支配者な眷属物語   作:珈琲飲料

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お気に入り登録、感想、ありがとうございました!
特に感想がきて、テンションが上がりまくっています。本当にありがとうございます!

がっこうぐらし!が終わってしまいました。
二期を思わせるような終わり方だったので続きがあるのか気になります。
※ただし円盤の売り上げによる。

前回がちょっとした茶番みたいな感じだったので今回は割と真面目な仕上がりです。
前話が甘めとのお声をいただいたので控えめと言ったところでしょうか。
ちょっと長いですが(笑)

それでは第5話をお楽しみください!どうぞ!





5話 続 怪物祭

「本当にいいんですね、リューさん」

 

「は、はい。……大丈夫です」

 

通りを抜け出て緑地へと移動した俺とリューさんは、芝生の上に座って長い間見つめ合っていた。先ほどまで吹いていた涼風はいつしか止んでおり、それに便乗するかのように体温は上昇していく。

 

もはや身体のほうは限界に達しようとしていた。

しかし、それでも次の一歩が踏み出せない。

 

「で、でもリューさん、無理してるんじゃ」

 

「そんなことないですっ! 私自身が、望んだことですから」

 

なおも躊躇っている俺の視線から逃れるように、リューさんは顔を逸らす。上気した頬が朱く、凛としたいつもの表情は弱々しく見える。

 

「お願いですアーク。もう、迷いたくない。早く私の……」

 

そこまで言って、リューさんが上目遣いを向けてくる。熱を帯びた肌を冷まそうと流れる一筋の汗、俺の中で小さな罪悪感が芽生えてきた。

 

そうだな、こういう時だからこそ、俺の方がリューさんをリードしないと。

リューさんの決意を、その想いを尊重しないと。

 

「分かりました。じゃあ……いきますよ?」

 

「……はい」

 

きゅっと、リューさんの瞳が閉じられる。

大きく深呼吸をして、タイミングを見極める。チャンスは一瞬だ。自分にそう言い聞かせ、ついに俺は、その一線を越えるべく――――

 

 

 

――――ぱくっ。

 

リューさんから差し出された焼き菓子を一口食べた。

もぐもぐと咀嚼する俺を心配そうにリューさんは見つめる。

 

「どう、ですか?」

 

「すごくおいしいです!リューさんもどうぞ」

 

「で、では……」

 

ほっと一息ついたリューさんに、俺も手に持った焼き菓子を差し出す。一瞬固まったリューさんは促されるままゆっくり口を開くと、綺麗な桜色の唇を焼き菓子に近づけて……

 

ぱくりっ。

 

口付けするように小さく焼き菓子を食べた。

 

ああ、すごく今が充実してる。

柔らかそうな頬っぺたがむくむくと動く様子をみて、今の俺は得も言われぬ幸福感に包まれていた。

 

 

 

―☆―☆―☆―

 

 

 

「もう始まっていますね」

 

闘技場から響いてくる歓声に少し慌てたようにリューさんが口を開いた。

 

「すいません。あまりにも至福の時間だったから」

 

「もうっ……」

 

時間を忘れ、のんびりくつろいだせいで怪物祭の開演時間を過ぎてしまった俺とリューさんは、駆け足で路地裏を進んでいた。

 

「それにしてもこの道で大丈夫なんですか?」

 

「それは保障できます。何たって神様御用達ですから」

 

大通りを経由するより断然近道やで、と道化師様の言葉を再現する俺を見て、苦笑するリューさん。細く狭い神の抜け道(路地裏)は大通りから切り離されたようにまったく人気(ひとけ)がない。段々と近くなっていく闘技場施設を、俺たちは目指していく。

 

「もうちょっとで着きます――――っと?」

 

何だこの音?

耳が一瞬捉えたモンスターの咆哮らしき響きに、俺は立ち止まってあたりを見回した。気のせいか……?そう考えたが、隣にいるリューさんも怪訝そうな顔をして音の方角を探している。

 

「アークにも聞こえましたか?」

 

「はい。それも闘技場とは違う方向から」

 

やはりそうですか、と腑に落ちない表情を浮かべるリューさん。

 

お互い違和感を覚えたまま路地を進むうちに、暗かった通路に光が差し込んできた。それに合わせて大きくなってくる喧騒を聞きながら、俺とリューさんは闘技場が構える広場にたどり着いた。

 

「……やはり何かあったのでしょうか」

 

闘技場周辺の張りつめた雰囲気にリューさんが言葉を漏らす。慌ただしく動く<ガネーシャ・ファミリア>の構成員とギルド職員、その中には見慣れた神様の姿もある。

 

