神の逆鱗 〜逆らう人間の知恵と協力者〜   作:S.Hitta.

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第2章 真の始まり 陸話 絆

 

アメリカ、ニョーヨーク。僕を含め五人の日本人がジョン.F.ケネディ空港に到着した。僕と神楽のJOG入隊から早くも一年が経つ。幾つかの任務をこなして来たが、神楽以外の人間と組んで任務に出る事は無かった。基本、本部からオペレータの方から指示を貰えるので困る事も無い。そして実際、任務はとても簡単だった。事実ネビロスの一件から傷を負う事すら無かった。だが今回の任務は五人のチームで派遣された。内容は女神の捕縛。JOGの目的は神との話し合いをする為、力尽くで《主神》と会う事だが、何も本当の神様と会う訳では無く、神の協力者の人間達が神々に身体を貸し、行動をしているみたいだ。調査の結果、分かったのはその人間達は神の世界を作り終えた暁に、人から天使に昇格させると言う約定を交わしているみたいだ。もっと煮詰めた話を聞くために今回の任務が発足された訳だ。

 

「レント〜、さみーよ〜。」

「まぁ、時期も時期だからな。」

「本当に、さみーなっ!とりあえずホテルのチェックイン済まそうぜ。」

 

シュガーさん、第一部隊隊長で今回のチームリーダーだ。

 

「それでは、隊長はホテルで、私達四人は現場周辺の調査に出ます。宜しいですか?」

「いや、とりあえずはまだいんじゃね?時間はあるんだ。一旦ホテルでブリーフィング開こう。」

 

空気の読めない発言はソルトさんだ。シュガーさんはそれを暖かく拒絶した。

 

「あたし、タクシーで先行ってるわ。」

 

バタンッ

 

と言いながらタクシーを止めて言い終わった時には車に乗っていた。

花音

相変わらずの勝手さだ。任務で組むことは初めてだが本部では何度か顔を合わせている。

 

「あいつ、すげーな〜。」

「本当ですね。珍しく神楽君と気が合いましたね。」

「まぁ、悪い奴じゃねーからな。花音も悪気はねぇんだ。俺らも行くぞ。」

 

悪気が無いからタチが悪い気がするが、まぁいいか。空港から3マイル、5キロ程の所に僕達が泊まるホテルがある。四人でタクシーに乗るのは遠慮して一人で乗ろうとしたら神楽も付いて来て、二人で乗る事になった。

 

「やっぱ、ソルトうぜ〜」

「まぁ、そう言うなよ。向こうも、そう思ってるけど。」

「この仕事で不慮の事故にあってもらう〜?ニシシッ」

「そんな事したら僕は絶対に許さないよ。冗談でもそんな事言うもんじゃ無い。」

「ん〜。」

 

この一年で神楽は僕の言うことなら大概聞いてくれるようになった。逆にシュガーさんや僕以外の人からの言うことは全く聞かない。恐らくそれが原因で、僕が神楽以外の人間と組めないのだと思う。そんな話をしていたら、直ぐにホテルに着いた。ホテルは一人一部屋もらえた。フロントで鍵

を貰いエレベーターで五階に上がる。今回のチーム全員五階の部屋を借りていた。部屋に着くと荷物を置いて、息つく暇もなくiPhoneのLINEが鳴りシュガーさんの部屋にメンバー皆集結した。

 

「皆集まったな。じゃあお疲れー。とりあえず今日はブリーフィングで終わらして明日明朝から行動するつもりなんだけど、それでいい?」

「さーんせ〜」

「分かりました。」

「了解です。」

「••••」

 

神楽、僕、ソルトさんの順で答え、花音は黙している。

 

「では、真面目にブリーフィング入るぞ。今回の目的は《女神フレイア》の捕縛。フレイアはセントパトリック大聖堂から神々に報連相を行っている。其処の教会は7時から20時30分迄は一般公開されている。恐らく閉館後何かしらの方法で聖堂に侵入し祈りを入れてるみたいだ。其処を直接抑える。意見をくれ、ソルト。」

「やはり先ずは情報収集が先決かと。閉館後一時間前から張り込み、相手の出方と状況を見極めサイクルを理解した後に接触。といった所でしょうか。」

「なるほど。東雲は?」

「そうですね。僕は逆に情報収集は要らないかと、と言うのも一週間の間フレイアが来続けるかどうかがまず怪しい。そして仮に来続けていたとしても分かるのはそこで取る行動と接触している人物くらい。実際戦闘に入った場合の情報はまるで上がりません。よって、見つけ次第抑えるのが上策かと。」

「レントにさんせ〜。ちまちましてんのめんどくせーからな〜」

「そうだな。だが、そいつのサヤ(アジト)が分かるだけでも寝込みを襲うという選択肢も増えるぞ。」

「隊長の言う通りです。リスクはなるべく抑えた方が良い。」

「果たしてそうでしょうか?フレイアが仮にサヤがめくれる様な馬鹿な行動を取っていたとしても、其処にフレイヤしか居ないかどうかは分かりません。」

「そうだな。見つけた一回こっきりでニューヨークでの仕事が終わってしまえば帰られてしまう。それであればその場で叩かなければ元も子もない。花音は何かあるか?」

「東雲の案で問題無いわ。」

「決まりだな〜」

「ソルト、異論は?」

「分かりました。」

 

