デート・ア・ガール 士織リリウム   作:才華

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どうも、こんな駄文を読んで頂きありがとうございます。

昨日劇場版四週目を見て来ました、やっぱりしおりん可愛いです。
それと、とらのあなさんでデート・ア・ライブのクジを引いてみたらA賞、B賞が当たりました。デート・ア・ライブ様様です。


訓練開始

「んー」

 

四月十一日、まるで映画のような、非現実的体験をした翌日である。

あの後、私は別室へと移動させられ、強面のオジサマに詳細な説明と何が書いてあるか分からない多種多様な書類にサインさせられ、なにがなんだか分からないまま自宅前に送られた。

その後はともかく落ち着こうと熱いお風呂に入り、お風呂から出た後はそのまま泥のように眠りについた。

朝起きると昨日散々無理をしたせいか、身体の節々が筋肉痛であったが学校を休む訳にもいかないと思い、気力を振り絞り登校してきた。

授業も頑張って受け、ようやくの放課後である。ホームルームも終了し席で背伸びをすると不意に横に人が立つ気配があった。

 

「五河士織」

 

私はその声に顔を向ける、そこには鳶一さんが相変わらずの表情の無い顔をこちらに向けていた。

 

「えっと…なにかな?」

 

「来て」

 

私の問いに鳶一さんは一言言えば、私の手を掴む。

 

「え?」

 

私はそのまま鳶一さんに腕を引っ張られ教室から連れ出される。途中クラスメイト達が何事か、といった顔でこっちを見ていたが誰も止めてくれる人はいなかった。

鳶一さんは無言のまま私を連れ階段を上り、施錠された屋上扉前の踊場に着くとやっと手を放してくれた。

 

「えっと…鳶一さん?」

 

「昨日」

 

私が切り出そうと声を上げた所で鳶一さんがそれを遮るように私の目を真っ直ぐに、まるで逃がさない、とでもいうような目で見ながら喋りだす。

 

「なぜあんなところにいたの」

 

「え、えっと…妹が、警報が出ているのに街にいたみたいで…探しに…」

 

「そう。…見つかったの?」

 

私がそう答えると鳶一さんはぴくりとも表情を変えず言う

 

「う、うん。無事に見つかったよ…」

 

「そう。よかった」

 

鳶一さんはそう言うと、続けて言葉を発する。

 

「…昨日、あなたは私をみた」

 

「う、うん」

 

こっちが本題かな、と私は思った。当然だクラスメイトにあのような事をしている所を見られたのだから。

 

「誰にも口外しないで」

 

私は鳶一さんのその言葉に無言の首肯でかえす。

 

「それに、私のこと以外にも、昨日見たこと、聞いたこと。全てを忘れた方がいい」

 

それはきっと…あの少女の事を言っているのだろう。

 

「それは…あの女の子のこと?」

 

「………」

 

鳶一さんは無言で私を見つめてくるだけだった。

「ね、ねぇ…鳶一さん。あの女の子って…」

 

精霊の事は昨日<ラタトスク>から聞いてはいたが、私は鳶一さんに問いかけた。

昨日きいた説明はあくまでも琴里達、<ラタトスク>の見解だったし、実際に精霊達…あの少女と刃を交えた鳶一さんなら、また違った考えを持っているのではないかと思ったのだ。

 

「あれは…精霊」

 

鳶一さんは短くそう答える、そして一瞬…表情の無かった鳶一さんの瞳に怨嗟の光が宿った気がした。

 

「私が倒さなければならないもの」

 

「そ…その精霊は…倒さないといけないの…?」

 

私は鳶一さんにそんな質問をする。

すると鳶一さんは、唇を噛みしめた。

 

「…私の両親は、五年前、精霊のせいで死んだ」

 

「…えっ…」

 

予想外の、そして予想よりも遥かに衝撃的な言葉に私は言葉を詰まらせた。

 

「私のような人間は、もう増やしたくない」

 

「…そ、うなんだ…」

 

私は激しい動悸を抑え込むように、手を胸に置く。

そして今なお私を真っ直ぐ見つめる鳶一さんにもう一つ尋ねた。

 

「その…精霊とか…そういう情報って言ってしまってもいいのかな?…聞いた私が聞くのも変だけど…」

 

