麻帆良男子高校生の日常!   作:言寺速人

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原作でも2次でも数々のかませとしてやられてきた4人が主人公の話です。
あらすじでも書きましたがオリ要素が多数出てきますので原作の彼らのファンには不満かもしれません


高校1年目
麻帆良男子高校生の日常! プロローグ


 

 

 

 「いいかお前達。これから我が話すことはとても重要かつ大事なこととなる。一言も聞き洩らす事のないように」

 

 1人の男子が発した言葉に一つの机を囲むように位置する残りの男子は全員頷く。

 薄暗い教室、下校時間は過ぎており窓からは西日が差しこむ。

 夕日に照らされた彼らの顔は全て引き締まっており表情からは覚悟の程がうかがえる。

 その姿を確認した発言者たる彫りの深いタラコ唇の男子は真剣な表情のまま続ける。

 

 「ここ、麻帆良は多くの学業施設によって成り立つマンモス学園だ。当然多くの学生が在籍しそれに比例するように部活動も豊富に存在する。

 少なくともここ程充実した学園生活を送れる場所はそうないだろう。だが我が言いたいのはそんなことではない。数多く存在する生徒、そして部活、そのなかで優劣がつけられるのは当然のことと言えよう。

 それは学業だったり部活の功績だったりと様々だ。そして我らが一番注目する優劣とはなんだ、豪徳寺?」

 

 「そりゃあお前…強さ、腕っ節だろ」

 

 リーゼントに長ラン、と少々時代錯誤ながら分かりやすい番長スタイルの男子、豪徳寺薫が答える。

 

 「そう! 男たるもの強さを求めるのは当然のこと。未だ背すら見る事の出来ない最強の頂きを目指し、我らは日々各々が思う修行に励んでいる。幸いにも麻帆良は空手部剣道部柔道部などメジャーなもの以外にも古武術部や中武研など強くなる事に事欠かさない。おまけに喧嘩騒ぎしていると急に現れて笑顔で武力介入してくる教師もいる」

 

 高畑のヤローか、と赤い髪をお下げにした快活な印象を抱かせる顔つきの男子、中村達也が顔をしかめる。

 

 「まあデス眼鏡のことは今は置いておけ中村。いずれ必ずお礼まい……ゲフン、リベンジはするとして、問題はその学生の中で上位に立つと呼ばれる存在達の事だ」

 

 「上位……麻帆良の四天王のことか?」

 

 「その通り!」

 

望んだ答えに返事をしながらタラコ唇の男子は力説を続ける。

 

 「麻帆良四天王。非公式ながらもそう呼ばれる純粋な腕っ節の上位者達。全員誰のことを指すのか分かっているとは思うが一応名前を上げていこう。

 

 1人目、古菲。中武研の部長にして毎年行われる格闘技大会ウルティマホラのチャンピオン。ほぼ毎日と言っていいほど彼女に挑む者がわんさか現れるが未だ無敗と言われる猛者。我らも敗北した数は一度や二度ではないだろう。

 

 2人目。桜咲刹那。剣道部入部当初から期待の新人として評判な彼女の強さは折り紙つき。なにせあの剣道部顧問の葛葉先生と同門らしい。それを証明するように全国大会出場経験のある部長を全く苦戦することなく勝ったそうだ。さらに放つ剣気やら常に持ち歩いている長い竹刀袋から佐々木小次郎の生まれ変わりと言われているとかいないとか。

 

 3人目。長瀬楓。所属こそさんぽ部という平和的な部だがそれは世を忍ぶ仮の姿。なんと驚く事に彼女の正体は忍者だ。突然彼女の人数が増えたり一瞬で移動したりと伝承そのままの存在だ。彼女がニンニンと口走っていなければ気付かなかったかもしれない。

 

 4人目。龍宮真名。龍宮神社の娘さんでクレー射撃部に所属。お前本当に中学生かよと突っ込みたい外見と雰囲気だがその言葉を本人に口にした奴らは例外なく普段から持ち歩いているらしい彼女のモデルガンによる速撃ちで地に伏している。その命中率は百発百中。狙った獲物は逃さないスナイパーだ。

 

 …さて山下。何か気付いた事はないか?」

 

 「……女子しかいないな」

 

 顔立ちの整った、モデル雑誌やテレビに出ていてもおかしくない男子、山下慶一が悔しさをにじませながらその事実を口にする。いや彼だけではない。その場にいる全員が明らかにその事態に憂い、悔んでいる。中村など手の平にこぶしを打ちつけているくらいだ。

 

 「そう、そうだ! 情けない事に今の麻帆良四天王は全て女子、しかも全員中学生によって構成されている! いや、今だけではない。過去の歴史を紐解けば麻帆良四天王のメンバーはそのほとんどが女性で構成されているのだ! 男性で有名だったのは高畑ぐらい! 

