「うるさいわよぉ、妖夢。いいから今すぐ、ご馳走をつくりなさい」
「そうしなさい。ついでにわたしの分も――って、ろく?どうしたの?」
「ばけちゃんが、ばけちゃんが居なくなったの」
ボーン、ボーンと柱時計が鳴った。
21日目、開始。
ばけが?どういうことだ?と、私は思った。ふっと縁側を見ると、そこにはばけの影もない。
ふむ。
「うーん、トイレかなんかじゃないんですか?」
と、妖夢が言う。だがそれはあり得ないだろう。ばけがいくら口調が失礼だとは言えど、人の家の厠を借りる時に挨拶をしないほど失礼なやつでは無い。そんな内容の事を話すと、妖夢も意見を引き下げるしかなくなったようだ。
「じゃあ、どこか白玉楼の中で迷子になっているとかは、どうなのかしら?」
という意見が幽々子から出た。だが、それにはろくが反論した。
「いえ、それはあり得ません。あたしの能力――『縁を結んだり切る程度の能力』で、ばけちゃんの居場所がわかるはずなんです。―――いや、この能力ももう、能力の介入によって断ち切られてるのかもしれませんね」
少し焦りを含ませてばけが言った。
ふむ、そんな能力だったのか。まあでも、犯人はもう確定的だし、居場所は勘でわかる。
「大丈夫よ、ろく」
「霊夢?」
「うん。わたしが、なんとかするから」
少し時間が経って、ろくも落ち着いたようだった。
わたしは、先程の記憶を遡る。弾幕をし終わって、縁側へ降りて行く時だ。屋根に、スキマがあった。スキマというのは、空間に開かれた文字通り隙間で、点と点の移動や、はたまた結界を超えて移動することもできる。そしてここからが重要だ。そのスキマを操れるのは――少なくともわたしが知っている中で――一人しかいない。そう、八雲紫だ。
『大丈夫』『なんとかする』とは、それなりに解決の糸口を見つけているから言ったのだ。わたしもそこまで無鉄砲では無い。まったく、もう。
「ちょっと、犯人のところに行ってくるわ。そして、ばけを連れて帰ってくる」
「そう、いってらっしゃい」
「頑張ってください」
ふわりと、幽々子は微笑みながら見送った。妖夢の激励の言葉と共に、わたしは見送られるはずだった。
「待って、霊夢」
「どうしたの?」
「あたしもついて行く」
「!」
「犯人に、一言――いえ小言を言ってやらないと気が済まないわ。このあたしから、ばけちゃんを、奪ったなんていう奴には」
――来たようね。
その長い髪は黄金に輝き、美貌と混ざって見るものを誘惑する。幻惑させる。だがその瞳には、かつてあった輝きは無く、今はどんよりと曇っている。なにが彼女をそうさせたのか。
博麗神社の上空で彼女はそう微笑みながらそう呟いた。博麗の巫女それに対して大した気にしたふうもなく返した。
――来たわよ。それにしても、わたしの神社に人質を隠すなんていい度胸ね。
だが、彼女は憤怒していた。完全に憤り過ぎていた。憤慨していた。
――まぁ、いいじゃない。さあ、八雲の集大成を、弾幕ごっこを楽しみましょう。
そんなことなど露知らず、呑気に楽しもうなどと言う大妖怪にも、彼女は腹を立てていた。そして彼女は、怒りの感情を言葉に乗せる。
――『弾幕ごっこ』?はあ、いい?
わたしはね、異変だとか、決闘を申し込まれた時は弾幕を楽しもうと思ってるわ。
だけどね、紫。あんたが今やっているのはそのどちらでもない。ただの『事件』よ。誰が得するわけでもない、不毛な事件。あたしはそういうことをする輩には容赦しないわ。一瞬で、片付ける。
そして、こう続けた。
――覚悟しなさい。
と。
「うわぁ」
この口から漏れ出た声はあれだ、さっき妖夢さんが零したような感嘆ではなく、少しばかり引いてるだけだ。
霊夢さんの発した弾幕が9割がた当たっていて、しかもスペカを息継ぎ無しで連続使用している。今ので10枚目くらいだ。むしろ、スペカ10枚分耐えた紫さんを褒めるべきか――あ、落ちた。
まあ、無事退治されたようだし、尋問はあとにするか。
21日目、終了。
はい、詳しい解説というか設定は明日です。次話も、よろしくおねがいします。
空中から見てた烏天狗も巫女の弾幕を見て少し引いた、そんな感じの21日目でした。