冒険者に憧れる少年の夢   作:ユースティティア

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風刃様よりリクエスト、トキと第一級冒険者の燃え尽きるような闘いが見たい、ということで書かせていただきます。

また、皆様にご協力いただいたアンケートの結果、対戦相手はフィンになりました。

……過度な期待はしないでください。


死闘

 2つの影がぶつかり合っていた。常人には認識できない速度で互いの得物を振るい、己が持つ力と技を用い、駆け引きというよりもチェスのように互いの手の先を読む。

 

 1つは黒。その手に短刀を持ち、足元より漆黒の影が踊る。

 もう1つは金。小さな体に黄金の穂先を持つ槍を振るう。

 

 戦局は黒……トキの方が僅かに優勢であった。身体能力でこそ劣るものの、暗殺者としての経験と影の触手による手数の多さで金……フィンの先を取る。

 逆にフィンは、トキから得体の知れないやりづらさを感じていた。本来、小さな体を生かした攻めの戦い方は、普通の冒険者では対応が難しい。

 

 小人族(パルゥム)は前衛に出ることがほとんどない。千年前の神の降臨により、自分達が信仰していた女神が実在しないことを知り、急速に衰退。今でもその名残からか小人族(パルゥム)の冒険者はサポーターや後衛職が多い。

 それにより、小人族(パルゥム)であるフィンの戦い方は冒険者にとって未知である場合が多い。セオリーが通じず、どうしても後手に回る。

 

 だがトキは、まるで自分より小さい相手との戦い方を知っているかのようにこちらの動きに対応してくる。こんな事はあの『猛者(オッタル)』以来であった。

 

 水平に振るわれる槍を跳躍でかわし、空中を蹴り、短刀が振るわれる。それをかわせば、かわした先に影が迫ってくる。

 死角からの刺突をまるで見えているかのようにかわし、投げナイフを放ってくる。

 

 トキの触手の数は12本。それらが絶妙な連携をしているため、流石のフィンも対応しきれずに、触手が体をかすめる。

 だがフィンも負けてはいない。トキが14才であるのに対し、フィンは40過ぎ。その年月により培われた経験は本物だ。事実、フィンの槍によって、トキが纏う防具にはいくつかの傷がつけられていた。

 

 だが、それを差し引いてもやはり戦局はトキが優勢であった。その原因はトキの影。『恩恵』を無視して攻撃する影は、当たり所が悪ければ致命傷になりうる。故に、フィンは影を必要以上に警戒する必要があり、結果として攻めきれていなかった。

 

 フィンの親指が疼く。このままでは勝てないと警告しているようだった。それに従い、強引に距離を取る。トキは追撃しなかった。

 

 確かにトキは優勢である。だが、それはほんの僅かだ。フィンが考えなしに距離を取ったとは思えない。ここで迂闊に追撃するよりも、仕切り直したほうがよいと判断した。

 

「君は小人族(パルゥム)と戦ったことがあるのかい?」

 

 ふと、フィンがトキに問いかけた。トキは僅かに眉をひそめた後、その問いに答えた。

 

「いえ。ですが、自分に技や駆け引きを教えてくれたのは小人族(パルゥム)の槍使いの人でしたから」

 

 その言葉にフィンが目を見開く。

 

 トキの言ったことは事実であった。トキが暗殺者であったころ、育て親には暗殺の知識と薬による膨大な精神力を、年上の小人族(パルゥム)には技と駆け引きを教わった。トキはその戦い方を覚えていた。

 

 武器も同じであったため、むしろやりやすかったくらいだ。【挑戦者(フラルクス)】の効果により【ステイタス】が強化され、フィンの動きについていけた。

 

「……その人物にぜひ会ってみたいな」

 

「……機会があれば紹介しますよ」

 

 もっとも、()()がまだ生きているかどうかをトキは知らないが。

 

「でもなるほど。道理で攻めにくいわけだ」

 

 納得がいったフィンは1度目を閉じ、一瞬の内に見開く。

 

「では、戦い方を変えよう」

 

 雰囲気が変わったフィンに、トキが構える。だがその選択は間違いであった。

 

「【魔槍よ、血を捧げし我が額を穿て】」

 

 超短文詠唱。完全に読み間違えたトキは触手に攻撃を命じる。

 

「【ヘル・フィネガス】」

 

 しかし一瞬、フィンの方が早かった。魔法を完成させ、そして。

 

