神の逆鱗 〜逆らう人間の知恵と協力者〜   作:S.Hitta.

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捌話 孵化

アゼル。僕の喚卵(かんらん)から孵ったのは《凶神 アザゼル》ロキ同様、神クラスの喚卵だ。一年前の入隊当日、ある条件で、僕に力を貸してくれる事になったのだが、神楽に聞くと、ロキは『面白いから』という理由で力を貸してくれたらしい。要はアゼルは少し気難しい奴だ。今は多少打ち解けて、僕は彼の事をアゼルと呼び、彼は僕の事をレントと呼ぶ位の仲にはなれた。何しろ最初は貴様だのおいだの、名前ですら呼んでくれなかった。何故打ち解けたのかというとphase3まで開放した時くらいから『成る程、筋は良いみたいだな。』から始まって、それから良く《会話》をする様になった。僕のphase1は額に三つ目の瞳が開かれ六対の翼が生える。もはや、この時点で第三者から見て僕は人間と認識されないだろう。

 

(懐かしい顔だな。フレイヤか、まだ消されていなかった様だな。)

「アゼルと知り合いなのか?」

(あぁ、オーディンの子息を誑かし、地に堕とされたと聞いたが、また天界に戻れたみたいだな。)

「そうなんだ。強いの?」

(人間で言う所の娼婦だ。)

「答えになって無いな。」

(ロキが相手なら問題は無かろう。)

「そうか。」

 

そんな《会話》をアゼルとしてると、神楽の両手から無数に伸びる鞭が次々と女神を追い込んでいた。だが女神は杖から魔法の様な力で鞭を弾いていく。その度に

 

バチンッ!バチンッ!

 

と火花が散る。だが、はたから見て神楽の優勢は間違いない。なのにも関わらず女神は涼しい顔をしている。寧ろ疲労を見せているのは神楽の方だった。天具は力の消耗が激しい。それに加え神楽の能力は燃費が悪い。と言うよりも、喚卵の力は絶大なのだが、どれも皆、燃費が悪すぎる。僕の能力もそうだ。だが、戦い方を考えればそれなりに抑える事もできる。それでも神楽はそれをしない。と言うよりも出来ないと行った方が正しい。理由は楽しくなってしまうから、らしい。

 

「その杖ウザイね〜、面倒くさくなってきたから終わらせるよ〜」

 

疲れただけなんだろうが、大技を出すつもりらしい。

 

「神楽!周りの物は壊すんじゃない!責任は隊長なんだ!」

 

ソルトさんが大声で怒鳴る。

 

「うるせ〜、俺に指図すんな。塩野郎が。」

 

放っとくと面倒くさそうだな。

 

「神楽ーっ。その通りだから、デカすぎんのは止めてよ。前みたいに巻き込まれても困るから。」

「•••ちぇっ」

 

前の任務で、ロシアの小規模宗教団体の鎮圧と、神の捕縛に行った時、神楽の大技で僕が死にかけた事があった。それもイラついたからと言う理由だった。結局僕は《アゼル》に助けられ、phase4の開放に繋がったから、神を消してしまったが許してやった。それを思い出して、思い留まってくれたみたいだ。あの時はすごい怒られたなぁ、保苅さんに。

 

「ソルトさん、神楽がすいません。戦闘中だと尚の事、凶戦的になってしまうみたいで。」

「ふんっ、君が謝る事では無いのですよ。多少腹は立ったが、思い留まったのならそれで良い。だが、もう二度と彼とは組みたく無いですね。」

 

多少?腸煮えくり返ってるの間違いだろう。そうこうしていると、神楽が両の掌を前にかざした。すると鞭が蜘蛛の巣状に炸裂した。これはネビロスをヤった時の技を完成させたものだ。

 

「ニシシッ、死ぬなよ〜堕焔網羅(だえんもうら)

 

女神を炎の網が捕らえた。だが魔法のバリアの様なモノが女神の身体を包んで傷は付いてい無い。女神はもがくも、出る事はでき無い様で諦めた様にそのまま地面に降り立った。すると黙に徹していた女神が急に口を開いた。

 

「貴様、ロキだな。」

「ニシシッ。」

 

神楽がふっと、目を閉じた。

 

『久しいな。また俺様に捕まるとは笑える定めよ。』

 

神楽の中のロキが神楽を通して話をしている。

 

「何故貴様は人間なんぞに手を貸す?」

『俺様の行動理念は何時だって好奇心と悪戯心よ。』

「何時まで経っても青臭い事を言う。」

『クククッ、幾らほざくもお縄に付いてりゃ格好も付かんな。』

 

そんなやり取りを物珍しそうにソルトさんが暫く呆けてると、急に我に返った様に疑問を投げかけて来た。

 

「何故、悪魔や神は日本語で話すのか東雲君は分かりますか?」

「僕も同じ事アゼルに聞いたんですよ。そしたら『神は全知、故に人の作り出した言葉等、全て扱える。だが日本語ほど優秀な言語は他に無い。』との事でした。」

「そう、なんですか。あっ!」

 

[此方ソルト、隊長、任務遂行です。]

 

思い出したかの様に報告を入れる。結構テンパってるなこの人。

 

[了解。撤収するぞ。花音どうだ?]

[もう着きます。]

 

そうすると、祭壇の下から花音が出て来た。どうも隠し通路を見つけたみたいだ。

 

「これが女神ね。おいで、《夢幻魔鏡》」

 

花音がそう言うと、花音の背後に高さ五メートル程の鏡が出てきた。ビジュアルは何とも下品な無数の髑髏の縁に、吸い込まれそうな程、真っ黒な鏡面。花音の能力にしては大分、本人とのギャップが感じられる。

 

鏡制収納(きょうせいしゅうのう)

 

花音がまた、一言そう呟くと。一瞬にして女神が吸い込まれた。

 

[花音です、隊長、捕獲しました。]

[了解。聖堂から出て来たら、ちゃんと守衛の人間も元に戻しといてよ。]

[了解しました。]

 

恐ろしいな。守衛が居なくなったのは女神の能力では無く、花音の能力だったのか。一体何処に仕舞われているんだろうか。そうして、僕達は聖堂を後にしてホテルへ戻った。シュガーさんが

 

「取り敢えず、もう疲れたから、今日は解散。」

 

と言ったので部屋に戻ろうとするが、シュガーさんが何もしていない事に対して誰も突っ込まなかった。だが、しっかり神楽には

 

「俺があの時何処に居たか分かる〜?ダストボックスって書いてあった所に取り敢えず突っ込んだんだよー。お陰で未だに身体中くっせーの。約束のお返しね〜、歯ぁ食いしばって♡」

 

と言われて、僕は右フックを思いっきり顔面に食らわされた。




悪魔との会話が難しいです。もっと良い書き方は有ったのでしょうか。
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