365日の魔法   作:アンパン食べたい

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休日返上?

 月曜日。今日は楽しい振り替え休日。朝からずっと部屋にこもり、ゲームをしている俺。やっているのは携帯ゲーム機の新作ゲーム。しかしおかげで俺の行動範囲はコンセントのある位置から半径2メートル程度。延長コード、買っておくべきだったな。

 ピコン

 と、机の上に置いておいたスマホが鳴る。ああ、面倒だな。一旦ゲームを停止しないといけないじゃん。

 ゲーム機をスリープモードにした俺は机の位置まで歩く。まったく、誰からだよ。人の休日を邪魔するやつはバチが当たるぞ。

 スマホの画面を開く。メールの差出人は知らない人だ。誰だよ、この人。迷惑メール?

『アスちゃん!穂乃果だよ!今すぐ神田明神に来て!』

 ……おかしいなぁ。俺、この人にメアド教えてないはずなんだけど。

 時計を見る。時刻は午後4時過ぎ。放課後に神田明神で練習でもしているのだろうか。とりあえず、呼び出されたからには行くしかないだろう。なんか気付かなかったフリとかしたら後で怖い目に遭いそうだし。

 高坂先輩のメアドを登録してから、俺は家を出た。

 

 

 

「遅いよ、アスちゃん!」

 ゆっくり歩きながら向かったところ、神田明神の明神男坂の下で高坂先輩が待っていた。

「あれ、先輩一人ですか?」

「ううん。上に海未ちゃんとことりちゃんがいるよ!」

 ゴクリ。やっぱり園田先輩もいるのか。そういえば、今日ってあれから一週間だよな?やばい、急に行きたくなくなってきた。

「先輩、今日は少し体調が優れな「よし、行こう!」先輩⁉︎」

 俺の腕を引っ張り、全力で階段を駆け上がる高坂先輩。この階段結構キツいはずなんだけど?あれか、練習の賜物なのか。随分と練習したんだな。感心する。

「うおおおおお!!」

 それにしてもいつになくハイテンションな高坂先輩。あれ、いつもこんな感じだっけ?いや、そんないつもとか偉そうに言うほど会ってないか。というか、このテンションは凛みたいだな。そのうちにゃー、とか言いださないよな?

「とうちゃーく!」

 あっという間に登り切ってしまった高坂先輩。その息はほとんど乱れていない。俺?息切れしてますけど何か?

「せ、先輩。早すぎ、です」

「だらしないですね、飛鳥」

「園田先輩?」

 膝に手をついて肩で息をする俺に近づいてきたのは園田先輩。その後ろには南先輩もいる。と、タオルを渡される。

「μ'sのマネージャーになったのですから、あなたもこの階段で特訓する必要がありそうですね」

「ちょっと待ってください⁉︎いろいろ突っ込ませてもらってもいいですか⁉︎」

 酸欠か?頭が全然回らないんだが。俺の聞き間違いじゃないよな?えっと、まずはマネージャーの件から聞くか。

「俺がμ'sのマネージャーってどういうことです?」

「そのまんまだよ。アスちゃんが私たちのマネージャーになったってこと♪」

 笑顔で答える南先輩。

「はい。土曜の夜、穂乃果の家に西木野さんからCDが届けられたんです。穂乃果が西木野さんに聞いた話だと、校外学習で飛鳥に説得されたらしいですね。見直しました」

 ……大丈夫か、この先輩?校外学習に行って帰ってきてすぐに作曲、その日のうちに完成させたって思ってるのか?園田先輩って賢そうで、実はどこか抜けているのかもしれない。

「しかもことりと穂乃果でダンスの基本まで日曜の練習までに考えたらしいんです。さすがに私も驚きました」

 金曜からずっと考えてたんじゃないかな、と思ったけど言えない。言った瞬間、俺の首が弾き飛びそうだ。もちろん、物理的に。

「というわけで約束は約束です。飛鳥、あなたはμ'sのマネージャーです」

「えっと、その、ありがとうございます」

 園田先輩の後ろでガッツポーズ、ついでにハイタッチまでしている高坂先輩と南先輩。共犯だったんですね。

「穂乃果とことりもいいですよね?」

「⁉︎う、うん!いいよ!」

「そ、そうだね!」

 振り返った園田先輩に、慌ててストレッチをする高坂先輩と南先輩。よくバレなかったな。やっぱり園田先輩ってどこか抜けてる?

「じゃあ次の質問いいですか?なぜ俺が階段ダッシュをしなければならないんでしょうか?」

「それはね、穂乃果が提案したんだ!やっぱりμ'sのマネージャーやるなら穂乃果たちと同じくらいキツいこと味わってもらわないと!」

 グフフ、とでも言いそうな顔で近寄ってくる高坂先輩。どうしよう、本当のこと言ってやろうか?そうすれば俺は即刻μ'sのマネージャーをクビになるだろう。……あ、でも物理的に首が刎ねそうだからやめとこう、うん。命は大切だからね。

「じゃあ、最後に。どうして園田先輩は俺のことを飛鳥って呼ぶようになったんです?」

「海未ちゃんはアスちゃんのことが気になるみたいだよ?」

 園田先輩のかわりに答える南先輩。え、もしかして俺にモテ期到来⁉︎

「な⁉︎何を言っているのです、ことり!私はただ、μ'sのマネージャーになったからにはもっと親しくしようと!」

「マネージャーの件を口実にアスちゃんと急接近しようとしてるんでしょ〜」

「穂乃果!違います!だいたい、飛鳥を名前で呼べといったのはことりでしょう!」

「ナ、ナンノコトカナ〜」

 なんだ、そうだったのか。俺にモテ期は来ていないらしい。少し残念だ。それにしても、園田先輩は真面目ゆえに南先輩や高坂先輩にからかわれて振り回されるんだな。俺が凛に振り回されたり、真姫に騙されたりしたのと似ているな。……え?全然違う?

