そして、クロノ君改めクロノ閣下は果たして元に戻れるのか!?
今……全てが明かされる……(笑)
前書きって本来こう使うもんなんですかね?
俺とリンリンは受付のお姉さんに無理矢理診察室に放り込まれ、どうにか転ばないように踏ん張る。
と、そこには一見すると優しそうなひげを蓄えたおじさんがいた。おそらく医師であろうことは想像に難くない。
「安城さんと羽島さんね。はい、まずは歯磨きして歯垢を落としてもらうから」
白衣を着た医師のおじさんは診察室に転がり込むように入ってきた俺達を不思議に思う事無く赤と青の歯ブラシが入ったコップを差し出す。
「あと、これはうち特製の歯磨き粉ね」
いきなり差し出され、疑問に思う間もなく受け取った俺とリンリンに医師はチューブに入った歯磨き粉を差し出す。
「あの……」
「何か?」
「なんかディメンジョンクリーパーって書いてあるんですけど……」
リンリンの言葉通り確かにチューブにはそう書いてあった。
ディメンジョンクリーパーってダークイレギュラーのユニットだよな~院長イチオシのクランなのだろうか?
「うん、特製だからね?」
「いや、でも……」
「特製だから、わかった?」
「「ア、ハイ」」
どうやら異論は許されないらしい。
俺達は医師に促されるままに少し離れた所に設置された二つ並びの洗面台に案内された。本来医師やその助手さんが手を洗浄したりする場所なので当然鏡などはなく、医師から手鏡を渡されそれとにらめっこしながらリンリンと二人並んで歯磨き粉『ディメンジョンクリーパー』を使って歯磨きをする。
「っておい!?なんかチューブひねったら顔が出てきたんだけど!?」
「リンリン、男は度胸だ。逝くしかないな!」
「行くの字が違う!?そして私は女だ!」
「え?
「ぶっ飛ばすぞてめぇ!」
なんてやりとりしながら、十分ぐらいかけて歯磨きを終えたのだが……
「なんか、驚くぐらい歯が真っ白だな」
「正直、めちゃくちゃ意外だった」
おどろおどろしいネーミングと見た目とは裏腹に歯磨き粉としての能力はリザードソルジャーコンロー並みに優秀だったようで俺とリンリンの歯は芸能人もビックリなくらい真っ白な歯に生まれ変わっていたのだった。
「あ、歯磨き終わりました?じゃあ、診察始めるんでこちらにどうぞ」
二人纏めて案内され、別々に案内されると思っていたリンリンと俺はおや?と顔を見合わせるが、とりあえずおとなしく医師の後についていく。
元々この歯医者自体それほど広くないので直ぐに「ここです」と医師に言われ、俺とリンリンが仕切りに区切られた空間に入る。
「え!?これって……」
「ギアースじゃねぇか!?」
案内された先にはドラエン支部で働いている俺はもちろんユナサン支部のトップファイターであるリンリンにも見覚えがあるであろう、最新式のヴァンガードファイトシステム『ギアース』が鎮座していた。
「な、なんでここにギアースが?」
「あ~みなさん驚かれるんですよね~」
歯医者という場所に全く似つかわしくないメカメカしい物体を前にして医師は二人の反応をいつもの事だと笑って受け流す。
「実はこれも治療の一環でしてね、いわゆるヴァンガード治療法というやつです」
いわゆると言われても……とそんな治療法、見た事も聞いた事もない俺達は胡散臭さに眼を細めた。
「それって、どんな治療法なんですか?」
「それはですね~まずこれを患部にセットします」
と受付のお姉さんが今回は助手も兼ねているのか、いつの間にか医師の隣におり金属製の小さな機械を持ってきて俺達に手渡す。
それは歯にちょうどフィットするように精巧に出来ており、これだけでも結構なテクノロジーが使われているような気がした。いや、素人だから分からないんだけどさ
「で、これをつけてファイトするとなんやかんやあって歯が治るという仕組みです」
「「なんやかんやってなんだァァッ!?」」
いかんどっかの宇宙刑事並みに説明が説明になってない!こ、こんな治療受けてられっか!俺は自分の部屋に帰るからな!
あれ?俺今盛大に死亡フラグ立てた?
「ん~?あんま乗り気じゃない?じゃあ……」
ドン!
と医師は身体の半分くらいはあるであろう巨大なドリルをどっからか取りだし
「このダイドリラーも真っ青な巨大なドリルで歯を削ることになるんだけ……」
「ファイトします!かかって来いコノヤロー!!」
「お、おい!?」
リンリンの焦った声が聞こえるが、あんなもん口に突っ込んだら顔が吹きとんじまうよ!しかも俺歯医者嫌いだし!ドリル苦手だし!だからディメンジョンポリス相手する時もちょっと苦手意識が、ね?
