東方龍録   作:龍神とブロフラ

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龍神「香月さんです」

龍美「見れば分かる....」


火月の二つ目の人格香月、決着!

神栖「ぐっ!?」

 

火月「『ハッ!筋張った細ぇ脚ッ!研究熱心なのは良いが、カルシウム足りてねーんじゃねーか?天才様♪』」

 

神栖「くそが!いつから居やがった!」

 

火月「『ずっと上に、出るタイミングは伺ってたんだよ。不死身?ハハッ!構わねーぜ?無限に殺し続ける装置なんかいくらでもあるじゃねぇか。例えば原始的なとこで生き埋めとかな』」

 

火月は能力で床下に穴を開け、神栖を床下に引き釣り込もうとする

 

神栖「うっ、ぐぁ……あぁぁぁぁっ!!」

 

どんな抵抗も無意味に終わる。──神栖にはまるで蟻地獄のように感じられるのかもしれない。

 

代奈「どうして……」

 

火月「『勘違いだけはするなよ。別にお前らを助けに来た訳じゃねぇ』」

 

今の火月は火月であって火月であらず。多分だが神栖のせいで作られてしまったもう1つの人格。仮に香月と名付けよう

 

代奈「あなた、私達と殺されかけたじゃない。修也の一撃で死んでもおかしくなかったっていうのに……殺し合った仲なのに……」

 

修也「助かった…」

 

香月「『あの時俺(火月)を餓死させなかった礼とでも思っとけ。俺は俺(火月)の身体がないと生きれないんでな』」

 

代奈「なんで……なんで……そんなに気軽に会話が出来るの……」

 

俺と香月はここで会う約束をしたわけでもないし、香月がまだ火月の中にいること自体を今知ったばかりだ。その関係は、代奈にとって自分と神栖の投影──殺しあった二人が話し合う事が考えられないのだろう。

 

代奈「修也は、私をかばって、あなたを殺そうとした。忘れたわけじゃないでしょう?」

 

香月「『うっ、るせぇ大馬鹿野郎がいるなぁ』」

 

香月は神栖の脚を掴んだまま(既に刀は取っている)、床に引き釣り込んでいく

 

香月「『“音”使いと俺がぶつかり合えば相打ちになるのは明白だった。お互いに損しかない闘いと分かっていて、それでも退けなかったからだ。こいつが変えようとしたのはあの場に居合わせただけで感じ取れた最悪の結末だ』」

 

代奈「何を言っているの……?私が言っているのは、修也が“私”を選んで、あなたを見捨てたっていうことよ」

 

香月「『100%死ぬ未来を99%死ぬ未来に変えようとするのが人殺しか?違ぇだろ?最善を尽くしたが結果を出せなかった医者を誰が呪う?俺が今生きてようが、生きていまいが、こいつを人殺しなんて言う奴は──糞以下だぜ』」

 

代奈が押し黙ると香月はさらに勢い良く神栖の脚を引いた。

 

香月「『チィ……』」

 

神栖「…んだよ、こいつ腐りかけの身体で喧嘩売ってきたのか?」

 

香月(火月)の体が徐々に動かなくなっていく。香月が火月の身体を制御できなくなってきているのだ。

 

香月「『誰のせいでこんな短命(魂)になったと思ってんだよ!』」

 

神栖「ハハッ!俺だろ?所詮は実験体。不死である俺の喰い物(モルモット)にされてりゃよかったんだ」

 

香月「『うるっ、せぇ声がしねぇ分、広い心の中で消えてくのも悪かねぇよ。死にゃぁ──やっと自由になれるし、こいつ(火月)に迷惑掛けないで済むんだ……こんなに嬉しいことは、ねぇよ…………』」

 

香月は動かなくなっていく身体で神栖の五指を無理矢理開いていく。

 

神栖「ッ!何をッ!」

 

香月「『俺は死に損ないだがな……てめぇに一矢報いる手段が、ないわけじゃないんだな……っ!」

 

動かなくなっていく身体で神栖の腕を固定していく香月。香月は床下に埋もりながらも状況を把握し、このタイミングで俺に賭けた。

 

修也「充分だ……」

 

肩に力が入ることに感謝した。ほとんど石化していたけど、左腕が、かろうじて動く。この一瞬を、絶対に無駄にしたりしない

 

修也「行くぜ、ありったけでっ」

 

この一投に全身全霊を注ぐ。自分の能力のほとんどを限界まで高め、極め、膨らませ──

 

修也「あぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

刀が槍のように掌の目に突き刺さった

 

神栖「ッッッ!!!」

 

それはそれは疑いようもない破壊力、でもって

 

修也「穿けぇぇええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」

 

神栖「うぁああああああああああああああああっ!!!」

 

“目”を──“目”といわず腕を。

腕といわず、肩を──。

肩といわず全身を───粉々に吹き飛ばした。

 

それでも──────足りない。

 

これで足りたと思うほど、俺は神栖の“力”を過小評価していない。

 

修也「はぁ……はぁ……はぁ………!!!」

 

神栖を絶命させた事で石化は解除されたが、能力の酷使したせいで視界が霞む。気を抜けば倒れてしまうし、焼き切れそうな脳の痛みに耐えるのも限界だった。

 