「ロキ様!」

 

「おっ?ティアたんとこの子やんか」

 

「何かあったんですか?」

 

ええタイミングや、と手を上げるロキ様に続けて情報を求める。それでも武器を携えて広場を走り去っていく冒険者たちを見れば何となく察しがつくが。

 

「簡単に言うと、モンスターが逃げおった。ここらへん一帯をさまよっとるらしい」

 

「なるほど。なかなか面倒なことになっていますね」

 

「やろ。で、お願いしたいことがあんねんけど……」

 

にへっと笑みを浮かべて話すロキ様の言葉(おねがい)を最後まで聞かず、俺は道化師に笑い返した。

 

「お互いガネーシャ様に貸しでも作っておきますか」

 

 

 

―☆―☆―☆―

 

 

 

「闘技場の一角、まともな足場さえない天頂部分の縁にその少女は立っていた。美しく光る金の髪を風になびかせ、街の光景を俯瞰する冒険者―――アイズ・ヴァレンシュタイン。

 

動き回る獲物を一撃で仕留めるべく狙いを定めるその鋭い視線は、まるで狩りをする野生動物そのものだった」

 

「……何を言ってるの?」

 

「えっと、状況説明?」

 

わけが分からなそうに首を傾げるアイズに向かって、俺もイノセントさを醸しつつ首を傾げてみる。……うん、この子やっぱ天然だな。ツッコミがこないというのはなかなかに寂しい。これがツッコミ不在の恐怖というやつだろうか?

 

「それよりも安全確保」

 

隣で状況説明をしていたことはどうでもよくなったのか、すぐにアイズは視線を街のほうに戻した。ついにこなかったツッコミに一抹の寂しさを感じながらも俺はアイズに話しかける。

 

「逃げたモンスターは九体らしいよ。そうだな……四体以上倒せたらご褒美をあげよう」

 

「ご褒美……?」

 

何言ってんだこの人、と言わんばかりに向けられる視線。 やだ、泣きそう。

若干折れかけている自身の心を励まして、微妙な顔をしているアイズに内心を悟られまいとその続きを伝える。

 

「また戦ってあげる。前は稽古みたいな感じになったけど、今回は―――」

 

「頑張る」

 

俺の提案に、少女は短く了承すると魔法の詠唱に入った。

 

「[目覚めよ(テンペスト)]」

 

その一言で少女の身体に風が集まり出す。長い詠唱から繰り出される普通の魔法と違い、このタイプの魔法は一言のみでその効力を発揮する。超短文詠唱魔法。

 

「[エアリエル]」

 

たしか己と武器に風を纏わせる付加魔法だったはず。あのときから魔法を取得していなければアイズが唯一使える魔法だ。

 

「っ!」

 

詠唱が終わると同時にアイズは人口の断崖から身を躍らせた。直後に蹴りつけられる壁。

弾丸の如く、眼下のモンスターへと飛び出した少女は着地と<トロール>の粉砕を両方にこなす。

 

「……俺も大概負けず嫌いだな」

 

アイズを鼓舞させるためにけしかけた勝負だったが、今のを見て不思議と負けるのを嫌がっている自分がいる。そんな己に苦笑した俺は空間魔法の詠唱を始めた。

 

 

 

―☆―☆―☆―

 

 

 

「ふんっ!」

 

「―――ガッ!?」

 

疾走とともに放った薙ぎ払いがモンスターを斬断する。振り抜きざまに感じた僅かな抵抗―――魔石の破壊を確認して、俺はすぐさま反転した。

 

「!?」

 

「なんだっ!?」

 

モンスターを相手取ろうとしていた冒険者の驚愕が耳に入ってくるなか、メインストリートを駆け抜ける。

 

<ラオム>によって転移を繰り返しながら、俺はモンスターの掃討をしていた。闘技場から街を見下ろしたときにすでに座標の確認はしてある。奇襲のように敵の前に現れてはモンスターを鎌で撫でること四回目、そろそろモンスターのほうも片付いたころではないだろうか。

 

「……終わりかな?」

 

ロキ様のところへ戻って戦況を確認しよう―――そう思ったときだった。

 

「オオオオオオオオオッ!!」

 

絶叫。

 

ことの重大さを直感させるには十分すぎる咆哮が街に反響する。鼓膜を何度も打ちすえる音に弾かれたように反応した俺は、それまでの速度をさらに上回るべく加速した。

 

「まだ残ってたか……!」

 

叫び声の方角を音の大きさと勘で割りだし、とにかく進む。徐々に大きくなっていく音、通路を何度も曲がった俺の視界にそれは飛び込んできた。

 