「安城さんはファイトするんだね?羽島さんはどうする?」
「ぐ……えぇい!やってやるよ。ファイトだ!」
リンリンもあの巨大ドリルは流石に嫌だったのだろう。頭をがしがしと乱暴に搔くと観念したかのように息を吐いてそう言った。
(院長ったら、また患者さんを無理矢理ファイトに誘って……)
実は治療はあの機械が行うので、治療が終わるまで適当に時間をつぶしてればいいだけだったりするのは院長の隣で微笑んでいるヘルズドロー似の受付嬢のみが知る事実である。
「よ~し、最初は俺がやるけどいいよねリンリン?」
「かまわね~よ、あとリンリン言うなっていつも言ってんだろが」
もういつものとなりつつあるやりとりをしながらまずは俺が自身のデッキを取り出しギアースの前に立つ。
「あ~言い忘れたね……これ、タッグファイトだからよろしくね?」
え?
「タッグ……」
「……ファイト?」
「そ、あまり時間かけちゃ意味ないからね、人数が多い時はタッグファイトにしてるんだ」
そんな事を言いながら医師は懐から医療器具ではなくヴァンガードのデッキを取り出した。
「タッグファイトって……リンリンやったことある?」
「一応、それなりには」
リンリンはいつもと違い覇気のない声で答えた声から察するにそれほど多くやったことはないのだろう。といっても俺もイベントとかでやったことがあるぐらいで手慣れているわけではない。だが一度やると決めた以上やるしかないわけで……
「こっちは助手の彼女とタッグを組むからそっちの二人でタッグを組んでいいよ」
因みに勝敗は治療とは特に関係ないから気にしなくていいよ?あ、でも勝つといいことあるかもね~という医師の言葉もそこそこにしか聞かず、とりあえず俺はこんなこともあろうかと(どんなことだよ?というツッコミはなしの方向でお願いしたい)タッグファイト戦用に用意していたカードをいそいそとデッキに組み込む。
「おい」
「ん、なに?」
とここでリンリンがニコニコと笑っている医師と助手のお姉さんに聞こえないようにか声をひそめながら俺に話しかけてくる。
「この勝負、絶対勝つぞ」
「え?そりゃあ……」
やる以上勝ちたいのは当然だが、そんな気合い入れる必要はないんじゃね?楽しくやろうぜ~
「お前、気付いてないのか?」
え?何がよ
「前に診察受けた巻髪の子、あいつもヴァンガードファイターだった」
そ、そうだったのか。全然気付かなかったよ……よく見てんね~。と感心している俺を余所になおもリンリンは俺にひそひそ声で語りかける。
「つまり、あいつもファイトを受けた可能性があるってことだ」
まぁそうだろうね~
あっ……(察し
「気付いたか?」
「えっと、つまりあの少年はファイトに負けた結果、閣下になってしまったと?」
ここで衝撃的な事実に気付いてしまい、俺の顔面は一気に青くなる。
「正直、そう考えるのが自然だと思う」
こ、これは……!
「よっしゃあ!絶対勝つぞリンリン!!」
「当然だ!私達には勝利以外許されねぇ!弱さは罪だ!!」
「お~やる気満々だね~」
医師はのほほんと言っているが、俺達にとっては死活問題であり、リンリンにいたっては気に食わないと常日頃から言っているユナサン支部、支部長の言葉を叫んでいるくらいだ。きっと神埼支部長も泣いて喜ぶだろう(目逸らし
「じゃあはじめようか?」
「宜しくお願いします」
「こちらこそ」
「敗者は死すべし、慈悲はない(キリッ」
「オラァ!」
「あぎゃあっす!!」
思いっきり蹴らなくてもいいじゃないかリンリン!ちょっとしたスパイスだよ!
「もう一発いっとくか?」
……すいません。じゃあ行きますか!!
スタンドアップ!ヴァンガード!!
「ドラゴンナイトサーデグ!」
「
「アモンの眷属バーメイド・グレイス!」
「グリーディーハンド!」
ってちょっと待ったぁ!?
「何か?」
「いや、何か?っていうか……」
タッグファイトってタッグ同士で同クランを使うの禁止だった筈じゃあ?
