神の逆鱗 〜逆らう人間の知恵と協力者〜   作:S.Hitta.

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柒話 潜入

目を覚ましシャワーをもう一度浴びて、着替える。今はもう任務にあたる時、黒づくめの服を着る事はなく、自由な服装で行動する。何せ隠密が基本となるのであんな服は着ていられない。なので僕は基本着慣れているスーツを纏う。前職からずっとスーツだったので、黒の革靴、スリーピースのスーツに、黒いシャツにその日の気分に合わせたネクタイをビシッと着る。そうする事で僕は仕事という感覚が強くなるのだ。今日のネクタイは黒地の青いペーズリー柄のDurbanにした。鏡を見て思ったが、結局黒ずくめだ。そうして集合の一時間前に部屋を出て神楽の部屋に行く。ノックをすると暫くして出て来る。

 

「早いね〜、おはよ〜。」

「君が、この状態だと思って早めに来たんだよ。」

 

だらし無く大口を開けて欠伸をしながら部屋に戻る。僕も中に一緒に入り準備をさせる。そうでもしないと神楽はまた寝てしまうからだ。

 

「早くシャワー浴びてきなよ。」

「ねーむーい〜」

「早くするっ!」

「分かったよ〜」

 

シャワーさえ浴びさせればこっちのもんだ。なんだかんだで三十分程かかり神楽の準備が終了し、座らせる事もせずにフロントへ降りる。すると既にソルトさんがソファに座って待っていた。

 

「おはようございます。早いですね。」

「おはよう。えぇ、昨日は早くに寝ましたからね。」

 

僕もソルトさんの対面のソファに座り、暫く待つと花音が来て、時間丁度にシュガーさんが来た。

 

「おはよう。じゃあ取り敢えず行くか。」

 

シュガーさんの一言で各々立ち上がりホテルを出る。空港からホテルまで来た様にタクシー三台で現場に向かう。三十分程で現着して、それぞれ配置に着く。ブリーフィングで割り振られた通り、僕と神楽はやはりセットで、聖堂の建物内に閉館前から潜み、シュガーさんと花音は聖堂の正面を張り、ソルトさんは敷地内の西側にある雑木に身を隠す。どう考えても僕達が一番面倒な場所に配置されている。これは個人の能力を吟味しての結果とシュガーさんは言ったが多少の悪意を感じる。

 

「さて、入ったはいいが、これからどう身を隠すかだな。神楽は意見ある?」

「んー。警備してる奴等を丁重に寝かしつける〜。」

「却下。」

「じゃあ、無い。結局いつもレントが決めるんだから、それでいいじゃんか〜。」

「じゃあ、今回は絶対言うこと聞いてよね。」

「レントの言うことは、いつも聞いてるし〜。」

「どうだか。」

 

さて、どうするか。昨日の下見でカメラの死角はほぼ無い事はわかってる。となると、従業員通路から身を隠せる場所を探すか。出来れば守衛室に入ってカメラもチェック出来れば儲けもんなんだが。それは望みすぎかな。

 

「神楽、あの人にトイレの場所を聞いて来てくれないか。」

「それくらい自分で聞けば良いじゃん。俺はお前の奴隷じゃねーぞ。」

「怒るなよ、仕事だよ。」

「ふ〜ん。」

 

不貞腐れながらも、言う事は聞いてくれた。そうして僕は神楽が聞きに行った従業員の後ろに回り神楽に場所を説明している従業員の背面から接触する。

 

「I'm sorry.」

「Unexpected.」

 

そのまま離れて、神楽を待つ。

 

「俺よく考えたら英語喋れねーぢゃんか〜」

「いや、それで良かったよ。ほらっ。」

 

神楽にそう言って従業員証を見せてやる。

 

「手癖悪いんだな〜、俺そういうのはできねーわ〜。」

「色んな勉強したからね。」

「それ、勉強でどうにかなるのかよ〜。」

 

そんな話をしながら従業員通路の扉前に到達する。

 

「僕が先に入って様子見るから、神楽はワンコール掛けたら入って来て。」

「あ〜い。」

 

そうして従業員通路の扉の脇にある電子錠に従業員証をかざし、直ぐさま後ろに放り投げる。振り向きもせずに自動扉の中に入る。カメラは....あった。ただ、此処のカメラは死角を注意して見ていればどうにかなる。さて、ここからだ。ブリーフィングの時の資料にも、此処から先は書かれていなかった。取り敢えず一本道の通路を歩いて扉に書かれた文字を見ていると、あった。《Guard room》守衛室だ。ただ中が見れないので、迂闊に入れない。

 

!!