「なんだあれ……」

 

グロテスクな緑色。

 

細長い胴体に滑らかな体表。動物が持っている目を始めとした器官はそれに備わっておらず、若干の膨らみを帯びた頭部。

 

蛇、あるいは植物の蔓と表現するのがしっくりくる怪物がそこにいた。

 

「見たことない敵……それに苦戦中か」

 

<ロキ・ファミリア>の構成員が押され気味の状況を見て、思わず顔をしかめる。思ったよりダメージを与えられていない。アマゾネスのほうは武器がないようで格闘戦をしているが、それでも第一級冒険者の拳や蹴りだ。あそこまでダメージがないのはちょっとおかしい。

 

どのモンスターも基本的に弱点と呼ばれる場所を持っている。魔石はモンスターすべてに共通する弱点で、破壊されれば身体を構成できなくなり消滅する。冒険者なら誰でも知っている弱点の一つだろう。他には魔法に対して弱いなどモンスターによってさまざまな特徴がある。

 

見たところ物理攻撃に対してはわりと耐久があるように見える。魔法を試してみる価値はありそうだ。

 

「でも使うべきか……」

 

<ロキ・ファミリア>の団員が見ている前でとなると少々躊躇ってしまう。それに少し離れた場所でエルフの魔法使いが詠唱を始めている。

 

「[解き放つ一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり]」

 

よほど強力な魔法なのか魔力が集束していくのが分かる。これは俺が魔法を使う必要はないかな。

 

「[狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢]!」

 

うん勝ったな、風呂入ってくるか。

読み上げられた最後の韻、構築された魔法。勝手に勝利を確信した俺がそう思った直後―――

 

―――ぐるんっ。

 

それまでアマゾネスたちに向けられていたモンスターの意識と身体がエルフに向けられた。

 

「――――ぇ」

 

その異常な反応速度に、エルフの魔法使いは身体を硬直させたまま小さく声をあげた――のが聞こえた。

そして小さな絶叫が耳に入った瞬間、俺は飛び出していた。

 

間に合えっ!!

 

あらん限りの力で地面を蹴る。瞬間移動にも等しい勢いで数M(メドル)の距離を移動した俺は、背後から右手で少女の身体を抱きかかえると左手の鎌を振るった。獲物を切り裂く手応え。飛び散るモンスターの体液。触手を切り落とされたモンスターは突然の乱入者に驚愕しているのか攻撃をやめて僅かに後退した。

 

「大丈夫かい?」

 

「は、はい……ありがとうございます」

 

それはよかったと安心させるように少女に笑いかける。咄嗟に身体が動いてしまったのはこの少女がエルフだからなのだろうか。凛としたリューさんとはタイプが違うが同族の危機に身体が反射的に……うん、俺なら有り得そう。

 

「あ、あの……」

 

モンスターの様子を観察して状況を窺う俺に、エルフの少女がうわずった小さな声で呼びかける。

 

「ごめん、もう少し待って!」

 

「……ふぇ。……は、はいっ」

 

「……いやほんと申し訳な―――っ!?」

 

勝手な行動の詫びを再度告げようと顔を向け……そこでようやく自分がずっとエルフの少女を抱いたままであることに気が付いた。

 

「ご、ごめん!」

 

慌てて体を離し、詫びる。

 

「いえっ……そのっ。こ、こちらこそ助けてもらったのにすいません」

 

真っ赤になって俯くエルフの少女。ああ、申し訳ないことをしてしまった……。

 

「「レフィーヤ大丈夫!?」」

 

さてどうやって謝罪をしようかと悩んでいたところに先ほどまでモンスターと戦っていたアマゾネスの姉妹が駆け寄ってくる。ふむ、このエルフの少女はレフィーヤという名前なのか。

 

「この子は大丈夫だよ」

 

「よかった……ありがとうござい―――って<支配者(ルーラー)>!?」

 

「わあ、初めて見たかも……」

 

「<大切断(アマゾン)>と<怒蛇(ヨルムガンド)>に知ってもらえているとは光栄だね」

 

ということはレフィーヤと呼ばれていたあの少女が<千の妖精(サウザンドエルフ)>か。あの面子で苦戦する相手……潜在能力で言えばLv.5かそれ以上かもしれないな。

 

「君たち三人は下がってて。あとは俺がやるから」

 

「で、でもっ!」

 

「ティオナ、ここは任せましょう」

 

ティオナと呼ばれたアマゾネスが食い下がるのをもう一人のアマゾネスが止める。

 

