大筒木の名を持つもの 作:パスカロ
「カグラの中には十尾の力が宿っている」
ハゴロモが言った言葉に、その場にいる者達は例外なく絶句する。誰もが言葉を発せず、視線をハゴロモと赤子の間を行ったり来たりしていた。そして、段々と理解が追いついてきて心に恐怖が浮かび上がってきたときに、ふとハゴロモがただ冷静に、淡々と話しているのを見て、取り敢えず次のハゴロモの言葉を聞く姿勢をとった。ここで、誰も取り乱さないのは、皆がハゴロモを真に慕っている証拠であった。そんな頼もしい仲間達を見回して、満足そうにハゴロモは頷くと続きを話し出した。
「まず、インドラが怪訝そうにしていた理由。それは我と同じチャクラがカグラの中にもあるのに、印象が全く異なったから。それであっておるか?」
「…父上の言う通りだ。父上の中にある莫大なチャクラ。そのチャクラからは、嵐や地震、落雷といった災害のような荒々しさを感じるが、カグラの中には確かに圧迫感はあるが、特に何も感じない。」
「うむ。インドラの感じ取ったチャクラのイメージは概ね正しい。我の中の十尾は、チャクラを取り戻そうとして暴走し、荒々しくも禍々しくなっている。だが、カグラの中の十尾のカケラとも言うべき力には、十尾の意思がない。現に、この膨大なチャクラを暴走させていないのが良い証拠だ。」
「た、確かに…チャクラの量は膨大ですが、あの十尾が暴れていた時のとてつもない負の意思は微塵も感じませぬ」
「うむ。どういう訳か、上手い具合に十尾の力、チャクラだけを持っていきおったようだ!ふははは!!」
「父上!それは笑い事なのか!?いや、それよりも、結局カグラに害はないのか!?」
陽気に笑う父・ハゴロモに、アシュラは不安そうな表情をしながら詰問する。
「そう急かすな、アシュラよ。害があったらこんなに陽気になれるわけなかろうよ。元々のカグラのチャクラの一部と十尾のチャクラの一部が、完全に同化しておるが、むしろそれで安定しておる。心配するな」
「そうか…父上がそういうなら安心だ!」
そう言ってひとまず安堵したアシュラは、今だハゴロモの腕の中で眠っているカグラを興味深そうに観察しだす。だが、インドラはまだハゴロモに聞きたい事があり、率直に尋ねた。
「それで、父上。カグラはどれくらい十尾のチャクラを持っていったのだ?」
その質問は、皆が気になっていたのか一斉にハゴロモに視線が集まる。
「確かにそれは気になりますな。」「結構な圧迫感がありますしね…」「我等が感知出来る域を超えているな」「複数人で協力してやっと、というところだろうな」「それに、カグラ様の元々のチャクラも膨大だ…」
そう言って、皆が畏敬の念を込めてカグラを見ているとハゴロモがインドラも疑問に答えた。
「うむ?そんなに持ってかれておらんよ。我からヒトエを介して徐々にカグラの方にチャクラが流れていっていたようでな。意思や悪意も無かったので、最初は気付かんかったぐらいだ。せいぜい、一割二割といったところだろう」
大したことのないようにハゴロモが答える。
「「「なるほど、一割二割ですか。……ぇ?えええぇぇぇ!?!?」」」
「十尾の一割二割!?」「それは凄まじいのではないか!?」「ハゴロモ様!十二分に大したことあると思うのですが!?」
「そうなのか?」
「そうです!!我々からしたら桁違いのチャクラ量ですよ!?」
「インドラ様も何か言ってやってください!!」
あきらかにズレているハゴロモの感覚に、皆がインドラに助けを求める。だが、
「ん?一割二割だろう?騒ぎ立てるようなことでもあるまい?」
「で、あろう?インドラよ」
インドラもズレていた。
そして、最後の希望を持ちアシュラに問い掛けようとしたが、
「一割二割か!よかった!!」
アシュラまでもズレていた。
(((この家族は化け物揃いか!!??)))
皆の心が一つになった瞬間だった。