東方龍録   作:龍神とブロフラ

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龍美「だ、誰が来ると言うの?」

修也「シランナ」


妖怪乱入

代奈「そこまで熱心な研究者が近づいて来たのに、修也は止めなかった……」

 

修也「代奈の方に歩いて行ったことか?止める気力が無かったのもそうだが……まぁ、危害は加えないと分かった」

 

代奈「…………そう……あいつは勝手に人の家族を殺戮して、勝手に研究に満足して、勝手に死んだってわけね。私に一言の断りもなく……謝りもせず……殺されてもくれず……消えていなくなったのね」

 

神栖を生涯をやりきった。

対して

代奈が手に入れたの物は“虚無”だった。

 

代奈「私の“耳鳴り”は──あいつが死んでも“死”そのものを認めてない。あいつを殺せっていう悲鳴は、止まらないわっ!?」

 

代奈が最初に掌を血で染め上げるはずだった人は、もう、この世にはいない。脅威はなくなったが代奈自身の解決は何一つされていなかった。

 

修也「代奈は自分の手で神栖を殺していたらどうなってたと思う?」

 

代奈「心機一転、次は誰を殺そうかとウズウズするような快感と焦燥を得られたわよ。だって人間は全員、あんな奴を英雄なんて呼ぶ愚か者だもん。私の家族の、故郷の死によって得た命で生活してるんだもんっ」

 

故郷……代奈は神話のマンドラゴラ、神に最も近い妖怪だ。その故郷は家族と共に殺された。なにもなくなっていた。ここに来る前に見てきたが、あれはまるで荒れ地、もう、あの時の綺麗な場所ではない。

 

修也「そうだな。神栖を殺したら、その時点で代奈は走り出すだろうな」

 

代奈「もう、頭が、おかしくなりそうなのよ……私は、人間が好きだったのに……じゃあ何を信じて生きていけばいいっていうのよっ!」

 

修也「でも、間に合った」

 

代奈「間に合う?」

 

修也「だって、代奈はまだ、誰も殺しちゃいない。神栖を自殺に導いたのは、俺だ。俺が殺したも同然だ。代奈は、手を下してない。だから、もうそんな顔をする必要はないんだ」

 

代奈「何よ……今さら、戻れっていうの?私がした酷いことを忘れたの?私はもう、目的を失った脱け殻よ」

 

修也「代奈……お前はどうして人間達の住む世界に来たんだ?」

 

代奈「…………私は……」

 

修也「俺と神栖は能力者だ……妖怪のお前とは決定的に違う。不死が“力”だとしても、寿命はあるはずだろ?人なんか、誰だって、俺だって時間と共に老化して、勝手に死ぬんだよ。代奈が手を下すまでもなく、黙って放っとけば、死ぬんだよ」

 

代奈「…………私が……私個人に、殺す理由があったの……神藤神栖に絶望を味わわせる事が、皆の悲願だったのよ……」

 

修也「だからそれは、俺がこうして終わらせただろ?」

 

神栖との決着は着いた。その死も俺が背負った。もう、代奈が縛られる理由はない。

 

修也「代奈は時間じゃ死なない。だったら生み出していかなきゃ」

 

昔、代奈は言った。『自分がここに来たのは確信を得るため。私達のような神話からなる妖怪達は本当に負の感情だけから生まれてきたの?もしかすると私達は人々の想いから生まれてるんじゃないの?人々が想ったから神話は残り、私達が生まれた。そう考えるとすっごく素敵なことじゃない?だから私はそれを確かめるためにここに来たの。そして、もしその仮説が正しいなら私が書いている小説のキャラクターを想ってくれる人が増えれば、私のキャラクターが生まれるんじゃないかって』と、そう言っていた。だから

 

修也「書いてくれ、小説」

 

代奈「え……?」

 

修也「その手で生み出せばいいじゃないか。新しい家族をさ」

 

いつか言っていた。小説を投稿する理由

人の想いが妖怪を生む──代奈の生み出したキャラクターがこの世界に芽生える

 

代奈「無理よ……できっこない。そんなもの、人間のために犠牲になる存在を生み出すだけじゃない」

 

修也「代奈が神栖のように信じて突き進めるのなら、故郷にいた仲間達を蘇らせることだってできるかもしれない。ペンが剣よりも強いって言葉の真意を、思い知らせてくれよ」

 

