汚い、流石兄貴汚い   作:DEAK

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更新遅くなりまして大変申し訳ありません。少し会社の事情で沖縄の方に行っておりましてPCに触る機会がありませんでした……。もう少し文章が早く書けるようになりたいです(汗

以下ご連絡↓


ここでまた時系列を変更しまして、コロッケパンの話を後にずらしてチーム結成の話を先に書こうと考えています。理由は……御想像着くかもしれませんが、また若干のシリアスが入りそうだからです(汗

プロット段階でトコハが病んでるんですがががが……


あ、あと仮面ゴーストも後になりますが書く予定です。この話で意外な人物と接点が生まれる予定ですので、宜しくお願い致します。




外道と名前はまだない(アンノウン)①

「チームぅ?」

 

ここは勝手知ったる安城マモルが借りているアパートの一室、その家主はデザートのスイートポテト(自作)を口に放り込みながら向かいに座っている妹に気だるげにそう言った。

 

「そ、公式大会は三人一組のチームを組まないといけないの」

 

知ってるでしょ?と言外に含ませながら兄に習い、似た仕草でスイートポテトを食す安城トコハはしばらく口をもごもごと動かすと

 

「でも、メンバーが決まらなくて……」

 

嚥下した勢いを利用してうつむくという無駄にテンポの良い事をして見せた。

 

「まぁリンリンはディマイズにもう入ってるしね」

 

「うん、アムとルーナも仕事で忙しいだろうし」

 

トコハと仲のいい友人でヴァンガードの腕に覚えがある人物の筆頭として三人の名前が挙がるがリンは既にユナサン支部のチームディマイズの一員であるし、アムとルーナはラミーラビリンスとしての活動が多忙を極めているためチームを組むのは難しいだろう。

 

「エース君は?」

 

「連絡したんだけど丁重に断られちゃった」

 

(あれ?俺が連絡してもシカトすんのにトコハの方には返事するんだ……)

 

トコハがそれを聞けば当然でしょう?と白い目と共にツッコミを受けそうな言葉はマモルの脳内で反芻するだけにとどまった。

 

(これは、彼にはちょっとお兄さんの本気を見せつけるしかあるまい)

 

が碌でもないことを考えている辺りマモルがエースに避けられている理由に気付くことは永遠にないだろう。

 

 

「クミちゃんもまだグレード足りないし、もぉ~~!!どうすりゃいいのよ~!!」

 

(新導君や綺場君と組めばいいんじゃないかな?)

 

遂に机に突っ伏してしまったトコハを見ながらマモルはそんな事を考えていたが口には出さなかった。なんか紆余曲折ありながらその三人に落ち着くような気がしたからだ。

 

 

 

 

そんなやりとりがあった翌日の事……

 

 

 

 

 

「はい?ファイト?」

 

(えぇ、申し訳ないんすけど引き受けてくれると助かります!)

 

 

アカネちゃんが海外に行ってしまい引き継がれた仕事を悲鳴を上げながら片づけ、どうにか終わらせる目途が立った頃、カムイ君から電話があり、珍しいなと思いつつ出てみると、電話口の向こうでも頭を下げているのであろう事が容易にわかる程、申し訳なさそうな声色のカムイ君がファイトをして欲しいと頼んできた。

 

 

聞けば、トコハは同じくあぶれていた新導君や綺場君と半ば強制的にチームを組んだそうで。だが急増チームの上三人が三人とも我の強い性格ゆえ全くチームワークという奴がなってないそうで

 

 

「それでファイトでチームワークの大切さを教えて欲しいってことかい?」

 

(はい!ホントはトリドラに頼む筈だったんですけど、あいつらクエストでどっか行ってしまって)

 

「ふ~ん」

 

 

というか、俺にチームワークって無茶じゃない?