「あぁ、そうなんだけどね。大体急な話になっちゃうから、患者さん同士のクランがかぶっちゃうって事が結構あってね?だから特別ルールでタッグ同士でも同クランもありにしたんだ」
あ、さいですか。
「じゃあ、マリガンに入るよ。僕は三枚チェンジだね」
「私は二枚で」
と俺の抗議を軽く受け流し医師と受付のお姉さんは慣れた手つきで山札に手をかける。
仕方ない、こちらもやるとしますかね~相手はどちらもダークイレギュラーズか、ヴァンガードのゴリラパワーに要注意だな
「リンリ~ン、手札はどんな感じ?」
タッグファイトでは互いの手札の確認などは自由であり、綿密な二人の連携が肝となる。その為にはまず初期手札が非常に重要になるのだが
「……」
「リンリン?」
「はぁ~、とりあえず順当にライドは出来るよ」
何故かリンリンに睨まれてしまい、?と疑問符を浮かべながらもう一度名前を呼ぶとこれまた何故か諦めたかのように溜息を吐かれる。がなんだかんだ手札は見せてくれたので詳しくは聞かない事にしよう。
どれどれ~?ってアルマロスに姉ヶ崎ことナースオブブロークンハートまであるじゃないか!超TUEEEEEEE!!
「お前は?」
「ん?それを聞いてしまう?」
リンリンの手札を確認した以上、此方も見せるのが普通というか礼儀なのであろうが、実はおいそれと見せられない理由がある。
「我が手札を見た時、君は本当の絶望と闇を垣間見ることに」
「いいからさっさと見せろっつの」
「あぁっ!?」
せめて最後まで言わせて!?
マモル初期手札
ドラゴニックブレードマスター二枚
ヒロイックサーガドラゴン二枚
トリガー一枚
「てめぇやる気あんのか!!」
「こうなっちゃったもんは仕方ないじゃん!」
安心と安定の手札事故である。しかも手札が五枚あってガード値10000のみという貧弱ゥ!っぷりである。
「大丈夫だって~きっと」
「その根拠のない自信はなんなんだよ」
「あの~はじめていいですか?」
ぎゃ~ぎゃ~と俺とリンリンが騒いでいると受付の人が控えめに声をかけてくる。向こうはもう準備万端のようだ。
「あ、すいません!どうぞ」
「では、ドローから、ライド!純愛のサキュバス、グリーディハンドは移動」
俺の言葉に受付嬢が微笑みながら先攻の第一ターンを進める。そしてそのままターンエンドを宣言した。
「よし、次は俺のターンだな」
(ライド事故したら殺すライド事故したら殺すライド事故したら殺すライド事故したら殺すライド事故したら殺すライド事故したら殺すライド事故したら殺すライド事故したら殺すライド事故したら殺すライド事故したら殺す……)
ちょ!?俺の耳元で恐ろしい事を囁かないでくれ!
頼む!ここで来ないと閣下になる前にリンリンに殺されちまうよ!!
「ど、ドロー!!」
万感の思いを込めたドローは
「ライド!魔竜戦姫ジョカ!サーデグを移動させてターンエンド!」
どうやら天に通じたようで、とりあえずはグレード1へのライド事故は回避できた。まぁまだグレード2引かないといけないんだけどね(血涙
「じゃあ僕のターンだね」
今度は俺の向かいの医師のターンだ。
「ドローから、ライド、アモンの眷属フウ・ジンリン。更にアモンの眷属ヘルズディールをコールして二枚ソウルチャージするね」
げ、相手は相当良い手札らしい。もうソウルチャージしてくるとは、
どうやら医師の方はアモン軸で受付のヘルズドローさんは超越軸っぽいな。まぁ何はともあれ注意すべきはアモンの超パワーとジルドレだな、ダメージ4か5からのジルドレはラストヒールを覚悟するレベルだからな~
「行くぜ、私のターン。ドロー!」
そして、第一ターンの最後であるリンリンのターンが。因みにここからアタックが出来る。
「ライド!サウザンドレイペガサス!アズライールをヴァンガードの後ろにコールしてそのまま純愛のサキュバスにアタックだ!」
アズライールのブーストを受け、パワーは12000。完全にガードしたければ15000ガード、つまり手札二枚を要求する数値だが
「ノーガードです」
受付のお姉さん、もうめんどくさいからヘルズドロー(仮称)でいいね?
ヘルズドロー(仮称)さんは隣の医師と一回目を合わせるとノーガードを宣言した。まぁよっぽどめんどくさいヒット時効果がない限りこれは通すよね。
「ドライブチェック、ゲット!クリティカルトリガー!効果は全部ヴァンガードだ!」
おぉ!いきなりダメージ二枚は強いよ~!