修也「再生不可能なほどの破壊力だと思ったんだが……そういう事じゃ、ないんだよな」

 

神栖「残念だが、残機は無限だ。コンティニュー出来ないのは、お前だけだよ」

 

炎と共に神栖が新品の身体を取り戻していく。

 

神栖「いずれはあいつ(香月)のように能力者の寿命が来るかもしれないが、今はその時じゃない。よくやったよ、修也。お前は本当に凄い奴だ。ただ、相手が悪すぎた」

 

修也「俺は、絶対に、代奈を助けるんだ」

 

リターンが大きいことは承知している。

 

修也「真似ることも、奪うことも、結局は意味のないことだ。能力にだって意思はある。まぁ───“なんとかなる”でしょッ!!!」

 

大丈夫。絶対に。昔から出たとこ勝負が、俺の真骨頂。

 

力は覚醒した。

 

だが、それは曰く付きの代物。昔、使いこなせなかった“力”。使いこなせるかどうかわからない“力”

 

修也「なぁ……俺に使われろよ。絶対、満足させてやるからさ……っ!!」

 

能力が微笑んだ───気がした。それは表情としての笑みではなく、使い、使われる関係。だからこそ伝わって来る言葉では説明できないもの

 

修也「神栖」

 

嬉々として見守るような能力と共に、一息で神栖を捉える。

 

修也「お前を凍らせることは出来るんだ」

 

神栖「なっ、んだと……?!」

 

半身が氷結する。否───復元中の炎が氷結した。

 

神栖「そいつは何だ……物質的な物だけでなく、“力”さえも凍らせるってのかよ……!それ以前にお前の能力はコピーの筈だ!コピーしたとしてもここまでの威力はない筈、いったい何をした……!」

 

修也「………氷結を司る程度の能力に力を貸して貰った」

 

神栖「貸して、貰った?能力に、力を貸して貰ったってのか?」

 

修也「これが俺の本当の能力、能力を司る程度の能力だ」

 

神栖「…………ハハッ!チートにはチートってか」

 

修也「今からお前を死なない程度に凍らせて動けなくする」

 

神栖「ゲーム機自体がフリーズしちまったらコンティニューの有無なんか関係ねぇわな」

 

俺が嘘を言っていないとわかったのか、神栖は力を抜いた。

 

神栖「なるほどな……俺を生かしたまま場を収めるとは、見事だよ……」

 

修也「残念だが実験はおあづけだ。諦められなかったら、俺達を見つけな。何回だって相手になってやるよ」

 

神栖「どう思う?修也。俺をどう思う?こんな化け物みたいな身体の俺が、英雄か?救世主か?天才か?」

 

修也「凡人だな。どこにでもいる、ナンパ好きの、社員になりたがってるフリーター。万年寝不足の────俺の友達だった人だ」

 

神栖「…………そうか……死ぬことに慣れた瞬間から、俺はきっと踏み外してたんだろうな……」

 

見るに耐えない、情けない化け物の容姿と───楽しかった頃の神栖が重なる

 

神栖「……氷漬けにでもなんでもしろ。この遊びは、お前の勝ちだ」

 

修也「…………………」

 

神栖「…………早くしろよ、勝者……」

 

………………勝ち?勝ち……勝ちって、何が勝ちなんだ?胸の高鳴りが訴えてくる────このままでいいのか、と

 

代奈「終わったの……?」

 

修也「………………」

 

終わった……と言っていいのだろうか。今なら神栖を完全に凍らせて代奈を連れ帰ることができる。

だけど……。

置き去りに……。

誰かを置き去りにするのも、されるのも、もう

 

神栖「おい……早くしろ……俺は負けを認めただぜ」

 

修也「………………」

 

神栖「…………は?」

 

代奈「え…………?」

 

 

自分でもわけのわからない感情。“なんで神栖と殺しあわなきゃいけないんだ”という、ガキみたいな感情がそうさせた。発作のように、現実を逃避するように、俺は能力を消した。

つまりは、俺が導きだした計算も、香月の命懸けの固定も、土壇場で能力を覚醒させた運も──全てふいにした

 

神栖「これを消すってのは……舐めてるわけじゃ……ないんだよな……」

 

神栖はあっけに取られた様子で、ピクリとも動かず俺を見ていた。『自分が何をしたか分かってるのか』という当然の問を口に出来ないほど、神栖は戸惑っていた。

 

修也「ごめん……自分でも、わかんねぇや」

 

神栖を殺す手段は、誰の手にもない。だから氷漬けにして置き去りにするしかなかった。練った案は完璧だったと思う。

なのに───出来なかった。

あっという間に神栖は全快した。左右の腕もすっかり元通りだった。

 

修也「みすみす、殺されるようなもんだよな……分かってる、敵同士だし……でも……動けなくなった神栖を実際に見て、なんか、凄く……違うって思った」

 

神栖「もう一度戦えるだけの体力があるのか?」

 

端的に尋ねられた俺が曖昧に首を横に振ると、神栖はさらに困惑した。

 