 

カムイ君も焦ってるんかね~?まぁファイトが出来るならこっちとしては万々歳ですけど、だがルールがなぁ~これは人手が必要ですな~

 

「まぁいいよ。ただ人が必要だから集まらなかったら悪いけど」

 

(そうっすね、それは仕方ないとして諦めますんで)

 

「了解~、じゃあそうだな30分あれば行けると思うから」

 

お願いします!という元気のいい返事と共に電話が切れたのを確認してマモルは鼻歌を軽く口ずさみながらある人物に電話をした。

 

 

「あ、悪いけどちょっち教えて欲しい事があるんだけど」

 

その時の安城マモルの顔は非常に悪い顔をしていた。と近くにいた支部長は後にそう語る。

 

 

 

 

 

 

「ヴァンガードの為に組んだチームです。ならファイトで試すのが常道でしょう!」

 

シオンの好戦的な目を隠そうともしない喧嘩(ファイト)上等な態度にカムイは表情だけは憮然としつつも内心は予想通りに事が運んだか、とそっと胸をなでおろしていた。

 

(マモルさんに連絡したのが無駄じゃなくなってよかったぜ)

 

それもこの三人、新導クロノ、綺場シオン、安城トコハはなし崩し的に組むことになったチームとは言えチームワークは壊滅的で三人四脚は一歩目でつまずき、組体操も即崩壊、じゃんけんで最初に出す手すらもバラバラというごらんの有様であった。

 

 

どう考えてもヴァンガード関係ないのは気にしたら負けである。

 

 

「ふん、いいだろう。こんな事もあろうかとちゃんとお前達に相応しい相手を用意してある」

 

「カムイさんっスか?」

 

「いや違う」

 

クロノの言葉を否定しながら、カムイは自身の後ろのドアを顎でしゃくる。

 

「お前達の相手はこの人だ!」

 

「降臨、満を持して」

 

「「マモルさん!?」」

 

男性二人が驚くのを尻目に若干息を切らしながら現れたのはクロノとシオンにとっては尊敬すべきクランリーダーであり、トコハにとっては愚兄という一言で済ませられる男、安城マモルが謎のポーズを決めながらそこにいた。

 

 

「やぁやぁ三人とも今回はこの僕が相手」

 

「仕事はどうしたクソ兄貴ぃ!!」

 

「あぶね!?」

 

言葉の途中で繰り出されたトコハの延髄を狙った容赦ない蹴りを彼は慣れた様子でガードする。

 

「いきなり蹴りかますんじゃない!この妹様は」

 

「うるさい!どうせサボってきたんでしょ!」

 

アカネさんがいなくなって大変なんだからちゃんとしてよ!と言うトコハにマモルはふふんと鼻を鳴らした。

 

「ところがどっこい、しっかり終わらせてきました~。流石にアカネちゃんを裏切ることは出来ないからね」

 

「ホントでしょうね?」

 

「もち、なんだったら支部長に確認とってもいいぜ?」

 

なおも訝しげに見てくるトコハをマモルは余裕の笑顔で受け流す。それを、トコハはしばらくじっと見つめると……

 

 

「ふ~ん、どうやら本当みたいね」

 

 

(((え?わかんの!?)))

 

傍から見ていた男性陣の心の中が一致する。

 

 

「やればできるじゃない」

 

「ハハハ、もっと褒めてくれていいのだよ?」

 

「はいはい凄い凄い、で?兄貴が相手すんの?」

 

マモルの方もそれを当然のように受け取りトコハとの会話を再開するあたり、流石は兄妹だ、と若干呆れ気味の感想を漏らすしかクロノとシオンにはできなかった。

 

 

「三分の一は正解かな?」

 

「?」

 

マモルの意味ありげな言葉に今度は意図が理解出来なかったトコハが困惑気にカムイの方を振り返る。

 

「今回のファイトはお前達三人と、マモルさん達即席チームでリレーファイトをして貰う」

 

「リレーファイト?」

 

トコハの視線に気づいたカムイがこれ幸いをばかりに今回のファイトの趣旨を説明する。その中に聞き慣れない単語があったクロノはシオンの方を見ながら

 

「知ってるか?」

 

と聞いた。

 

「一応ルールは知ってるけど、かなり複雑だよ。戦略も普通のファイトとは違う物になる」

 

勉強熱心なシオンは当然経験の少ないリレーファイトのルールも掌握していたがその顔は御世辞にも明るいとは言えない。

 

(慣れないルールにこのメンバー、相手はクランリーダー。勝てるビジョンが浮かばないな)

 

悲観的な考えに陥ってしまうのも無理はないがシオンはそれを力づくで振り切った。

 

 

 

(僕は僕のファイトをするだけだ)

 

 

「でも兄貴のチームって他の誰がいるの?リンちゃんでも呼ぶの?」

 

「リンリン呼んだらそのまま俺VSリンリンになっちまうよ」

 

