365日の魔法   作:アンパン食べたい

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1番っていいよね

 翌日。5月2日。明日からは4連休。しかし土曜日と祝日が重なるとかまじありえない。

「部活の入部届は来週の金曜日までに出すように。それ以降は少しまた別の面倒な手続きが必要で、先生ダルいから受け取りません」

 何か超適当なことを担任が言っている気がするが、どうでもいい。机の上に置かれた入部届が風で飛ばされるが、どうでもいい。ただ、眠い。今一番眠い人選手権みたいなのがあったら一位になれそうだ。

「フワァ〜、眠っ」

 昨日、結局お小遣いが足りなかった俺は店長と相談し、その日1日だけ食器洗いや店内の清掃の手伝いをすることで許してもらうことに。優しい人で良かったよ。しかし、そのファミレスは25時まで営業。俺は26時まで働くことになった。いつから1日は26時間になったんだか。

 今日はもう寝よう。みなさん、お休みなさい。

 

 

 

 

 バシンッ!!

「痛っ⁉︎」

 突然誰かに頭を叩かれた。顔を上げると担任の顔。その手には数学の教科書。俺、この先生に何回叩かれたんだろ。

「おい、起きろ」

「すみません」

 また閉じてしまいそうな目を擦る。どうやら今は数Ⅰの時間らしい。

「説明を再開するぞ。背理法っていうのはだな、ある命題を証明するために、その命題が成り立たないと仮定し、それだと矛盾が導かれるのを証明することで命題の成立を……」

 コテッ

 頭に何かがぶつかった。紙くず?開くと猫の絵と文字。

『怒られてるにゃー』

 俺は数列右の方の席に座る凛を睨む。彼女はニヤニヤしていた。むかつく。

 お返しに紙の裏に鳥の絵を書く。ついでに馬鹿と書き込む。それを丸めて凛にーー

「おい、佐々木。何してるんだ?」

 まったくもって、今日はついてない。目の前に立つ担任が振り上げる教科書を見ながら、そう思った。どうやら俺はこの担任の先生に叩かれた回数もダントツ一位になりそうだ。

 

 

 

 放課後、俺は教室でレポートを書いていた。そういえば昨日渡す前にくしゃくしゃにしてしまったことをつい先ほど思い出したのだ。もう一つ忘れてるような気もするけど、まあいいだろ。

「よし、提出に行こう」

 書き終えた俺は生徒会室を目指す。ついでにタロットカードも返そう。いつまでも持っているわけにもいかないし。

 廊下を歩いていると、雲行きが怪しくなってきた。この後は雨か?良かった、折り畳み傘を持ってきておいて。

 生徒会室に着くと、ドアをノックする。

「どうぞ」

「失礼します」

 中に入ると、東條先輩と生徒会長がいた。しかし生徒会長は俺が入ってきたのを見ると、慌ててノートパソコンを閉じた。

「何してたんです?」

「あなたには関係ないわ」

 もしかしてあっち関係か?エロ関係ですか?うわぁ、生徒会長、生徒会室でそんなものを見て〜、はい嘘です、冗談ですから、そんな目で見ないでください東條先輩!というかどうやって俺の心の中を⁉︎

「それで?佐々木君は何しに来たん?」

「レポートの提出です。それとタロットカードを」

「やっぱり、占いは当たったやろ?」

「……認めたくないないですけど、そうですね」

 それに東條先輩の明日にはマネージャーに戻るという予言も当たってしまった。感服。

 レポートを生徒会長に、タロットカードを東條先輩に渡す。すると、生徒会長は怪訝な顔をする。

「あなた、また木曜に忘れたの?」

「えりちも忘れてたみたいやけどな?ライブの撮影に行ったりして」

「それは……」

 バツが悪そうな顔をする生徒会長。ふっ、ざまあ。

 少し愉悦感に浸っていると、それを見た生徒会長が睨んでくる。

「ところでマネージャーさん?廃校阻止という結果は出せそうなのかしら?昨日のライブを見た感じだとまだまだ無理そうなのだけれど?」

「うっ、それは……」

 したり顔の生徒会長。くっ、今に見てろ。後で後悔しても知らないからな!

「あ、佐々木君。μ'sは新しい曲を作ったりはしないん?」

 新曲?まあ、した方がいいんだろうけど。でも今のメンバーには作曲出来る人がいないからなぁ。また真姫に頼むしかないのか?ん?真姫?

「ああああああああああ⁉︎」

「何よいきなり⁉︎」

 耳を塞ぐ生徒会長に怒られる。けれどそれどころではない。昨日真姫と約束したんだった。すっかり忘れていた。

「失礼しました!」

 急いで部屋を出ると全力で走る。怒ってるよなぁ、真姫。

 

 

 

「遅い!」

「すみませんでしたぁ!」

 音楽室のピアノの椅子に座っている真姫に謝る。どうでもいいけど、足を組んでいる姿がカッコいい。

「ねえ、μ'sって新しいメンバーを募集したりしないわけ?」

「えっ?今何て?」

 真姫の足は綺麗だなぁとか思っていたら聞き逃した。今なんて?

