東方化緑伝 【完結】   作:LOORUME

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久しぶりに、少し長めの文章です。
そして、地霊殿などの地底にあるべきものが地上にあるというオリ設定です。


第2章 それは美しかった。
12日目 旅行で旅行


さて、あたし達が幻想郷に来る前、あたしはやまたん(八岐鏡映)に幻想郷に関する幾つかの情報をもらった。勿論、観光目的として向いている場所のだ。その中に、こんな話があった。『地霊殿周辺に、名湯がいくつも湧いている』と。

そして先日、初めて文さんに取材されていた時に、こんな情報をもらった。曰く『地霊殿近くは性格が穏やかな妖怪が多い』と。

これは行くしかあるまい。1泊2日、地霊殿温泉旅行!

 

 

頭上にさんさんと輝く太陽。並木道に木漏れ日。立ち並ぶ和式住居。道路に寝転ぶ酔った鬼たち。

 

「あれ?」

 

来る時間帯間違えたかな?と思って上を見るとやっぱりお日様が。なんで昼間っからこんなに飲んだくれている奴が多いの?鬼か。鬼だからか。

先ほど通った橋の上にいたパルスィさんが言っていたのはこれだったのか。

 

しばらく歩くと、大きな看板が見えてきた。んん、『酒転道路』...しゅてんどうろ?

 

「ばけちゃん、これ何て読むの?」

「『しゅてんどうじ』じゃないかしら?ほら、鬼の酒呑童子とかけてるんじゃ?」

「なるほど」

 

ばけちゃんは意外と博識なのだ。あと可愛い。

 

「意外とは心外ね」

「読まれた!?」

「思ってたのね」

 

カマかけられた。くそう。

今回はばけちゃんの方が一枚上手だったようだ。

 

看板を通り過ぎると、酔っ払って肩を組んで歩いている鬼や、ゴミ箱に頭を突っ込んで寝ている鬼、日向ぼっこしているように見えて二日酔いを覚まそうとしている鬼など、カラフルな鬼たちがいた。

勿論、それ以外にも普通の妖怪や、恐らく人間もいる。そいつらも酔っている。

 

「酒臭いなあ」

「でも嫌いじゃないでしょ?」

「過度なのは嫌なのよ」

 

ふむ。まあでもなんとなく「酒転道路」とどうして呼ばれているのかわかった気がする。

 

 

 

さらにしばらく歩くと、地霊殿、と呼ばれる大きな館が見えてきた。先日のYKMで前の広場を使わせてもらった事を挨拶をするのも旅行の中の目的の一つだ。あと、温泉についての情報も。

門を通り、庭を歩き、立派な入り口につく。

 

「すいませーん」

 

ドアをノックし、様子を伺う。しばらく待つと、赤い髪の猫耳の女の子がドアからあたし達を覗き込んできた。

 

「何用で?」

「ちょっと、館の主に挨拶をしたいと思いまして」

「あいよ。待っててね」

 

すると女の子は顔を引っ込め、いなくなった。その5秒後また顔を出し、

 

「許可が出た。案内します」

「ありがとうございます」

「さ、入って」

 

中に入ってみると、これが広い。エントランスは100m走ができそうなくらい。

 

「こっちです」

 

階段を登って2階へ、廊下を渡って3番目の部屋に案内された。

 

「さとりさま。入りますよ」

 

ノックの後に赤髪の子がそう言った。

さとりさま。確かに聞いていた名前の通り、館の主人だ。

 

「はーい、どうぞー」

 

ドアを開くとそこには、桃色の髪をして、体に赤い紐のようなものが巡らされ、そして胸には赤い瞼に包まれた眼が浮いている、古明地さとりがいた。

 

「どうも。知っているでしょうが、古明地さとりです。

ああ、先日はどうも。化怪化ヶさんの雄姿、見せてもらいましたよ。まあ、卵代の出費は痛かったですがね」

 

話せない。というか話そうとするとその返事を言われてしまう。

 

「まあ、そう言わずに。もとい、そう思わずに。こういう喋り方はある意味癖になってしまっているのですよ。

あ、お名前?先日ステージ上で紹介されていたので知ってますよ、来上社ろくさん?

さっきの女の子?ああ、お燐と言って、私のペットです」

 

お燐ちゃん、はさっき猫に化けて部屋から出て行った。化けたというか戻ったのか?まあいいや。

ところでさとりさんは、結構お喋り好きなのかもしれない。

 

「まあ、そうですね。よく言われます。でもしょうがないんじゃないですか?だって、心が読めちゃうんですもの」

 

そう、彼女には『心を読む程度の能力』がある、らしい。

らしい、というのは話に聞いただけだから。まあ、こうやって読まれてるし実際にあるんだろうけど。

 

「ええ、ええ。ありますよ。まあ、理解してくれなくて、中には不仲な人もいますけどね。まあ、でも気にしません!なんてったって私にはこのメンタルが――』

 

さとりさんの独り言は、しばらく続いた。

なんとか温泉の情報を聞き出したあたし達は死線をくぐり抜け(てない)、館から脱出した。

「言葉のマシンガン、凄かったね」

「うん」

 

 

 

 

空が赤くなってきた頃、あたし達は目的地についた。

さて、ここが一つ目の温泉か。なかなか立派な造りで、宴会も何組か行えるくらい広いんじゃないか?ああ、銭湯というよりは旅館と言った方がいいのかもしれない。

 

「...今日はここに泊まっちゃうかい?」

「そうね、もうじき夜にもなるわ」

 

ということで、泊まることになった。ここは、『湯処 露盥泉(ろかんせん)』という場所だ。

玄関から入って、受付の人と話し、部屋を借りた。

 

その部屋も、二人では余るくらい広かった。少しの間、ばけちゃんとはしゃいで、遊び疲れたから風呂に入って、帰ってくると夕食の準備ができていた。湯加減もご飯もご馳走さまでした。

 

一日中それなりに飛び、歩いたあたし達はぐっすり眠れた。

 

 

 

 

12日目、終了。

 

 

深夜、部屋でごそごそという音が聞こえたが、意識を覚醒させる事は出来ず、そのまま闇へと落ちていった。

 




はい、ということで旅行中に旅行をするという、おかしな話でした。明日にも続きます。

お燐は何故か喋ることが5文字以内という縛りがかかっています。なぜに。

88戦中44勝目をあげた不死さんが勝ち誇り、コロンビアしていた、そんな感じの12日目でした。
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