だからちゃんと別の人間をよんであるよ。と言うマモルに特に五人とも(少し離れた所から見守っている新田シン含めて)疑問を挟む余地なくちょっと待っててと扉の向こうに消えた彼を見守っていた。

 

因みに描写が遅れたがここはカードキャピタル2号店、予期せぬ有名人の登場にクロノ達以外にもいた客がにわかに色めきたったのも記しておく。

 

 

 

 

 

「え~と、まず一人目はこの芋虫状態にがんじがらめにしたエース君ね」

 

「む”~~!!う”む”~~~!!」

 

 

「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」

 

「エース君!?」

 

がそんな浮ついた雰囲気も、御丁寧にさるぐつわまでかまし、本当にぐるんぐるんに簀巻きにされている帽子を深くかぶったエースの登場により一気に悲鳴へと変わる。

 

 

「彼はなかなか強いファイターだから胸を借りると言いよ」

 

「いや、この状態で普通に会話されてもですね!?」

 

「やっぱやらかしたかこの野郎!!」

 

それを何事もなかったかのように会話を続けるマモルにシオンが困惑を声に出す横でマモルの扱いには一日の長があるトコハが拳を握りしめ思いっきり奮う。

 

「おっと」

 

がマモルはそれをひらりとかわす、がトコハの狙いは初めからそこになく、未だに唸っているエースから目の前の外道を離すことにあった。

 

 

「ぐ、ほどけない……どんだけ固く結んでるんだこのバカ兄貴!」

 

エースをどうにか解放しようとするが、予想以上に固い結び目に苛立ちをぶつけるようにトコハが叫ぶ。しかしマモルは

 

 

「少々本気を出してしまった(キリッ」

 

「滅びろ!」

 

全く反省も後悔もする様子がなかった。

 

 

「くっ、ちょっと!新導も綺場も手伝ってよ!」

 

「お、おう!」

 

「わかった!」

 

「ハサミ持ってきますね~!」

 

クロノとシオンがエース救出の増援に向かい、シンが奥に引っ込み荷造り用のハサミを持ってくるのも見ずに、マモルが自分のデッキをいじっているのをカムイは呆れ気味に視線を向け

 

 

(やっぱ、この人に頼んだの失敗だった?)

 

とさっそく自分の選択を後悔していた。

 

 

 

 

 

 

「た、助かった……」

 

「ホントにごめん!うちのバカが!」

 

 

すったもんだあり、エースは十数分後無事に救出され、彼は平穏を噛み締めるように息を吐いた。

その隣で額を床にこすりつけかねない勢いで頭を下げるトコハに

 

「お、俺まで……?」

 

「つべこべ言わない!」

 

その隣でトコハに無理矢理頭を下げられている、というより勢いが強すぎて床に頭を叩きつけられていると言った方が正しい様子のマモルが渋々と言った感じで彼女に習って頭を下げていた。

 

 

「いや、もういいから頭上げて」

 

「さっすがエース君!」

 

「トコハだけね」

 

「!?」

 

「あの~エース君、このアホにどういった感じで連れてこられたの?」

 

ばんなそかなと愕然とするマモルに当然だろと言わんばかりのエースはトコハの遠慮がちな言葉に思い出したくもないここに来るまでのいきさつを話し始めた。

 

 

 

 

人々が織りなす街の喧騒から少し離れた裏路地を一人の人物がポケットに両手をつっこみながら歩いていた。

 

 

 

(……どうしよう)

 

 

その人物、エースはいつもせわしなく操作しているスマートフォンをポケットにしまいこみ所在なさげに通りをさまよっていた。

 

 

(暇だ)

 

 

そう、最近はカンパニーの指令も特になく、というよりボスである明神リューズがラミラビのパートナー弓月ルーナの義理の祖父だったという衝撃の事実で向こう側も揺れているらしくエースはほぼ放置されている状況であった。

 

 

エースはいつぶりか平穏な日々を享受していたのだが、元がワーカーホリックという言葉では足りないほどあちこちかけずり回っていたのだ。あっという間に手持ち無沙汰になってしまい今にいたる。

 

 

特に当てもなく歩みを進めていたエースだが彼にとって幸か不幸かその徘徊にも似た行動は直ぐに終わりを迎える事になる。

 

 

 

 

「あ、エース君久しぶり~」

 

「」

 

いきなり目の前に現れた安城マモルの手によって

 

 

 