「良い判断だ」

 

はっきり言って、武器も防具もない冒険者が一緒に戦っても邪魔になる。それなら始めから一人で戦ったほうがずっと戦いやすい。それに……

 

「さっきレフィーヤちゃんと一緒にモンスターの挙動は観察したからね。パターンは頭に入ってる」

 

悪戯っぽくレフィーヤに笑いかけるとさっきのことを思い出したのか、ぼんっと音を立てて少女は顔を紅くした。そろえて首を傾げるアマゾネス姉妹。

 

「じゃあ行ってくるよ」

 

予想通りの反応に満足した俺は三人に背を向ける。なおも暴れまわっているモンスターを一瞥すると、サイズを構えて飛び出した。

 

 

 

「シャァァァアアアア!!」

 

鞭のように全身をしならせ、襲い掛かってくる触手を回避しながらモンスターの懐を目指す。頭部に近い膨らみ、おそらくそこに魔石があるはずだ。すべてのモンスターに共通する弱点。それを狙えば被害は最小限に抑えられる。

 

「っ!」

 

振り降ろされた触手を躱して、無造作に地面を蹴る。Lv.6のアビリティ補正を全開にして跳躍した俺は、モンスターの頭部―――膨らみ目掛けてサイズを振るった。

 

「っ……硬いな!」

 

手応えなし。おかしいな、さっきはバッサリ切り落とせたはずなんだけど……部位によって硬いのか、それともあるいは……

 

「ふんっ!」

 

もう一度、今度はさっきより力を込めて切りつける。刃筋を目でしっかりと追い、モンスターに届くまで。刃が切り込まれるその瞬間を―――

 

「っ!……なるほど」

 

切り落とせなかった理由はこれか。斬撃が通らなくなった原因を知り、触手のように伸縮する表皮を睨み付ける。冒険者たちから受けた攻撃をもとに伸縮性のある皮膚を限界まで縮めて硬度と耐久力をあげる……これがこいつの防御力の正体。

 

戦いから学習する優れた知能を持ったモンスター……これは厄介だな。

 

モンスターのカウンターをサイズで逸らして素早く後退した俺は武器を構えなおす。

よくもまぁ、こんなのを調教(手なづけ)ようとしたものだ……。

 

「……持久戦はダメだな」

 

下手に学習の機会を与えるとこのモンスターはどんどん強くなっていく。ならばどうするか、答えは簡単だ。学習の暇を与えない一撃必殺。相手の防御力を上回る圧倒的な攻撃。

 

「お前に教えてやる」

 

―――支配者の存在を。

―――捕食されるという恐怖を。

 

目を閉じる。

必要なものは? あの敵を一撃で葬るのに何を欲する?

 

―――誰にも捉えられない速さ。

―――すべてを断ち、切り裂く力。

 

失うものは? 代償として何を捧げる?

 

―――何事にも耐えきる強さ。

―――神秘を引き起こす魔。

 

 

―――操作完了。

 

 

己を構築する力、その関係が変わったことを悟った俺は目を開けた。見据えるのは前方、存在するのは敵。

 

冒険者を退け、ことごとくを蹴散らした怪物を前に、強く握りしめたサイズを背に構える。

みなぎる力、それでいてどこまでも軽い身体を、俺はゆっくりと前に倒した。

 

「はあああああああああ!!」

 

遅い。

叩き潰さんと向かってくる触手がコマ送りのように見える。まるで自分が時を支配しているようなゆったりとした時間の流れ。頭部を守るように動く触手を今度は抵抗を許さず根元から切断する。

 

「ァァアアアアアアアア!?」

 

響くモンスターの絶叫。硬化したはずの触手が一瞬で消失したことによって敵の動きが完全に止まった。その隙を逃さず、間髪入れずに頭部目掛けて跳躍。膨らみの目の前に跳んだ俺はモンスターに向けて笑みを漏らした。

 

「終わりだ」

 

限界まで底上げされた力。フルスイングによって放たれた斬撃は目の前にある果実を両断し、本体である魔石を引き裂いた。

 

 

 

 




第5話、お読みくださってありがとうございます!いかがだったでしょうか?

なるべく原作沿いなのに<ソード・オラトリア>が絡んでくるという。なぜだ?
で、でも外伝だって一応原作だから(震え声)
<ソード・オラトリア>を読んでいると、本編ってのどかだな~と感じてしまいます。
ベルェ……。いやベル君も頑張ってるんですけどね。ロキさんのとこ半端ねえっす。

ご意見ご感想いつでもお待ちしております!
それでは次回またお会いしましょう!


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