 普段は喧嘩だの男は強くてナンボだの言っている男子が実際には口先だけの雑魚だと言われても仕方ないぞ!」

 

 「おい! ふざけんなポチ!」

 

 「落ちつけタッちゃん。 大ちゃんだって悔しいんだよ」

 

 「皆気持ちは同じだよ。悔しいけれど事実だ」

 

 肩をすくめての自嘲に憤った中村だが両隣りにいる豪徳寺と山下に押さえられる。

 

 「確かにそう思われても仕方ないな。だがポチ、勿論それで終わりじゃないんだろう?」

 

 山下の文面こそ疑問形だが確信をもって問われた言葉に彫りの深いタラコ唇の男子、大豪院ポチは不敵に笑う。

 

 「当然だ! 彼女たちは強いから叶わない? 負けるのは仕方がない? そんなのクソ喰らえだ! いいか。我らはまだまだ発展途上。可能性がある。未来がある! 青臭いセリフだと笑う奴がいるなら笑わせておけ。そいつらは強くなる事を諦めた連中だ。自分の限界の壁にぶつかって道を進むのを辞めてしまった連中のやっかみだ! 我らは諦めない。目指すのは最強。その俺達が麻帆良四天王の座くらい奪い取れなくてどうする!」

 

 だんだんと熱を帯びていくポチの言葉に3人の目が燃え上がる。

 当然だ。彼らは皆最初から強くなる事を望んでいるのだから。

 別に不幸な生い立ちがあるわけでも世界を救うなどのようなやらなければならない使命感からでもない。

 ただ強くなりたいという実にシンプルで、分かりやすく、馬鹿馬鹿しく、だがどこまでも純粋な思いから彼らは力を求める。

 故に今この状況で、より強い存在がいるという状況で彼らの魂が燃え上がらないはずがなかった。

 

 「高校に入って初めて我ら4人全員が一つのクラスにそろった。これを運命と言わずしてなんというか! もう一度言う、目指すは最強だ。当面の目標は四天王の座の奪取。異論はないな?」

 

 

「「「応!」」」

 

威勢のよい返事に満足そうに頷いたポチはスッと握りこぶしを前に出す。

 

 「ここに誓おう! 我ら四人が新たな四天王となる事を! そしていずれ麻帆良最強の座を“我が”手に入れる事を!」

 

一瞬キョトンとした三人だったがすぐさま答えるように拳をつき合わせる。

 

 「馬鹿野郎。最強は俺が貰うぜ」

 

 豪徳寺薫が

 

 「へっ、やってやろうじゃんか」

 

 中村達也が

 

 「悪いけど手加減はしないからな」

 

 山下慶一が

 

 自分こそが頂点に立つと宣言する。

 

 「「「「…………ップ、ハハハハハ!!」」」」

 

 全員の視線が交差したあと、全員が同じタイミングで笑いだす。

 

 なんの事はない。

 彼らは同じ最強を目指す仲間であると同時に

 最強を競い合うライバルなのだ。

 

 「さて」

 

 一通り笑ったあと再び真面目な顔に戻ったポチは今後に向けての行動方針を語り出す。

 

 「当面の目標はさっき言った通りだが彼女達が最低でも中学に在学中にケリをつけたい。高校は別の所へ通う生徒もいなくは無いし古女史にいたっては留学生だからな。さらに言うなら我らも3年になれば理系文系でクラスも分かれるためリミットは後2年。よって我らは常に修行を行わなければならない。他の事に時間を取られている暇などない。つまり―――…」

 

 ポチの言葉が終わりかけると同時にバン! と力強く教室の扉があけ放たれる。

 

 

 

 

 

 「見付けたぞお前ら! 今日という今日はもう許さんぞ!」

 

 

 

 

 

 「説教などで時間を潰す暇はない! というわけで全員全力ダッシュ!」

 