鳶一さんは一瞬、考え込むように黙ってしまう、そして。

 

「問題ない」

 

「だ、大丈夫なの?」

 

「あなたが口外しなければ」

 

「えっと…もし話ちゃったら?」

 

「………」

 

鳶一さんはまた一瞬だけ言葉を止める。

私は一瞬きっと捕まったりしちゃうんだろうな…などと考えてしまう。

 

「困る」

 

鳶一さんのその一言に私は一瞬ぽかんとしてしまった。

 

「え、えっと…だ、大丈夫、誰にも話したりしないから」

 

その言葉に鳶一さんはこくり、と首肯する。

その会話を最後に、鳶一さんは私から視線を外し、階段を降りっていった。

 

「はあぁぁぁぁ…」

 

私は鳶一さんの後姿が見えなくなったのを確認すると盛大に息を吐き出しながら床に座り込んだ。

 

「両親が、精霊のせいで死んだ…か…」

 

私は膝を抱え、頭を足に押し付けるようにしながら呟いた。

そして昨日の琴里の言葉と先ほどの鳶一さんの言葉が頭の中で響く。

 

(あれは怪物よ?この世界に現れるだけで空間震を起こし街を土地を破壊する災厄よ?)

 

(私の両親は、五年前、精霊のせいで死んだ)

 

「……私が、甘いだけなのかな…」

 

琴里も、鳶一さんも、方向性は違えど、確固たる信念をもって行動している。

私は…どうだろうか……。

昨日琴里の前で言ったあの言葉を…鳶一さんの前でも言えるのだろうか。

 

「はぁ……」

 

私は大きなため息を吐くと立ち上がり、スカートに付いた埃を払うと階段を降りる。

その時。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

階段下の廊下から女子生徒の悲鳴が聞こえてきた。

 

「な、なにが?」

 

私は早足で階段を降り悲鳴がした方を見る、そこには既に数名の生徒が集まっているのが見えた。

その中心、白衣を着た女性が一人、うつぶせで倒れているのが見えた、私は再び早足でそこへと向かう。

 

「どうしたの、これ」

 

「し、新任の先生らしいんだけど…急に倒れて……」

 

私が呟くと隣の女子生徒があたふたしながらそう返してきた。

 

「と、ともかく保健の先生を呼んでこないと…」

 

私はそう言い踵を返そうとする、しかしその時、倒れていた白衣の女性ががしっ、と私の足首を掴んできたのだ。

 

「ひうっ!?」

 

「……心配いらない。ただ転んでしまっただけだ」

 

そう言いながら、女性が廊下にまるでお餅のようにべったりとつけたいた顔を、ゆらりと上げる。

その顔には見覚えがあった、長い前髪と、目の下に出来た分厚く濃い隈…こんな特徴的な顔は一人しかいない筈だ。

 

「あなたは…」

 

「……ん?、あぁ、君は…」

 

――<ラタトスク>の解析官、村雨令音さんがのろのろとその身を起こす。

 

「え、えっと…どうしてこんなところで…」

 

「見てわからないかい?教員としてしばらく世話になることにしたんだ。ちなみに担当教科は物理、二年四組の副担任も兼任する」

 

身に着けていた白衣の胸元のネームプレートを示しながら、令音さんは言った。

そのすぐ上の胸ポケットからは継ぎ接ぎだらけのクマさんが覗いている。

 

「わからないですっ!」

 

私は思わず叫んでしまう、そして周りからそそがれる視線に気づく。

 

「え、えっと…この人は大丈夫みたいだから…」

 

私はそう言いながら令音さんに手を差し伸べる、令音さんは差し出された私の手を掴むとゆっくりと立ち上がる。

 

「ん、悪いね」

 

「それはいいんですけど、兎も角、歩きながら話しましょう」

 

私は周囲に気を払いながら、私はそう言う。

私は令音さんのペースに合わせ、歩きはじめる。

 

「えぇと、村雨解析官?」

 

「…ん、あぁ、令音で構わんよ」

 

「えっと…」

 

私が流石に年上の人を呼び捨てにするのは気が引けるな、と思っていると令音さんは言葉を続ける。

 

「…私も君を名前で呼ばせてもらおう。連携と協力は信頼から生まれるからね」

 