エースはすぐさま踵を返し今まで歩いてきた道を全速力で引き返す。

 

 

「おっと、逃がさんぞ!ある伝手で君がここにいる事を聞きだすのにそこそこ苦労したんだからな!」

 

「知った事か!」

 

が安城マモルも素早く、簡単に回り込まれてしまう。しかしエースもバカではないここ数回のマモルとのやり取りでこの展開は予想出来ていた。

 

 

なので

 

 

「じゃあな!」

 

「ん?エース君やそっちはカベ……」

 

 

右に方向転換し、ゴミが辺りに散乱している金網をとび蹴りでぶっ壊す。

 

「なにぃ!?」

 

鈍い音を立てて、倒れていく金網にマモルが驚愕の声を上げるが、エースはそれにわき目もふらず薄暗い狭い道へと走り去って行った。

 

あの位置の金網はもろくなっており小柄なエースの力でも倒すことができると最近の徘徊で知っていた彼の作戦通りであった。

 

 

(勝った……!)

 

エースは人知れず微笑み

 

 

 

「ところがどっこい、勝ってないんだな~それが」

 

「どわぁ!?」

 

いつの間にか進行方向を塞ぐように現れたマモルにすっとんきょうな声を上げた。

 

 

「ぐ、どうやって!?」

 

「なぁに、これまた伝手でそこの金網が壊れやすいのをしっていたのさ」

 

どんな伝手だよ!とドヤ顔しているマモルにツッコミを入れたくなるエースだがそんな事している暇があったら逃げるべきだと学んでいるエースは踵を返す。

 

 

「そう何回も逃がさん!」

 

だが悲しいかな常にエースの想像を上回るぶっ飛び行動をするのが安城マモルであり、現に逃げようとした彼を一体どこから調達しどこで会得したのか、先に意匠をこらした重りのようなものをつけたワイヤーでぐるぐるに拘束してしまう。

 

 

「うわぁ!?」

 

「おっと危ない」

 

急に両腕を身体にぴったりと張り付けるような形で拘束されてしまったエースが勢い余って転びそうになるのをマモルは危なげなくキャッチする。

 

「危なかったね、エース君」

 

「そう思うならこれを解けよ!てかこんなワイヤーアクションどこで身につけやがった!?」

 

「それは無理な相談だぁ!因みに質問の答えは過去にちょっと色々あったと答えておこうか?ぜひBK201と呼んでくれ」

 

「うるさい!お前なんかBAKA201だ!」

 

じたばたと暴れるエースを上手くあしらいながらマモルは余裕の笑みを浮かべる。

 

見る人が見れば完全に犯罪者である。

 

「そもそも暇なんでしょ?だったら俺の頼みをきいてくれてもいいじゃない」

 

「なんでそこまで知ってんだ!?」

 

「え?ある伝手で」

 

「それはもういい!もし仮に暇だとしてもお前の頼みなんざ誰が聞くか!」

 

「暇なのは事実のようだね?」

 

「あ」

 

 

エースはしまったとばかりに口を塞ぐが時すでに遅し

 

「というわけでリレーファイトの面子確保だ!ワーッショイ!ワーッショイ!」

 

「うわあああああ!離せ!下ろせぇぇぇ!!」

 

「は~い、めんどくさいんで口ふさぎますね~」

 

「むぐ!?むぐぐぐ~!!」

 

 

こうして安城マモルはエースを神輿のようにかつぎながら、ごみと苔が錯乱する裏路地から姿を消したのであった。

 

 

 

 

 

 

「いや、普通に誘拐じゃないですか!?」

 

エースから事のあらましを聞いたクロノの第一声がこれだったのは当然の帰結と言えよう。

 

「え、そう?俺いつもエース君こんな感じで誘うんだけど」

 

「日常茶飯事!?」

 

クロノの中の常識が音を立てて崩れようとしていた。

 

「エース君そこのバカ思いっきり踏んでいいわよ」

 

「じゃ、遠慮なく」

 

「ノーーーーー!!」

 

トコハの言葉に本当に遠慮なしに自分を踏んでこようとするエースの足を転がってかわし、その勢いを利用して立ちあがったマモルはスマホを取り出し

 

「ほら!三人目ももうすぐ来るし!来れば話も変わるって!」

 

と言いだした。

 

「俺まだやるとは言ってないんだけど……」

 

帰っていい?と言外に大いに含ませながらエースは言うがマモルはうすら笑いを浮かべどうにか引き留めようとする。

 

「そんな事言わずにさ~。前に貰った蝶野アムさんのサインあげるから」

 

「要らないよ」

 

「え?なんで?」

 

「なんでって……」

 

なんでそんなキャッチ&リリースみたいな事されなきゃならないのか?