 はたして教室に新たな人間が入ってくるのと彼らが脱兎のごとく逃げ出すのはどちらが先だったか。

 色黒のタラコ唇が特徴的なスーツの教師は生徒達が逃げ出すのをみるや「待て!」と怒涛の勢いで追いかけてくる。

 

 「だから新技を学園長の銅像で試すのはやめておかないかと言ったのだ」

 

 「しゃあねえだろ。手近に他に頑丈そうなのは無かったんだから」

 

 「でもあれ凄えぜ。銅像の頭にクリティカルヒットして綺麗に壊れたもんな」

 

 「うん。威力もそうだけど学園長の頭が標準的になった時には思わず笑っちゃった」

 

 廊下を走るという校則違反などまるで気にせず逃走の原因について和気あいあいと話す4人組を見て追手の教師の青筋がさらに一本増える。

 

 「お前ら他に言う事は無いのか! おまけになんだあの『整形した儂、どう思う? …凄く、不自然です』と書かれたふざけた看板は!? 失笑してしまったせいでその場にいた学園長に白い眼で見られたんだぞ!」

 

 「うぉ! ガンちゃんのスピードが増した!?」

 

 「ガンちゃん最近怒りっぽくなってるよな?」

 

 「カルシウムが足りていないのでは?」

 

 「いや、きっと奥さんと上手くいってないんだよ」

 

 「…………―――!!」

 

 ブチン! と先ほど立った青筋が音を立てて切れると同時に足に力を込めたガンちゃんもといガンドルフィーニ。その顔は最早教師のそれではなく悪鬼羅刹。怒りで理性を失っているのか言葉すら出てこない。ただ懐に忍ばせているナイフと拳銃を抜かない点では最後の一線だけは守っているらしい。

 その代わり気はもう隠す気もなく使っているが。

 

 あの様子では捕まった時に説教ではすまないのは火を見るより明らかだ。

 流石にからかいすぎたかと反省すると共にこのままでは追いつかれると判断したポチはやむを得ずある作戦に出る。

 

 「山下!」

 

 「何だポチ!?」

 

 走りながら呼びかけに応じてくれた山下に感謝しながらポチは天使のごとき笑みを浮かべ

 

 「済まぬ」

 

 「は?」

 

 悪魔の所業に出た。

 

 スコーン、と足払いをかけられた山下はまさか味方にそんな事をされると思っていなかったため見事に転倒する。途端に追いついたガンドルフィーニは眼の色を反転させながら山下に飛びかかる。どうなったかを確認することもなくポチは前だけを見据え逃走を続ける。

 

 「行くぞ皆。山下の死を無駄には出来ない」

 

 「いや大ちゃん!? いいのかアレで!?」

 

 「オレ今ケイちんがどうなってるのか怖くて振り返れないんだけど」

 

 非難じみた他の逃亡者たちの発言に対しポチはただ一言。

 

 「あれは先日ウルスラの女子から告白された」

 

 「イケメンは死ね!」

 

 「リア充爆発しろ!」

 

 非難じみた他の逃亡者たちはその発言に対し綺麗に手の平を返した。

 

 お前らおぼえてろー、ぎゃあああああああ!という悲鳴などまるで聞こえていないかのように廊下を走り抜け玄関にたどり着く。

 尊い犠牲のおかげで無事逃げ切る事が出来た、とほっと一息ついた瞬間、中村の身体が崩れ落ちる。いきなりの出来事に驚くポチと豪徳寺だが玄関口から現れたサングラスに黒のスーツにひげ、と一見すればヤのつく自由業のような教師をみて何が起こったか理解する。

 

 「「グラ髭」」

 

 「先生と呼べ馬鹿ども」

 

 「「グラ髭先生」」

 

 「まずグラ髭をやめろ」

 

 「「髭グラ先生」」

 

 「髭とグラの順番に不満があるんじゃない。そもそも教師を渾名で呼ぶなと言っているんだ」

 

 髭グラ、もとい神多羅木はサングラスをくいっと中指であげつつフィンガースナップを行う。一般の生徒に行なえば問題だがある裏の技が行なえるポチと既に気弾を撃つ事の出来る豪徳寺になら無詠唱の魔法くらいは問題ない。

