支配者な眷属物語   作:珈琲飲料

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(´・ω・`)出荷よー
(´・ω・`)そんなー

ようやく投稿に漕ぎつけました……今回の小説は同じくハーメルン様で活動をされている榛野春音さんとの共同制作です!ダンまちブームがまだ終わっていないことを祈っています(笑)
それでは第一話をお楽しみください!どうぞ!


1話 兎な冒険者の目的

「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているのでしょうか?」

 

「はい……?」

 

隣を歩く白髪赤目の少年がおずおずと放った言葉は当時の俺が素っ頓狂な声を上げるのに十分な威力を持っていた。

 

そもそも何だ?ダンジョンに出会い?

いまいち質問の意図を読み取れなかった俺はふと最初に浮かんだ単語を口にする。

 

「あー、もしかしてモンスターとか?」

 

「違いますよ!?」

 

うん、さすがに俺もないと思う。世界広しと言えど、モンスターとの出会いを求めて冒険者になろうとする勇者に俺はこれまでお目にかかったことがない。……しかしだ。もしかして目の前の少年は人類にとってあまりにも早すぎるその扉を、その第一人者に……

 

「絶対なりませんから!?というよりなんでボクがモンスター好きで話が進んでるんですか!?」

 

「あれ?聞こえてた?」

 

「それはもうばっちり!」

 

「まあ、わざと聞こえるように言ったしね」

 

性質(たち)悪いですよ!?」

 

「いやいや、あくまで可能性の話だから。それに……」

 

隣で大声を上げる新米冒険者の肩に手を置き、努めて優しく、そして爽やかに俺は口を開いた。

 

「どんな性癖の持ち主であれ、俺とベルはズッ友だから!」

 

「全く理解してないよこの人――――!?」

 

先刻までの萎縮は何処へやら、新米冒険者――ベル・クラネルの悲痛な叫びはモンスターの咆哮を彷彿とさせる大音量をダンジョン内に響かせた。

 

 

 

―☆―☆―☆―

 

 

 

「ふむふむ、なるほどね」

 

先ほどの大音量を聞きつけて寄ってきたモンスターを屠ること数分、いったんの落ち着きを取り戻した通路をゆっくり歩きはじめながら、ベルの話を聞く。

 

兎少年曰く、

ハーレムは男のロマン!

ダンジョンには女の子との出会いが待っている!

男として生を受けた者ならばこのビッグウェーブにいつ乗るのか? 今でしょ!

……とのことらしい。

 

 

「……馬鹿だな」

 

「そんなー!?」

 

ぼそりと俺から発せられた言葉に、出荷されそうな顔をしてベルは項垂れる。

しかし分からない話でもない。ダンジョンに潜るということは命を賭け皿に乗せることだ。

その一世一代の大勝負に勝った者だけが生き残り、対価を得る。それが今日の冒険者の在り方。ベルの言っている出会いはこのギャンブルに敗れた者、もしくは敗れそうな者の救済であろう。良く言えば絶望の淵から手を差し伸べる救世主(メサイア)、悪く言えば下心丸見えの変態野郎。

 

「いやーすまんすまん。そんな理由でダンジョンに潜るやつなんて初めて見たからさ」

 

がくりとするベルを見て、からからと笑いながら謝る。

 

「うー……だって」

 

「分かってるって。それに面白いお爺さんじゃないか」

 

ベルが持つ揺るぎない?信念はベルを育てたお爺さんの受け売りらしい。小さいころから何度も読んできた英雄の冒険譚、いつかは自分も英雄になりたい。英雄に憧れる少年がその好々爺の言葉を真に受けるまでそれほど時間はかからなかったそうな。

 

「で、アークさんはどう思いますか?」

 

話しの流れを切り替えようと、質問の答えを聞いてくるベルに俺は少々頭を悩ませた。

 

「うーん……そうだな」

 

考えたこともなかった。さっきも言ったようにダンジョンとは命を賭ける場所だ。勝ち続けなければいけない場所であり、そこに潜るのは今日も生きるという本能。はっきり言えば女の子との出会いを求めるなんて不純な動機はナンセンスだ。

 

だから俺の答えはこう

 

 

「間違っていると思う」

 

わずか数文字の短い言葉。けれどもその一言は今日の戦闘で受けたどんなダメージよりも深く、ベルに刺さっているように見えた。気のせいではないだろう。

 

「そう……ですか」

 

目に見えて落ち込む兎。その頭に手をぽんと置き、わしゃわしゃとなでながら俺は言葉を続けた。

 

「しかし正解でもある」

 

「えっ」

 

先ほどまでの暗さから急にベルはきょとんとする。

 

「目標としては間違えていると言っているんだ。今のお前は目標が先を走り過ぎて大切なものに気付いていない」

 

「大切なもの……」

 

「まずダンジョンとは俺たち冒険者にとって生きるための場所。そしてそこで勝ち続け、勝利を生命活動の一部として扱わなければならない。それこそ呼吸のように」

 

さらに続ける

 

「女の子との出会いを求めるため……いいことじゃないか。でもそれは目標ではなく生き続けるための目的にすべきだと俺は思う。そして目標が目的を追い越してはいけない。そうなるとどんな強者であれ必ず命を落とす」

 

ここはそういう場所だ。そして冒険者とはそういうものだ。

 

「目標のために走り過ぎて消えてしまったら……悲しむ相手が君にもたくさんいるはずだ」

 

違うか?という俺の問いにベルはすぐに首を振る。

 

「います。大切な方が、帰りを待ってくれてるひとが」

 

「だったら―――」

 

俺の言葉をかき消し、ベルは宣言した。

 

「強くなります!!強くなって今日も明日も生き抜いて……それから」

 

