一色いろはと家庭教師   作:煌弥

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お待たせしました!!
これにて八幡の家編は終わりです!!

読者の方から、「更新に気がついて最新話を見に行っても、一番下にあるのが番外編だからそっちに飛んでしまう。本編と番外編の位置を入れかえたらよくなると思う」という意見を貰ったので、入れかえてみました!!
どっちの方がいいですかね?
個人的な都合で申し訳ないのですが、本編は本編、番外編は番外編と分けたいので本編の合間に番外編を投稿した順にいれるというのはしないと思います。


八幡の通っている大学は原作通りにいくと私立のはずなんですが、この話だと国立になっていますm(__)m
狙ってやったんじゃなくて素で間違えてたんですが、初期から国立大と言ってしまっていたんでそのまま国立大でいこうと思います!!

ママハスガカキタイ





14

香水騒動から少し経ち、私と先輩は二人でテレビを見ていた。

こうして二人きりでまったりとテレビを見ていると、何だか恋人になったみたいで心が満たされる。

 

テレビでは動物番組がやっていて、今は子猫がたくさん出ている。

........か、かわいい!!

 

「先輩!! 子猫ちゃんとってもかわいくないですかっ!!」

 

「....まあそうだな。」

 

先輩は素っ気なく振る舞っているけど、さっきからチラチラと横目で子猫をみては口元がゆるんでいる。

男の人って素直にこういうのを可愛いっていうのは恥ずかしいのかな?

 

それからしばらくして、番組が終わってしまった。

途中から見はじめ、最後の10分くらいしか見れなかった。

 

うーん、まだ夕飯には早いしどうしようかな?

 

私がこのあとのことについて考えていると、先輩が話しかけてきた。

 

「....もしよかったら勉強するか? 見てやるけど...」

 

「...ほぇ?」

 

先輩から予想もしていなかったことを提案され、びっくりして変な声が出てしまった。

 

「えっと、私的にはとってもありがたいんですけど、今日の授業は終わってますしさすがに先輩に申し訳ないです。」

 

「いや、やらないんだったらそれでもいいんだけどな....もしやりたいんだった遠慮すんな。家庭教師とか授業とか関係なく先輩として見てやるよ。」

 

.....誰?

いや、先輩なんだけどそれはわかってるんだけど....

私の知ってる先輩は自分からこういうことを提案してこないはずだ。

 

先輩はまっすぐとこっちを見てそう言った。

その表情はとても真剣なもので、私はドキドキしてきた。

 

「....本当ですか?」

 

「おう」

 

ちょっ、そんなに真剣な顔でまっすぐと見られると顔が熱く...

 

「一色? どうかしたか?」

 

恥ずかしさとドキドキのあまり俯いた私に先輩が声をかけてくる。

 

「...何でもありません。その...じゃあお言葉に甘えて勉強を見てもらってもいいですか?」

 

まだ顔がほてっていて正面から先輩を見れなさそうだから上目で先輩を見る。

 

「...っ!! あ、ああ、いいぞ......あとそのあざとい上目遣いやめろ....」

 

「へ?あざとい...? えっと、素なんですけど....」

 

「は?」

 

「え?」

 

沈黙が訪れた。

お互い固まって何を話したらいいか分からなくなっている。

 

「...ど、どの科目を見てもらいたいんだ?」

 

「へ? あ、あぁ、えっと....これです。」

 

また変な雰囲気になりかけたけど、先輩が何とかそれを防いだ。

私は持ってきたバッグの中から数学の教材を取り出して先輩に渡す。

 

「......すまんが数学はわからん」

 

「え?でも先輩国立大に通ってますよね?」

 

私立と違い国立大学は大学によっても様々だが、基本的には国数英の3科目は必要のはずだ。

 

「....受験前に他の科目でカバーできるぐらいまで死ぬ気で詰め込んだんだよ。受かったら全部忘れた。」

 

「何ですかそれ...」

 

「そういうわ訳だから、俺は理数系はほとんどできん。見るなら文系科目がいいんだが...」

 

私はどちらかといえば理系だったから、数学や化学はそれなりにできる。

だから、家庭教師を頼むときに「英、国などの文系科目を教えてもらいたい」とお願いしていた。

もしそこで理系科目も教えてほしいと頼んでいたら、こうして先輩と再会できていなかったかもしれない。

あのときの私ナイス!!