「よし!リンリンナイス!」
「はん!お前が役に立たなそうだからな、私が気合い入れねぇと!」
「事故りそうですいません!」
でもGアシストもあるし、なんとかなんべ?(目逸らし
なんかまたフラグになりそうなことを考えながらヘルズドロー(仮称)さんのダメージに落ちたカードに注目する
「ダメージチェック、二枚ともトリガーなしです」
一枚はドローかヒールを覚悟してたがこれは相当最先がいいですよ!ねぇリンリン?
「いや、正直嫌な予感がする」
え?なんで?
「では私のターンですね」
そしてこのターン、残念ながらリンリンの不安が的中する事になるのだ。
「私は媚態のサキュバスにライドして効果で一枚ソウルチャージ」
あ、ディメンジョンクリーパーがソウル入った。超TUEEEEE!
「更にブラッディカーフをコールしてカウンターブラスト、アズライールを退却させます」
な、なにィィィィ!?いきなり退却だと!?
「やっぱりか、私の相手はこんなんばっかだよ」
リンリンが口をゆがませながらアズライールをドロップゾーンに置く。
ち、ちくしょう、こっちの準備が整わないうちに退却スキルを使うなんて……このお姉さん。美人な癖に超外道だぜ!!
俺にはそんなことゼッタイデキナ~イ!
と、ここで俺の足に痛みが走る。
「あの、リンリン?」
「んだよ」
「俺の足踏んでるんだけど……」
「あぁそうか、不愉快なこと考えてそうだからそのまま踏まれてろ」
ちょwwwだから何故わかるしwwwてか痛いしwwww
「アタックに入ります」
「どうぞ」
「ではブラッディーカーフでヴァンガードにアタック!」
「ノーガード」
おい、俺に相談なしかい。まぁここはどう考えてもノーガードだけどさ
「では、グリーディーハンドのブーストで媚態のサキュバスのアタックです」
うむ、これもノーガードだね。
「ノーガード」
お、言わずとも分かるとはさすがだね~あと俺の足踏むのそろそろやめて?
「ドライブチェック、ヒールトリガーゲット、ダメージを一枚回復です」
あぁ!せっかく与えたダメージが、しかも実質コストまで回復してしまったよ!
そして俺の足を踏むリンリンの力が強くなる。あの、俺に当たらんといて(泣
「ダメージチェック、ゲットドロートリガー!一枚ドロー」
リンリンの一枚目のダメージは機動病棟ヒーリングパレス、二枚目にドロートリガーが落ちたため一枚ドロー出来る。まぁ上々といったところだろう。
「さて、俺のターンだが……」
グレード2にライド出来るかなぁ……?
リンリンが凄い勢いで睨んでくるし、お願い神様、仏様!俺にグレード2を!
「ドロー!っとよっしゃあ!!バーサークドラゴンにライド!」
どうだァァァァァァ!!これが運命に打ち勝った男のデスティニーライド二連発じゃい!!
「これはもう、勝ったかな?」
「それは流石に気がはえぇよ」
リンリンの最もなツッコミを華麗にスルーし、俺、安城マモルは桃源郷を歩くがごとき至福を味わっていた。
これはライド事故を回避出来た人間にしかわからない快感だろう。
よし、乗るしかねぇ、このビッグウェーブに!
