SAO~四剣を操る転生者~   作:面無し

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二十二話

「フロアボスの攻略方法を見つけました」

 

 デュエルのあった次の日、アスナは会議が始まって早々そう言った。

 昨日の件もあってか、周りは一瞬にして鎮まりかえってしまった。

 隣の姫ちゃんも目を細めて警戒しているとでも言いたそうな顔をしている。

アスナが口にする作戦を値踏みし、文句あらば昨日のように喧嘩をする気だろう。

 まぁでも、今回は心配しないでいいだろう。子守唄は聞いたはずだ。

 アスナは静まり返った周囲の視線の中で、一度深呼吸してから、

物おじしない凛とした声を発した。

 

「昨日の夜中に、ボス攻略のキーを発見しました。

この階層の街にいるNPCの一人が、夜中になるとある歌を歌ってくれます。

その歌詞から、ここのボスを眠らせる効果が有ると考えています。

参考として、音声を録音したので、それを聞いてください」

 

 そう言ったあと、アスナは昨日NPCから聴いたという歌を流し始めた。

歌詞には『鉄の鎧の大蛇』という言葉が有り、

夜中におきているというフラグで発生したイベントだから、正解と見ていいだろう。

 周りもこれに疑問を持った様子はない。これを今日は使うことになるだろう。

 さて、鎧蛇の切り心地はどんなものだろうか。

 

 

    ****

 

 大蛇はあれだけの絶対防御があったせいか、体力はそれほど多くなかった。

歌を聴かせて眠らせた後はさっさと体力が検証して倒せてしまった。

 ボス戦が早く終わったのもあり、今日は祝勝会が昼から行われている。

おそらく、明日は徹夜をしてしまってグースカ町中で寝る奴が出るだろう。

 俺はというと、「私、スキルで料理を作りますね」と言い出した姫ちゃんについて行き、

姫ちゃんが使う簡易式台所にカウンターを取り付けてそこに陣取らせてもらった。

 姫ちゃんの1000まで上げた料理スキルにて生まれる料理がどんどん運ばれていく。

そして、俺の目の前には運ばれていく料理の約三倍の量の料理が並んでいく。

 それらは姫ちゃんがスキルに頼らず作ったものであり、

SAO内の物理と食材の味を性格に調べあげて作った料理だ。

 味は……食ったら死ぬと言われても食うレベルといえばいいだろう。

 そんなスキルの三倍の速度で出される愛情料理をおれは堪能していた。

 

「美味い!」

 

「兄さん、焦らなくても料理は逃げませんよ?」

 

「でも、早く食べないと冷めちゃうしね。

それにね、ここでは料理が逃げるんだよ」

 

「え?」

 

 俺の言葉に首を傾げる姫ちゃん。その疑問への答えはすぐに来た。

 

「ゼロ! その料理チョット分けてくれよ!」

 

 そう、俺の前に置かれる料理の群れ。他のプレイヤーが飛びつかないはずがない。

美少女が作ってくれる料理。しかもスキルじゃなくて手料理とくればなおさらだ。

 まぁ、渡してやる義理はないので彼が持ち帰ろうと手にとった皿はすぐに空にしてやった。

 

「え!? いつの間に食ったんだ?」

 

「いつでもいいだろう。料理はわたさんからさっさと帰れ」

 

「少しだけだって、いいだろ?」

 

 盗難未遂はそう言いながらまた皿を盗ろうとする。

それも空にしようとした時、姫ちゃんから声がかかった。

 

「それは兄さんの分なので置いておいてください。

どうしてもほしいなら後で持っていくので、待っててください」

 

 鶴の一声とはこのことだろう。盗難未遂はその言葉にはしゃぐと、

その場で皆に大声で報告して立ち去っていった。

 周囲のテーブルもその言葉に沸きだし、会場は少し盛り上がった。

 

 

 しばらくして、注文も一段落し、姫ちゃんの手料理が出てくると、

一気に盛り上がりは俺に対する妬みのパレードになった。

 何があったかは……後にしよう。今はさっさと逃げるが勝ちだ。

 

「行くよ、姫ちゃん!」

 

「あっ、でも料理が……なくなってる」

 

「さっき全部食った。美味しかった!」

 

 そんなことを言いながら会場を駆け出す。背後からは、

 

「爆発しろー!」

 

「アーンとか見せつけんじゃねーよボケー!」

 

