結論から言ってしまえば、警察にお世話になるという字面のよろしくない選択は正解だった。
思いのほか自宅から近かったこともあり、失踪届けが出されていた私はすぐに保護されることになった。
そうして再開した母は私を思い切りひっぱたき、思い切り怒鳴り付け、思い切り抱きしめて、思い切り泣いた。
父は迷惑をかけるのはいいが心配だけはかけるな、と震えた声で叱ってくれる。
私も痛いほどに抱きしめられながら、ぽろぽろと涙を零した。
両親に連れられて自宅に帰り着き、晩御飯を食べてお風呂に入り、自分の部屋で眠りに着く。
そして翌日、見慣れた天井を見上げながら目を覚ましたところで、ようやく帰ってくることができたという実感が湧いてきて、またえぐえぐと泣いてしまった。
両親は何も聞かなかった。
父がもうこんなことをするなと小さく言ったのを最後に、話題に上げることもしなかった。
私としても本当のことを言ったところで信じてもらえるとは思わない。
神隠しにあって神秘に溢れた隠れ里に滞在していただなんて、そんな荒唐無稽な話、誰が信じるというのだろう。
それがきっと私のいる現実と、幻想郷という幻想の場所との本来の距離なのだろう。
念のためにと連れて行かれた病院では、骨に皹が入っているのが見つかった。
向こうで目が覚めたときからあった腕の怪我は、まだ完治していなかったのだろうか。
それとも、母に強く強く抱き締められたときに改めて折れてしまったのか。
不恰好に片腕を釣ることになってしまったけれど、これはきっと後者の傷だ。
これが愛の重さであると、そう考えることにしよう。
そして学校にも復帰する。
私の失踪は色んな憶測が流れていたらしいとは友人の言だ。
それが骨折して戻ってきたものだから、なにやらヤバ気な事件に巻き込まれたんじゃないかという方向で噂が固まりつつあるらしい。
そのせいで微妙に他人に距離を置かれるようになってしまったけれど、仲のいい友人達との関係はそのままだ。
とはいえ広がった噂というのも被害者の立場のモノだ。
数ヶ月も経たないうちに日常に埋もれ、持ちネタの一つという程度に落ち着いてしまった。
事実は小説より奇なりとは言うけれど、ハレが終わったケの日常では思い出話の一つである。
あれ以来、奇妙な出来事に巻き込まれたりすることもない。
夕暮れ時の交差点に気をつけているのも、なんだかそのうち忘れてしまいそうになる。
事故はめったに起きないから事故なのだ。
今日も明日も明後日も、変わらず昨日までの毎日が続いていく。