代奈「でも……私は、修也に貰った万年筆でさえ……壊してしまったのよ……?」

 

万年筆……それは昔代奈にプレゼントした物だった。そっか、“壊れちゃった”か

 

修也「誰かを殺して、多くの命を救った神栖は、公平な目線で見れば間違っていたとは思えないが。誰も殺さずに、多くを産み出そうとしている代奈の夢は──誰も敵わないって分かる」

 

代奈「………………」

 

修也「それが代奈が持っていた、たった一つの“軸”じゃないの?“軸”だけは失っちゃ駄目だ」

 

代奈は黙って俺の言葉を噛み締めていた。代奈は奪うことではなく、生み出すことが出来ると信じている。

 

代奈「修也は……馬鹿ね。私を見殺しにしていれば、神藤神栖から普通の人間に戻れる新薬を貰えたのに……」

 

修也「いらねぇ……代奈と出逢った運命と、決別するつもりはないから……」

 

あれ?

 

修也「代奈は……か、家族、だから……」

 

立っていられない

 

代奈「あれだけ頑張ったんだもん、もう限界よ」

 

これから代奈と一緒に脱出しないといけないのに。

 

修也「……あ……」

 

霞みゆく視界の中、代奈はようやく笑みを返してくれた

 

代奈「修也の言いたいことは、凄く伝わったわ」

 

だけど、俺は……締めくくる言葉を伝えてない……。

代奈の、一番忘れちゃいけない部分を、一番惹かれる魅力を、思い出させてあげられてない。

 

代奈「でも結局───“耳鳴り”はやまないのね」

 

 

修也は糸の切れた人形のように崩れ落ちた。逆に今までどうやって立っていたのかが不思議なくらいだ。私を助けたい一心で、気力だけで身体を支えていたのだろう。

 

代奈「……本当に素敵な人。後戻り出来なくなった私を、それでも許してくれるのね……こんな……気持ちを引きずってる私に、目的まで思い出させようとしてくれる……」

 

不完全燃焼となった復讐が途切れない“耳鳴り”となり、私に新たな一歩を踏み出させようとしない。情けない。この局面まで来て、踏ん切りがつかない自分は憐れだった。そして私の為に、今後も辛い思いをし続ける修也……

 

代奈「もう私は、貴方とはいられない。一緒にいては、いけない……」

 

私はやっぱり“人生”に意味があるとは思えなかった。そんな光のない私に付き合わせるのはあんまりだ。だから神藤神栖が『使うべき相手を間違えるな』と言ってきたこれを。私の手にはあのNSX+が握られていた。

 

代奈「せめて……貴方を人間に……それで、私達の関係は消える……っ……何……?」

 

施設全体を襲う大規模な震動。逃げ場のない地下施設において災害等は脅威となる。

 

?「─────慌てなくても平気」

 

代奈「誰っ!」

 

?「構えないでよ。ちょっと支柱を壊してきただけ。実験施設(うえ)が崩れだしたから、僕も早いとこやることやらないと」

 

代奈「ここは……もう長く持たないって事かしら」

 

猫のような耳、そして尻尾。完全に妖怪だ。目を合わせただけでこの重圧────疲労した私の敵う相手じゃ──いや、万全の状態だとしてもやりたくない相手だ。

 

代奈「神藤神栖に用だったなら、残念ね。彼は死んだわよ」

 

妖怪「嘘ついたって駄目だよ。あいつはいくら死んだって───あぁ、いや、なるほど」

 

一人でに納得する。飲み込みも早いようだ。

 

妖怪「やっぱり来て正解だったにゃ。NSX+は開発者本人が自殺するために作られたってわけだにゃ」

 

代奈「さぁ、あんな奴の考える事が分かるわけないじゃない」

 

妖怪「それじゃ────さっさと出しなよ」

 

──────見られていた。

どっちだ、どっちを見られていた……?