令音さんはうんうんと頷きながら、私の顔を見た。

 

「えぇと、君は…しあん、だったかな…」

 

「し、しか合ってないですよ…」

 

…信頼ってなんだろ。

 

「……さてシア、早速だが」

 

早速、妙な愛称を付けられてしまった。私が若干の呆れ顔を浮かべている事に気も留めず、続ける。

 

「…昨日琴里が言っていた強化訓練の準備が整った。君を探していたところだ。ちょうどいい、このまま物理準備室に向かおう」

 

私はその話を聞きながら、もう気にするのはよそう、と心に刻んだ。そして昨日から抱えていた疑問をぶつける。

 

「その、れ、令音さん…。訓練って一体なにをするんですか?」

 

「…うむ、一応聞くが、シア。君は同性との交際経験はあるかね」

 

令音さんの言葉に、私は一瞬でぼんっ、と音がしそうな程に顔を赤くする。

 

「あ、ある訳ないじゃないですか…」

 

私は顔を真っ赤にしたまま令音さんに告げる。当然だ、同性どころか異性とすら付き合った事ないのだ…。まぁ…男子生徒から告白された事はあるけど、その時は余りの恥ずかしさに全速力で逃げたけど…。

 

「うむ、まぁ琴里から聞いてはいたがね」

 

琴里一体なんて話をしているの…私は未だに赤みが引かない顔を手で覆いながら、そう心の中で呟く。

 

「…責めているわけじゃあない。身持ちが固いのは大変素晴らしいことだ。…だが、精霊を口説くとなるとそうも言っていられないんだ」

 

「……はい」

 

私は小さく返事をする。

と、ちょうど職員室の近くに差しかかった所だった。

視線の先、私のクラスの担任、タマちゃん先生が此方に向かって歩いてくる。

それだけならば普段と変わらない光景なのだが、タマちゃん先生の後ろに二対の赤い髪のようなものと、その根元の純白のリボンが、まるで先生から生えているような格好で出ていた。

 

「えっと…」

 

「…どうかしたかね?」

 

私がその令音さんの言葉になんと返そうか、と思ったその時、その髪とリボンの主、私の妹、琴里がチラッと前を見る様に先生の背中から姿を現す。

そして私を発見すると、表情をパァッと明るくし、目を輝かせ…。

 

「おねーちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

と大声を上げながら吸い込まれるように私に飛びついてくる。

 

「きゃっ!」

 

私は飛びついてきた琴里を上手に受け止めたが、その衝撃を受け止めきれる程の力はなく。

尻餅をつくように転んでしまう。

 

「いたたたた」

 

「おねーちゃん、おねーちゃん」

 

私はお尻の痛みで少し表情を歪めながら私の胸に顔を埋め、おねーちゃんと連呼する琴里を見る。

 

「琴里、なんで高校に?」

 

そんな疑問を口にした所で追いついてきたタマちゃん先生が話しかけてくる。

 

「あ、五河さん。妹さんが来たから、校内放送で呼ぼうとしてたんですよぅ」

 

「は、はぁ…」

 

私は返事をしながら、未だに胸に顔を埋めている琴里を見る。

琴里は来賓用のスリッパを履き、見辛いが入校証もつけているようだった。

 

「琴里、とりあえず、退いてくれないと…」

 

私は琴里にそう言うと、琴里は丸っこい目で私の顔を見たあと離れてくれた。

私は琴里が離れると、立ち上がり、乱れた制服を直す。

 

「ほーら、琴里。先生にありがとうって言ってね」

 

「おー、先生、ありがとー!」

 

私がそう言えば琴里は手を上げ元気にブンブンとふりながら言う、そんな琴里に先生はニコニコと笑いながら返す。

 

「はぁい、どぅいたしましてぇ」

 

先生はそう言うと、私に視線を向ける

 

「もうっ、可愛い妹さんですねぇ」

 

「は、はい、自慢の可愛い妹です」

 

先生は琴里と笑顔で「バイバイ」と手を振り合うと、職員室の方へと戻っていった。

 

「琴里」

 

「んー、なーに?」

 

琴里はそのまんまるな目で私をみながら首を傾げる。

うん、私の知っている琴里だ。私はそう思った。

そして私は一度、隣に立つ令音さんを見てから言う。

 