「だから!μ'sは新メンバーを募集しないの、って聞いてるの!」

 ああ、新メンバーか。たしかにいた方がいいかもしれない。だってμ'sって9人の女神だろ?今三人しかいないし。それに、新しく部活を作るには5人必要だとこの間園田先輩が言っていた。俺を入れてもあと1人。

「するかもね」

「何よ、それ。はっきりしないわね」

「悪かったな。でも、何で?もしかしてμ'sに入りたいとか?」

「はあ⁉︎意味わかんない!何で私がアイドルをやるのよ!言ったでしょ、私はやらなくちゃいけないことがあるの!」

 そんなムキになって否定しなくても。俺はただ、もしかしたらって思って聞いただけなのに。

「あ、ところでさ。せっかく音楽室に来たんだから、弾き語りしてよ。まだ生で聞いたことが一回もないんだけど」

「まあ、別に……⁉︎や、やっぱダメ!」

「何で?」

 顔を真っ赤にして首をブンブン横に振る真姫。そこまで拒否しなくても。

「あ、あれはアスの前ではダメ!」

「えー、何でよ。っていうか、どれだよ」

 あれって言われてもわからない。"START:DASH!!"ではなさそうだけど。

「とにかく次!アス、昨日言ったわよね?自分がμ'sのファン第一号だって」

 たしかに言ったな。でもそれがどうしたんだ?

「悪いけど、ファン第一号は私よ」

 自慢そうに胸を張って言う真姫。悪いけど、東條先輩や花陽ほどはないよ?

「ねえ、アス。今失礼なこと考えなかった?」

「き、気のせいじゃないかなぁ。あははは〜」

 まさか東條先輩以外にもそういうことに目敏い人がいたとは。これじゃあ迂闊に考えられない。

 閑話休題。

「どうして?」

 なぜ彼女がファン第一号なのか。一応俺には一番最初に投票したという歴とした理由があるのだが。

「スクールアイドルのサイトあるでしょ?あれのμ'sに私が最初に投票したのよ」

 ……はい?あれ、俺が投票したはずなんだけど?

「いや、俺が最初だよちゃんと俺の投票のあとにランキングに載ったんだから」

「何言ってんのよ。私はちゃんとこの目で見たんだから。私が押した瞬間、ランクが999になるのを」

「それ、俺も見たけど?」

「……それって、もしかして校外学習前日の朝?」

「うん」

「……」

「……」

 えっと、つまり同時ということなのかな?一番が2人?急にプレミア感が薄れてきた。結構誇りに思ってたんだけどなぁ。

「えっと、次の話題に行こうかしら?」

 是非ともそうしてくれ。この変な空気は嫌だ。

「アスは部活決めた?」

「いや、まだ。というより、入らないかも」

「何で?」

「ほら、俺って男子だからさ、入ったところでこう、やりづらいというか。結局マネージャーみたいなことしかできないんじゃないかなぁ、みたいな。体育の授業みたいに」

 最近、体育の授業に変化があったのだ。以前は1人で陸上競技などをやらされていたが、現在は保健の一環として怪我した女子生徒の手当てみたいなことをやらされている。そして先生の話だと、それ以降、授業中に怪我をする生徒が続出したとかなんとか。思えば、結構多くの生徒を手当てした気がする。

「そう。参考にならないわね」

「悪かったな。今度凛や花陽にも聞いておこうか?まあ、聞かなくても想像はつくけど」

「そういう意味じゃないんだけど……」

「真姫はどこかに入るのか?」

「え?まあ、そうね。入るなら音楽関係の部活かしら?たぶん入らないけど」

「どうして?」

 入らない?なぜだろうか。真姫は歌もピアノも上手いんだから、それこそ合唱部とか入ればいいのに。

「言ったでしょ、やらないといけないことがあるのよ」

 そのやらないといけないことって部活もできないほどのことなのか?何だろう、気になる。今度教えてくれるのだろうか。

 ふと、窓の外を見ると雨が降り出している。やっぱり降ってきたか。

「真姫は傘持ってきた?」

「忘れたわ。やむまでここで待とうかしら」

 俺の傘に入る?、なんて言えないよな。恋人じゃあるまいし。せめて雨がすぐやむことを祈っておこう。

「じゃあね」

「ええ」

 音楽室から出る俺を小さく手を振って見送る真姫。その姿が可愛くて、少し気恥ずかしくなった俺は思わず急いで階段へと向かった。さっきは思いつきでμ'sに入りたいか、なんて聞いたけど、案外いいかもしれない。

 屋上に来る。先輩たちがいたりしないかと思ったが、ただ雨が降りしきるだけだった。やっぱりこんな天気じゃ練習しないよな。それにしても、やみそうにないな。どんどん強くなってきてる気がする。仕方ないなぁ。

 階段を一階まで下りて昇降口へ。俺の出席番号が17だから、真姫は22か。クラスの人数は6人×5列の30人。えっと……ここだな。俺はその下駄箱に折り畳み傘を入れるとポケットからスマホを取り出す。

「やみそうにないから、強くなる前に早めに帰れよ、っと。送信」

 スマホをしまった俺は土砂降りの中を全力で走る。帰宅後、仕事が早く終わって帰ってきていた母親に怒られたけど、そこまで嫌な気はしなかった。

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