 

代奈「これは私の故郷と引き換えに作られた薬よ。ただで渡すと思う?」

 

妖怪「おおっと、割られちゃ困る。その薬には利用価値があるからにゃ」

 

今私が立たされている状況は、いかに目の前の化け物から修也を守るか。その一点に尽きる。私の役目はここまで付き合ってくれた彼を生きて地上に帰すことだ。

 

妖怪「ところでちらちらとその死に損ないを見ているけど、大切なのかい?」

 

言われ、つい視線を修也に向けてしまった、その刹那。

 

代奈「──────」

 

軽い脳震盪(のうしんとう)。何をされてこうなったのか全然わからなかった。ただ目の前にいる者の強大さだけが身に染みた。

 

妖怪「今のが見切れないほど疲労しているなんて、何をそんなに頑張ってるのやら。僕には理解出来ないにゃあ」

 

無い……。あの瓶が─────無い。

 

妖怪「にゃはは♪」

 

名も知らない妖怪は摘まんだ瓶を振り動かしている。唯一の交渉材料を奪われてしまった。

 

 

妖怪「彼……大分成長したにゃぁ、僕にぶっ殺されたくて育ったのかにゃ」

 

代奈「以前の修也を知っているの?」

 

妖怪「あぁ。彼がまだ能力者の自覚もなく、力の発現も出来なかった頃から、僕は目をつけていたんだよ。君と“契約”して、正式に能力者として目覚めたのかにゃ?」

 

代奈「……えぇ」

 

“契約”とは妖怪と人間だけが結べるものだ。契約をする事で妖怪は人間達の世界で忘れられることもなく、普通の生活が送れる。逆に人間は力が上がり、能力者の力が発現していないのであれば、発現させることができるのだ。一番この契約で良いものは、力を借り合えるところだろう。そして契約者同士の回復力も近い場所にいればいるほど早くなるところもだ。ただし、妖怪の間では禁忌である。契約を認めることは重罪だが、どちらにしろ修也は殺されてしまう。だったら私だけが責任逃れするような事は出来ない。

 

妖怪「災難だにゃ。能力者はぶっ殺さなきゃいけない。つまり君が殺したも同然だね」

 

代奈「やめてよ……彼は関係ないでしょ……」

 

妖怪「お?立つんだ。よろよろなのに。健気だにゃあ……」

 

同然だ。寝ている場合じゃない。

 

妖怪「そういえば君────さっき“故郷と引き換えに作られた薬”って言ったけど、もしかしてアルラウネの生き残り?」

 

代奈「……!?」

 

アルラウネとは神話でのマンドラゴラの名称の1つだ。そして今あいつが言ったことはまるで……

 

妖怪「なるほど……彼を殺しにここへ来て、その反応……読めてきた」

 

代奈「どういうことよ。あなた、何か知ってるのかしら?」

 

妖怪「僕はね。能力者の返り血を浴びるのが趣味なんだよ」

 

代奈「最悪の趣味ね」

 

妖怪「NSX+の製造にアルラウネが必要と判明した時、わざわざ出向いてぐちゃぐちゃにしてあげたんだ」

 

代奈「────────」

 

妖怪「ずいぶん昔の話だから、覚えてたのが奇跡みたいだにゃ」

 

目的を失っていた心臓が唸り、瞳孔が開く。そんな私をそいつはおもしろいおもちゃを見つけたように笑う

 

代奈「あなた……私の故郷を壊した……実行犯なの……?」

 

妖怪「あれが素材になるって話を持ちかけたのも僕だよ。その素材を使って研究を進めたのが彼だ」

 

代奈「道理で……“耳鳴り”が消えないわけだ……」

 

この侵略者が“神藤神栖”を名乗っていた。よくよく考えれば“神藤神栖”は、あの時まだ“英雄”ではない。権限などあるはずない。妖怪のバックアップがあって、初めて“神藤神栖”は素材を手に入れた。

 

代奈「名前は……」

 

ルア「ルア」

 

代奈「あ゛ぁぁ……のうのうと生きているこいつが“耳鳴り”の元凶……」

 

故郷壊滅の絵図を描いた張本人の名前を知り、臓腑が煮えくり返った。

 

ルア「いいね……その目……悔しいんだにゃ。僕を、血祭りにあげたいんだにゃ……ひしひしと伝わるよ、その殺意。可哀想だにゃぁ。今の君じゃ僕に勝つのはおろか、困らせることだって出来やしない。彼を守る力もなく、また奪われしまうんだにゃ……」

 

ルアはわざとらしく掌を握った。いつでも修也の命を握りつぶせるとでも言いたげだった。実際その通りだった。

 

代奈「あ゛ぁぁ……あ゛ぁ…………ぁ……ぐ……」

 

なんだ……これ……。込み上げてくる感情。

 

代奈「うっ……くっ……」

 