 だが受け手とて仮にも最強を目指す者たち。不意打ちならともかく警戒している今ならガードを行う事は出来た。

 

 「しかし、これはちょっときついかもしれないな、豪徳寺」

 

 ガードしたことで痺れた手を振りながらポチは現状をどう切り抜けるかを考える。だが明らかにここは通さんぞ、とばかりにサングラス越しに感じる敵意を受けていれば良い考えも浮かんでこない。

 

 「だな。けどあえてここは俺に任せろと言わせてもらうぜ!」

 

 同意を示しながらも豪徳寺は一歩前に出て神多羅木先生に構えを取る。その行動に驚いている赤羽に対して豪徳寺は苦笑しながら校門の方を指さす。

 

 「まあ使い古された言葉だけど、ここは俺に任せて先に行け!」

 

 「ば、馬鹿! お前一人では!?」

 

 「何言ってやがる? さっき大ちゃんだって言ってたろうが。俺達は最強になるって。だったらこんなところで俺が負けるわけねえだろ?」

 

 ニッと歯を見せて笑いながらぐっと親指を立てて自身の必勝を主張する。思わず息をのんだポチの姿に満足したのか顔を神多羅木先生に移すと最後にぼそりと呟く。

 

 「行けよ。すぐに追いつく」

 

 「………ああ、待っている」

 

 ダン、と力強く踏みしめ風のごとく走り抜けるポチを神多羅木先生は特に手を出すことなく見送る。

 

 ポチの姿が見えなくなる頃にフウ、とため息をついた神多羅木先生は再び指を前に出す。

 

 「お前らの美しき友情に免じて1人は見逃した。だがお前はだめだ豪徳寺」

 

 「おいおい随分余裕じゃねえか。こっちは新必殺技があるんだぜ」

 

 「そうか、それは楽しみだ」

 

 「油断しても負けてもしんねえぞ!」

 

 雄雄雄々々々! と威勢のいい鬨の声を上げ豪徳寺ははるか格上の相手へと勝負を挑む。

 

 その先にある勝利と最強を目指して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 静寂につつまれた学生寮の前にポチは一度も振り返ることなくたどり着いた。

 今朝ここを出るときは4人だったにも関わらず今はたった1人。

 その事実に押し潰されそうになりながらも気丈に立ち星空を見上げる。

 涙など流さない。散っていったアイツらのためにも涙など流してはいけないのだ。

 

 「約束するぞ皆! 我は必ず最強になる。 皆も見守っていてくれ!」

 

 空に誓うようにこぶしを掲げるその姿は夢を追う青年の在り方を表すにはふさわしく、まるで一枚の絵のようにその光景は止まったままで―――

 

 

 「そろそろ気は済んだかい?」

 

 「む、今日は随分早いですなデス眼鏡」

 

 

 

 一瞬にして崩された。

 

 

 

 にっこりと眼鏡の奥の目を笑わせながらポケットに手をつっこんだまま現れたデス眼鏡もとい高畑・T・タカミチにいつも通りの挨拶を行う。

 

 「ハハハ僕に面と向かって毎回デス眼鏡と言えるのは麻帆良広しといえども君ら位だよ」

 

 「そうですか? それは光栄です」

 

 「ハハハ褒めてないよ。それにしてもいつもながらどうして自分達がやったってばれてるのに逃げ出すんだい君達は?」

 

 「いやあ、喧嘩など現行犯でないかぎり麻帆良ではセーフではないですか?」

 

 「確かにそのくらいなら見逃してもいいけど学園長の銅像を破壊したのは流石に無過ごすわけにはいかないよ」

 

 「無理ですか」

 

 「無理だよ」

 

 「…………」

 

 「…………」

 

 数秒の沈黙の後、ポチが足に力を込めて爆発的な速さで高畑の懐に入り込む。だが、入り込んだ瞬間ポチの身体は先の中村達と同じくガクリと糸の切れた人形のように倒れこんだ。

 

 「まったく、少しは大人しくしてくれるとありがたいんだけどね」

 

 力尽きたポチをひょい、と担ぐとそのまま既に連行された他のメンバーと同じ生活指導室に運ぶべく足を学校の方へと向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは麻帆良に生きる男子高校生4人の最強を目指した青春の物語。

 

 そのストーリーは反省文と正座から始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




因みに彼らは現在高校1年。メインの女子たちは中学2年です。
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