ありがとうカラアゲ君。本当にありがとうカラアゲ君。
コンビニ食品だからって、全国展開しているのは伊達ではなかった。
錯乱した挙句にこっちのが美味しいですとコンビニ袋を突きつけた私、本当によくやった。
相も変わらずここはどこかも分からない森の中。
目の前には一口サイズのからあげをちまちまとを頬張っている、人を食べていた女の子。
女の子の気はそれたかもしれないけど、状況は全く変わっていない。
食事に夢中なのか、もう手は離されている。
今ならもしかしたら逃げられるのかもしれない。
逃げる? どこに、どうやって? そもそも、逃げ場なんて、あるの?
思考がそこまで至った瞬間、膝からは力が抜けて、すとんと水溜りの中に腰が落ちる。
闇に慣れた目には、少し離れたところにうち棄てられているぐちゃぐちゃの肉塊が映る。
細かな部分まで見て取ることができないのは、救いなのだろうか。
いっそ見てしまっておかしくなれれば幸せなのかもしれない。
たすけて。
気が付けば、立ち去ろうとしていた女の子の服を掴んで縋り付いていた。
いいよー。
そして女の子は、信じられないくらいあっさりとそれを受け入れてくれた。
私の頭がそれを理解するよりも早く、先生のところまで連れて行くね、と彼女は私の腕を掴んで。
飛び上がった。飛び上がったのだ。
既に森は視界の下に広がっている。
腕一本を掴まれて宙ぶらりんに運ばれて、がっしり掴まれた手首と体重のかかってる腕から肩にかけてがみしみしと嫌な音を立てている。
結構な速度で飛んでいるのか風が酷く、服の裾がぱたぱたと音を立てて舞っている。
なんで飛んでいるんだとかそもそも人って飛べたっけだとか、そんなことを考える余裕などない。
振り落とされないように掴まれていない腕も頭上に掲げ、必死になってしがみつく。
眼下の景色が森ではなくなり、掴まれている腕から感覚がなくなってきた頃、明かりが見えた。
薄暗くてももう分かる。ちょっと古臭いけど、家だ。集落だ。
女の子は集落の外れの方にある一軒家の庭に着陸した。
着地のときにちょっと足を捻ったけど、そんなものは誤差だろう。
家なのだ、集落なのだ。私は、助かったのだ。
女の子は扉を叩いてせんせーせんせーと呼びかけている。
すぐにがらがらと引き戸が開かれ、中から人が顔を出した。
暗闇に慣れた目には、室内からの逆光でシルエットだけが浮かび上がる。
角が、生えている。
私は一体何を期待していたのだろう。
人を食べ、空を飛ぶ化け物の先生が、人間なわけ、ないじゃないか。
もう、もうさ、無理だよ。
なんなのこれ。もうやだ。おうちに帰して。
死にたくない。死にたくないよ。殺さないで。食べないで。
泣き喚きながらその場に崩れ落ちる。
角の生えた誰かがこちらに駆け寄ってくるのが見えた。
影の中でも分かるような赤い瞳がこちらを向いて。
そこで私の意識は限界を迎えた。