365日の魔法   作:アンパン食べたい

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リーダー決定戦開幕!

 やってきたカラオケ。1人一曲ずつしか歌わないから一時間で十分だと俺は判断したのだが、なぜかフリータイム。しかもお菓子を大量に注文。それ、俺が払うんだろ?だったら俺に決めさせてくれよ……。

 カラオケルームにて、マイクを握ったにこ部長がエコーのかかった声で喋る。

『つまり、歌とダンスで決着を着けようってことなのよ!』

「決着?」

「点数を競おうってことかにゃ?」

『その通り!』

 俺の出したアイディアをさも自分が考えたかのように言うにこ部長。別に俺に利害があるわけではないし良いんだけどさ。

「でも、私カラオケは……」

「私も特に歌う気はしないわ」

 恥ずかしがり屋の海未先輩と面倒なことをしたくないらしい真姫は歌う気はないらしい。え、何それ。何のために俺はフリータイムの料金を払うわけ?まあいいや。穂乃果先輩にリーダーになってもらうにはそういう犠牲もしかたない。

『なら歌わなくて結構!リーダーの権利が消失するだけだから!』

「な、ならば私も歌います!」

「そうね、私も歌おうかしら」

 随分と急に態度を変えましたね?そんなにリーダーになりたいの?俺的には君たちになられては困るんだけど。

「海未先輩、別に無理して歌わなくて良いんですよ?」

「いえ、大丈夫です。……リーダーになったら立場を利用して……」

 うーん、どうやら簡単に諦めてくれそうにない。いったいなぜ海未先輩はそこまでしてリーダーになりたがっているんだ?そもそも、俺との約束は?リーダーをやるのだったらあの約束は無効ってことになりますけど?

「真姫も。歌いたくないのなら歌わなくたって良いんだぞ?」

 というか、真姫には是非とも辞退してほしい。真姫が歌が上手いのは知っている。ダンスの成績にもよるが、真姫が参戦すると穂乃果先輩がリーダーになる可能性がかなり減ってしまうのだ。どうせカラオケの点数が一番高くなるのは真姫に決まってる。

「アス、あれほど私の生のピアノの弾き語りを聴きたがっていたじゃない」

「そうだけどさ。ただ歌うだけならμ'sの練習でも聴いてるし」

「私がソロで歌うのよ?」

「……わかったよ」

 つい負けてしまった。だって聞きたかったんだもん、真姫の歌。さて、困ったな。ダンスで穂乃果先輩の評価が上がるように細工できないものか。いや、ここは穂乃果先輩の歌唱力に期待しよう。

「さあ、始めるわ!」

 

 

 

「ふぅ。恥ずかしかったです……」

 一番最後に歌ったのは海未先輩。カラオケで歌うのが恥ずかしいのならリーダーは向かないだろうに。

 しばらくして得点が発表される。93点。海未先輩もこれまた高得点だな。俺は手帳にその結果を書き込む。

「おお!海未ちゃんは93点!穂乃果より1点高いね!」

「アスちゃん、これでみんな90点以上よね?」

「そうですね。一番高いのが真姫で98点、次に花陽の96点、にこ部長の94点が続きますね」

 さすがはμ'sのみんなである。毎日練習をしているからな、その成果が出ているのだろう。しかし穂乃果先輩の順位は5位。点数的にはすごい良いのに、μ'sのレベルが高すぎる。

「こ、こいつら化け物なの……?」

ほら、にこ部長もそう言ってるし。

「ま、真姫ちゃんが苦手なところをアドバイスしてくれるから」

「気付いてなかったけど、みんな上手くなってるんだね!」

「時間も余ってるし、もっと歌おうよ!」

「あ、でもアスにゃんがまだ歌ってないね。どうせならアスにゃんも点数勝負しようよ!」

「俺?」

 俺か。正直なところ、カラオケに来たのは今回が初めてだったりする。中学生の頃は何度も何度も一人カラオケをしようとして入り口で踏みとどまったものだ。カラオケって基本1人でやるものにしては1人では入りにくいよな。……もしかして違う?だから宴会ルームみたいなのがあるんじゃないの?

 とりあえず歌本を開き、テレビで聞いたことのある曲を選ぶ。この流れで拒否はしにくい。

「マイク、どうぞ」

「ありがとうございます」

 海未先輩からマイクを受け取り、立ち上がる。

「あ、この曲だね!穂乃果も知ってるよ!」

「アスちゃん、頑張ってね」

「……まさか飛鳥まで90点台をケロッと取る化け物じゃないでしょうね?」

 イントロが流れ、モニターに歌詞が表示される。よし、俺も90点台を取ってやるぞ!

 

 

 

「楽しかったね、カラオケ!」

「次は何しよっか?」

 カラオケ店の近くのゲームセンターにやってきた一行。みんなカラオケが楽しかったようでなによりだ。けれど、俺はあまり楽しくなかった。だってみんな俺に歌わせてくれないんだもん。俺の転送した曲を消すわ、割り込みで曲を入れるわ。しかも最初の曲だって得点が発表される前に真姫が止めちゃったし。後奏の部分で曲を切った真姫曰く、『見たくないもの』だそうだ。もしかして俺の点数が自分の点数を上回るの瞬間を見るのが嫌だったのか?負けず嫌いだな〜。そうか、みんなが俺に歌わせてくれなかったのは俺の歌がうますぎたからか!はっはっはー!

