Fate/grand order ~精神の顕現者~ 作:刃留兎
こちらに来たのは、緑の服装に、緑の帽子を被った、紳士の様な男性だった。
「君は・・・そうか、今日から配属された新人さんだね」
ニコニコと不気味にすら感じる笑顔で、話し掛けてくる。
「私は、レフ・ライノール。ここで働かせて貰っている、技師の一人だ。君の名前は?」
「神代 真です」
「ふむ、神代真君と。招集された48人の適正者、その最後の一人なのか。まあ、ともあれ、ようこそ、カルデアへ。歓迎するよ」
手を出してきたので、握手をする。するとレフが、
「一般公募の様だけど、訓練期間はどれ位だい?一年?半年?それとも最短の三ヶ月?」
と聞いてくる。頭の中で、今まで魔法というモノを使った訓練が有っただろうか。否。
「いえ。訓練はしていません。と言うよりも、魔術というモノ自体、あまり良く知らないんです・・・」
「魔術を良く知らない!?」
「マジですか、先輩!?」
「マジです」
今まで、自身が[適正]持ちだということも知らなかったので、一応パンフレットを見てきたが、サッパリだった。先のアナウンスが言っていた[フェイト]なるものも、全く知らなかった。
「ああ、そう言えば、数合わせに採用した一般枠が有るんだっけ。君はその一人、か。すまない、配慮に欠けた質問だった」
レフは、こちらの事情に気づいたらしく謝ってくる。
「だが、悲観はしないでほしい。なんせ、今回のミッションは、君達全員が必要なんだ」
「全員、ですか?」
「ああ。魔術名門から38人、才能ある一般人から10人、何とか、48人[マスター]候補を集めることが出来た。これは実に喜ばしいことなんだ。この2015年において、霊子ダイブが可能な適正者全てをカルデアに集められたのだから。じゃあ、わからない事があったら、私かマシュに・・・おや?」
そう言えば、とレフが、マシュに質問をする。
「そう言えば、彼と何を話していたんだいマシュ?らしくないじゃないか。彼と以前から、面識があったとか?」
「いえ。先輩とは初対面です。この区画で熟睡していらしたので、つい」
「熟睡、していた・・・?真君が、ここで?」
レフがこちらを見てくる。すると、気付いたように、
「ああ!さては、入館時にシュミレートを受けたね?霊子ダイブは慣れていないと脳にくる。シュミレート後に表層意識が覚醒しないままゲートから解放され、ここまで来たんだろう。まあ、一種の夢遊状態だ。丁度真君が倒れた所で、マシュが声を掛けたのさ」
そう言われてみれば、まだ少し、瞼が重い。今は話しているので眠くはないが、少し気を許すとコテンと言っちゃいそうだ。
「本当なら直ぐにでも保健室まで連れていきたい所なんだけど・・・、ごめん、もう少しだけ、我慢してくれないかい?もう時に、所長の説明会が始まる。君も、急いで出席しないと」
「説明会、ですか・・・・?」
「はい。真さんと同じく、本日付で配属されたマスター適正者の方たちへのご挨拶です」
パンフレットに載っていなかったスケジュールを、マシュが説明してくれる。レフも、その説明の手助けをしてくる。
「様は、組織のボスから浮わついた新人たちへのはじめの挨拶(しつけ)ってやつさ」
「・・・今、凄い文字変換した気が・・・」
「気にしないでくれ」
「・・・・」
挨拶の所で躾って読んでた気がするけど、まあ良いか・・・。説明会の会場である管制室の場所を教えて貰い、そこに向かおうとすると、
「教授。私も説明会への参加が許されるでしょうか」
マシュがレフに質問している。
「うん?まあ、隅っこで立ってるくらいなら、大目に見てもらえるだろうけど、どうしてだい?」
「先輩を直接管制室まで案内するべきだと思ったのです。途中でまた熟睡される可能性があるので」
「君を一人にすると、所長に叱られるからなぁ・・・自然と私も同行する、という訳か」
レフが困ったような顔でそう言う。しかし、また元のニコニコ顔に戻ると、
「まあ、マシュがそうしたいなら好きにしなさい。真君もそれでいいかい?他に質問が無ければ管制室に向かうけど、訊いておきたいことはある?」
と言う。そう言えば、聞きたい、というより気になる事があるはずだ。
「あの、何でマシュは俺の事を先輩と呼ぶんでしょうか?」
「・・・」
質問をすると、マシュが俯く。何故だか、顔が紅くなっているようにも見える。
「ああ、気にしないで。彼女にとって、君位の年頃の人は皆、先輩だ。ハッキリ口にするのは珍しい、いや、初めてかな。そう思うと私も不思議になってきたな。マシュ。何だって彼が先輩なんだい?」
「理由ですか?真さんは、今まで出会った人達の中で、一番人間らしいんです。まったく脅威を感じません。ですので、敵対する理由が皆無です」
「ほお!それは重要だ!ここに居る人間は一癖も二癖もあるからね。私も真君とは良い人間関係が築けそうだ!」
一癖も二癖もある、とは。ここは一体何なのか。
「レフ教授が気に入るということは、所長が一番嫌うタイプということですね。・・・このまま、トイレにこもってボイコット、というのはどうでしょう」
「それだとますます目を付けられる。ここは運を天に任せるべきだよ」
残り五分を切った。レフがこちらを向いてくる。
「虎口に飛び込むとしようか真君。なに、慣れてくれば愛嬌ある人だよ」
「はい。わかりました」
ここから三分掛かるらしいのだが・・・大丈夫なのだろうか。