大筒木の名を持つもの 作:パスカロ
その広間には様々な人が集まっていた。
沈黙を貫くもの、不安そうな表情をするもの、周りと会話し恐怖を和らげようとするもの。
中には、僅かな狂気を纏い殺気立つものまでいた。
「これからどうなるのであろうか…」「ハゴロモ様はあの赤子をどうするつもりなのか…」「またあの時代に戻ってしまうのでは…?」
その場の者達から口々に不安や憂鬱の声が上がる中、大広間の扉が開き、数人の人影が新たに大広間にやってきた。
「父から緊急の呼び出しとあったが何用だ?」
先頭の人物から声があがる。
「インドラ様!此度の赤子の件で話があるので、インドラ様とアシュラ様も含め皆を大広間に集めるように、との事です。」
大広間にいた者達の一人がその問いに答えた。そしてすぐ側から声が響いた。
「ほう!ついに俺の兄弟が産まれたか!!今日はめでたい日だ!して、男子か女子かどちらなのだ?」
「アシュラ様!それが…女子なのですが……」
「ほう!妹か!会うのが楽しみだな!!」
「それで?今回の話はその妹の事なのだろう?何かあったのか?」
「はい、実は「そこから先は我が話そう」
ハゴロモ様!?」
そこに、赤子の事を話そうと六道仙人が大広間の扉を開け赤子を腕に抱いて現れた。
「父上!妹が産まれたと聞いたぞ!母上は大丈夫なのか!?」
「おお、アシュラか。インドラもおるな。ヒトエは出産の疲れで今は眠っておるが、大事は無い。しばらく休ませておこう」
「母上は無事か!よかったよかった!して、その子が…?」
「ああ、この子がお前の、お前達の妹だ」
そういって、ハゴロモはアシュラとインドラに赤子を見せる。インドラは静かに、アシュラは大はしゃぎで赤子を観察している。
「父上!この子の名前はもう決めているのか!?」
「ああ。さっき決めたところだ」
「なんという名なのだ!?」
アシュラが赤子を見たまま、嬉しそうにハゴロモに赤子の名を尋ねる。
だが、周りの者達はあまりいい表情をしておらず、ハゴロモやインドラ、アシュラも敏感にそれを察していた。
「父上、その子の事について話があるとのことでしたが?」
インドラがアシュラの質問を遮り、ハゴロモに本題を話すように促す。
「ああ。その事も、名前の事も全てまとめて話そう」
そういって大広間にいる様々な者達を見回し、ハゴロモは上座に座り皆にも座るように促す。
全員が座り、喧騒がおさまったのを確認し我が子の事を話し始める。
「さて、まず最初にこの子の名前から皆に伝えよう。この子の名は
『大筒木カグラ』とする。」
「ハゴロモ様!!何故わざわざ名前を似せるのです!?もしあのお方のようになったら「だが違う」…!?どういう意味ですか?」
「確かに容姿は似通っている。他のところも似ているのかも知れん。だが、確かにこの子は我の子だ!どれだけ似ていようと確かに違うのだと。そういう思いを込めた。」
「だが、もしこの子があの鬼のようになったらどうするのです!?これだけ似ているのだ!可能性は充分にありましょう!!」
「その時は、我の全てを賭けて止めてみせる。だから、この子が母のようにならぬためにも、皆にはこの子に愛を与えてやってほしい。先入観はあるだろうが、この子の容姿ではなく、この子を見てやってほしい」
「っ…!!わかりました。確かにこの子はあの方ではない。それに、あなたが責任を取るというのならば安心して任せられます。皆はそれでよいか?」
「はい。我等もハゴロモ様なら安心して任せられます。」
「うむ。すまぬな、皆の者。」
そうして、周りの者達から負の感情がほとんど無くなり落ち着きを取り戻した頃に、今まで黙って赤子を見ていたインドラが唐突に目の模様を変化させ、自らの妹を視た。
「どういうことだ…?」
インドラが写輪眼を発動し、妹のチャクラを視て怪訝そうに顔を顰める。
「どうしたんだ?兄貴。まさかカグラに何かあったのか!?」
そうしてアシュラは掴みかからんばかりの勢いでインドラに詰め寄る。
「騒ぐな、アシュラ。すぐに大声を出す癖を治せ!喧しいぞ」
「むぅ、すまぬ兄貴。で、カグラがどうしたのだ?」
そうして、小さな喧騒はすぐに収まり、アシュラがカグラについてインドラに再度問いかけたとき、輪廻眼をカグラに向けていたハゴロモが会話を遮った。
「まあ待て。カグラの事で、まだ話す事がある。皆の者もよく聞いてくれ。先程までの話も大事だが、本題はむしろここからだ。この話の中にお前達の疑問の答えもある。心して聞け」
そう言って、六道仙人が放った言葉はインドラやアシュラを含め、その場の全ての者を驚愕させるには充分過ぎるほどの内容だった。
「カグラの中には十尾の力が宿っている」