「「「伏せろっ!!!」」」
戦車がいきなり攻撃を受け爆発した。その直後、左右の建物の窓から一斉に銃弾が飛んできた。討伐隊の兵士たちは戦車や仲間が吹き飛ばされ動揺して初動が遅れたため、次々と銃撃を受け倒れていった。
「10時…いや、13時の方向に敵っ!どこだ?!」
「ちくしょう!どこから撃ってる?!」
「足がぁ!足がぁぁぁ!」ドンッ
周囲の建物の影から銃撃を受けていたため敵の位置が判らず1人1人と徐々に倒れていった。それどころかロケット弾まで撃ってきている。
討伐隊が目の前で襲われているのを見た俺たちは救援に向かおうとしたが、、、
「止まれ」
坂巻少佐が冷たく言い放った。
「作戦変更!我々はここより脱出し、別ルートより目標地点に向かう!討伐隊に構うな」
坂巻少佐は続けてすぐさま、大通りを避けて行くよう分隊に指示を出してきた。味方をどうとも思っていない素振りだった。
「坂巻大尉!討伐隊が、仲間が襲われているのですよ!見捨てると言うのですかっ?!」
勝山は味方を見殺しにする命令に大声で抗議する。
「我々の作戦目標は重要度の高い案件だ。多少の犠牲は構わない」
「し、しかし…!」
「うるさい!上官の命令に背く気か貴様!君たちは黙って我々の護衛をすれば良い!」
坂巻少佐は拳銃を掲げて俺たちに従うように言ってきた。
「…分かりました。…分隊!そこの路地に入り、敵勢力の攻撃から逃れろ!」
「「了解!」」
「2人とも、遭遇したときのためにいつでも撃てるよう、安全装置を外しておけ!」
銃撃を受ける討伐隊から目を背けて俺たちは敵に見つからないように徒歩で左右の建物が崩れかけた身の隠しやすい裏路地に入っていった。
彼方からは助けを求める声と銃撃の音が鳴り響いていた…。
大通りから路地に逃れた分隊は周囲を警戒しつつ前進していた。俺は命令とはいえ、仲間を見捨ててしまった。とても堪え難いことだ。部下にも申し訳ない気持ちだ。坂巻大尉、エマ…何のため仲間を見捨ててまで急ごうとするのか俺には解らなかった。
あの敵勢力は一体何だったのだろうか…。奴らのうじゃうじゃいるこの街で何の目的で討伐隊に攻撃を仕掛けてたのか?よく見てみると、携帯式ロケット砲(RPG)まで持ってやがる。あの重武装だとただの一般人が武装したようには見えない。動きがやけに整然としていた。
…とにかく俺たちはこの2人を無事に護衛しなければならない。
勝山はそう考え任務に集中し、分隊はより目標地点とやらに進んで行った。
-同日-
-某市街地・北地区住宅街-
-勝山拓哉・曹長-
昼間の襲撃から逃れた俺たちと坂巻少佐とエマの5人は裏路地を通って、目標地点に向かっていた。しかしながら、日も完全に暮れてしまい、夜間での作戦行動を危惧した坂巻少佐が、
「夜になってライトをつけて動くと、武装集団の良い的だ。ここらあたりで宿営しよう!」
俺たちは辺りを上から見下ろせられる廃ビルの屋上で宿営する事になった。あらかじめ所持していた簡易テントを兵士3人で組み立てて、食糧を準備した。
秋雨市防衛隊では旧自衛隊が採用していたレーションを元に改良を加えて防衛隊のレーションとしている。
例えば、第一種戦闘糧食改。旧自衛隊では1960年代からある缶詰め式の糧食で様々なバリエーションが存在していたが、異変によって生産会社が潰れたり食糧難で何種類か減り、代わりに比較的手に入りやすいキムチや昆虫類の佃煮などが加わっている。
3人で周囲を監視しつつ交代して飯をかき込むようにして夕食をとっていった・・・。
-4月20日-
-某市街地・北地区住宅街の廃ビル屋上-
-勝山拓哉・曹長-
今夜は満月だった。遠方では深夜になっても銃声や叫び声が微かに響いていた。
この前の昼間に見殺しにしてしまった味方兵士たちの顔が忘れられなかった。坂巻大尉に冷静に付き従ったあのときの自分に嫌気がさした。
『きゅ、救援を・・・!』
『なぜ助けない??仲間じゃないのか?!』
『痛い痛い痛いぃ!母さぁん!』
今になって兵士たちの助けを求めていた声が耳にこびりつき落ち着くことが出来なかった・・・。
気分を変えようと満月を見ていたとき、奥田軍曹が横に寄ってしゃがみこんで言った。
「隊長~なんかムシャクシャしてませんかぁ?」
「ムシャクシャ?この俺が?」
奥田が上目遣いで気になることを聞いてきたのだった。
「どうして?そう見える?」
「隊長は一見真顔ですが気にくわないことあったときはひたすら空を見ています!」
全くその通りで俺は嫌なことがあったときは無意識に空ばかりを見ているそうだ。
「よく知っているな」
「これでも隊長の面倒見役ですよ!」
全く、誰が「面倒見役」なのだろうか?
「何か気になることでも?」
「・・・奥田、今日の日中に討伐隊の連中を見殺しにして俺たちはここ居る。連中の助けを呼ぶ声が全く耳からとれないんだ・・・。今になって後悔している」
「しかし・・・命令でしょう。・・・その命令で私たちは危険を避けてここに生きています。ポジティブな思考でいきましょう!」
俺たちは見張りの交代が来るまで今日の出来事を話した。奥田と話していると自然と気が和らいだような気がした。
このまま何も起こらず夜が明けてくれるといいのだが・・・。
-4月21日-
-某市街地・北地区住宅街の廃ビル屋上-
見張りの交代を終えた勝山は朝まで睡眠を取ろうとしていた。疲れを残しては任務に支障が出て最悪死ぬかもしれない。そう思いながら眠りに落ちようとしていたが・・・。
いきなりの爆発音で眠ることはできなくなった。