「と、とにかく!飛鳥は私たちのマネージャーになったんです!」

「あ、先輩。気になったんですけど、マネージャーって何をすればいいんですか?」

「それは穂乃果が説明するね!アスちゃんには穂乃果たちの荷物を持ってもらったり、差し入れをたくさん買ってきてもらったり、穂乃果の宿題をかわりにやってもらったり「ゴンッ!」痛い⁉︎」

「ふざけないでください、穂乃果。マネージャーといっても、マネージメント的なものはあまりないと思います。私たちはスクールアイドルであって、あまり経済に関わることはありませんし。あるとしたら生徒会とかとの交渉くらいですね」

「つまり、どちらかといえば付き人みたいな感じだと?」

「普段はそういうことの方が多いと思います」

「だから、荷物運びとか、ライブの手伝いとか、スケジュール管理とかをしてもらうのかな」

「そう!だから穂乃果の練習時間を確保するために穂乃果の宿題を」

「穂乃果」

「な、何でもないよ〜あはは〜」

 そこまで高坂先輩は宿題を他人にやって欲しいのか?俺だと高校二年生の宿題はできそうにはないけども。

「まあ、これでμ'sは廃校阻止に向けてさらに一歩進んだね!」

「マネージャーとどう関係があるのですか……」

「今日はやけに騒がしいなと思ったら、テスト生が来てたんやね」

「東條先輩!」

 やってきたのは巫女さんの服装をした、音ノ木坂学院の生徒会副会長の、えっと……そうそう希先輩。苗字は東條というらしい。

「久しぶりやな、佐々木君」

「はい、お久しぶりです」

 二週間前の木曜日以来だもんな、本当に久しぶりだ。……たぶん。だって今まで友達とかいな……そこまで友達と疎遠になることがなかったからね、どれくらいで久しぶりなのかがイマイチ分からないんだよ。もう感動の再会で心の涙が止まらない。

「μ'sのマネージャーになったみたいやな」

「そうなんですよ、先輩!先輩に言われた通りアスちゃんを」

「待ってください、穂乃果!今何と?」

 高坂先輩が衝撃の事実を口走る。え、あれだけ熱心に俺をマネージャーにしようとしたのは、東條先輩の意向なの?

「そういえば穂乃果ちゃん、占いがどうって言ってたよね?」

「うん!先輩の占いってよく当たるんだよ!それでその結果、私たちμ'sにはアスちゃんが必要だって結果になったんだって!」

「そうだったのですか。たしかにその通りかもしれませんね。飛鳥のおかげで西木野さんに曲を作ってもらえましたし。ありがとうございます、東條先輩」

「え?あ、うん、そうやね」

 ん?少し東條先輩の反応が引っかかる。まあ、そこまで気にする必要もないか。何か別のことを考えていただけかもしれないし。

「さて、そろそろ練習をしましょう。飛鳥、あなたもですよ」

 まじか。ジャージ着てきてよかった。

 階段を下りようとしたところ、後ろから誰かに引っ張られる。そのまま物陰へ。

「ちょっと話があるんやけど?」

「何です?」

 なぜか俺にピッタリ密着する先輩。そんなに密着されるとですね、当たるんですよね。こんなに柔らかいんだなぁ、って!先輩の前ではそういう邪な事は考えないようにするんだった。煩悩退散、煩悩退散!

「佐々木君が西木野さんを説得したわけではないんやろ?」

 彼女の一言で煩悩どころか頭の中の全てが吹っ飛び、頭が真っ白になる。やがて飛んだものが戻ってきて、最初に言葉になったのは

「とりあえず離れてもらえません?」

 少し当たっててまずいんです、ええ。冷静な会話に支障が出るんで。

「佐々木君も男の子やなぁ」

 大人の余裕を見せつけながら離れる東條先輩。少し悔しい。いや、それどころではない。

「どうしてそれを知ってるんです⁉︎」

「先週やな。月曜日にここで西木野さんに会ったんよ」

 先週。先週の月曜日。なるほど、西木野さんが高坂先輩と連絡を取り始めた日か。だからといって俺が説得をしていないという根拠にはならないと思うが。

「それにさっきの話が加わるんよ。君が校外学習で西木野さんを説得したってわざわざ言うんやから、それは嘘やってことになる。違うん?」

「その通りです、はい」

「ウチの推理はどうや」

 胸を張る東條先輩。しかしですね、あなたにそれをされると非常に困るんですよ、主に目のやり場に。凛とは全然違う。って、俺は何を考えているんだか。煩悩(ry

「佐々木君」

 先ほどとはうって変わって真顔になる東條先輩。その雰囲気の変わり様に俺も背筋が伸びる。

「君なら分かるはずや。人を騙して作った関係がどういうものか。そうしてできた関係がどうなってしまうか、推理できるやろ?」

 きっと園田先輩との関係のことだろう。たしかに、俺と高坂先輩、南先輩は園田先輩を騙している。しかし、なぜそれを彼女が気にする?

 地面に置いてあった箒を拾うと、彼女は立ち去る。

「待ってください!どうしてあなたがそれを忠告するんです?他人事でしょう?」

 立ち止まった彼女はこちらを振り向くことなく、呟く。

「他人事ではないからや」

「どういう意味です⁉︎」

「自分で考えるんやな。μ'sのマネージャーさん」

 これは、挑戦状か。彼女は一度自分の推理を自慢し、今度は俺に自分で考えろと言う。だったら、その挑戦を受けてたとうじゃないか。推理してみせる、東條希という人物を。

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