「えっと、物理準備室に行くのであってるよね?」

 

「うん!」

 

私たちは再び物理準備室に向け歩きだす、そして琴里にふと質問する。

 

「早かったね、琴里。中学校も終わったばっかりじゃないの?」

 

そう琴里の通う中学校とこの高校はそこそこ距離が離れている。

それなのに琴里はもう高校に着いているのだ。

 

「うん、途中で<フラクシナス>に拾ってもらったからねー」

 

私はえーっといった表情を浮かべる、こんなところで普通に艦の名前を出してもいいのだろうか。

実は自分が知らなかっただけで実はオープンな組織なのだろうか、とか考えていると、琴里が手を掴んでくる。

 

「それよりほら、おねーちゃん。早く行こ!」

 

そう言うのが早いか琴里は私の手を引っ張り先導するように廊下を進む。

なんで高校の間取りを知っているんだろう。等と私が疑問に思っているうちに目的地である、東校舎四階の物理準備室に到着する。

 

「さ、入ろー、入ろー♪」

 

琴里が某七人の小人が口ずさむリズムでそう言うと、まるで勝手知ったるとばかりに扉を開き中へと入って行き、私も琴里に続いて部屋に入る。

 

「…えっと」

 

「……何かね?」

 

私の言葉に、令音さんが首を傾げる。

 

「…何ですか、この部屋」

 

私がそう思うのも無理は無いだろう、私は物理準備室に入ったことはないが。

多数のコンピュータに大小の数々のディスプレイ、他にもなんだかよく分からない機械で埋め尽くされている。

 

「…部屋の備品さ?」

 

なんで疑問符なんですか、とか。前の備品は、先生は等という質問も飲み込み。もう何を言ってもダメだと諦めた。

そんな私を他所に琴里は髪を括っていた純白のリボンを外すとポケットにしまい、代わりに漆黒のリボンを取り出し手早く髪を括る、そしていつの間にか用意されていた椅子にどかっと座る。

そして持っていた鞄から小さなバインダーのようなものを取り出す。中には綺麗に多種多様なチュッパチャプスがセットされていた。

そしてその中から一本選ぶと口に入れ、まだ入り口に立っている私に見下すような視線を向ける。

 

「いつまで突っ立っているのよ、士織。もしかしてカカシ希望?やめときなさい。あなたじゃ逆に悪い虫が寄ってくるだけよ」

 

私は豹変した琴里を見て、顔を手で覆った。

恐らくリボンを変えるのが性格を変えるスイッチにでもなっているのだろうか。

 

「それで…琴里、訓練ってなにをするの?」

 

「いいから、とっとと来て座りなさい」

 

私は扉を閉めると琴里の前に用意された椅子に腰かける。

 

「それでは早速訓練を始めよう」

 

椅子に腰かけたのと同時に令音さんがそう言いいくつもあるディスプレイの内一つの電源を入れる。

すると画面にPresented by Ratatoskrと表示される。数秒後、明るくポップなメロディと共に何人もの女の子が順繰りに登場し、最後に「恋してマイ・リトル・シオン」というロゴが表示される。

 

「えっと…これは…?」

 

「……恋愛シミュレーションゲームと言うやつだ」

 

「……」

 

私はその言葉に額に手をあてる。

まさかのゲームだった、本当に訓練なのだろうか。

そんな私に琴里がチュッパチャプスを向け告げる

 

「訓練の第一段階よ、それに市販品じゃないわ。<ラタトスク>総監修で作ったものよ。現実に起こりうるシチュエーションをリアルに再現してあるわ。ちなみに十五禁よ。あぁなんなら十八禁もあるわよ」

 

「あぁ…」

 

成程、先程映ったPresented by Ratatoskrの文字は偶然とかでは無かったのかと思った。

ていうか、琴里。十八禁は駄目だよ。私十六歳だよ。

 

「……ん、ではシア、始めてくれたまえ」

 

横に立つ令音さんがそう言ったので私はコントローラーを持ち、はじめからを選択する。

 

「おはよう、お姉ちゃん!、今日もいい天気だね!」

 