 

「だってエース君ファンじゃなかったっけ?」

 

「いやだからそれは」

 

この際だ、多少恥はかくかもしれないが誤解を解いてしまおうとエースが口を開いた矢先

 

 

 

 

「すまないが、カードキャピタルというのはここかね?」

 

「あ、はい!そうですけど」

 

年配の男性の声が静かな足跡と共に聞こえてきて、店員としてカムイが応対した。

 

 

「あ、どうも~!来てくれてありがとうございます!」

 

「気にするな、孫の頼みを聞いただけの話」

 

(孫?)

 

男性の声にやけに聞き覚えがあるな、とエースがマモルと話している男性に眼を向け

 

「はぁ!?」

 

絶句する。男性もエースの方に気付いたのか彼の方に眼を向け

 

「ほう、このような所にいるとは珍しいな」

 

「あなた程じゃないですよ」

 

落ち着いた調子で声をかけ、エースも帽子をかぶり直しながら目を伏せて答えた。

 

 

「あ、あの~」

 

「おっと、ごめんね」

 

とここまで蚊帳の外だった中学生達を代表してシオンが遠慮がちにマモルに話を切り出した。

 

 

 

「紹介がまだだったね、この人は最近知り合ったとっても強いヴァンガードファイターで名前は……」

 

マモルはクロノ達三人に今来た男性を紹介しようとするが言葉の途中で男性の方からクロノ達の方に歩み寄ってきた。

 

 

「明神リューズという。宜しく頼む」

 

「こちらこそ宜しくお願いします」

 

「お、お願いします!」

 

「します!」

 

予想以上に柔らかい物腰に一同面喰うが、社交界でも経験があるシオンがそれをうかがわせない笑顔で一番最初に返礼し、それにトコハとクロノも慌てて習った。

 

 

「ふむ、よい子達だな」

 

その様子がおかしかったのかリューズは頬笑みながら彼等三人のお辞儀を受け取った。

 

 

 

 

「はぁ、相変わらずあの人の人脈はどうなってるんだか」

 

カムイより年下の少年?と初老の男性という予想以上に幅広い年齢層にカムイはマモルの謎の人脈に呆れとともに一種の戦慄すら覚えていた。

 

 

「ねぇシンさん?」

 

「……」

 

「シンさん?」

 

「はい!?な、なななななんでしょう!?」

 

「いや、どうかしました?」

 

カムイがそう言ってしまうのも可笑しくないほど今のシンの狼狽ぶりは異常だった。

 

「な、何でもないですよ!ほ、ホントに!」

 

言葉ではそう言っているがなにもない筈ないのは明らかだ。

 

「そうっすか?」

 

「えぇ、そうですとも!」

 

カムイは到底納得行っていないような顔だが渋々矛を収めてくれたようでシンはホッと胸をなでおろす。

 

(な、なんでここに!?ていうか老けてません!?)

 

諸事情あって実はリューズと面識があるシンは視線の先でにこやかに談笑している初老の男性を信じられない物を見る様な眼で見ていた。

 

 

(ど、どうやら向こうは気付いていないみたいですけど……)

 

とりあえずファイトが終わるまで店の奥に引っ込んでおこうと決めたシンであった。

 

 

 

 

 

 

「まさか明神さんとエース君が知り合いだとは」

 

「まぁ色々あってな」

 

「色々?」

 

なにやら含みがありそうな言い方にクロノが首をかしげるが、マモルは合点がいったように頷いた。

 

 

「あ、わかりましたよ!ラミラビ繋がりでしょう?」

 

「は?」

 

エースが唖然とするのを尻目にマモルは自分で勝手に納得して話を進める。

 

「エース君はラミラビの大ファンだし、明神さんはなんと!弓月さんの祖父なんだぜ?」

 

「え、うそ!?」

 

「なるほど、そういう繋がりか」

 

トコハ達がまさかのつながりに驚愕している傍らでリューズはマモルの言葉の別の部分が気になったようだ。

 

「大ファン?」

 

「う」

 

リューズに視線を向けられ、エースはどう説明しようかと思考を巡らせる。

 

「そうそう!エース君は特に蝶野アムさんのファンでさ、デッキや戦い方は愚か即席の声帯模写まで出来る筋金入りのファンなんだぜ!」

 

「ちょ、おま!?」

 

思考を巡らせたはいいもののマモルが余計な援護射撃によりエースの努力は水の泡となる。

 

「……ほう」

 

(な、なんか凄い勘違いをされている気がする!)

