東京喰種 【GLF】喰種解放戦線   作:トミナカ・ビル

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episode20:侵入

              

 研究棟前に辿り着くと、ガラス張りの扉が閉められているのが見えた。両脇にはスーツ姿の男が2人いる。

 

 そこから少し離れた所に大型トラックが3台駐車しており、別の男が見張りに立っていた。

 

 

「お前の言う通りだ。奴ら、ここに来てやがる。それもトラック3台に兵隊を満載してだ。俺もお前も上等捜査官だが、さすがにあれだけの数を相手にするのはマズいんじゃねぇか?」

 

 暗に増援を呼ぶべきだ、と囁く丸手。しかし真戸は首を振った。

 

「君だって見ただろう? 今じゃどこの署も解放軍の対応に追われて人手不足だよ。残念だが、私たちだけでやるしかないようだ」

 

 丸手が呆れたように肩をすくめたのを肯定と受け取り、真戸は裏にあるトイレの窓を開けて建物内部へ侵入した。

 

 あっさりと侵入できたことに丸手が目を見開くと、真戸は茶目っ気たっぷりにウィンクする。

 

「マジか……」

 

「ここの窓はロック機能が壊れれてねぇ。微振動を与えると開くんだよ」

 

「ハイスクールを思い出すぜ。俺のいた高校もそうだった」

 

 真戸が入ったのを確認すると、丸手は足音を立てないよう慎重に進む。途中、半開きになった用具入れの中に、頭から胸を抉り取られた死体を2つ見つけた。

 

「随分と雑に食い散らかしてくれたじゃねぇか。食べ残しはいけませんって学校で習わなかったのか?」

 

「まったくだ。卒業できたか怪しいもんだね」

 

 ぼやきつつ、それぞれの武器を構えて周囲を警戒する二人。

 

「さてと、問題のヤツらはどこ行ったんだ?」

 

「3号ラボだ。そこの制御室にいる」

 

 迷うことなく断言する真戸。訝しげな眼を向ける丸手に、真戸は守衛の死体から何枚かのIDカードを取り出して見せた。

 

「この研究所はラボごとに違う認証カードを使っててね。ちょうど3号ラボのカードだけが無い」

 

「おいおい、ちょっと待て。いま認証カードって言ったか? どうすんだ、俺たちにはそんなモンねぇぞ」

 

 こめかみを抑える丸手に、真戸は一言。

 

 

「クインケならある」

 

 

 とだけ答えた。強行突破するつもりのようだ。

 

「要は中に入れればいいんだ。甲嚇なら強度に問題はない」

 

 大きくクインケを振りかぶる真戸を見て、丸手は今さらながらに思う。

 

 

 ――コイツ、よくこれで上等捜査官になれたな、と。

 

 

 **

 

 

 中央制御室では、いくつものノートパソコンが部屋の端末に接続されていた。大量のデータがモニター上を流れていく。ほとんどは東京都で起こっている戦場の様子であり、清水は画面を見ながら指示を出している途中だった。

 

「――ボス、侵入者です。2号ラボに通じるドアから警報が」

 

 部下の一人が清水に声をかける。振り返った清水が監視カメラの映像を見ると、そこにはクインケでドアを粉砕する真戸たちの姿が映っていた。

 

「キム、お客さんだ。出迎えに行って来い」

 

 キムと呼ばれた制服姿の男は、敬礼するときびきびとした足取りで部屋を出ていった。入口付近にいた4人の男たちもそれに続く。

 

 扉が閉まったのを確認すると清水は再びモニターに向き直り、アリサからの報告を聞いた。

 

「アリサ、状態はどうだ?」

 

「90%ってとこですね。あと15分だけ、持たせてください」

 

 

 **

 

 

 地下へと続く非常階段の踊り場で、丸手は荒い息をついて立ち止まった。ぜいぜいと肩で呼吸をしている。

 

「おい、……ちょっとタンマだ。暑くてたまんねぇよ」

 

 真戸は後ろを振り向くと、呆れたように目元の筋肉をひくつかせた。

 

「デスクワークのし過ぎで、体がなまったのかね?」

 

「俺は正常だ。お前が元気過ぎるんだよ」

 

 誰だって室温35度で湿度の高いなか走ってりゃバテるっての――丸手は多機能腕時計を見せながら、息を整えようと深呼吸を繰り返す。

 

