-後日譚- 大宴会
「幻想郷、来たーーー!」
「柄になくテンション上がってるね、ろくちゃん」
それは仕方が無いだろう。だって、大宴会なのだから。宴会と言えば、酒だ。それに大がついたのだからさぞ高級な酒が出てくるに違いない、と決めつけた次第だ。
もちろん、人に頼るばかりではなくちゃんと自分でも持ってきている。酒とか、つまみとか。....酒とか。
これはなけなしのお賽銭から出資して買ったものだが、多少は勘弁してもらおう。神だって弾けたいのだ。
それに、この前の旅行では宿に泊まるつもりだったのが博麗神社に泊まったから、だいぶ宿泊費が浮いたのだ。決して小さな額では無い。その分だと考えれば安いものだろう、と自分に言い聞かせる。少なからず賽銭を酒代に使うことに罪悪感はあるのだ。
それはさておき、今は大宴会会場の博麗神社に歩いて移動してる際中だ。今はまだ昼にもなって無いからそこまで急ぐ必要性もない。したがって、ゆっくり急がずに向かう事にした。
「誰か新しい人が来てたりとか、面白いものが出来てたりとかしてないのかしら」
ばけちゃんがワクワクしながら尋ねてくる。
「うーん、いくら24倍とは言え、たった数ヶ月だよ?そこまで変わってないんじゃない?」
「そっかぁ」
露骨に落胆するばけちゃんも可愛い。
とぼとぼ歩きとか、ツボです。
「でもさ、幻想郷は広いよ。まだ会ったことがない人がいっぱい来てるはずだよ!」
「そうだね、じゃあ楽しみに臨もうかしら」
多少は気持ちが浮いたようなばけちゃん。扱いやすいような気もする。
昼時です。皆さんは何を食べるのでしょうか。
あたしはばけちゃんお手製の弁当を食べる所存でございます。
なんて冗談はさておき、旅行の時、一日目に弁当を食べたことを覚えているだろうか。実際には食べようとした、だが。
霊夢に昼食に誘われ、そのまま食べるタイミングを失って泣く泣く捨てたものだ。何が悲しいって、食べ物を無駄にした事もだが、あれもばけちゃんお手製だったのだ。赦すまじ霊夢。マジ赦すまじ。
その念願も果たすため、ちょっとした丘に風呂敷を敷き、昼食だ。二人揃って、いただきます。
ばけちゃん弁当美味しかったです。
さて、これから少し歩いたら博麗神社のある山の麓に到着する訳だが、時間にしては夜までちとある。
「どうする?このまま神社行っちゃう?」
「へぁ...他にどこか行くのも面倒だし、このまま行きましょ」
「わかったわ」
まぁ、場所取りっていうことで早めに行くことにした。早すぎて悪いことはない。たぶん。
ふむ、思ったより早く来ている人が多いようだ。今はまだ昼過ぎで、開演は夜からだと言うのに。
今はもう十数人来ていて、知ってる顔もちらほらいる。最終的には50人くらい来るんじゃないだろうか。まぁ、博麗神社の境内は広いしそのくらい居ても大丈夫だと思うけど。
「あら、来たのね。ろく」
「お、霊夢?」
後ろから話しかけられた。その声には聞き覚えがあり、予想通り、霊夢だった。
「そりゃぁね、大宴会と聞いたら行かないわけには行かないじゃない」
「成る程ね」
.....霊夢が何の用も無く話しかけてくるはずが無い。つまり、彼女が言いたいことは大体わかった。
「はいはい、お酒と、あとこれ色々だよ」
「あら、わかってるじゃない」
「そりゃあ、そういう目だったらね」
「どう意味よそれ」
「さあ?」
ふむ、煽るのはこれくらいにするか。
「ところでさ、霊夢」
「なによ?」
「この宴会って何人くらい来るの?50人くらい?」
「何言ってんの。大宴会よ。500人くらい来るわよ、きっと」
これはたぶんあれだな。彼女の願望だ。お賽銭もっと欲しいだとか、そういう感じなのだろう。しょうがないからお賽銭入れてくるか。神が神にお参りするってのも可笑しな話だけどさ。
ぶったまげた。
こんなに人数が来るとは思わなかった。
お日様が向こうのお山に頭を隠した頃、神社の境内には足の踏み場が無いほど人が集まっていた。それどころか、階段の脇もずらりと埋まっている。さらに言えば、どの角度から見ても山の斜面が見えないほどに人が集まっている。百鬼というか、これじゃあ千鬼夜行じゃないか。近くにはステージが設置され、騒がしい三姉妹が演奏している。
それはさておき、先程から心がドキドキするのだが、これは恋か?ばけちゃんに対する、愛なのか!?
「阿呆らしい事を考えてますね、あなた」
その声の主は、さとりさん?
「そうです、さとりです」
あぁ、この話せない感じ、やっぱりさとりさんだ。こういう、話せないって思ってるって気づいてるはずなんだけど...?
「この演奏してる方達はプリズムリバー三姉妹といって、騒霊です。少なからずあなたの心に干渉しているでしょう。それであなたは、少しハイになってるだけですよ」
あ、無視して話題変えた。
でも、そうなのか。これは、恋でも、愛でも何でも無かった...?そんなぁ...。
「まぁ、あなたの場合は嘘じゃないと思いますよ。上手く自制してますし、問題無いと思います」
「...何の話?」
「あぁ、ばけちゃん何でもないよ!」
――じゃあ、さとりさん、また今度。
そう思うと、さとりさんは柔らかい笑顔で返事をしてくれた。
む、あれは文さんじゃないか。彼女が飛びながら抱えてる人は誰だか分からないけど。
というか抱えられてるっていうことは、彼女は人間。しかも飛べるほどの能力が無い、となるとだいぶ危険じゃなかろうか。こんな所に来るのは。
まぁでも、文さんに守られてるからきっと大丈夫か。
前方を見ると、またもや見覚えのある人が。今度は二人組だ。
ミラルとハニエル、やまたんの従者的ポジションの人だ。あたしは普通に友人の態度で接していて、それなりに仲が良い。
ところで、なんでミラルはハニエルに叩かれてるのだろうか?
それから、三晩を越したあたりで、喧騒もそれなりに収まってきた。そろそろお開きというムードらしい。
途中、文さんと阿求と名乗る人間の女の子から取材されたが、それ以外は酒を飲んでる記憶しかない。傍には、酔って少し乱れて寝てるばけちゃんが。精一杯目に焼き付けておこう。
さて、それにしても、なんだろう、この虚しさは。さすがに飲み過ぎてしまって、何やってんだ、というやるせなさが残ってしまう。
......でもまぁ、ばけちゃんと色々喋れたし、呑めたし、目に収められたし、何でもいいや!
そして、朝焼け。この光はあたしを浄化し、えも言われぬ爽快感に包まれる。
やはり、幻想郷は良いものだ。楽しいものがいつもそこにある。誰でも手を伸ばせて、届くところにある。またすぐここに来ることになりそうだけど、飽きは永らく来なさそうだ。
この後、ばけちゃんの寝起き顔を見て悶絶するのはまた別のお話。
何かあれば、感想へお寄せください。
ところで、これ以上後日譚で語ることが無いんですが、どうしましょう。
蛇足もありすぎると駄目だし、このまま終わりというのもアリ...?いや、いまいち締まらないからあと少しだけ書くべきだ。
というわけで、あと少しだけ、化緑伝は続きます。お楽しみに。