「飛鳥、今度から基礎体力をつける練習だけではなく、歌の練習にも参加しましょうか」

「え、なぜです?」

「……自分に聞いてみてください」

 冷たいな。まあでも考えられるのはあれか。俺に歌を教わりたいということだな。さすが海未先輩、向上心がある。

「俺でよければ是非」

「是非じゃありませんよ……」

 海未先輩に呆れられる。え、何で?

「飛鳥君。私も頑張るから、一緒に頑張ろう?」

「花陽?あ、ありがとう?」

 よくわからないけど花陽に励まされる。でも、頑張るのって花陽たちの方なんじゃないの?

「アス、私が付きっ切りで指導を」

「ちょっと真姫!何抜け駆けしようとしてんのよ!」

「な⁉︎わ、私はただアスのことを思って!」

 ん?少し意味がわからない。俺のことを思って?それは嬉しいのだけれど、それと真姫が俺に付きっ切りで指導を受けるのとどう関係が?てか、そもそも真姫は俺の指導なんていらないだろうに。

「まあ、その話は置いておいて。次はダンス対決、これでやりましょう!」

 とりあえず適当にダンスマシーンを一つ指差す。こういうゲームはやったことないからわからないけど、どれも同じようなものだろ。

 と、にこ部長が俺に顔を寄せる。

「ふっ、さすが飛鳥。わかってるじゃない。このプレイ経験ゼロの素人が挑んでまともな点数が出るわけないアポカリプスモードエキストラを選ぶなんてね」

 ……あれ?選択ミス?穂乃果先輩はこれをやったことがあるのか?なかったとしたら俺はとんでもないことをしてしまったのでは?

「あの、やっぱり別の……」

「さあ、やるわよ!って、他の人たちは?」

 そういえばさっきから穂乃果先輩、ことり先輩、凛を見かけていない。どこに行ったのだろうか?

「穂乃果たちでしたら……」

「ことりちゃん!もう少し左、いや右!」

「ええいっ!」

「「「取れたー!」」」

 クレーンゲームをしていた。何やってるんですか、あなたたちのリーダーを決めようとしてるんでしょうに。

「何遊んでんのよ!緊張感が無さすぎるわよ!」

「凛は運動は苦手だけどダンスは苦手だからな〜」

「まあやってみようよ、凛ちゃん!」

 穂乃果先輩が凛を機械の前に立たせてスタートさせる。それを眺めていると、肩を叩かれた。

「飛鳥、ちょっといい?」

「にこ部長?」

「あんた、本当ににこがリーダーになれるようにサポートしてるわけ?全然そうとは見えないんだけど?」

「あ、当たり前じゃないですか」

 にこ部長から目を逸らす。すると依頼主と目が合った。彼女はにっこり笑う。にこ部長側につくか、彼女側につくか。もちろん答えは決まっている。

「何で目を逸らしてるのよ」

「あ、凛が終わったみたいだ」

 雲行きが怪しくなったのでその場から離脱、俺は凛の元へと向かった。凛のダンスの評価は、

「AA⁉︎」

「なんかできちゃったにゃ〜」

 隣でにこ部長が口をあんぐり開けて固まってしまっている。部長、子どもっぽい顔でそんな表情、じゃなくて、せっかくの可愛い顔が台無しですよ。

「ねえ、飛鳥。もう一つ別の勝負を考えといてくれるかしら?」

「了解です」

 俺としてもその方がいい。これ、他の人の成績にもよるけど凛がダントツで一位になりかねないぞ。

 手帳を開き、カラオケでの成績を確認する。それにダンスの評価の予想を追加。うーん、微妙だな。穂乃果先輩が一位になるには少し厳しいかもしれない。もう一つの勝負は何か穂乃果先輩が勝てる競技がいいのだが。

 何がいいのだろうか。和菓子屋の娘なのだから、商売とか得意なのだろうか?何かの叩き売り勝負でもするか?しかしそれはアイドルのリーダーの資格とは関係なさそうだ。じゃあ何を?

しばらく考え込んでいると、誰かが近づいてきた。花陽だった。

「飛鳥君、みんなの結果出たよ?」

「え?あ、うん。ありがとな、花陽」

 花陽に結果を教えてもらい、書き込む。大方、俺の予想通りだが思っていたよりことり先輩の成績が伸びなかった。B判定か。カラオケの点数も一番低かったし、ことり先輩がトータルで最下位になりそうだ。

 対して上位の方は混迷を極めている。にこ部長、穂乃果先輩、海未先輩が歌とダンスのどちらもできていて、凛はダンスが非常に良く、真姫と花陽はダンスはそこまででもないが歌の成績が良い。誰がリーダーになってもおかしくはない。

 待てよ。これを逆手に取ればいいのではないか?つまり、ことり先輩が他の人たちと総合成績で並べるような何かをする。そうすればこの勝負は無効にできるかもしれない。

 ことり先輩が得手とすること。かつ、トップアイドルに必要な要素に結びつけられること。ある。一つある。

「悪いけど花陽、もう少しみんなとゲーセンで遊んでてくれ!」

「えっ?」

「俺、少し用事があるから!」

 花陽の返答を待たずにゲーセンを飛び出した俺は学校へと全力で走る。最後の勝負、求められるのは"オーラ"。舞台は秋葉原路上、競技内容は、チラシ配り。これしかない。

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