 

「しょうがないですねー、じゃあ古典を見てください!!」

 

「よし、任せろ」

 

「はい!!」

 

私は返事をすると、勉強道具を持って先輩の向かいから隣へと移動する。

 

「.....何でこっち来たの?」

 

「いいじゃないですかー!! こっちの方が近くて見やすいと思いますよ?」

 

「近いのが問題なんだが.....はぁ、まあいいか。......いや、よくないな、さすがに近すぎませんかね?」

 

私は座布団を先輩の座布団と隙間なくぴったりと合わせそこに座った。

 

「まあまあ、近い方が見やすいですよ!!」

 

「それにしてもこれは近すぎるだろ....。そういうことをするから、世の中に勘違いをして黒歴史を作っちゃう男がたくさんいるんだよ。」

 

そんなにたくさんはいないと思うんだけど....

それにしても、やけに感情こもってたけどもしかしてそれって先輩の体験談かな?

 

そこでふと、高校一年生のときにやったバレンタインのイベントのことを思い出した。

あのときから先輩に惹かれ始めてて....じゃなくて、それは今はいいんだ。

あのときに海浜の生徒で先輩と知り合いの女の子がいたはずだ。

名前は.....折本だっけ?

そして、その人と話すときの先輩はどこか気まずそうにしていた。

もしかして先輩が勘違いしたのって.....

 

一度は治まったドロドロとした感情がまた沸き上がってくる。

違うところは、さっきは悲しくなってきて泣いちゃったけど、今回はそういう感じじゃない。

嫉妬だ。

先輩が他の女の子が好きだったと知っただけで、終わったことだとしても何とも言えないモヤモヤとした感情が胸を締め付ける。

 

先輩には私だけを見てほしい..........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....こんなことをするのは、先輩だけですよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がついたらそんなことを言っていた。

無意識に先輩の袖を軽く摘まんで引っ張っていた。

 

「なっ....」

 

先輩の目が驚きで見開かれた。

 

距離はお互いの息遣いをはっきりと感じられるくらい近い。

 

「おまっ....何言って.... 」

 

頭がボーッとしている。

先輩の息と自分の鼓動の音だけがはっきりと聞こえる。

 

「嘘じゃ...ないです.....」

 

徐々に顔の距離が近くなる。

先輩は金縛りにあったかのように固まっていて動かない。

 

そして.................

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ガチャッ』

 

 

隣の部屋の玄関が開かれた音がした。

普段だったら別になんとも思わないような小さな音だけど、静まり返っているこの空間ではやけにはっきりと響いた。

 

そして、その音を聞いた瞬間に麻痺していた理性が戻ってきた。

私は何をしているの?

 

「..........っ!!!」バッ

 

急いで先輩から離れる。

今私は何をやろうと.........

 

「ど、どうですか今の!! これならどんな男の人でも落とせますよね!?」

 

「...ぇ? あ、あぁそうだよなそういうことだよな......はぁぁぁ」

 

先輩は上を見上げて大きく息を吐いた。

そして、握り拳を作ると、コツンと軽く私の頭に当てた。

 

「いいか、からかうぐらいならいいがさっきのはやりすぎだ。そういうのは本当に好きな人にしかやるんじゃないぞ?」

 

「ぇ? え、えっと....」

 

そのあまりに真剣な口調に私はたじたじになっていた。

やりすぎというのは、多分顔が近づいていったことだろう。

 

「いいな?」

 

「は、はい....」

 

勉強をやるかと提案してきたときとは比べ物にならないほどの、怖いくらい真剣な表情に私は目がそらせなくなっていた。

実際には数秒なのだろうけど、何時間とも思える時間先輩と目を合わせていた。

 

「はぁぁぁぁ」

 

先輩はもう一度大きく息を吐いて私から目をそらした。

そして、私の頭に当たっていた握り拳を開くと優しく私の頭を撫で始めた。

 

「ならいい」

 

