また、皆様にご協力いただいたアンケートの結果、対戦相手はフィンになりました。
……過度な期待はしないでください。
2つの影がぶつかり合っていた。常人には認識できない速度で互いの得物を振るい、己が持つ力と技を用い、駆け引きというよりもチェスのように互いの手の先を読む。
1つは黒。その手に短刀を持ち、足元より漆黒の影が踊る。
もう1つは金。小さな体に黄金の穂先を持つ槍を振るう。
戦局は黒……トキの方が僅かに優勢であった。身体能力でこそ劣るものの、暗殺者としての経験と影の触手による手数の多さで金……フィンの先を取る。
逆にフィンは、トキから得体の知れないやりづらさを感じていた。本来、小さな体を生かした攻めの戦い方は、普通の冒険者では対応が難しい。
それにより、
だがトキは、まるで自分より小さい相手との戦い方を知っているかのようにこちらの動きに対応してくる。こんな事はあの『
水平に振るわれる槍を跳躍でかわし、空中を蹴り、短刀が振るわれる。それをかわせば、かわした先に影が迫ってくる。
死角からの刺突をまるで見えているかのようにかわし、投げナイフを放ってくる。
トキの触手の数は12本。それらが絶妙な連携をしているため、流石のフィンも対応しきれずに、触手が体をかすめる。
だがフィンも負けてはいない。トキが14才であるのに対し、フィンは40過ぎ。その年月により培われた経験は本物だ。事実、フィンの槍によって、トキが纏う防具にはいくつかの傷がつけられていた。
だが、それを差し引いてもやはり戦局はトキが優勢であった。その原因はトキの影。『恩恵』を無視して攻撃する影は、当たり所が悪ければ致命傷になりうる。故に、フィンは影を必要以上に警戒する必要があり、結果として攻めきれていなかった。
フィンの親指が疼く。このままでは勝てないと警告しているようだった。それに従い、強引に距離を取る。トキは追撃しなかった。
確かにトキは優勢である。だが、それはほんの僅かだ。フィンが考えなしに距離を取ったとは思えない。ここで迂闊に追撃するよりも、仕切り直したほうがよいと判断した。
「君は
ふと、フィンがトキに問いかけた。トキは僅かに眉をひそめた後、その問いに答えた。
「いえ。ですが、自分に技や駆け引きを教えてくれたのは
その言葉にフィンが目を見開く。
トキの言ったことは事実であった。トキが暗殺者であったころ、育て親には暗殺の知識と薬による膨大な精神力を、年上の
武器も同じであったため、むしろやりやすかったくらいだ。【
「……その人物にぜひ会ってみたいな」
「……機会があれば紹介しますよ」
もっとも、
「でもなるほど。道理で攻めにくいわけだ」
納得がいったフィンは1度目を閉じ、一瞬の内に見開く。
「では、戦い方を変えよう」
雰囲気が変わったフィンに、トキが構える。だがその選択は間違いであった。
「【魔槍よ、血を捧げし我が額を穿て】」
超短文詠唱。完全に読み間違えたトキは触手に攻撃を命じる。
「【ヘル・フィネガス】」
しかし一瞬、フィンの方が早かった。魔法を完成させ、そして。
「──うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおッ‼」
吠えた。その様子に驚愕しつつも攻撃を続行する。
だがそれはフィンの槍の一振りによって弾かれた。
「なっ!?」
今度こそトキは驚愕の声を漏らす。その隙にフィンが一気に距離を詰めた。
「ぐっ!?」
咄嗟に腕を交差させ、後ろに跳ぶ。その上からフィンの槍による攻撃が来た。黄金の穂先がトキの左腕に刺さる。
今度はトキがフィンとの距離を取る。後ろに下がる一瞬で、起きたことを整理する。
フィンが魔法を唱えた瞬間、その身体能力が急激に上がった。つまりあの魔法は
(……いや)
迫りくるフィンの様子は、普段からは想像もつかないほど狂暴に見える。つまりはドーピング。おそらく、判断力を失うかわりに自らの能力を底上げする魔法。
ドーピングの怖さをトキは知っていた。代償と引き換えに強大な力を発揮するそれは、時に人間の限界を超えて力を引き出す。
さらに、フィンはLv.6。スキルにより強化されているとはいえ、その
背中の熱に変化はない。【
槍が迫る。今度はそれを短刀で防ぐ。しかしその上から短刀ごと体をもっていかれた。
体勢が崩れる。立て直す前に、さらに槍が振るわれる。なんとか短刀で弾くが、その短刀に罅が入った。
明らかに上昇した力と敏捷。そして判断力を失ってもなお、体に染み付いた技。駆け引きで勝っていた筈のトキは、完全に劣勢になっていた。
12発目の攻撃で短刀が破壊される。そのことに目を見開き、槍が体に突き刺さる。
「がっ!?」
体を駆け巡る熱に悲鳴を上げ、一瞬の内にそれを抑え込む。引き抜かれようとする槍を、空いている手で強引に掴んだ。
「──がぁあああああああああああああああああッ‼」
トキもまた吠えた。普段であればこんな真似はせず距離を置いただろう。だが、今のトキは引けなかった。引きたくなかった。 負けたく、なかった。
砕けた短刀の柄を、フィンの顔面目掛けて投げる。顔を反らしてかわしたところに、さらに触手による追撃を行う。顔面にクリーンヒット。しかしフィンは倒れない。
槍が引き抜かれる。腕ごともっていかれそうになる勢いを利用し、空いた手に漆黒の短刀を生成。それを振る。
槍が再び振るわれる。だがトキは避けなかった。
それを皮切りに死闘が始まる。お互い防御を考えないノーガードラッシュ。血が弾け、体から不気味な音が鳴る。だが、それでも二人は止まらない。
『恩恵』を無効にするトキの攻撃に、圧倒的な
骨が折れる。──それがなんだ。
体が悲鳴をあげる。──それがどうした。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ‼」
「あああああああああああああああああああああああッッ‼」
二匹の獣が咆哮する。互いに譲れないもののために死力を尽くす。
そして……黒が崩れた。
勝敗を分けたのは
動かない体に、必死に立てと命令するが、体は僅かに痙攣するだけだ。フィンを見上げる。フィンは槍を振りかぶり、トドメを刺そうとしていた。せめてもの抵抗で相手を睨み付ける。
だがその槍が振り下ろされることはなかった。なぜならフィンも倒れたからだ。
限界だったのはフィンも同じであった。既に意識はなく、浅い息づかいだけが聞こえる。
それを耳にしたトキは、今度こそ、意識を失った。
……すいません、これが限界です。皆様にアンケートまでご協力いただいたのも関わらずこのクオリティです。……本当に申し訳ありませんッ‼
ご意見、ご感想お待ちしております。