ルア「あれ?泣いちゃうのかい?」

 

悔しい……?悔しいんだ。そうだ……私は一体、なんなんだ……?何をしに、人間達の世界に戻ってきたんだろう……?下らないことに修也を巻き込んで、復讐相手には満ち足りた自殺を遂げられ、その状況を故郷を壊滅させた張本人に醜態を晒して……。意味のない人生を、みっともなく生きている死に損ないだ。

 

代奈「くっ……うっ…………」

 

この沸騰した感情を向けたところで、絶対に敵わない相手……一矢報いることすら許されない中……私はもう、助かりたいのか、助けたいのか、殺したいのかさえもわからなくなってしまう。

 

ルア「おやー?」

 

分からなくなった私は、自分でもわからないうちに動き出していた。

 

ルア「無駄だとわかっていて、やる気なのかにゃ……本当に憐れだにゃ……」

 

奇妙にささくれだった心を抱え、よちよち歩きで私は歩く。何がしたいのかもわからないまま、そこへたどりついた。

 

代奈(修也……)

 

私を救えなかった人。これから殺されてしまう人。満身創痍で夢と現実を漂白し、うなされるように荒い呼吸をしている。

 

修也「はぁ……なんとか…………はぁ……」

 

代奈「え?」

 

修也「……“なんとかなる”……」

 

何度となく修也と交わしてきた、魔法の合言葉。

 

代奈「そっか……なんとかなると思って……ここまで来たんだ……」

 

この研究所に来ればタダでは済まない事くらい分かっていただろう。冷静に考えれば私を見捨てるべきだった。施設まで乗り込んできた際の勝算がなんとかなるだけじゃ、どうにもなるはずがない。

 

代奈「“なんとかなる”」

 

口にした途端───空っぽだった身体に何かが宿った。魔法の力──本当になんとかなるんじゃないかという、錯覚の力。私が口癖にしていた、そんなくだらない、意味もない一言を信じて──無根拠に助けに来てくれた人がいる。その本質を私は考える。小説を書けとか。あの人達に謝れだとか。誰も殺してないとか。私に説教臭いことを言って励ましてくれた修也が、唯一口にしなかった言葉。

 

代奈「ポジティブ」

 

回りくどい真意が──私の心を穿った。修也と私の長所であり、共通点。いつから私はポジティブじゃなくなってしまったのだろう。

 

ルア「あまり時間がない。悪いけど、始末させてもらうよ」

 

代奈「…………して………さい……」

 

ルア「ん?なんか言ったかにゃ」

 

代奈「どうか、見逃してください」

 

自律して……

 

ルア「────おぉ……」

 

“奪う”気持ちを捨て去って……

 

ルア「…………驚いた。仮にも神話妖怪が……これだけの辱しめを受けて……なおも頭を下げられるなんて……」

 

まっさらに……

 

代奈「……お願いします。許してください」

 

正解と不正解もない世界で、まっすぐに救おうとしてくれた人と同じように……

 

ルア「玉砕覚悟で立ち向かうべきだろう?君は今、最高に僕が憎いはずだ。食いしばった歯が粉砕するほど憎いはずだ。プライドが許さないはずじゃにゃいか。立ち向かえばがいい。君の復讐心ってやつはそんなもんだったのか?」

 

真の復讐相手を前に、私を突き動かす衝動は、復讐ではなくなっていた。格好悪くていい。恥の上塗りと、笑いたければ笑えばいい。私は……こんな私を……それでも家族と言ってくれた彼を、失いたくない。唯一、信じられる人間である彼の言葉だけが、私を繋ぎ止めてくれるから

 

ルア「わからない。どうして──生きている事そのものが地獄に感じる道を選ぶ。鏡があれば見せてやりたいよ。君が今、どんなに悔しくて、悲しくて、やりきれない中、頭を下げているかが一発で分かる」

 

私に必要なのは、殺された怨みを晴らす復讐心じゃなくて、負の連鎖を断ち切り、生み出すことに必死になる勇気だった。本来の私の持ち味でもあり、修也との共通点──上昇気流(ポジティブ)

 

代奈「あなたがしろという事をなんでもします。脚を舐めろと言うなら言うとおりにします。裸で踊れと言うなら言うとおりにします」

 

