。」

「その通りだ。賢くて助かる。」

「なんとなく理解できました。ですが、協力するかどうかは僕等次第ですよね?」

「断言しておこう、君達は我々に必ず協力する。」

「なんの根拠があってそんな事を?」

「アダム•ノアー。知ってるな?」

「?!」

「神を呼び起こし神に協力している組織の名だ。そこの首謀者は君の仇なんだろ?」

「••••••••••なるほど。ふふふふっ、そうか。いいですよ。郷原さん。あなたにまんまと踊らされましょう。」

「ありがとう。」

 

見えたぞ。これで一気に夢に近づく。母さん、父さん、美月。終わったら僕もそっちに行くよ。だから少し待っててね。

 

「もう一つ。君に伝えなくてはならない事があった。」

「なんです?」

「君が捕まった理由。仲村の親分に売られたと思ってるだろうけど、それは違う。」

「!?••••あんた、何を知っている?」

「彼とは古い友人でな。君を此処に送り込む為の手段としてあんな下手な芝居まで打ったんだよ。君の仇の事を知っている彼は私との話でアダムと君の仇が繋がった事を知った。そしてこのプロジェクトの事も。君は、あの留置所の『選別』でも生き残る確信が彼にはあったんだ。何故、そんな回りくどいやり方で此処に君を送ったのかも、君なら分かるな?賢く、猜疑心の強い君だ。こんな話をされても乗らないだろう?だから敢えてそうした。そして事実、君は今此処にいる。彼は君の事を血は繋がっていなくても本当の息子だと言っていたよ。だから恨まないでほしい。彼の友人として君にお願いするよ。」

「•••••••••親父ぃ。」

 

やはりあの人は、親父は僕を捨ててなんかなかった。僕の知っている、頭が良くて、強くて、人望の厚い、格好良い自慢の親父だ。父さんには悪いけど今の僕があるのは親父が居てくれたから。親父が僕の事を愛してくれたからだ。

 

「恨んでなんかいませんよ。そうですか。なるほど、これで合点がいきます。因みに親父とはどういうご関係で?」

「親友だ。」

「親父にも、そんな人が居たんですね。」

「あぁ、彼もきっと君に会いたがっていると思うんだ。だから暫くしたら会いに行こう。私も同行したいんだが構わないか?」

「えぇ、ありがとうございます。」

 

親父に会える。それだけで僕は前を向いていられる。親父が僕にしてくれた事、僕を思っていてくれた事がとても嬉しくて、堪らなかった。そんな時に横で鼾をかいる神楽に腹が立ち、起こしがてら腹を踏んでやった。さて、《会話》に入りますか。僕の中に一体何が巣食っているのだろうか。

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