東方化緑伝 【完結】   作:LOORUME

21 / 36
17日目 軽傷

 

昨日の魔理沙だけど、この前の味噌汁の恨みを晴らしたと思ったらどうでも良くなった。

 

 

 

 

 

「あだぁっ」

 

なんていう罰当たりな事を考えてたらこれだよ。つまずいて頭からすっ転んだよ。

 

「ろくちゃん?大丈夫!?」

 

仰向けにされ、ゆさゆさと揺らされる。ああ、ばけちゃん。最後に『へぁー』が見たかったよ....。

 

「ろくちゃん。ろくちゃん!」

 

泣かないで、そう言おうとしても口が動かない。思った通りに肺が空気を送ってくれない。ただただ、舌が空回るだけ。

 

「お願い...生きて....」

 

ああ、瞼の裏が、白いのか黒いのかもわからなくなってきた。もうそろそろ、お別れみたいだね。さようなら、ばけちゃ――

 

 

「ばけ、ご飯を早く運びなさい」

「あ、はい」

 

折角、面白いところだったのに。空気読めないなぁ、霊夢は。

 

「よくそんな茶番が出来るわね」

「いっつも演ってたからね」

「二人で?」

「二人で」

「.....呆れたわ」

 

そんなひどいかなぁ。

朝食を運び終えて、あたしは言う。

 

「ちょっと霊夢、額に擦り傷が出来たから消毒液とかとって」

「演技なんだから転ぶのくらい手加減しなさいよ」

「え?あれはガチ転びだよ?」

 

本当にバチが当たったのかと思った。

 

「.....呆れ果てたわ。ああ、救急道具だったわね。えーと」

 

霊夢が、がさごそと箪笥を漁っている。

 

「あった、これよ。早く手当てしちゃってご飯を食べましょう」

「わかったわ」

 

えーと、包帯、はそこまで大怪我じゃないから駄目。あ、消毒液あった。うーん、絆創膏?まあ絆創膏でいいか。えーと絆創膏はどこだーっと...。

 

「あれ霊夢、絆創膏どこ?」

「え?入ってないの?.....ああ、この前魔理沙に全部掻っ攫われたのを忘れてたわ」

 

なんでも盗むなあ。時間を超えて報復してくるとは恐るべし。

 

「しょうがないわね。あんた達、永遠亭に行くわよ」

「えいえんてい?」

「そう、医者よ」

「そこまで大した怪我じゃ...」

「いいから行くわよ」

 

というわけで、強制連行された。

 

 

 

 

 

 

「ん、博麗の。どうしたんだ?」

「けが人よ」

「けが?どこか怪我してるようには見えんが...」

「おでこ」

「ああ、お大事に」

 

やけに鬱蒼とした竹林で、髪が真っ白な少女と出会った。名前を聞きそびれちゃったけど、まあいいか。

 

 

 

 

 

「急患?」

「ええ、こいつよ」

 

立派な和風屋敷、永遠亭を案内してくれたのはうさ耳のついた女の子、鈴仙・優曇華院・イナバさんだ。

 

「...そこまで急ぐ必要はあるの?」

「ただの怪我だと侮っていたら酷い目に合うわよ」

「ふふ、やけにこの子たちに親切なのね」

「合わせるわよ、とくにわたしが」

「さて、永琳先生の居場所だけど――」

 

何やら霊夢が照れ隠ししてたみたいだけど、あたしは知らない。知らないんだってば。

 

 

 

 

 

「うん、普通に擦り傷ね。簡単な治療道具は出しとくから、なにかあったときに使いなさい」

「わかりました」

 

おでこにガーゼというものを貼られて、あたしは永琳さんと向かい合って座っていた。

 

「最近、霊夢の様子がおかしいっていうか、可笑しいって言われてるのよ」

「?」

「ああ、悪い意味じゃなくてね、最近『優しくなった』ってね」

「前は優しくなかったんですか」

「それがそうでも無くて、ええと説明しづらいわね。

前は、誰にも辛く当たらず、少し優しいってだけだったの。今は、あとすこし優しくなったっていうかね。いい言葉が思い浮かばないわ」

 

そんなものなんだろうか。どっちにしたって霊夢は霊夢だ。あたしが干渉できる域には居ない。

 

そんな感じで、少しの世間話で永琳さんの診療は終わった。

 

 

 

 

 

 

「ばけちゃん、大丈夫だった?」

「うん、すぐに治るって」

 

小説とかでこの台詞を言うと大概の場合は不治の病なんだけど、そうじゃなくてすぐ治る。

 

あたし達の会話を見ていた霊夢も、どこかほっとした様子だった。

 

 

 

 

 

17日目、終了。




ミスティアやリグルは、現在鏡源郷に居るので登場はありません。

いたずら軍団が八岐大蛇に無理矢理酒を飲まされ、目を回させられた、そんな感じの17日目でした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。