その優しい声と撫で方に、私は何だか泣きそうになった。

 

「....ごめんなさい」

 

「謝んじゃねぇよ、次から気を付てくれればいい。....えっと、古典をやるんだったな」

 

「あの...先輩?」

 

「なんだ?」

 

「...その、気持ちが落ち着くまで撫でてもらってていいですか?」

 

「.....まあそれくらいなら」

 

それから私は落ち着くまで先輩に撫でてもらった。

 

 

※ ※ ※

 

 

あのあと古典を一時間ぐらい先輩に見てもらい、ちょうどいい時間になったから夕飯を準備しだした。

その準備のときに、私が手伝うか手伝わないかで一悶着あったんだけど、先輩に

 

「一色の家で夕飯をご馳走してもらうときに俺は座ってるだけだからな。自分の家の時ぐらいはやらせてくれ。」

 

と言われて私は手伝うのを諦めた。

 

先輩はキッチンからどんどんとコップやお皿を持ってくる。

その姿は専業主夫そのもので、将来こういう生活をするのも悪くないかなって思ってしまった。

まあ働いてもらうけどね。

.....その前にそういう関係になれるかわからないけど。

 

 

そうして先輩の手で手際よく夕飯が準備された。

 

「「いただきます(まーす!!)」」

 

メニューはカレーだ。

特別な味付けとかはされていない、ごく普通のカレーだったけど私にとっては今まで食べたどんなカレーよりも美味しいと思った。

 

「おいしいです!!」

 

「ルーの箱に書いてあった通りに作っただけだけどな。」

 

「それでも美味しいんです!!」

 

「....そりゃどうも」

 

先輩は恥ずかしそうに頬をかいている。

 

「先輩!!」

 

「なんだ?」

 

「今日はありがとうございました!!」

 

「.....おう」

 

 

※ ※ ※

 

 

夕飯を食べ終わった私は先輩に送られながら駅まで歩いた。

道中会話は少なかったけど気まずいとかそういうのではなくて、こうやって一緒に歩くのが自然な感じがして、それが心地よかった。

 

そして駅の改札の前で先輩と向き合う。

 

「とっても楽しかったです!! ありがとうございました!!」

 

「...まあ俺も悪くなかったよ。」

 

改札を通ると先輩とさよならしなくてはいけない。

......ずっと一緒にいたいな。

そう思っても帰りを引き延ばすいい案があるわけでもない。

 

私は寂しい気持ちになりながらも、ゆっくりと先輩に背を向けて改札へ歩き出す。

 

「....一色」

 

そこで先輩が声をかけてきた。

私は半身で振りかえる。

 

「何ですか?」

 

「あー、いや、そのな...」

 

先輩はそれからしばらくどもっていた。

そして

 

「.......いつかまた来いよ」

 

「.....へ? い、いいんですか?」

 

「.......そんなに頻繁に来られたら困るが、まあたまにならな。」

 

予想外の一言に、私は混乱していた。

しかし、徐々に頭の中が整理できて、それと同時に嬉しさが沸き上がってきた。

 

「はい!! また今度おじゃましますねっ!!」

 

「.......おう」

 

そのときの私の笑顔は、今までの中で一番いいものだった。

 

「では先輩、さよならでーす!!」

 

「ああ、またな」

 

さっきとは違い軽い足取りで改札へ歩く。

そして、改札を通りホームへ向かう。

後ろを確認して見たら、先輩は私が見えなくなるまでずっと改札の向こうから私を見ていてくれた。

 

 




前半に力を入れすぎて後半がキツキツになってしまったw
気分屋なので、今回の前半のように書きたいところを書き終わっちゃうと満足してしまい、そのあとがどうしても短くなってしまうんですよね(-_-;)


「子猫ちゃんかわいくないですかっ!!」
のところは自分の頭の中でとあるアニメのヒロインが紐を引っ張ると温かくなる駅弁を手にして言った
「すっごくないですかっ!!」
と同じトーンで再生されますw


来週からテストが始まり、金曜日に終わるので次の投稿はいつになるかわかりませんm(__)m

そして次の話からはパパはすを登場させようと思っています!!



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