「コール!ガトリングクロードラゴン、効果発動!」
ガトリングクロードラゴンの効果発動にはカウンターブラストが一枚必要なのだが俺のダメージゾーンにはカードはない。まぁアタックされてないから当然なのだが、しかし!心配ご無用、ここでタッグファイト特有のプレイングをお見せしよう。
「リンリン、カウンターブラスト宜しく!」
「はいはい……」
そう、カウンターコストはタッグで共有であり俺の方にコストがないならリンリンの方を使えばいいのだ。
「アモンの眷属バーメイドグレイスを退却させる!」
「あちゃー、いきなり退却か~」
正直、そのファーストヴァンガードはアモン軸でないと使いづらいがその分効果が凶悪すぎるのでちゃっちゃと退却させるに限る。そうしないとヴァンガードだけでなくリアガードまで止まんなくなっちゃうからね。
「更にカラミティタワーワイバーンをコール!ソウルブラストで一枚ドローする」
(あれ?あいつ、カラミティ入れたのか)
リンリンの目が少し丸く見開かれたのに気付かず、とりあえずガトリングクロードラゴンのおかげで溜ったソウルで一枚ドローする。かげろうでは貴重なドロースキルであるのでやっぱ入れないは甘えだったと最近気付きました。
「バトルフェイズ、サーデグのブーストでヴァンガードにアタック!」
「ノーガードだね」
「チェック、封竜アートピケ!ドロートリガーでカラミティタワーワイバーンのパワーを上げて一枚ドロー!」
(封竜アートピケ?この野郎……またデッキ微妙に変えてきやがったな)
どうやら退却だけでなく、パワー上昇にも枠を割きだしたらしい。これはまた対策が必要か?とリンリンが考えていたとはこれまた露知らず、俺はコールしたワイバーンに仕事が出来たことにガッツポーズしていた。
「ダメージチェック、クリティカルトリガーだね。パワーはヴァンガードに」
あ……っ(察し
ヘルズディールも後ろにいるし結局カラミティワイバーンの仕事はなかったようです。こころなしかギアースに投射されたワイバーンもしょんぼりしているように見える。
ごめんな~、でもブーストという仕事があるから頑張ってくれ。
「ターンエンドです」
「じゃあ、僕のターンだね」
そういう医師の盤面はもう仕事の終わったヘルズディールのみ、ここでバーメイドグレイスを退却できたのは相当大きい。
「ライド!アモンの眷属ロン・ジンリン!更にアモンの眷属ヘルズ・ディールをコールして二枚ソウルチャージ!」
ちょ、ヘルズ姉妹が安定して出るんですけど!?もうソウルが五枚あるからグレード3にライドすれば六枚ってことだろ?確か六枚以上だと~って効果ダクイレには結構多かった筈だからヤバいぞ……!
「ヴァンガードのロン・ジンリンでバーサークドラゴンにアタック!」
あぶね、二枚目のバーメイドグレイスはないみたい。あれ複数積む価値あるからな~
「10000でガード!」
ブーストもないようだし、防げる所は確実に防ぐ!
「ドライブチェック、アモンの眷属バーメイドグレイス。トリガーなしだ」
ほらァァァ!!やっぱあんじゃん!てかしっかり引かれちゃったじゃん!トリガーはないけどトリガーよりはるかに厄介なの引かれちゃったよ。
「じゃあ、ヘルズ・ディールのブーストでドローのアタック」
「ん~」
どうしようか、リンリン?
俺がちらりとリンリンの方を見ると、彼女は無言で『記録者アルマロス』のカードを此方に見せてきた。
あぁなるほど、ヒット時効果でプレッシャーを与えたいのね
「ノーガードで」
ヘルズ・ドローの攻撃を受け、バーサークドラゴンがよろめく。そしてダメージゾーンに一枚のカードが落ちた。
後は任せたぜ?リンリン
ここで時間を少し進め、ヘルズドローさん(仮称)と俺がグレード3にライドしたターンまで時を進める。
ダメージは四対四で今の所、ほぼ互角と言っていい。
「僕のターン、行くよ?」
と今までにこやかだった医師の目がキラリと鋭く光ったような気がした。
「先ずはライド、アモンの主謀者アスタロト。そして……
ジェネレーションゾーン解放!」
そういや、このターンからか、
「恐れと屈服を知らぬ最凶の
Gゾーンからカードが一枚、アスタロトの上にのり、アスタロトの姿がギアース上で巨大な鉤爪を持った大悪魔へと変貌した。
遠い昔、力によってアモンの元に下りながらもその爪を奴に突きたてんとした最凶最悪の叛逆者……その名こそ
「アモンの鉤爪マルコキアス!」
アモン名称のGユニット、アモンの鉤爪マルコキアスであった。
「アモンの眷属バーメイドグレイスをコールして効果発動!カウンターブラスト一枚で二枚ソウルチャージ!更にユニットを一枚選び『ソウルの枚数一枚につきパワー+1000する』能力を与える。対象はアモンの眷属ヘルズ・ディール!」
今のソウルは八枚、つまりパワー+8000がヘルズディールに与えられる。
「更にアモンの眷属サイコグレイブを二体コール!効果で二枚ソウルチャージしパワー+5000!」
げ、これでソウルは10枚、ということは?
「アモンの鉤爪マルコキアスの効果発動!リアガードを二体選び、ソウル五枚につきパワーを+3000!サイコグレイブ二体を指定し、更にマルコキアス自身のパワーも上昇!」
てことは6000アップかよ!え~と向こうがサイコグレイブだけだからパワー20000でしょ?でヴァンガード裏のバーメイドグレイスはレストしてるからマルコキアスだけでパワーが32000にトリプルチェックでしょ?
で最後にサイコグレイブとヘルズディールのラインがなんとパワー37000というね!