そんなセリフと同時に綺麗なCGが表示される。

主人公の妹キャラだろうか、小柄な少女が煽りの構図で描かれている。

そしてパンツを丸見えにしながら主人公を踏んでいた。

 

「ないよ!?」

 

私は思わずコントローラーを投げそうになる。

 

「…どうしたねシア。何か問題でも?」

 

「現実にこんなシチュエーション起こりませんよ」

 

「いいから、進めなさい、士織」

 

「うぅ…」

 

琴里に言われた私は理不尽さを感じつつもゲームに戻る。

しばらくテキストを進めていくと、画面中央に三つの四角い枠に囲まれた文字が表示される。

 

「えっと、これは」

 

「選択肢よ。この中から主人公の行動を一つ選ぶの。それによって好感度が上下するから注意するのよ」

 

「なるほど…」

 

よく見れば画面右下にゼロの位置にカーソルがついたメーターのようなものが表示されていた。

それを確認すると私は選択肢を確認する。

 

① 「おはよう。愛してるわリリコ」愛を込めて妹を抱きしめる。

② 「起きたわ、ていうか思わず濡れちゃったわ」妹をベッドに引きずり込む。

③ 「かかったな、アホが!」踏んでる妹の足を取り、アキレス腱固めをかける。

 

「なに、この選択肢!?」

 

思わず叫ぶ。

 

「何でもいいけど、制限時間つきよ」

 

確かに選択肢の枠下に表示されている数字がどんどん減っている。

私は比較的マシな選択肢の①を選ぶ。

 

「おはよう。愛してるわリリコ」

私は妹のリリコを、愛を込めて抱きしめる。

すると、リリコは途端に顔を侮蔑の色に染め、私を突き飛ばす。

「え…なに、そんなシュミがあるの?、やめてくんない?キモいんだけど」

 

そして好感度メーターがマイナス五十まで急降下する。

 

「妹でも急に抱き付いて、そんな事言ったらそうなるわよ、ゲームじゃなくて本番だったら士織のお腹には綺麗な風穴が開いてるわよ?」

 

そんな事言われてもどうしろと、私は嘆きたくなったが、令音さんがいつの間にか手に洗濯籠を持って立っていた。そして琴里がやれやれと息を吐きながら、琴里が洗濯籠を指さしながら言う。。

 

「ペナルティよ、一枚脱ぎなさい」

 

「……えっ?」

 

その言葉に私は思わずコントローラーを落としてしまう。

そして汗をだらだらと垂らしながら、嘘だよね、という視線を込めて琴里を見る。

しかし返ってきた返事は無情なものであった。

 

「聞こえなかったの?、脱げって言っているの」

 

やっぱり聞き間違いでは無かった、茫然とする私を他所に琴里は言葉を続ける。

 

「いい?、実戦ではあなたが失敗すれば士織、あなただけでなく私たちも狙われる危険があるのよ、という訳で緊張感を持ってもらう為にペナルティを科すことにしたの」

 

「お、お家なら兎も角、ここ学校だよ!」

 

私は必死に言い縋るが琴里はまるで意に介さない。

 

「それともなに、見られる方が好き?なんなら生徒を呼んでくるけど」

 

そう言われたら、流石に脱ぐしかなかった…。

 

十数分後…。

 

そこには一糸まとわぬ姿となった士織が涙を流し、大事な所を両手で隠しながら座りこんでいた。

 

「ぐすっ…えっぐ…もういやだよぅ…」

 

あれから幾多もの選択肢を選ぶたびにゲームのキャラクターに罵詈雑言を浴びせられ、琴里に服を脱がされた。

 

「まさか、ここまでとは思わなかったわ」

 

琴里も若干呆れ顔を浮かべている、指に私のパンツを引っかけクルクルと回しながら。

 

「はぁ、仕方ないわね。」

 

琴里はそう言うと回収していた私の制服を投げ渡してくる。

 

「服は着ていいわ」

 

私はしゃくり上げながら、ありがとう、と言い制服を身に着け始める。

 

「ともかく、このゲームをクリアする事が目標よ、頑張りなさい」

 

――――

 

「……終わった」

 

ENDと表示された画面を見つめ、私は呟いた。

琴里と令音さんの放課後強化訓練が開始されてから休日を含め、十日。

私はようやくハッピーエンドを迎えたのだ。

…それまでに幾つものトラウマを抱えそうになったが…。

 

