東京喰種 【GLF】喰種解放戦線   作:トミナカ・ビル

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episode21:戦闘

  

 かくして真戸の予想通り、丸手は比較的軽症で済んでいた。近くにあった消火ホースの格納箱を開け、その扉を盾代わりに使う事で爆風と飛散した金属片から身を守っていた。

 

「チッ……真戸とはぐれちまったか」

 

 幸い、崩れた階段がバリケードとなってドアを塞いでいるため、敵の追撃はない。しかし同時に階段をよじ登ることも出来ないため、別の出口を探さなければならなかった。

 

 丸手はぼやきながら、ポケットをごそごとと探る。出てきたのは、死んだ警備員からとってきた認証カードだった。

 

「やっぱ何でも持っておくもんだな。備えあれば憂いなしってヤツだ」

 

 丸手は不敵な笑みを浮かべると、出口を求めて下に続く階段を降りて行った。

 

 

 **

 

 

 しばらく降りると、真戸は奇妙なものを見つけた。

 

 ――頑丈そうな金属のドアだ。どういう訳か、綺麗に吹き飛ばされている。

 

 不審に思ってそのまま足を進めると、猛烈な冷気が襲ってきた。フル稼働している冷房のせいで、フロア全体が冷蔵庫のようだ。

 

「あれは……」

 

 さらに奥に進むと、謎の答えがあった。

 

 最新鋭のスーパーコンピューターが、部屋全体を埋め尽くしている。その中の一台に近づいてみると、小さなモニタが目まぐるしく動いているのが見えた。

 

(まさか……奴らの狙いはコレなのか!?)

 

 そこにあったのは、世界最高峰のスーパーコンピュータ……情報分野で世界をリードするべく、日本政府の意地と威信をかけて作られた「最速」の演算機械。

 

(いったい何を企んでいる?)

 

 さらに近づくと、列をなしているサーバ群にいくつもの外付けハードディスクが接続されているのに気付いた。遠隔操作用の送受信機までついている。

 

 仕事に必須のスキルとはいえ、もともと真戸はさほどIT分野に詳しい方では無い。何か大掛かりな計画があるらしい証拠は掴んだものの、具体的に何がしたいのかはサッパリだ。

 

「……やはり、聞いてみるしかないな。本人たちに」

 

 多少は荒っぽくなるだろうが、それも仕方ない。真戸はハードディスクをひとつもぎ取ると、足早へドアの方へと向かった。

 

 

 **

 

 

 地下5階に辿り着くと、丸手はためらいもせず勢いよくドアを開けて中へ入り込んだ。

 

(……誰もいない)

 

 電気をつけると、そこは食堂のようだった。縦長のテーブルがいくつも並んでおり、部屋の一方が厨房と連結している。出口付近には小さな売店と、何台かの自動販売機が設置されてあった。

 

 丸手は音をたてないように注意しつつ、テーブルの向こうにあるドアを目指して歩き出す。

 

(っ……!?)

 

 その時、売店の方から微かな物音が聞こえた。丸手がとっさに後ろに身を引いた瞬間、さっきまで立っていた場所に自動販売機が着弾。

 

 

「クソッ!」

 

 

 丸手はためらうことなく銃を乱射し、カウンターを飛び越えて厨房の受け渡し口に滑り込む。マガジンを再装填し、食器返却口から相手の姿を覗きこんだ。

 

「ドブネズミが忍び込んだと聞いてどんなヤツかと思ったが、クインケすら持ってない下級の捜査官とはな」

 

 馬鹿にするような口調と共に、鱗赫を展開した喰種が姿を現した――GLFのリーダー・清水だ。背後には4人の部下を従えている。

 

 

「俺は、“上等”捜査官だ!」

 

 

 「上等」の部分を強調しつつ、丸手は舌打ちしながら喰種たちを拳銃で狙い撃つ。

 

「殺せ!」

 

 清水が命ずると、部下の喰種たちが一斉に嚇子を展開した。清水本人もは鱗赫を自在に操って、上下左右へと銃弾を回避しながら距離を詰めてくる。

 

「おらあッ」

 

 鱗赫を触手のように使い、椅子やらテーブルやらを飛ばしてくるため、丸手も狙いが付けられず弾はあらぬ方向へ飛んでいくばかりだ。

 

「チッ、これだから喰種は嫌いなんだ!」

 

 悪態をつく丸手。接近されれば、クインケを持たない捜査官など瞬殺されてしまう。しかし銃では効果が無い。

 

(どうする? あのバケモンを倒すには……!)