おい、なんだこのゴリラパワーは(ガクブル
「じゃあ行くよ?」
来ないで下さい(涙目
「マルコキアスでドラゴニックブレードマスターにアタック!」
言うてダメージはまだ四点、八点まで受けられる以上ここはノーガードでもいいのだが、おいそれとダメージをくらえない事情がこっちにはあるんでね!
「プロテクトオーブドラゴンでガード!完全ガード!」
ここは躊躇なく守護者を切らせて貰うぜ!
「トリプルチェック!」
デッキの上から三枚のカードが公開され
「ゲット!クリティカルトリガー!」
アモンの眷属グラオザーム、クリティカルトリガーがめくれる。
「効果は全てサイコブレイブに」
あぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁっす!?あのラインが42000の二点という化け物ラインにィィ!!
「ディールのブーストでサイコブレイブがアタック!」
さ、流石にこれは防げない……う、受けるけどいいかいリンリン!?
俺がそんな意思を込めてリンリンを見ると、軽くリンリンは肩をすくめた。
「ノーガードだ!」
それを了承と受け取り俺はクリティカルの乗ったアタックを甘んじて受けるのだった。
「ダメージチェック!」
一枚目は何もなかったが二枚目にヒールトリガーを引けたので結局ダメージは一点で済んだ。
「ふむ、じゃあサイコグレイブでヴァンガードにアタック」
パワーは20000、ダメージトリガーでパワーが上がっているからシールド5000で済むのだが……
ど、どれも切りたくねぇ(汗
リザードソルジャーベローグはこれから仕事して貰う予定だからまだ切りたくないし、あとは守護者はもったいなさすぎるし、あとは10000ガードだけか~でもなぁ~
とうんうん唸っていた所に
「ノキエルでガード、効果でダメージゾーンと手札を交換」
「ありがとうございま~す!」
リンリンから救いの手が差し伸べられた。そのままリンリンがノキエルの効果を発動し、ダメージゾーンのヒーリングパレスと手札のサニースマイルエンジェルを交換した。
これぞタッグファイトの大きな特徴、タッグガードである。当然二人で一つのアタックを防ぐことも出来るし、さっきみたいにパートナーがかわりにアタックをガードする事も出来る。
「いくぜ、私のターン!」
リンリンからこちらは
「
さっき回収したヒーリングパレスをコストに超越するユニットは
「
よっしゃ~!ヒット時スキルで一気に畳みかけちまえ!!
ヴァンガードの姿も凛々しさの中に一欠片の悲しみを湛えた瞳を持つ黒衣の天使から、時空を超越した神々しい天使へと姿が……
あれ?変わらない?
「え?おい、なんでウリエルになれないんだ!?」
別にコストが間違っているわけでもなく、相手のヴァンガードもシャルロハートヴァンピーア、グレード3なので超越する条件としては全く問題はないはずだ。
「あ~それはですね~ちょっとこちらのギアースが特殊でして」
うろたえる俺達にヘルズドローさんが頬笑みを浮かべながら教えてくれた。
「普通に
「うん、僕がやったみたいにしないといけないんだ」
「え?」
なぬ?つまり……あんな感じの口上を毎回言わんといかんの?恥ずかしっ!?
「因みに渦巻き頭の子は普通にやってくれたけど」
いや、ほらあのくらいの子はそういう年ごろだし?別に可笑しくはないんだけど、俺なんかは結構いい歳だから正直かなり恥ずかしいんですよ。
「ま、マジかよ……超越前提で戦術組みたててたからな」
ですよね~超越しないと始まらないもんねそのデッキ
「くそ、やってやろうじゃねぇか!」
マジ!?まぁリンリンも年齢を考えれば別に可笑しくないから気にしなくていいと思うけどね。
こほん、と一つ咳払いし再びリンリンはコストを払い、ストライドステップに移行する。
「怒れる神のごとき、純白の業火を司る者よ。我に陽光の祝福と、仇成すものに焔の裁きを!降臨せよ神の炎!」
おお!今度はちゃんとガウリールが別の天使に変わっていっているよ!
「
かつて、惑星クレイを作り出した創世神から生まれたとされる天使達の始祖の一人、四大天使ウリエルがここにまかり越した。
にしても……なんだかんだノリノリじゃないですか~(ニヤニヤ
「ぐ、何だよその目は!?」
「げふぅっ!」
アタックなら相手のヴァンガードにしてくれよ!なんでこっち殴るのさ!?
「うっせぇ!なんか腹立つからもう一発殴らせろ!」
「理不尽さここに極まれり!?」
なんか前もこんなやりとりしたような気がするんだが!?