「…ん、まぁ少し時間は掛かったが、第一段階はクリアとしておくか」

 

「ま、一応全CGもコンプしたみたいだし、とりあえずは及第点といった所かしらね。…とはいっても、あくまで画面の中の女の子に対してだけだけど」

 

背後に立ち、スタッフロールを眺める琴里と令音さんが、息を吐くのが聞こえる。

 

「じゃ、次の訓練だけど…もう生身の女性にいきましょ。時間も押してるし」

 

「…ふむ、大丈夫かね」

 

「平気よ、失敗しても士織に近づく悪い虫が減るだけだから」

 

私の後ろで琴里と令音さんが不穏な話をしている。

だが疲れきっている為に右から左へとすり抜ける。

 

「それで、士織。次の訓練なんだけど」

 

「もう、何を言われても驚かないよ…」

 

「そうね…誰がいいかしら」

 

ちょっとまって琴里、誰ってなに?

 

「…そうだね。無難に、彼女などどうだろう」

 

令音さんが琴里と一緒に見ていたディスプレイの右端を指す。

そこには担任のタマちゃん先生が映っていた。

 

「…あぁ、なるほど。いいじゃない、それでいきましょう」

 

琴里は邪悪な笑みを浮かべる。

そしてその表情のまま私に向く。

 

「…シア。次の訓練が決まった」

 

「…どんな訓練ですか」

 

私はもう服をひん剥かれたりしなければなんでもいいや、などとすら思っていた。

 

「…あぁ。本番、精霊が出現したら、君は小型のインカムを耳に忍ばせて、こちらの指示に従って対応してもらう事になる。一回実戦を想定して訓練しておきたかったんだ」

 

「私はなにをすれば?」

 

「…とりあえず、岡峰珠恵教諭を口説いてきたまえ」

 

「えっ…?」

 

「何か問題でもあるの?」

 

琴里が意地の悪い顔を浮かべ言ってくる。

 

「だだだ、だって先生だよ!」

 

「本番ではもっと難物に挑まなきゃならないのよ?」

 

「う、それは…そうだけど」

 

だけど担任の先生をだなんて、毎日会うんだよ…。

そんな事を考えていると、令音さんがぽりぽりと頭をかきながら言う

 

「…最初の相手としては適任かと思うがね。恐らく君が告白したとしても受け入れはしないだろうし、ぺらぺらと言いふらしたりもしなさそうだ。…まぁ、君がどうしても嫌だというのならば女生徒に変えてもいいが…」

 

「……先生でお願いします」

 

私はそう答えるしかなかった、確かに令音さんの言う通りタマちゃん先生ならそう言った対応をしてくれるだろう。

 

「…よし」

 

令音さんは小さく頷くと、机の引き出しを開け、中から小さな機械を取り出し、私に渡してくる。

次いでマイクと、ヘッドフォン付の受信機らしきものを机の上に置く。

 

「これは?」

 

「…耳につけてみたまえ」

 

私は令音さんの指示通り渡された機械を右耳にはめる。

すると令音さんはマイクのスイッチを入れ、囁くように唇を動かす。

 

「…どうかね、聞こえるかな?」

 

「ひゃっ」

 

耳元で令音さんに直接囁かれたような声が響く。

令音さんはそれを確認すると、コクリっと頷く。

 

「よし、ちゃんと通っているね。音量は大丈夫かい?」

 

私は首肯しする。令音さんは続いてヘッドフォンを耳に当てる。

 

「…ん、うむ。こちらも問題ないな。拾えている」

 

「こんなに小さいのにマイクまで付いているんですか?」

 

「…あぁ、高感度の集音マイクが搭載されている。ノイズの自動除去に加えて、必要な音声だけをこちらに送ってくれるスグレモノだ」

 

「す、すごいですね…」

 

人差し指の先から第一関節までくらいしかなかったのにそんなに機能が付いている事に感嘆の色をのせて言う。

私がそんな事を言っていると、琴里が机の奥から、もう一つなにか小さな物を取り出し、指で弾く。弾かれたものは床に落ちることなく、まるで虫のように羽ばたき空中に留まる。

 

「こ、これはなんですか」

 

「…見たまえ」

 