 

しかもリューズはリューズは何かを悟ったのか憐れみをにじませた目でこちらを見てくるし、これは直ぐに誤解を解かねばならないとエースは口を開くが、リューズが妙に素早い動きでエースの耳元に顔を寄せる。

 

 

「マッチポンプは確かに有効な手段ではあるが……」

 

「こ、これには些細な行き違いがあって。俺がやりたくてやってるわけじゃあ」

 

「ふ、わかっている」

 

「いや、絶対にわかっていないよね!?」

 

頼むから聞いてくれとエースはリューズにどうにかして叫ばないように声量を調節して抗議するが

 

 

「そんなことしなくても君だってちゃんと人気があるから安心しろ」

 

「だから違うぅぅぅぅぅぅ!?」

 

 

 

エースの苦労はまだ絶えない。

 

 

 

 

 

 

 

「カムイ君そろそろ始めようぜ!」

 

「えぇ、そうっすね」

 

話があさっての方向に流れないうちに(もう手遅れな気がするが)マモルが本来の要件を切り出した。

 

(俺まだやるって言ってないんだけど)

 

自分の意見がデフォで無視されているエースは抗議したかったが

 

「ふむ、リレーファイトとは随分と久しぶりだな」

 

「先鋒は誰にします?それも大事ですよ」

 

「そうだな」

 

何故かやる気になっている自分の上司の姿を見て、どうせ無駄だろうと悟ってしまいエースは溜息をなんとか押し殺して帽子をかぶり直した。

 

 

 

「よし、じゃあ始めるぞ。まずはクロノ達っと」

 

「カムイさん?」

 

ファイトテーブルをはさんでマモル、エース、リューズと向かい合ったクロノ、シオントコハの三人は言葉を途中で切ったカムイに疑問を顔に浮かべる。

 

 

「……クロノ?」

 

「どうかしました?明神さん」

 

「いや、なんでもない」

 

何故か驚愕を目に宿したリューズをマモルが目ざとく見つけて声をかけるが軽くはぐらかされてしまった。

 

 

「そういや、お前達のチーム名ってなんだ?」

 

そんなやりとりがあったとは知らずカムイはクロノ達に自分の疑問をぶつけてきた。

 

「チーム名?」

 

「そんなのないわよね?」

 

「えっと……名前はまだないんすけど」

 

クロノ達が顔を見合わせてその旨を言うと

 

「じゃあ、チーム名『名前はまだない』!」

 

「ちょっとぉ!?」

 

カムイから無理矢理、言葉尻を捕えられてしまいあんまりなチーム名にされてしまう。

 

「ぷぷ、センスのなさがにじみ出てますよ~」

 

「あ”?」

 

「安城さん、その声は女性が出していいものじゃないよ……」

 

それをここぞとばかりにいじってきたマモルをどすの利いた声でトコハが撃退し、シオンが至極もっともな意見を控えめに述べる。

 

 

「ふふ、ならばお相手しようこのチーム『外道ドラゴンズ』がな!」

 

だがもう慣れたものかマモルはそれをあっさり受け流し、胸を張った。

 

「いやちょっと待て」

 

だがそこに今まで沈黙を保っていたリューズが口を開いた。

 

「そのチーム名お前が主体ではないか、ここはチームなんだから三人の意見をまんべんなく取り入れるべきだ」

 

「まぁ確かに」

 

流石は年齢を重ねた大人だ、どっかの外道も見習ってほしいとトコハが思っていたかは知らないが、リューズは更に言葉を重ねる。

 

 

 

「なのでチーム名は『RRR(ルンルンルーナ)ちゃん』にしよう」

 

「チームメンバー全く関係ありませんが!?」

 

リューズは数行前に自分が言ったことを数回反芻すべきである。

 

 

「そんなどっかの親衛隊みたいな名前やですよ!」

 

「む、それならチームのどっかにルーナを入れて欲しいんだが」

 

(じ、じじバカ?)

