支配者な眷属物語   作:珈琲飲料

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またまたお気に入り登録ありがとうございます!

1話が必要なかったとか、それ一番言われてます……(汗)

今回はホームに戻ったアークの様子を書いていきます。

それでは第3話をお楽しみください!どうぞ!






3話 ファミリア

広大な面積を誇る都市オラリオは円形状の形をしており、堅牢な市壁に取り囲まれている。

円の中央には、白亜の巨塔<バベル>が天を衝かんとそびえ立ち、根元から放射状に八方の巨大な大通りが伸びている。

 

その一つ、北西のメインストリートから大きく外れた場所に、俺が所属するファミリアのホームはあった。広い敷地面積を存分に活用して築かれた長邸は少人数ファミリアである自分たちにとっては大きすぎる、という一言に尽きる。

 

「おっ、帰ってきたか」

 

門番もいない門をくぐって館の中を歩く俺に、ちょうど廊下へ出てきた獣人が声をかけてきた。

 

「相変わらずあのエルフのとこに通ってるのか」

 

「まあね。ラッセルトはこんな時間にどこか行くの?」

 

「おう!これからダチと飲みに行くんだ」

 

にかりと笑う青年の名はラッセルト・ボルブレイス。たてがみのような燃える橙色の髪が特徴の獅子獣人で、ファミリアの切り込み隊長でもある。

 

「お前もくるか?」

 

「いや、今日は遠慮しとく。また今度ご一緒させてもらうよ」

 

「おう、また今度な!」

 

やんわりと断る俺にラッセルトはもう一度笑うと足早にホームを出ていった。ダチというのはロキ様のところの狼人だろうか。文字通り一匹狼であるあの冒険者がラッセルトと肩を組んで笑っている姿を想像して、少しだけ吹き出しそうになる。

 

笑いをこらえながら歩き、自室へ向かった俺は扉に手をかけて中へ入る。そしてそのまま広い、広すぎる部屋を見渡した。部屋を飾る調度品は机やベッドなど必要最低限のものしかなく、飾り気の内装は冒険者らしいと言えるだろう。すでに見慣れている光景。

 

「で、これすらも見慣れてきた俺は疲れてるのかな?」

 

見慣れつつある光景―――ベッドの上ですやすやと寝息をたてる少女に俺は嘆息した。いつからだろうか。この少女が自分の部屋に勝手に入り込みだしたのは。

 

「んっ……」

 

そんなことを考えていると、眠りから目覚めた少女がゆっくりと瞼を開けてこちらを見てくる。

 

「……おかえり、アーク」

 

「うん、ただいま。それよりも何でまた勝手に部屋に入ってるの、リリアナ」

 

リリアナ。そう呼ばれたエルフの少女は小さく欠伸をした後に首を傾げた。

 

「……アークのベッドを、温めてた?」

 

「いや、なんで疑問形」

 

「気が付いたら、眠ってた」

 

質問に答える気はないんですか……。またもため息をつく俺にリリアナは続ける。

 

「……アークも一緒に、寝よ?」

 

「いやいや――――」

 

寝ないよ。そう言おうとした瞬間、リリアナに足を掴まれる。

 

……これはまずい。

 

だが、頭では分かっていても体にそれを反映させるのが少し遅かった。

 

「寝る、の」

 

逃げるのが遅れた俺はリリアナに足を掴まれてベッドに倒れ込む。それだけならまだ良かったのだが、エルフの少女は仰向けになった俺の上に乗っかってきた。

 

反射的に立ち上がろうとする俺の肩を、リリアナは右手で押さえつける。完璧に身動きの取れない体勢で、俺はこの状況を乗り切る策を必死に考えた。

 

無理やり押しのける―――この状態じゃ無理だな。

 

こう見えて目の前のエルフの少女は俺と同じLv.6である。それでも前衛をする俺の方がステイタスの伸びが勝っているのだが、マウントを取られているこの状況下で抜け出すのは困難であろう。

 

「今日、こそは……」

 

さらりと流れる銀髪。触れれば壊れてしまいそうな陶器のような白い肌。エルフ特有の端麗な顔が近づいてきて思考はめちゃくちゃになる。

 