 

と思っていたら急に扉が開いて、人が出てきた。幸い、僕は扉の影に居て、そいつは出てそのまま直進して行ったので見られていない。すかさず扉が閉まらないうちに中をざっと確認して...入る。中は十二畳程のワンルームでデスクが四つ程と、守衛が此方に一人背を向けてディスプレーの方を向いてスマートフォンを見ている。此処にカメラは...無いな。取り敢えずデスクの下に潜り込み椅子をそっと置いて違和感を無くす。そうすれば此処に座らない限りバレる事は無い。ただ、この状況で神楽を呼ぶのは得策じゃない。まぁ、どうにかなるだろう。一応、神楽にはLINEを入れておく。『取り敢えずこっちには来るな。そっちでどうにかしてくれ。』これで良いだろう。すると、『後で、一回殴らせろ』と返信がきた。既読無視。今の時刻は八時過ぎ。少し時間が掛かったが丁度良いくらいだな。

 

[こちら、シュガー。皆配置についてるか?]

[ソルト、異常無し]

[東雲、問題ないです。]

[俺、くせーよ〜]

[了解。間も無く閉館で客が帰されているから、もう直ぐで大聖堂から客が居なくなると思うんだ。気を抜かず、何かあったら報告してくれ。]

 

神楽もなんとかなってるみたいだな。

 

ガチャ

 

人が入って来たな。

 

「Get up, it's a change.」

「Oh.sorry.」

 

ん?守衛の男寝てたのか。でもこれで交代か、これから暫く人は入らなそうだな。

 

「Exert yourself for 12 hours.」

「Thanks.」

 

12時間交代は無しか。申し訳ないがこの人には眠ってもらおう。そうして、寝ていた守衛の男が部屋を出て行き、その後、暫くすると交代してきた男がテレビを見始めた。音を立てず背後から忍び寄り手刀を首元に叩く。こうすれば起きた時、何が起きたか分からなく、寝てしまったという錯覚を起こすだろう。守衛室占領完了。さて、後は何も無ければ楽だな。ディスプレーは35台、その中でも一画面に四区切りになっているものも有るので、かなりの数だ。一通り見た感じたと可笑しな所は無いな。

 

[東雲です。守衛室を奪取しました。ある程度であれば行動できると思います。]

[此方ソルト、助かります。]

[じゃあそっち行っていーの〜?]

[此方東雲、その辺回ってる守衛の人間はそこそこ居るから止めた方が良い。]

[やだ〜。]

[此方シュガー、現場の行動は個々に任せるけど、気を付けろよ。バレるのは厳禁。責任は全部俺になるんだから、勘弁しろよ。]

[了解〜♡]

 

やっぱり言う事聞かないじゃないか。毎回そうだ。しかも、勝手な行動をとった時に限って面倒な事になる。まぁ、カメラで見ていればどうにかフォロー•••ん?警備が居ない。神楽か?倒されている訳でも無いな。どういうことだ。今の今までそこら中に警備は居たはずだ。消えた?何か可笑しいぞ。

 

[此方東雲、神楽気を付けろ!何か可笑しい。]

[ターゲット発見〜♡]

 

?!

 

神楽は...居た!祭壇の真ん前に立ってる。女神は何処だ....居たっ!祭壇の上に浮いている!何処から入った?それに何故僕が気付けなかった?

 

[此方ソルト、中はどうなってる!東雲君っ。]

[神楽と女神と思われる人物が接触しています。僕は現場に急行します。後の判断はシュガーさんに任せます。]

[シュガーだ、了解。ソルトは援護、花音は敷地内の恐らくあるであろう隠し通路を探させる、俺はそのまま正面を張る、ソルト逐一報告をくれ。それと、東雲、神楽、暴れすぎんなよ。]

 

僕は心の中で頷き、現場に向かう。やはり警備の人間は居ない。何処に消えたのだろうか?恐らく女神の能力だとは思うが、だとしたらとても厄介だ。現場に着くと、既に神楽は《phase3》まで開放していた。悪心之鞭撻(あくしんのべんたつ)を両手からぶら下げ、焔の羽衣を纏い、脚には朱色のブーツの様なものが焔で形どってある。神楽の喚卵(かんらん)から孵ったのは、《狡智(こうち)の神 ロキ》。郷原曰く神クラスと呼ばれる、最高位の喚卵だと言う。

 

「レント〜、邪魔しないでね〜♡」

「分かってるよ。何度も言うけど油断は駄目だよ。」

 

取り敢えずは見に回らせて貰おう。女神はその名の通り美しい女性だ。だが、天使の様な羽が有り手には杖の様なものを持っている。交戦を見ている限り神楽一人で問題無さそうだが、女神には未知の能力を持っている可能性もある。それに一人とは限らないからな。僕も臨戦態勢に入っておこう。

 

「《アゼル》、phase1だ。力を貸してくれ。」

 

 

 




蓮刀が守衛室に潜り込む辺りの描写が難しかったです。分かりにくくてすいません。
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