「──うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおッ‼」

 

 吠えた。その様子に驚愕しつつも攻撃を続行する。

 

 だがそれはフィンの槍の一振りによって弾かれた。

 

「なっ!?」

 

 今度こそトキは驚愕の声を漏らす。その隙にフィンが一気に距離を詰めた。

 

「ぐっ!?」

 

 咄嗟に腕を交差させ、後ろに跳ぶ。その上からフィンの槍による攻撃が来た。黄金の穂先がトキの左腕に刺さる。

 

 今度はトキがフィンとの距離を取る。後ろに下がる一瞬で、起きたことを整理する。

 

 フィンが魔法を唱えた瞬間、その身体能力が急激に上がった。つまりあの魔法は強化魔法(エンチャント)

 

(……いや)

 

 迫りくるフィンの様子は、普段からは想像もつかないほど狂暴に見える。つまりはドーピング。おそらく、判断力を失うかわりに自らの能力を底上げする魔法。

 

 ドーピングの怖さをトキは知っていた。代償と引き換えに強大な力を発揮するそれは、時に人間の限界を超えて力を引き出す。

 さらに、フィンはLv.6。スキルにより強化されているとはいえ、その潜在能力(ポテンシャル)は相手が上。それが底上げされたとなると非常にやっかいだ。

 

 背中の熱に変化はない。【挑戦者(フラルクス)】は相手との格の差で能力値が変動する。ドーピングしても相手が変わったわけではないので、スキルによるさらなる強化はない。

 

 槍が迫る。今度はそれを短刀で防ぐ。しかしその上から短刀ごと体をもっていかれた。

 

 体勢が崩れる。立て直す前に、さらに槍が振るわれる。なんとか短刀で弾くが、その短刀に罅が入った。

 

 明らかに上昇した力と敏捷。そして判断力を失ってもなお、体に染み付いた技。駆け引きで勝っていた筈のトキは、完全に劣勢になっていた。

 

 12発目の攻撃で短刀が破壊される。そのことに目を見開き、槍が体に突き刺さる。

 

「がっ!?」

 

 体を駆け巡る熱に悲鳴を上げ、一瞬の内にそれを抑え込む。引き抜かれようとする槍を、空いている手で強引に掴んだ。

 

「──がぁあああああああああああああああああッ‼」

 

 トキもまた吠えた。普段であればこんな真似はせず距離を置いただろう。だが、今のトキは引けなかった。引きたくなかった。 負けたく、なかった。

 

 砕けた短刀の柄を、フィンの顔面目掛けて投げる。顔を反らしてかわしたところに、さらに触手による追撃を行う。顔面にクリーンヒット。しかしフィンは倒れない。

 

 槍が引き抜かれる。腕ごともっていかれそうになる勢いを利用し、空いた手に漆黒の短刀を生成。それを振る。

 

 槍が再び振るわれる。だがトキは避けなかった。

 

  それを皮切りに死闘が始まる。お互い防御を考えないノーガードラッシュ。血が弾け、体から不気味な音が鳴る。だが、それでも二人は止まらない。

 

『恩恵』を無効にするトキの攻撃に、圧倒的な能力(ポテンシャル)と第一級装備によるフィンの攻撃。普通であれば一撃で沈む攻撃を、両者は気力のみで耐えきっていた。

 

 骨が折れる。──それがなんだ。

 

 体が悲鳴をあげる。──それがどうした。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ‼」

「あああああああああああああああああああああああッッ‼」

 

 二匹の獣が咆哮する。互いに譲れないもののために死力を尽くす。

 

  そして……黒が崩れた。

 

 勝敗を分けたのは能力(ポテンシャル)の差。最後の最後で、トキは積み上げられた年月に負けた。

 

 動かない体に、必死に立てと命令するが、体は僅かに痙攣するだけだ。フィンを見上げる。フィンは槍を振りかぶり、トドメを刺そうとしていた。せめてもの抵抗で相手を睨み付ける。

 

 だがその槍が振り下ろされることはなかった。なぜならフィンも倒れたからだ。

 

 限界だったのはフィンも同じであった。既に意識はなく、浅い息づかいだけが聞こえる。

 

 それを耳にしたトキは、今度こそ、意識を失った。




……すいません、これが限界です。皆様にアンケートまでご協力いただいたのも関わらずこのクオリティです。……本当に申し訳ありませんッ‼

ご意見、ご感想お待ちしております。
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