「リア充は死にさらせー!」

 

という声が、姫ちゃんと顔を見合わせ、

少し笑いながら駆け出していった。

 

      ****

 

「まさか手料理がおにぎりだとは思わないよな」

 

 会議場から逃げ出した後、大通りを歩きながら俺は爆笑しながらそういった。

 

「おにぎりも『手料理』ですから。

私の手料理は私が作ってあげようと思った人にしか作りませんよ」

 

 姫ちゃんはすまし顔でそういった。

 

「自分から料理作るって言ったのに?」

 

「はい、私は『スキルで料理を作る』と言ったはずです」

 

「そっか」

 

 姫ちゃんの理由は最もだろう。だって、手料理はスキルで作ったものじゃないからな。

それなのに、自分の手で作ったおにぎりが出るということは、ずいぶんとレアだ。

彼等は相当儲けたということでいいだろう。

 俺は、自分たちがどれだけレアな体験をしたのかを知らない彼等を思い浮かべて、笑った。

 と、そんなことをしていると、目の前にアスナが見えた。

攻略法を見つけたとはいえ、昨日の今日で祝勝会には出にくいのだろう。

 そして、アスナの前にはNPCの女の子を抱き上げてシステムから警告されているキリトがいる。

 

「よう、お二人さん。何やってんだい?」

 

「え? ああ、アスナ、いたのか」

 

「いえ、私は、まぁ通りがかったところです」

 

 俺の声に振り向いた二人の内、キリトはアスナがいることを知らなかったらしい。

 アスナも二人でいたというよりはただ歩いていたらそこにいた程度のことらしい。

まぁ、通りがかったにしてはキリトをよく見てた気がするし、

ついでに言うなら少し頬が染まっているのだが……これは言わないでいいだろう。

 

「祝勝会やってるぜ、行ってきなよお二人さん」

 

「最終的に攻略法を見つけたのはアスナさんですから、

行ってもそう邪険にされることはないはずですよ?」

 

 俺と姫ちゃんで二人に祝勝会に行ってみたらと勧めてみる。

それに、キリトは少し苦笑し、アスナは小さく首を横に振る。

 

「俺はそこまで積極的に人付き合いする気はないからさ。今回は遠慮しておこうかな」

 

「私も遠慮します。攻略法は見つけましたが昨日は騒ぎを起こしているので」

 

 まぁ行かないというならいいだろう。別に無理やり行かそうとも思っていない。

 さて、このあとは物足りないから身内で乾杯するつもりだ。

そのときに、キリトがいないというのは少々問題が有るというものだ。

 

「そうか、まぁやめとくってんならいいさ。俺達も抜けてきたからな。

でも、今からやろうと思ってる身内の祝勝会に、キリトは参加してもらうからな」

 

「へ?」

 

 キリトは間抜け声を発して俺の言葉に一瞬硬直し、

その後、百八十度回転し走りだした。……逃すわけがないのに。

 

「兄さん、先行ってください」

 

 踏みだそうとした瞬間、姫ちゃんから声が掛かり、手が離れる。

俺は、返事の代わりに先ほどまで彼女を掴んでいた手で親指をたてた。

 

 

    ****

 

「というわけで、昨日の今日ですね、アスナさん」

 

「誰も犠牲にしない作戦、あったね」

 

「はい」

 

 私の何気なく発した挨拶に帰ってきたのは、悔しさの混じった声だった。

 アスナさんは私の方を見ず、俯いたまま唇を噛んでいました。

 私はそれを何の意思も込めずに、短く肯定した。

 

「どうして、旦那さんを先に行かせたの?

 私に何かアドバイスでもあったかな?」

 

「私はアスナさんに助言できるほど偉くないですよ。

 昨日のあれは、私の価値観をルールにそって押し切っただけのことです。

 冷静に処理したか、と問われると何も言い返せないですし。

 私の中では、昨日のアスナさんは怒るに値したというだけです」

 

「じゃあ、なに?」

 

 私は苦笑し、頬を掻きながらながらアスナさんの疑いの目に弁明する。

 しかし、それでもアスナさんは私が嫌味か何かを言いに来たと思っているようだ。

 それなら、もう本題から言ってしまうのがいいでしょう。

 

「お料理友達になりませんか?」

 

「はい?」

 

 アスナさんの素っ頓狂な声が響いた。

 

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