 

 冷静になろうと深呼吸をすると、ふいに鼻を刺すような刺激臭がした。

 

 ハッとして振り返ると、清水の飛ばしてきた椅子などの直撃を受けて、ガスの元栓についているホースが緩み、そこからガスが漏れていた。

 

「それなら…………―――ぐッ!?」

 

 丸手が走り出そうとした瞬間、喰種たちがカウンターを吹き飛ばして現れた。そのまま鱗赫を倒れている丸手に向けると、一気に突き刺そうとする。

 

 

 だが、そのまま大人しくやられる丸手ではない。クインケなどなくとも、戦いようはあるのだ。

 

「目ぇ見開けッ!」

 

 丸手は大声でそう叫びつつ、自らは真逆の行動をとる。目を精一杯閉じ、手元の閃光手りゅう弾を起動させた。

 

「んなッ!?」

 

 不意を突かれた喰種たちは、目も眩むような閃光を受けて一時的に失明する。

 

「くそっ!姑息なッ!」

 

 清水は鱗赫を振り回して厨房を滅茶苦茶に破壊するも、目標が見えないために攻撃はまるで当たらない。食器が砕け散り、砕けた瓶から漏れたオリーブオイルが足場を不安定にする。

 

 丸手はその隙に厨房の脇にあった小麦粉を手に取り、勢いよくぶん投げた。部屋中に小麦粉が舞い、視界を真っ白に埋め尽くす。

 

「カハッ!ゲホッ――先ほどから小細工ばかりッ!」

 

 ようやく視界がもどったとき、清水の目に映ったのは、大きな業務用保冷庫に入ろうとする丸手の姿だった。

 

 

「よぉ、粉じん爆発って知っているか?」

 

 

 ニヤリと笑う丸手に、ハッと気づいた時には既に時遅し。喰種たちの周りには大量に巻き上がった小麦粉とコーンスターチがあり、丸手の足元にはぶちまけられた天ぷら油。

 

「この厨房はちと大きすぎてライター程度じゃ発火点にはならんが……」

 

 丸手はそう言って点火したライターを、地面に落とした。喰種たちはとっさに脱出しようとするが、それより早くライターの火が天ぷら油に引火。燃焼された油は炎の渦となり、厨房の天井まで届く勢いで燃えがる。そして――。

 

 

 

 ――――轟音――――

 

 

 

 空中に浮遊している小麦粉に引火、燃焼が爆発的な勢いで伝播することで粉じん爆発を引きおこした。

 

「うぉぉぉぉぉおおッ!?」

 

 丸手が急いで保冷庫のドアを閉めると同時に、爆発が厨房全体に広がって衝撃波が襲った。棚や軽いレンジが吹き飛ばされ、爆発で瞬間的に強い圧力を受けた天井も音を立てて崩れてゆく。

 

 逃げようとしていた喰種の上下左右から、そうした様々な物体が雨のように降り積もっていく。それはそのまま、彼らの墓標となるだろう。

 

 

(ちとやり過ぎたか……?)

 

 やがて保冷庫のドアを開き、丸手がよろよろと這い出してくる。厨房は見るも無残な残骸となっており、まるで爆撃でも受けたかのようだった。

 

 

「厨房には、危険が一杯なんだ。――よく覚えとけ」

 

 

 キメ台詞を吐いて、丸手は厨房を後にしようとする。

 

 

 が、その時、背後の瓦礫が微かに振動して音を立てた。

 

 

「っ……!?」

 

 まさか――と思って丸手が振り向くと、突然瓦礫の山が吹き飛んだ。

 

「よくも……この私をコケにしてくれたな!」

 

 果たして中から現れたのは、全身血塗れになった清水だった。嚇子は砕け、口や目からも血を流しているが、まだ戦うつもりのようだ。

 

 

(まだ生きてやがったのか!?)

 

 

 自分のことはさておき、敵の余りのタフさに丸手は舌打ちした。喰種の方はギラギラと血走った眼で丸手を睨み、今にも飛びかかろうとしている。

 

(やばい……俺、死ぬかも)

 

 万事休す、と思われたその時、聞き覚えのある声がした。

 

 

「―—こっちを向け、クズめが」

 

 

 その男は、年齢を感じさせない敏捷さで駆けてきた。

 

「っ!? 新手がまだ生きてたか!」

 

 反応した清水が赫子をぶつけようとするも、真戸はそれより早く地面を蹴る。寸前まで彼がいた場所を鱗赫が穿つ。

 

「はっ!そんな殺気丸出しで当たるとでも!? 丁寧に攻撃場所を教えているようなものだ!」

 

 人間離れしたスピードで赫子の攻撃を楽々と躱す真戸。顔には笑みさえ浮かべている。

 

 

 決着は、一瞬だった。

 

 

 敵が体勢を立て直すより先に、その赫子の根元を刃物状のクインケで斬りつける。鱗赫クインケは柔軟だが、もろくて衝撃に弱い。その特性と弱点を理解した一撃だった。

 

 

「あがあああ―—―!?」

 

 

 相手の赫子が千切れ、血が噴き出す。喰種が怯んだその隙を逃がさず、真戸は返す手でもう一本の赫子も切り捨てる。 

 

「死ね」

 

 すかさず次の一撃を繰り出す真戸。攻撃手段を失って悲鳴を上げている相手に、真戸は容赦なくクインケを突き立てた。

 

 それで、決着はついた。




 大正義:粉☆塵☆爆☆発

 最近ちょっと減ったけど、アホなハリウッドのアクション映画の定番ですよね。作者は好き
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