耳鳴りが止まないのならば、気にしなければいい。気にならなくなるくらい、自分がやるべきことにだけ傾倒すればいい。奪うのでなく、生み出し、救うことで人生の意味にすればいい。私の復讐は、終わった。だからポジティブに生きることを始める。ただ一点……全てを投げ出してくれた人の為に、全てを投げ出す前向きな心があればいい。

 

ルア「その言葉に偽りがないのなら─」

 

代奈「──例えば。私の故郷を壊した事に感謝しろというのなら、します。死んでいった同胞の悪口を言えというなら言います」

 

ルア「…………………………………」

 

代奈「私はどんなことでもします。だからこの人を、見逃してください」

 

ルア「…………凄いな……彼を救うための執念の深さに、この僕が、思わず引いてしまった……」

 

NSX+の瓶を見たルアが、小さく息をついた。

 

ルア「貰うものは貰ったし、もうすぐここも崩れて英雄さんともども、君達の墓標になる。その身体で彼を背負って出られるとは思えないけど……精々頑張ってみるといいんじゃにゃいか」

代奈「ありがとう、ございます」

ルア「こんな不思議な気分になったのは初めてだにゃ」

 

ルアはそうなことを言いながら消えた

 

代奈「…………ふふ……クフフ……フフ……なんとか、なるじゃん……」

 

今回の件で──私がいかに滑稽な存在か、良くわかった。こんな私は、修也無しじゃ、生きていけない。生きていていいような、清く正しい存在じゃない。

 

代奈「結局、一度だって契約に文句は言わなかった。人間に戻ることよりも、私との絆を大切にしてくれた。これは……修也には、いらないか……」

 

私は本物のNSX+を出してみる。余計なお世話をするのは、後回し。歩けない修也を背負って脱出するのが、今の私に与えられた贖罪の一歩目。そんなことを考えているとお腹が鳴ってしまった

 

代奈「あぁ……ご飯、お腹いっぱい食べたいわ……」

 

こんなときでも腹が減る、それが……生きてるということ。

 

?「─────だらしないわね」

 

?「うん、少しだらしないかな。代奈ちゃん」

 

代奈「…………えぇ、笑えるでしょ」

 

?「笑ってる暇なんてないでしょ。目が覚めたなら、さっさと変えるわよ“虹色”」

 

香澄「そんなきつい言い方はないんじゃないの?歌音ちゃん」

 

歌音「こいつにはこれくらいがいいのよ、香澄」

 

歌音から寄越された歌音特製パンを受け取った。

 

歌音「受け取ったわね。高いわよ。それこそなん十年も占いで稼ぐか、小説で一発当てないと返せないくらいにね」

 

香澄「流石歌音ちゃん。無駄に高い」

 

歌音「うっさいわね」

 

代奈「………ごめんなさい……いつか、返すわ……」

 

歌音「ごめんなさいじゃなくて、ありがとうでしょ。私は、修也(そいつ)にそう教わったんだけど?」

 

代奈「……ありがと」

 

返す……金ではなく、ましてや怨でもなく、恩を。過去に私を支えてくれた故郷はもうない。それらは人間の為に失われた。だけど、人間には……修也のような、可能性を持つ人がちゃんといる。ちゃんと意味を持って、意味に沿って生きている人がいる。なら──今、私を支えてくれる人達を、私も支えていこう。

 

その第一歩を、ポジティブに踏み出そう。

 

 

 

 

 

 

 

修也「がつがつがつがつ……ほむほむっ、んぐぐっ」

 

代奈「ば~~~~~~~~~~~~~っくんっ!もっしゃもっしゃっ!」

 

歌音「それにしても貴方達……黙々と食べるわねぇ……」

 

修也「腹一杯喰って、代奈のそばにいる。それだけで寝るより回復が早いんだよ」

 

龍美「だからって食い過ぎでしょ」

 

既に出された料理のほとんどは完食し、次の料理を咲夜が頑張って作ってくれている。美鈴も手伝ってるよ。

 

龍美「なんかこのままだと」

 

歌音「えぇ、何となくだけど」

 

レミリア「紅魔館の食料を食べ尽くすんじゃないの」

 

龍美・歌音「それよ………」

 

香澄「あ、あははは」

 

また元の日常に戻りましたとさ、ちゃんちゃん♪




龍神「アー字の数やばいね(白目)」

龍美「死ぬな!」

龍神「分かりました「........うん」....あの何なんですか?さっきの沈黙は」
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