もじもじと言いづらそうにするベルに代わって俺はその続きを声に出した。

 

「ダンジョンに出会いを求める!」

 

「はい!!」

 

 

 

―☆―☆―☆―

 

 

 

数日前の言葉がふと頭を過ぎる。白髪赤目の冒険者と邂逅したときのことだ。あのときは老婆心ながらいろいろと説教じみたことを言ってしまったがあの言葉は果たして正しかったのだろうか。

 

「ギシャァアアアアア!!」

 

「っ!」

 

寸でのところでモンスターの叫び声に気付き、慌てて身体を逸らす。完全に意識がモンスターから離れていた。第一級冒険者とあろう者がまったく情けない。

 

「戦闘中は切り替えないとな」

 

頭の中に残る雑念はすべて押し込み、目の前の敵、正確には前方のモンスターの群れに意識を集中させる。新米冒険者に語り過ぎた手前、無様なまねはできない。

 

「グォオオオオオオオオ!!」

 

距離をとって武器を構えた俺に一匹のモンスターが走り出してくる。巨大な戦斧を軽々と扱う強靭な身体、並の武器では傷をつけることすら叶わぬ硬い鱗。<ドラゴノイド>と呼ばれる竜人モンスターだ。ギロリと俺を睨み付ける目の輝きは自分のことを絶対的な捕食者だと思う自信故か。

 

大鎌を水平に構え、敵が自分の間合いに入ってくるタイミングを計る。ダンジョンに迷い込んだ被食者―――俺はそう見られているのだろうが

 

捕食者(しはいしゃ)はお前ではない。

 

「はぁっ!!」

 

声と共に振りぬいた大鎌が竜人の身体を真一文字に両断。ドラゴノイドの代名詞とも言える硬い鱗に一切の抵抗を許すことなく、鎌はなめらかに竜人の身体を通り過ぎた。

吹き出す血液、黒い灰となって消滅する敵の身体を尻目に大鎌をそのまま体の周囲で回転させる。

 

「[――操りしは空間、開くは扉]」

 

大鎌を回転させることによりモンスターへの牽制を行い、同時に詠唱に入る。

 

「[魔の法則をもって我を導く抜け道となれ]!」

 

「[ラオム]」

 

詠唱が完了すると同時にモンスターだらけだった周囲の景色が切り替わる。空間魔法<ラオム>。高い集中力と魔力をもって空間を座標指定し、そこへ瞬間転移する魔法だ。

 

姿が急に消えたことにより訝しげな様子を隠せないモンスターの群れ、ちょうど群れの真後ろに<ラオム>で飛んだ俺は手を掲げ、再び詠唱を開始する。

 

「[――放て怒りを。踏みしめられし屈辱を]」

 

とにかく数が多い。それに空間魔法を使ったから魔力の消費も考えてやはりこの一撃でまとめて刈り取ったほうがよいだろう。

 

「[受けし痛みを、悲しみを具現化させ地を割る嘆きとなれ]!」

 

輝き始める左手で鎌を握り地面に突き立てる。

 

「[グランドクエイク]!」

 

直後、フロア地面が大震動とともに隆起し、崩壊する。発生した地形変動によって群れの大半は壊滅。残った数匹のモンスターはこの戦闘に勝機を見いだせなくなったのか、一目散に俺のいる方向とは逆に逃げ始めた。

 

逃げていくモンスターに深追いはかけず、撤退する様子を眺めること数十秒。沈黙したフロア内で一人佇む俺は、周囲からモンスターの気配が完全に消えたところで大きく息を吐いた。

 

「やっと終わったかぁ」

 

深層で遭遇した闘技場<コロシアム>を思わせるようなモンスターの出現ぶりに少しだけうんざりし、ポーチから液体の入った瓶を取り出す。健康とは言い難い色をした液体を一瞥すると、瓶の蓋をあけて一思いに飲み干す。

 

「……やっぱあんまり美味しくない」

 

<良薬は口に苦し>という言葉が極東のほうにはあるらしい。よく効く薬ほど苦くて飲みにくいという言葉みたいだが、俺としては「良薬なんだから味のほうも良くしてください」と言いたい。まあ、そんなことを言ってしまえばアイテムをつくってくれる生産系のファミリアを敵に回すだろうが。

 

「それにしても……」

 

改めて周囲を見回すとひどいものだった。フロアの床は大きく割れ、隆起した場所が凹凸をつくりだし、とてもじゃないが安全に通行できるとは思えない。しかしこんな状態でもダンジョンは数分あればフロアをもとの状態に戻すのだが。

 

問題はそこではない

 

ぶっちゃけダンジョンに対しては何の心配もしていない。いつものことだと割り切ってるし、実際どれだけ暴れまわってもこいつは完全にフロアを修復する力を持っている。俺が問題視しているのはダンジョンの修復機能についてだ。素早い修復能力は時としてやっかいなものとなる。

 

つまり俺が言いたいことは――――

 

「穴に落ちた魔石、回収できないじゃん……」

 

がっくりと肩を落とす冒険者、アーク・グールフィアーの小さなつぶやきは自身が空けた大穴に虚しく吸い込まれていった。

 

 

 

 




第一話、お読みくださりありがとうございます!
今回の小説は、前書きでもお話ししたように榛野春音さんと共同で作成したものです。

そんな榛野さんが執筆されている作品も大変面白いですので、これを機会にぜひ読んでみてください!

さて、今回の話は導入部分……リューさんが出てないじゃないか!と思われた方も多いと思います。申し訳ない……。

で す の で!明日も同じ時間に二話を投稿します!リューさんファンの皆様には少しお待たせする形になってしまいますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

ご意見ご感想、いつでもお待ちしております!それではまた明日お会いしましょう!

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