「ま、待った!落ち着いて!」

 

思考停止状態から放たれた言葉は少女を止める時間稼ぎにすらならない。頬を上気させ。艶めいた吐息をもらし。青い瞳をかすかに揺らして。

 

 

ゆっくりと―――近づいて。

 

 

「アーク!帰ってるんなら稽古を―――」

 

触れる寸前のところで止まった。

 

扉のすぐそばには、顔真っ赤にさせて、手で口を覆う少女がいた。視界に入った状況を必死に飲み込もうとしているのか、目をぱちぱちさせて俺とリリアナを交互に見やっている。

 

「な、なっ……!?」

 

部屋に男女が二人きり。ベッドの上で馬乗りになっているエルフとそれをのせた青年(ヒューマン)

そんな光景を見せられた少女、セイア・アクロフが誤った結論を導いてしまうのは至極当然のことだろう。

 

「何してんのよバカ―――っ!!」

 

助かったんだ俺。聞こえる怒号と伝わる衝撃のなか、そう確信した俺は意識を手放した。

 

 

 

―☆―☆―☆―

 

 

 

「いてて……とんでもない目にあったよ」

 

「はっはっは!災難だったなアーク」

 

顔面にできた紅葉をさする俺を見て、向かいに座るドワーフは愉快だと笑った。心底楽しそうに腹を押さえている彼の横でラッセルトも苦笑する。

 

「まあまあ、大事に至らなくて良かったじゃないか」

 

「むっ……大事って、どういうこと?」

 

「い、いやそれはなんと言うか……」

 

ぷくっと頬を膨らませて不満を漏らすリリアナにそれを慌ててフォローしようとするラッセルト。そんなやりとりを見ながら今度はセイアが口を開く。

 

「し、仕方ないじゃない!あんな状況だったら誰だって勘違いするわよっ!」

 

「わっはっは!セイアにはちと早すぎたか!」

 

「ロックさんまで……。そんなんじゃないわよ!」

 

面白いおもちゃを見つけたようにセイアをからかうドワーフは、またまた大きな声をあげて笑い出した。騒がしいがいつも通りの光景である。

 

「はいはい。そろそろ始めましょうか」

 

――――鶴の一声。

 

ぱんぱんと手を叩いて主張する透き通った声に、先ほどまでの騒がしい雰囲気は急に消え去った。五人の視線が一斉に声の主へと集中する。

 

「アーク、今日の会議の内容は?」

 

ふわふわと緩いウエーブがかかった薄桃色の髪。美という言葉をそのまま表したと言っても過言ではない整った顔立ち。どこか神秘的な雰囲気を放つ女神―――ティアマトが微笑みながら会議の始まりを告げて、俺は会議の内容を話し始めた。

 

「あ、はい。今日は<遠征>についての話をしようかと」

 

遠征―――その言葉を聞いた残りの4人の表情が急に真面目なものになる。重苦しい空気が漂う中、最も年配者であるロックが口を開いた。

 

「そろそろだと思っておったが……何日後に出発するつもりじゃ?」

 

「三日後には。今日集まってもらったのはその準備をするように知らせるのと目標階層の連絡」

 

「……今回は、どこまで行くの?」

 

「五十階層を目指す。先に到達したファミリアによれば安全階層らしいから、できれば<ラオム>のマーキングをしておきたい」

 

移動距離や転移する人数によって消費魔力を変える空間魔法<ラオム>。この魔法には同時に高い集中力が要求される。その負担を軽減させるのが、魔力を流し込んだ印を特定の場所に書き込むマーキングと呼ばれる手法だ。詠唱の際に行う座標指定を省略できるので多少は魔法の発動が楽になる。

 

「前回の遠征で三十九階層にはマーキングをしているから<ラオム>でそこまで飛ぶ。その日は周囲の敵を掃討後、そこで野営。次の日から本格的にダンジョンの探索を始めることにする」

 

「俺は初日から探索を始めてもいいぜ?」

 

「やめてください、過労死してしまいます」

 

にやりと笑うラッセルトに俺は苦笑して提案を却下する。五人を同時に飛ばすとなると魔力消費も精神的負担も半端ではない。初日から探索をしないのは俺の負担が大きすぎるのが理由だ。今回は試したことのない三十九階層までの転移……俺、死なないよね?

