一色いろはと家庭教師 作:煌弥
午後の授業は眠気との戦いだった。
例の時間で体力を消耗したからか、とてつもなく眠かった。
遥なんか机に突っ伏して爆睡してたしね。
そして放課後、遥は塾に行き、私は綾音と二人で駅まで歩いた。
駅で綾音と別れてホームで電車を待っていると、後ろから声をかけられた。
「あ、あの!!!」
「へ?」
なんかすっごい裏返ったような声で驚いた。
振り向くと、総武高の近くにある私立高校の制服を着た男子生徒が立っていた。
背は私と同じくらいで、可愛らしい顔立ちをした男の子だ。
「こ、これ.....」
そういって男の子が差し出したのは私の生徒手帳だった。
「さ、さっき、かかか、鞄から落ちてました!!」
なんかすっごく緊張してるけど大丈夫かな?
「ありゃりゃ、気を付けないと。ありがとね!!」
「ハグァ!?」
だ、大丈夫かな....?
同級生以下の男の子に可愛く見せるために敬語を使わないのはもはや癖だ。
敬語を使うと親しみにくく感じちゃうからね。
相手が年上だとまた別だけど。
でも先輩以外の人と付き合うつもりはないのに周りの男子から好かれるようなことをするのは自分でもどうかと思う。
思うんだけど、これはもう癖みたいなものだし、急にこういうことを止めると先輩に何か言われそうだし....
でもでも、こういうことをしてるから先輩はいつまでも気がついてくれないんだよなぁ....
でもでもでも............キリがないからこれくらいにしておこう。
意識を私の前でガチガチに固まっている男の子に戻す。
「.....ん?」
あれ、この子どこかで.....
「えっと....いきなりで悪いんだけど、君の名前を教えてもらってもいいかな?」
「うぇえ!?!?」
この子と話すと一々反応があって面白いな...
「そ、その、えっと....か、神田晴斗と申します!! 」
「晴斗くんかぁ....あ、私は一色いろはって言うの!! よろしくね!!」
名前呼びもあざとく見せる癖だ。
「ひゃ、ひゃい!!」
神田晴斗.....聞き覚えはないなぁ
となると顔だけどこかで見たことがあるとかかな?
でも道を歩いてる人の顔なんて一々覚えてないから、見覚えがあるってことはどこかで会話をしたことがあると思うんだけど.....
もう少しだけ詳しい質問をしてみようかな?
「えっと、私ってもしかして晴斗くんとどこかで会ったことない?」
「!?!? へ? いや、うぇ!?」
な、なんかめちゃくちゃ動揺してる....
この子が動揺してる姿ってなんか小動物みたいで可愛らしいな。
晴斗くんはそれからしばらくオロオロしていたけど、突然何かに思い当たった顔をした。
「あ、き、昨日アパートで....」
「アパート?」
昨日行ったアパートって言ったら先輩のアパートだ。
.....ん?
「あ、205号室の人!!」
そうだ!!
先輩の部屋の前で待っているときに隣の部屋から出てきた男の子だ!!
「そ、そうです!! 205号室の人です!」
「...ふふ、自分で205号室の人って言うのなんかおかしいよ?」
「えぇ!? えっと、その、、、」
「ふふ、そんなに緊張しないでもいいよ」
「は、はい....」
これはチャンスだ(ニヤリ
何がチャンスかと言うと、晴斗くんと仲良くなっておけば先輩のことがもっとよく知れるかもしれない。
具体的に言うと、先輩の家に女の子が来ていないかとか、先輩の家に女子が来ていないかとか、先輩の家に女性が来ていないかとかだ。
ライバルは常にチェックしなければいけない。
というか、晴斗くん可愛いな.....
私の周りにはいないタイプの男子だ。
戸塚先輩も可愛いけど、戸塚先輩は女の子みたいな可愛さで....いや男なんだけどさ、晴斗くんは弟みたいな可愛さがある。
そうしている間に電車がホームにやって来て、私たちは電車に乗った。
晴斗くんと仲良くなろう計画のため、会話は続行中だ。
「晴斗くんって何年生なの?」
「え、えっと、一年生です」
「おー、どうりで可愛らしいと思ったよ!!」
「か、かわっ、えぇ!?!?」
「ふふ、ちなみに私は三年生で受験勉強真っ只中です!!」
「はぅ!?」
びしっと敬礼をしながらそう言うと、晴斗くんは変な声をあげた。
お、面白いよこの子....
