東京喰種 【GLF】喰種解放戦線   作:トミナカ・ビル

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episode15:開戦

 

 新宿駅・京王百貨店前にて――。

 

 

 篠原幸紀は捜査官たちを押しのけ、かき分けてロータリーへと近づきながら、頭上で手を振ってビルの上の見張り台にいる男たちの注意を引こうとした。

 

 随行していた准特等捜査官・千之睦が手早く状況を説明する。

 

「市ヶ谷から連絡がありました。喰種に襲われ、武器を奪われた、と。喰種の軍隊はあそこにある武器と弾薬で武装して、多方向へ散らばった模様です。数は不明ですが、少なくとも6000は下らないかと」

 

 市ヶ谷のチームがどうなったのか、篠原はちらっと同僚の特等捜査官・黒磐巌のことを思った。

 

 市ヶ谷に喰種の軍隊が押し寄せたとなると、そこに配備された彼も戦っている事だろう。最悪、死んでいる可能性もある。

 

(いわっちょの所にも来たとなると、そろそろ此処にも……)

 

 そこで見張りの一人が敵の姿を見つけ、警報が鳴った。

 

 

 篠原は見張り台を二段跳びに駆け上がり、下位捜査官たちと共に武器を構えて位置に付いた。

 

「連中をバリケードに近づけるな!」

 

 篠原は部下の捜査官と警官たちに叫び、さらに声を張り上げる。

 

「本体の到着まで、出来るだけ時間を稼ぐんだ!」

 

 再びバリケードに身を寄せると、部下の千之が近づいてきた。

 

「本隊はいつ到着するんです?そんな連絡は受けていませんが」

 

 篠原は肩をすくめた。

 

 

「さぁな。私も知らんよ」

 

 

 

 **

 

 

 清水と彼の率いる喰種の軍勢は、すさまじい勢いで進撃を開始した。

 

「CCGの防衛部隊は適当にあしらっとけ!まずは武器だ!」

 

 とにかく、すべての兵士に武器を持たせるのが先決だった。

 

 清水はアリサから渡された地図に従い、都内の至るところに隠された武器庫へ向かう。

 

 警察署や自衛隊基地にある武器の保管施設も優先的に狙われた。やがて彼らはそれを探し当て、厳重なセキュリティを嚇子で強引に突破して中へ突入する。

 

「あったぞ!武器だ!拳銃もライオットシールドもある!」

 

「俺にもよこしてくれ!」

 

「誰か弾を、銃弾を持ってこい!」

 

 やがて全員に武器が行き渡ると、清水が吠えた。

 

「みんな武器は持ったな!? いくぞ!!」

 

 おう!と応える声に交じって、耳をつんざくような音が響いた。興奮した喰種の軍隊は、手に入れた銃を空に向けて乱射し始めた。

 

 この銃声が、革命を告げる鐘となるのだ―—―。

 

 

 その音は、多くの逃げることのできなかった市民たちの耳にも届いていた。だが彼らにできる事といえば、せいぜい部屋の奥で震えて神に祈ることぐらいだった。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

「偵察班が、喰種の大部隊を発見したとの連絡がありました!真っ直ぐこちらに向かってきています!」

 

 「ご苦労」と篠原は報告しに来た部下を下がらせた。

 

 ――いよいよ、“奴ら”が来る。

 

 未だに本部からは何の連絡もない。回線が混雑しているのか、あるいは喰種のジャミングなのか。

 

 どちらにせよ、本隊と連絡がつかないとなれば、事態はかなり逼迫する。

 

 

 しかし、篠原は部下たちを信じていた。

 

 

 ――彼らは持ちこたえる。いや、そうしなければならないのだ。

 

 

 篠原の指揮下では、警官たちが道路を塞ぐように大雑把なバリケードを作っていた。砂袋を積み上げて壁を作り、さらに車を倒して補強する。

 彼らは一秒の間も惜しんで必死に働いているが、その表情には隠し切れない恐怖の色が見える。

 

 無理もない。喰種の軍隊など、悪夢から現れた怪物のようなものだ。防衛ラインを一か所でも突破されれば、市民に甚大な損害が出てしまう。

 

 隅の方では新人捜査官たちが尾嚇タイプのクインケを構えているが、激しく手が震えているせいで持ち方が甘い。

 あれでは嚇子とやりあった途端に、力の差で押し切られるだろう。

 

 篠原は彼らの傍へ行き、手をしっかりと握った。

 

「大丈夫だ、訓練を信じろ」

 

 はいっと頷く若い兵士の肩を軽く叩くと、篠原は立ち上がってメガフォンを手に取った。

 

「聞いてくれ!私たちはこれまでの訓練を糧にして、今夜を乗り切る。全てを糧にして、これを生き延びる!」

 

 出来るだけ多くの人と目を合わせるように歩き、片手を突き上げて彼らを励ましてゆく。

 

「彼らは強力な武器を手に入れたかも知れない。だが、つい数分前に手に入れた武器を使いこなせるはずがない!私たちは長い間、必死に訓練を続けてきた!それは僕たちを決して裏切らない!」

 

 何人かが叫び返し、それが広がってどよめきとなった。

 

 決戦は避けられない。そしてこれは、負けられない戦いなのだ。

 

「私たちの後ろには、大勢の一般市民たちがいる!私たちは市民の盾として、彼らを守らなければならない!連中を、ここから先へ一歩たりとも通すものか!」

 

 声のこだまが消えると、篠原は通りと向き合って闇の中を見据えた。

 

 

 ―—―さぁ、来るなら来い。一歩たりとも引きはしない。

 

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