 

「普通のファミリアなら二日かけて行く階層に一日で到達できるんじゃぞ。これ以上は何も望めんわい」

 

「……さすが、アーク」

 

豪快に笑うロックとなぜかうっとりした表情でこちらを見てくるリリアナ。緊迫した雰囲気が崩れていくなか、主神であるティアマト様が静かに口を開いた。

 

「みんなが決めたことなら私から口を出すことはしないわ。ただ、これだけは言わせて」

 

――――必ず生きて帰ってきなさい。

 

何度も聞いてきた言葉と何度も見てきた女神の微笑み。神の恩恵(ファルナ)よりもはるかにありがたい神の加護(ことば)に、俺たち五人は力強く頷いた。

 

 

 

―☆―☆―☆―

 

 

 

草木も眠る丑三つ時。俺はティアマト様の部屋へ向かい、<ステイタス>更新を行っていた。基本的にうちのファミリアは週に一度、更新をしてもらうことになっており、それ以外は個人の要望で<ステイタス>を見てもらっている。

 

「はい、終了よ」

 

服を脱いで背中を晒した状態で寝そべっていた俺は、服を着てティアマト様から更新用紙を受け取る。共通語に翻訳されている己の<ステイタス>内容に目を通した。

 

アーク・グールフィアー

 

Lv.6

 

 力:B750→756

耐久:B700→704

器用:A833→840

敏捷:A850→856

魔力:B782→790

 

≪魔法≫

 

<ラオム>

・空間魔法。

・指定した座標へ転移する。

・消費魔力は距離、転移人数に比例する。

・自分または直接触れているものしか転移できない。

・マーキング推奨

・詠唱式 [操りしは空間、開きしは扉。魔の法則をもって我を導く抜け道となれ]

 

<グランドクエイク>

・土魔法。

・範囲内に地形変動をもたらす。

・詠唱式 [放て怒りを。踏みしめられし屈辱を。受けし痛みを、悲しみを具現化させ地      を割る嘆きとなれ]

 

<――――>

 

≪スキル≫

 

<――――>

 

「うーん……」

 

能力値の上昇具合を見て、思わず唸り声が出てしまう。遠征に行った後ではないし、最近は大した探索もしてないから当然と言えば当然なのだが。

 

「アーク、あまり焦ってはだめよ?」

 

「それは分かっています。でもこうやって改めてみると情けないっていうか」

 

「あなたは十分頑張っているわ」

 

「……ありがとうございます」

 

神血を使用するために針で刺した指を布で拭くティアマト様に、少々硬く声を返す。神様が気遣ってくれているのは分かるのだが、こんなステイタスではまだまだ頼りない。

 

「……もっと強く」

 

拳をぎゅっと握り、小さくとつぶやく。まずは今回の遠征を成功させないとな。

 

 

 

 

 




第3話、お読みいただきありがとうございます!いかがだったでしょうか?

いきなりですが補足させてただきます。
アーク君のステイタスで<―――>の箇所がありましたが、物語で出てきていないスキルと魔法だったのでわざと表示させない感じにさせていただきました。
今後使っていくたびに新たに書き加えていくつもりですのでご理解よろしくお願いします。

オリキャラを複数人登場させるのが初めての試みだったので、ちゃんとキャラがつくれているか不安です。よろしければその辺のご感想をいただけたらなと思います。

ご意見ご感想いつでもお待ちしています!それでは次回、またお会いしましょう!


※追記、アビリティについて

私の調べが甘かったみたいで
I0~99 
G100~199
という感じで100ごとに変化していくみたいです。カウンターストップはSの999らしいのでアークのアビリティ数値を変更しました。

変更前             変更後

 力:B402→406         力:B750→756 
耐久:B103→105        耐久:B700→704
器用:A210→217        器用:A833→840
敏捷:A334→340        敏捷:A850→856
魔力:B150→158        魔力:B782→790






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