「あ、あの、その...えっと、」
「ん?」
晴斗くんが何か私に話そうとしてるけど、もごもごとしていてよくわからない。
.....何だろう、男子がそんなことしても正直キモいだけだと思ってたけど、晴斗くんがやると小動物にしか見えない。
「えっと....か、」
「か?」
「か、カレーって美味しいですよね!!」
「へ? あ、うん、美味しいよね。私昨日の夜カレーだったよー」
しかも昨日のカレーは先輩作のレアカレーだ。
あぁ、幸せだったなぁ...
というか何でこのタイミングでカレー?
そんなに好きなのかな?
「ぁ...へ、変なことをいきなり聞いてしまってごめんなさい.....」
「あ、いやいや気にしないで!! 晴斗くんって面白いんだね!!」
「そ、そんなことないですよ!!」
こんな感じで晴斗くんと会話を続けて、私の降りる一つ前の駅に着いた。
晴斗くんは先輩と同じアパートに住んでいるから、ここからもう少し先の駅で乗り換えてそこからさらに30分くらい電車に乗るはずだ。
晴斗くんとも大分仲良くなれたし、先輩のことを色々と聞くために連絡先を交換しないと。
「ねぇ晴斗くん、LINEを交換しない?」
「ぇ? えぇぇぇえええええ!?!?」
「だめ....かな....?」
必殺上目使い
「い、いや、大丈夫です、ぜひお願いしましゅ!!」
私たちはスマホを取り出してQRコードを使ってLINEを交換する。
よし、連絡先ゲット!!
LINEを交換している間に、電車は私の降りる駅に到着した。
「じゃあ私はこの駅だから!!」
「あ、はい!! その、さ、さようなら...!!」
「うん、ばいばーい!!」
電車から降りて振り返り、晴斗くんに手を振る。
それだけで晴斗くんはまたオロオロとしだした。
改札を抜けて家に向かって歩き出す。
晴斗くんと知り合いになれたのは大きいなぁ。
私は晴斗くんからそれとなく、先輩の家に女の子が来てないか聞き出す方法を考えながら家に帰った。
家に帰るとすぐに部屋にこもって勉強を開始した。
最近、ますます先輩と同じ大学に行きたいという思いが強くなってきた。
でも、この間の模試だとD判定だった。
先生は、この時期にE、D判定は当たり前で、現役はこれからどんどん伸びていくと言っていたけど不安なものは不安だ。
....頑張らないと。
「おっと、その前に」
私はスマホを取り出してLINEを開き、晴斗とのくんのトークを開く。
『これからよろしくね(^-^)v』
うん、まあこんなもんかな。
私はスマホをしまうと、それから夕飯まで勉強を続けた。
※ ※ ※
「いろはー、ご飯できたわよー!!」
「はーい!!」
お母さんに呼ばれて私はキッチンに向かい、準備を手伝う。
数分で準備が整い、お母さんと食卓につく。
お父さんは今日も仕事だ。
夕飯までに帰ってくるときもあるんだけど、先輩と鉢合わせたことはまだない。
でも、いつかは鉢合うんだろうなぁ....
どうなるのかな....
まあ今考えてもしょうがないか。
「いただきまーす」
「はいどーぞー」
夕飯を食べながら、お母さんと色々と話をする。
学校のことだったりテレビのことだったりと、話題は様々だ。
「そういえばいろは、次の家庭教師って明後日だっけ?」
「そうだよー」
「....明後日って台風来ないっけ?」
「....あ」
そういえば朝そんなニュースを見た気がする。
「そ、その場合どうなるんだろう....?」
「うーん、もしかしたら延期になるかもねー。」
「そっか.....」
そうなると先輩と会えないのか....
「愛しの比企谷先輩と会えなくて残念ねー♪」
「なっ...そ、そんなことないもん!!」
どうしてお母さんは私の考えてることが分かるのかな....
いや、今のはさすがに分かりやすいか。
夕飯を食べ終わって部屋に戻ると、晴斗くんからLINEがきていた。
『こちらこそよろしくお願いします!』
よしよし、友好な関係が築けそうだ。
私はそれに返信をすると、スマホをしまって勉強を開始した。
さっそく晴斗くんが本編に登場しました(´∀`)
晴斗くんのヒロイン力が高いw
そして3話連続で八幡が出てこないってこれいかに...?
いろいろと伏線を入れようとしたらこんなことにw
た、たぶん次回出てきます...
八色ssを読んでいると、いろはが八幡を好きになったことで周りの男子にあざとさを振り撒くのを止めるという設定を多く見かけますが、自分の中のいろはすのイメージはやっぱりあざとはすなので、この作品ではそうさせてもらいますm(__)m
八幡を好きになってあざとさを振り撒くのをやめるいろはすも可愛いんですけどね!!
健気な女の子かわゆす(´∀`)
次回は二日後か三日後です!!
お泊まりお泊まり♪
お楽しみに!!