 真戸には強がって見せたが、実のところ現場勤務は久しぶり過ぎて身体がついていかないのだ。年齢の問題もある。丸手に言わせれば、むしろ真戸の身体能力の方が異常なのだ。

 

「しゃきっとしたまえ。デキる捜査官は身だしなみも整っているものだ」

 

「そもそもデキる捜査官は泥臭い場所に来たりしねぇ」

 

 丸手はシャツの襟を掴んで団扇替わりにしながら、やっと手すりにつかまって立ち上がる。

 

「エリートってのはな、空調完備されたオフィスでコーヒー飲みながらよぉ、ハイテク機器を駆使して部下に命令を出す奴の事を言うんだ」

 

「ほう」

 

 面白そうに顔を歪める真戸。その小馬鹿にした表情にむっとした丸手が言い返す。

 

「戦力差があるのを知ってて単身敵のアジトに乗り込むなんざ、万年ヒラのやる事だ」

 

 なおも言いつのる丸手に、真戸はため息をついた。

 

「だから裏をかかれたんじゃないのかね?」

 

「うるせぇ」

 

 本当の事を言うんじゃねぇよ、と丸手は心の中で呟いた。

 

 

 **

 

 

 それから待つこと5分、やっとのことで立ち上がった丸手を背に、真戸は更に一つ下の階まで下りていく。地下4階のドアを開けようとして手を伸ばすも、ドアの反対側で物音がしたのが聞こえた。

 

「待ち伏せかッ!」

 

 とっさに隣にいた丸手を突き飛ばし、身を伏せる真戸。

 

「撃て!」

 

 同時に銃声が轟き、ドアを貫通した銃弾が真戸の脇をかすめていく。10秒の斉射の後、ドアが内側から勢いよく開いて、MP5サブマシンガンを構えた兵士が飛び出してきた。兵士は横転している丸手を見つけると、銃を向けてトリガーに指をかける。

 

 

「――こちらだよ」

 

 

 伏せていた真戸は素早くクインケを起動させ、一撃で兵士の頭蓋骨を粉砕した。2人目の兵士も慌てて銃を連射するが、真戸はクインケをうねるように展開して防御。弾はあらぬ方向へと飛んでいき、装弾数の30発を超えた時点で弾切れとなる。

 

「素人が」

 

 真戸はその隙を逃さず、クインケで足を掬い上げるようにして敵を転倒させ、その上から再びクインケを振り下ろして留めを刺そうとする。

 

 

「っ!? 真戸、よけろッ!」

 

 

 切羽詰まった様子の丸手の声に、真戸は反射的にジャンプして上の階段へと避難する。

 

 そして次の瞬間、ドアの後方で援護をしていた敵兵がカールグスタフ無反動砲を発射――榴弾の直撃を受けた階段が爆散し、煙が巻き上がった。

 

「丸手君――っ!」

 

 真戸は手すりに駆け寄ったが、爆煙のせいで丸手の姿は見えない。直撃を受けたわけでは無いので死んではいないだろうが、階段が崩れたせいで連絡を取ることは出来ない。

 

「くそ!」

 

 真戸は顔をしかめ、心底悔しそうに舌打ちをした。

 

 

 **

 

 

 その頃、制御室では清水が無線に繰り返し呼び掛けていた。

 

「キム、応答しろ。聞こえるか」

 

 返事は無い。

 

「……死んだか」

 

 清水はそう言って、部下に目で合図した。部下は頷くと、銃や嚇子を展開して部屋から出ていく。彼らの後に続きながら、清水はアリサの方を振り返った。

 

「あと10分でテレビ中継だ。抜かりはないな」

 

「映像、音声どっちもOKです。合図ひとつで日本中のテレビをジャックできますよ」

 

 よろしい、と頷いて清水はドアに手をかけた。

 

 

 今日は記念すべき日だ。CCGの欺瞞が白日の下にさらされる瞬間を、見逃すわけにはいかない。ゆえにネズミ取りは10分以内に終わらせる。

 

 

 それは決定事項だった。そして清水は基本的に、約束を破るような男ではない。

    

 




 基本的に90年代ハリウッドのアクション映画のノリで書いてます。頭の悪い展開であることは認める(キリッ)
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