令音さんはそう言うと目の前のディスプレイの表示を切り替える。

そこには琴里と令音さん、そして私の姿が映し出されている。

 

「これって…カメラ…ですか?」

 

令音さんは首肯する。

 

「…超小型の高感度カメラだ。これで君の後を追う。虫と間違えて潰さないようにしてくれ」

 

「はぁ…」

 

私がすごいなーと思っていると、後ろの琴里が突然私のお尻をぺちっ、と叩く

 

「ひうっ!」

 

「何でもいいから早く行きなさい。ターゲットは今、東校舎の三回廊下よ、早くしないと機会を逃すわ」

 

琴里に言われれば、私は物理準備室を出て階段を下る、そして令音さんの指示の下、廊下を早足で移動する。

そしてようやく曲がり角を曲がる目標のタマちゃん先生の後ろ姿を見つけた。

私も後を追い曲がり角をまがろうとする、瞬間。

 

「きゃっ!」

 

「………!」

 

私は曲がり角の先から歩いてきた生徒とぶつかり、お互い転んでしまう。

 

「いたた…、ご、ごめんなさい。大丈夫ですか?」

 

私はそう言いながら身を起こし、ぶつかってしまった人を見る。

 

「あ…」

 

私はぶつかってしまった人を見て驚きの声を上げる。

何しろぶつかった人はあの鳶一さんだった。

鳶一さんは転んでしまった拍子に尻餅をついてしまったのだろう、ちょうど私の方に向かってM字開脚をしていた…あと、パンツ見えてるよ。

鳶一さんはさして慌てた様子もなく普段通りの調子で

 

「平気」

 

と、一言だけ言って立ち上がった。

 

「どうしたの」

 

次いで鳶一さんはそう私に尋ねてきた。

多分、急いでいた理由を聞いているのだろう、しかし流石に素直に先生を口説く為に追いかけてました…なんて言えない。

私が上手い理由を考えていると、右耳に琴里の声が響く。

 

『ちょうどいいわ、士織。彼女で訓練しましょう」

 

「え…えぇっ!!」

 

突然大声を出した私に鳶一さんは首を傾げる。

そして琴里は言葉を続ける。

 

『やっぱり同年代のほうが、訓練にはピッタリでしょう。それに精霊とは言わないまでもAST要員。なかなか参考になりそうじゃない。見る限り、彼女も周りに言いふらすタイプとは思えないけど?」

 

確かに彼女の性格などからしてそう言った事はしないだろう。

私が琴里の言葉に困惑していると、私を見つめていた鳶一さんが口を開く。

 

「五河士織」

 

「は、はいぃ!」

 

琴里に言われた直後だった為、上ずった声を上げてしまう。

鳶一さんは私の膝に視線を向けていた。

その視線の先を見れば、先程転んだ時擦りむいたのか少し血が滲んでいる。

 

「手当する」

 

鳶一さんは私が返事をするよりも前に、私の前に跪き、膝に顔を近づける、舌を出しながら…。

 

「ななななな、なにしてるんですか!?」

 

私は顔を真っ赤にし飛び上がるように後ずさる。それを見た鳶一さんは首を傾げる。

 

「なにって、手当」

 

そう言いながら素早い動作で私の足に再び迫る。

そして今度は逃がさないとばかりに私の足をがしり、とホールドする。

 

「は、離してください!」

 

「駄目、早く手当しないと」

 

そして鳶一さんはゆっくりと私の膝に舌を触れようとする瞬間。

 

ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

 

あたりに警報が響き渡り、鳶一さんは瞬時に私から離れる。

 

「急用ができた。また」

 

そう言い踵を返すと廊下を走っていってしまった。

 

「助かったの…かな…」

 

私はへなへなとその場に座り込み呟く。

ほどなくして、インカムから琴里の声が聞こえてくる。

 

『士織、空間震よ。一旦<フラクシナス>に移動するわ。戻りなさい』

 

「やっぱり、精霊?」

 

私が問えば、琴里は一拍おいてから続ける。

 

『えぇ。出現予測地点は…ここよ』

 




個人的に鳶一さんにいぢめられる士織んとか最高にくると思いますし、十香に餌付けする士織さんとかマジ聖母さんだと思いマフ。
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