神栖「おい……どうする気だよ?何がしたいんだよ……なんで勝ちを逃すんだよ……」

 

勝ち……負け……勝ち……あぁ、そうか。やっとしっくり来た気がする。

 

修也「俺達が協力したり、競ったりするのは……ナンパだけでいいじゃんか……」

 

神栖「──────」

 

修也「傷つけあって……勝ち負けなんか……決めたくないんだ……俺は神栖を……友達だと思ってる……から…………」

 

今までの全てを不定し、泡沫に帰す、軽はずみな行動。分かってる、分かってるけど……これが俺だった。俺という甘えた人間だった。

 

神栖「ここまでやりきっておいて、“情”の言葉ひとつでひっくり返すとはな……やっぱ童貞のやることは甘ぇよ」

 

修也「神栖……?」

 

神栖「どうかしてるくらいに、甘々だ」

 

神栖はスキャン機の隣にあるコンピュータを操作し始めた。ピアノ奏者のようなタッチで目まぐるしくモニターに文字列が表示される

 

神栖「ほいよ……アップロード完了。ネット拡散ってのはすげぇからな、ものの数分で世界中の研究者が目にするだろうよ。あのオンナを使えば大量生産も現実的だったんだが、それは後任の連中の課題にとっておくとしよう」

 

修也「いったい何をしたんだ?」

 

神栖「NSX+の製造方法を流出させたんだ」

 

修也「な……?!」

 

研究データは神栖達研究者にとって命より重いものじゃないのだろうか

 

神栖「俺みたいな凡人でも能力者を普通の人間に戻すことが出来たんだ。いずれは人外そのものを消す薬が開発がされる。その時こそクソッタレな世界は終わり、人間様が返り咲く。俺が好きなのは混じりっけない人間なんだよ」

修也「神栖……」

 

操作を終えた神栖が、コンピュータからなにかを抜き取ると、代奈の元へ歩いて行く。俺はそれを止めようとはしなかった。何故だか神栖が危害を加えないという確信があったから。代奈と2、3会話を済ませた神栖は俺の元に戻って来なかった。

 

神栖「人生は長い。想像してるよりも、ずっと、ずっとな。その考え方がいつまでも通用すると思うんじゃねぇーぞ」

 

修也「……神栖……どこに行くんだ?」

 

神栖「来た道を逆から出ろ。セキュリティチェックは全て外しておいてやる」

 

修也「神栖はどうすんだよ」

 

神栖「研究対象への執着を止めた研究者が取る行動はいつだってひとつだろうが」

 

神栖は扉の向こうに消える。息を呑んで強化ガラスに近づくと、向こう側に神栖が立っていた。一点の曇もない、目標を達成した人間の顔で立っていた。

 

 

神栖「……すぅぅぅぅ…………はぁぁぁぁ…………」

 

俺は自分で配合した煙草を吸う

 

神栖「泣いても笑ってもラス1かぁ……この絶妙な配合……たまんねぇぜ。俺のAngel(エンジェル)は最高傑作だぜ」

 

そしてまた吸う

 

神栖「ふぅぅぅ……修也……やっぱお前はすげぇよ……複数の能力から、破壊ではなく、この場を収めるための力を選び出すとはな……人間って奴の可能性を言葉じゃなく身体で感じた……気持ちの上で相手を尊敬しちまったら、戦う気になんかならねぇーよ……」

 

そして今度こそ、最後の煙草を吸う

 

神栖「ふぅぅぅ……さぁて、と。活躍の場を探す旅にでも出るか。次は地獄か、天獄か……まぁどちらにせよ大丈夫。次の神藤神栖はきっとうまくやるでしょう」

 

 

 

 

人外差別主義者の流血と共に、俺の体力も限界が来た。

 

修也「……死ねないってのは、嘘だったのかよ」

 

神栖自ら首に押し当てたナイフを横に引く。ただそれだけで、神栖が起き上がることはなかった。

 

修也「馬鹿野郎……」

 

代奈「神藤神栖は、私のところに来て、こう言ったの。『これからNSX+の効果を見せてやる』って」

 

つまり神栖が作った新薬は、大成功だったというわけか。代奈を用いた実験は、新薬の成功率や大量生産に関係するもので、物自体は完成してたのか

 

修也「最後の最後、身を持って証明するなんて……研究者としての本望だったのかなぁ」

 

代奈「わからないわ。どうしてあいつは、自ら死を選んだの……?」

 

修也「独占していた研究を全世界にバラ蒔いたんだ。神栖は、自分の思想を受け継ぐ者が現れると確信したんじゃないか」

 

代奈「能力者を人間に戻す研究に従事して──ゆくゆくは人外の存在をこの世から消すことを考えていたってわけね」

 

人間中心主義を動力源に、能力者としての“力”に悩まされながらも知らず知らずに結果を出して“英雄”になった。その背景には『イクシードの種蒔き』が関係しているのかもしれない。神栖が能力者になり、不死になったことが関係しているのかもしれない。どちらにしろ、神栖は神栖の信じる道を突き進み、結果を後世に残し────悔いなく死んだ。

 




龍美「もう終わったの!?て言うか長!?」

龍神「続きがありますよ....」
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