「くそ、とりあえずガウリールのストライドボーナスから処理だな」
ふう、もうリンリンとファイトするといっつもこんなんばっかでなかなか進まないんだよね。
(仲いい二人だね)
(そうですね、院長)
対面の二人がそんな会話を目でしていたとは知らず、リンリンのターンはとりあえず経過していくのであった。
「では、私のターンですね」
なんか生温かい目で見られている気がしてならないのだが……
「人界に吹き荒れる抗えぬ嵐。その奔流をあなたにも!ストライドジェネレーション!」
あなたにも、のところで俺を意味ありげに見たヘルズドローさんがヴァンガードのシャルロハートヴァンピーアをGユニットへと超越させる。
「ストライド!愛の嵐キスリルリラ!」
文字通り骨抜きになる美声を持って大量虐殺をおこなったとされる超高位サキュバス、キスリルリラの顕現だ。
「シャルロハートのストライドボーナスでソウルチャージ!更にスコールメイカーヴァンピーアをコール」
更に盤面を埋めてくる。スコールメイカーヴァンピーアもソウルチャージを行えるユニットだ。
「キスリルリラでヴァンガードにアタック!」
確か、シャルロハートのスキルでリアガード一体退却スキルがあるんだよな、しかもキスリルリラはヒット時ワンドロー出来るスキルも持ってるし……正直通すのは得策ではない
ないんだが~?
「ノーガード」
通すんだな~これが
「?。ドライブチェック、ゲットクリティカルトリガー。パワーはスコールメイカーに」
お姉さんも怪訝に思ったのか一瞬デッキにかける手が止まったがそれでもしっかりとトリガーを引いてくる。
こっちは二点ともトリガーはでない。
「スコールメイカーでヴァンガードにアタック!」
「ガード、クリティカルヒットエンジェル」
「更にこちらからも10000ガードを出すよん」
合計26000ラインの攻撃だが、タッグガードであれば最小限の手札でガードできる。
これで俺以外の超越が終わりダメージは六対五、此方が一点多いがそれは想定の範囲内、注目すべきは俺とリンリンのダメージゾーンの枚数だ。
俺が二枚に対してリンリンが五枚、かなりリンリンの方にダメージが寄っている。
「これは……なるほど見事だね」
「あ?気付きました?」
俺達のダメージゾーンを見て医師から感嘆にも似た声が上がる。
「ダメージゾーン操作が得意なエンジェルフェザーの方にダメージを寄せる事で、エンジェルフェザー側を動きやすくしたのか」
これでラジエルとかラファエルとかが相当やりやすくなった。だけどそれだけじゃないんだな~?
「しかもカウンターコストを共有出来る利点を生かし、かげろう側が使ったカウンターブラストをエンジェルフェザー側がダメージゾーン操作をしながらコスト回復までこなす」
そう、つまりエンジェルフェザー側にダメージを寄せておけば、エンフェだけでなくこっちも非常に動きやすくなるって寸法よ!
全く、タッグファイトでのエンジェルフェザーは本当に頼りになるぜ!
「これは参った。どうやら相当タッグファイトに慣れているようだ。となると守護者カードはクインテッドウォールだね?」
「おぉ!御明察!」
「ちょ、馬鹿お前!」
いいじゃんよリンリン~こんくらいはさ?
タッグファイトに置いて忘れてはいけないのが守護者、つまり完全ガードについてだが、これは自分のヴァンガードを護ることは出来るが他人のつまりタッグパートナーのヴァンガードを護る事が出来ないようになっている。
このことからタッグファイトに置いて完全ガードの重要性は普通より下がる事になる。だが、守護者カードの中にはタッグでも十分機能するカードがある。それがクインテッドウォールであり、
その効果は山札の上から五枚をガード札としてコールすること、この効果でコールしたカードは当然リアガードも、タッグパートナーのヴァンガードも護る事が出来る。まさにタッグファイトにうってつけの守護者カードなのである。
いや~ファイトが始まる前に何枚か変えといてよかったぜ、流石に全部は変えないけどね。
さぁ、こっからは一気に攻めていきますぜ?