この後細かい位置取りや突入方法をパターンDまで用意してブリーフィングを終了した。

 

「じゃあ、こんなもんかー?では明日18:00にフロントで。解散。」

「お疲れ様でした。」

「お疲れ様です。」

 

僕とソルトさんだけが挨拶をして皆シュガーさんの部屋を後にし、各々自分の部屋に戻った。今の時刻はニューヨーク時間で丁度18:00。今から二十四時間後か。とりあえず暇だから現場でも見に行くか、まだ聖堂の公開時間には間に合う。そう思い、外に出てタクシーを捕まえ乗り込む。

 

「To St. Patrick.」

「I See.」

 

タクシーを出で大聖堂に着いた。ビル群に囲まれているのだが、すごく立派な外観だ。中に入ると七時にもなるのに人は大勢いた。写真を撮る人や絵を描く人、カップルなど沢山の人間が来ていた。奥に進みステンドグラスがありとても美しい。天井は高く祭壇へ光の差し具合が綺麗だ。内心、此処での戦闘は避けたいとまで思わせる程、感銘を受けた。

 

「あなたも来てたの。」

 

急に話しかけられ、振り向くと其処には花音がいた。恐らく僕と同じ理由で此処に来ていたのだろうが、ステンドグラスからの光と祭壇からの光の当たり方で花音がとても美しく見えた。僕は22歳という年齢で女性に全く興味を持っていない。だが初めてそう思わせる様なシチュエーションだった。不覚にも一瞬目を奪われたが、そんな事おくびにも出さずに

 

「あぁ、花音も来ていたのか。」

「えぇ。美しいわね。」

「あっ、あぁ。そうだな。」

「あなたには家族はいるの?」

「何をいきなり」

「此処に来て祈りでも捧げてるのかと思っただけよ。教会とはそうゆう場所でしょう?」

「そうだな。花音は神に死者への冥福を祈る相手がいるのか?」

「えぇ。」

「そうか。」

 

恐らく僕は聞いてはならない事を聞いてしまったのだと思う。質問に答える花音の顔があからさまに深く淀んだ。僕はそれに対して放置を選んだ。実際どうしたら良いか分からなくなっただけなのだが。

 

「あなたには居ないの?」

「いるよ。君の言う通り家族だ。」

「そう。なら、ついでだからあなたの家族の冥福も祈ってあげるわ。」

「そうか。ありがとう。」

「あたしは幼馴染よ。」

「ふっ、分かった。」

 

そう言い僕達は片膝をついて両の掌を指で組み、祈りを捧げた。可笑しな話だ、明日には神を攫おうって人間が神に膝をついて自分達の大事な人を宜しくと祈る。はたから見ればとてもシュールだが、僕達は真剣に祈った。恐らく花音も。

 

「さて、行こうか。」

「えぇ。」

 

そうして外に出た。

 

「外周も見て回っとくか。」

「そうね。」

 

周りは、やはりビルに囲まれている。見通しは最悪と言っていいだろう。敷地外からの観察は出来ない。ブリーフィングで言っていた通り警備の目を欺いて敷地内に入り込むしか無いな。そんな事を考えながら暫く無言で歩いていると。

 

「レディを共にして歩いているのに、無言だなんて紳士の風上にも置けないわね。」

「!?•••いや、花音はそんなに喋るイメージが無いからな。」

 

いきなりそんな事を言われたので驚いた。またも平静を装う。

 

「あたしは、神楽とソルトが嫌いなだけ。」

「あ〜。ふふっ、そうゆうことか。と言っても僕は女の子と、こんな風に喋る事が今まで無かったからな。」

「あたしもよ。あたしはお父様の英才教育を受けて来て、あなた達と同じように軍や政府とは関係なく直接JOGに入ったの。友達すら居た事は無かったわ。」

「へぇ、僕は英才教育を受けさせてくれる人がいなかったから独学でいろんな事を学んでたよ。そうしたら友達を作る時間すら無かった。」

「あなたも大変なのね。」

「そうかな。だから今は君が嫌いな神楽が初めての友達と呼べる奴になったのかしれない。本人はそう思ってるか分からないけどね。」

「そう。ならあたしも友達になってあげる。」

「それは嬉しいな。」

「これからはあたしもあなたの事を蓮刀って呼ぶわ。」

 

初めてお互い友達と認識し合う相手との会話をした。中学の頃までは居たのだが、正味その後の人生が濃すぎたので記憶に余り残っていない。外周を周り終えて一緒にタクシー乗りホテルへ帰った。

 

「でわ、また明日。」

「えぇ。おやすみなさい。」

 

別れを告げて、部屋に戻り疲れたのでそのままシャワーを浴びた。だが、花音があんなに喋る女の子だとは思わなかった。聖堂の中での彼女がまだ頭の中に残っていて思い返していると、ふと気がついた。彼女は妹に似ていると。

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