 

リューズの意外すぎる一面にクロノ達は目を白黒させる。

 

「じゃあ間を取って『外道ルーナ』で」

 

「最悪の間を取ったな!?」

 

「ルーナは外道じゃない!私の大事で可愛い孫娘だ!」

 

そこかよ!?とツッコミが入るがヒートアップしたリューズとマモルの耳には届かない。

 

「ですが他に外道とルーナを合わせる方法がないっすよ?」

 

「外道はないだろう、もう少しルーナに似合う感じにしよう」

 

「いやだからそれルーナ成分しかないじゃないですか」

 

「それの何が悪い!」

 

「言い切っただと!?」

 

喚くいい歳こいた二人の大人を横目で見ながらエースは

 

 

(RRRでルンルンルーナ、か)

 

現実逃避の意味も兼ねて先ほどリューズが言ったことを考えていた。

 

 

「……AAA(愛愛アムちゃん)」

 

「?エース君なんか言った?」

 

「な、なんも言ってないけど!?」

 

なぜこういうとこだけ地獄耳なのか

 

「え?でもなんか」

 

「なんも言ってないっつーの!」

 

疑問の追及をやめないマモルにエースは声を大にして叫ぶ。あんなとち狂った言葉を聞かれるわけにはいかない。エースは超がつくほど必死に否定した。

 

 

「え、そう?」

 

「そう!いいからさっさとチーム名決めろよ!」

 

その甲斐あってか渋々といった感じではあったがそれ以上の追及を辞めたマモルにホッと胸をなでおろすエースであった。

 

 

「チーム名決まりました?」

 

「おうよ、明神さん」

 

「わかっている」

 

いつの間に話し合いがすんだのかリューズはマモルに任せることにしたようでカムイの言葉にそっと目をつぶった。

 

「ではチーム名をどうぞ!」

 

「チーム名はですね~」

 

 

やっとか、とエースが呆れ気味にその様子を見届け……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「AAA(愛愛アムちゃん)でお願いします!」

 

「お前ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

ようとしたのだが気付いた時にはマモルの顔におもいっきり拳を叩きつけていた。

 

「ちょ!?危ない!?何すんのさ!」

 

「うるさい!!やっぱ聞いてたんじゃないかこの野郎!!」

 

それを腕でガードするマモルだがエースの怒りと攻撃は収まらない。

 

「何の話!?」

 

「黙れ!死ね!死んじゃえ!ばーか!!」

 

「ちょ、ちょちょちょちょちょ!?」

 

たまらずショップ内を逃げ回るマモルを顔を真っ赤にしながら追いかけるエースは店の物手当たり次第に投げかねない勢いで彼を追いかけ回す。

 

 

 

「落ち着けエース」

 

流石に見かねたリューズがエースの肩を掴んで追走劇を終わらせる。

 

「なにする、んですか!」

 

敬語を思わずかなぐり捨てそうになるがギリギリでセーブしたエースがリューズを振り返る。

 

「エースよ」

 

「は、はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は悪くないと思うぞ?」

 

「ちくしょおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「エース君!?帰っちゃだめだって!?」

 

リューズに思いっきりトドメを刺されたエースが店から走り去ろうとするが、マモルに残念ながら止められてしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

「なんか、向こうが楽しそうだね」

 

「綺場、あんたって大物よね」

 

「え?なんで?」

 

シオンのあっけらかんとした言葉にトコハの疲れたような声でそう漏らしたのが虚しく店の一角に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






かさねがさね更新遅くなりまして申し訳ありません!しかもまたファイトにいかないという……本当に言葉もありません(汗


なんかアニメが色々と凄い展開になってますね、ストライドゲート編41話なんてアムちゃんが凄く可哀想な目に会ってて、せめてこの作品では救ってあげるからね!と気合いを入れて書かせて頂きました。

ただ人を救うのはとても難しいと痛感いたしました(白目



最後に次回以降の話の進行予定をお知らせいたします。


次回:リレーファイト編

次々回:トコハVSクロノ(コロッケパンの話です。過去編も少々絡んできます)

次々々回:ユナサン支部編(トコハ達がユナサン支部にお邪魔します)


次々(ry回:仮面ゴースト(シオンが主役である人物と協力して仮面ゴーストを追い詰めます)


あくまで予定なので変わる可能性もあります。


それでは、次回は出来るだけ早く更新して行きたいと思います。

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