そこからファイトは熱く激しく燃え上がり
「ジルドレでアタック!」
「リンリ~ン!」
「叫ばなくても聞こえるっつ~の!クインテッドウォール!」
「サンクス!更にこちらからも10000ガードを出して完全ガード!」
「むぅ、見事」
青ひげの旦那のガード制限もタッグパートナーには意味をなさないんだよな~これが
「行くぜ、ジェネレーションゾーン解放!」
コストのカードをドロップゾーンに置き、ストライドを行わんとする。
「流派東方不敗は、王者の風よ!」
高々と安城マモルが拳を天に突きだす。
「全新、系列、天破、侠乱。見よ!東方は赤く燃えているゥゥゥ!!」
「パクリじゃねぇか」
「ないな」
「ないわ」
「えぇ!?カッコいいからって理由じゃダメ!?」
ちょうどかげろうも赤いクランだし会うかな~って思ったんだが……
まぁファイト関係ない所で盛り上がってたりもしたんだが、つつがなくファイトは進み
「よし、リンリンここはどうにか護りきるしかないぞ」
「おうよ、そっちのガードに期待してるぜ?」
任せとけ、と俺は手札にとっておいたクインテッドウォールを指でいじりながら応えた。
今はヘルズドローさんのターンであり、向こうも忌まわしき者ジルドレに超越してきていた。リンリンのガードがほぼ封じられている以上、こっちで護るしかない。
だが、相手も結構手札がカツカツなので、ターンさえ返ってくれば俺の超越で決着をつけられるだろう。
「いや~流石にお強いですな」
「いえいえ~それほどでもありませんよ」
「御謙遜を、確か前にファイトした新導さんも強かったですよね?院長」
「うむ、そうだね。ヴァンガードを初めて日が浅いというのが信じられないくらいだ」
いや、でもあなた達勝ったんですよね?お二人も強いじゃないですか~?
「「え?」」
「え?」
「いやいや、それが院長ってば油断して負けちゃったんですよ」
「え?そうなん……ですか?」
リンリンが控えめに聞いてきたのに院長と呼ばれた医師は少し恥ずかしそうに頷いた。
「う~ん、少し楽しみ過ぎてしまったね~」
あ、あれ?じゃあ新導君のあれって……?
「あ~あれかい?あれは勝者の証ってやつだね」
「」
「僕に勝利した者はまさに魔界の侯爵とも言うべき存在であり、閣下なんだ」
う、うん……?
「まぁぶっちゃけこのギアースを使ったファイトに勝つと何故かこうなっちゃうんだよね」
な、なん……だと?
り、リンリン?どうやら負けたらじゃなく……勝ったらみたいよ?
「……だって、普通負けたらとか思うじゃねぇかよ」
拗ねたようにリンリンが言う。うん、その顔をファンクラブのみんなに見せたら狂喜乱舞するだろうけどごめん!今はそういう事がいいたいんじゃないんだよ!
「まぁそれはいいじゃない、ファイトを進めようよ」
「そうですね、じゃあジルドレでアタック!」
「リンリン」
「……おう」
俺とリンリンは顔を見合わせ、一斉に叫ぶのだった。
「「ノーガードォォォォォォォォォォ!!」」
「ありがとうございました~」
さっきまでファイトしていたお姉さんの笑顔に見送られ、俺とリンリンはようやく歯医者を後に出来た。
「つ、疲れた……」
「私もだよ、ちくしょう」
歯の治療に来た筈なのになんだったんだろうか?正直、今日はもう何もやる気が起きない。さっさと帰って寝るとしよう。
と、なんか見覚えのある顔が此方に向かって走ってくるのが見えた。
「ん、トコハ?」
「あ、リンちゃん!……あぁ兄さんもいたんだ」
なぜ、俺を見てテンションが下がる?我が妹よ。
「どうしたんだよ、そんな急いで」
「あぁ、そうだった!」
トコハはぽむと手のひらを手で叩き、それを見て「兄妹ってやっぱ似るんだな」とリンが思っていたとは露知らずこちらに詰め寄ってきた。
「ちょっと助けて欲しいの!」
「助け?」
「うん!あのね?うちのクラスメイトに新導って奴がいるんだけど」
「ストップ」
「え?」
リンリンがこめかみを押さえながらトコハの目の前に手を突き出す。正直、俺も今の説明で大体察してしまった。
「なんかもう大体わかった」
「え、もう?」
「行くかリンリン」
「おう」
「え?え?」
トコハが俺とリンリンを交互に見てくるのを尻目に俺達は再びあの歯医者へと足を向けるのだった。
「「閣下から人に戻す方法教えろコラァァァァァァァァァ!!」」
「ちょ!?二人ともここただの歯医者!!」
トコハよ、一度でもここの治療を受ければそんなことは言えなくなるさ
~おまけ~
院長「にしてもなんでこのギアースは特別なんだろうね?」
受付嬢「ん~?もしかしてこれかもしれないですね」
院長「なにこれ?真っ白いカード?」
受付嬢「なんかギアースに刺さってました」
後日、あるファイターがその真っ白いカードを貰いにここを訪れるのだがそれはまた別の話である。