冒険者に憧れる少年の夢   作:ユースティティア

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なんだかんだでこのサイトで二次創作を投稿し始めてから1年が経過しました。早いですね。見返してみると感慨深いです。
ここまで続けられたのも読んで下さる皆様のお陰です。本当にありがとうございます。

さて肝心の更新ですが、今回はトキ達よりも以外の話です。もともとこの話のリクエスト内容はオラリオVS他国全てwith黒竜ですから。


それぞれの戦い

第一級冒険者達が『黒竜』と戦闘を開始する頃。他の戦場では既に激戦が繰り広げられていた。

 

南門前に設置されたテントでは各地の戦況が絶え間無く流される。

 

「北方面、第一陣撃破! 敵の士気、落ちていません!」

「南方面、さらに増援。旗章からラキアとは別の兵だと思われます!」

「西方面、やや圧され始めました!」

 

入ってくる報告はあまりいいものではなかった。総指揮を取っている【ロキ・ファミリア】の指揮官の顔が歪む。

 

常時であれば決して圧されることのない戦争。しかし今回ばかりは勝手が違った。

 

1つ目は敵の数。毎回ラキアが起こす戦争はその国のみが攻めてくるため、その総数はどんなに多くても三万~五万の兵に留まる。しかし今回は大陸中の国が攻めて来ているのだ。その全貌は未だ捉えられていない。

2つ目に『黒竜』の存在。もちろん伝説の怪物なだけあってその戦闘力は計りしれない。だが一番の痛手は、『黒竜』を倒すために第一級冒険者が他の戦闘に参加できないことだ。

例え数で負けていようとも昇華した『恩恵』の差は覆せない。それが神時代の戦争だ。第一級冒険者であれば武器の一振りで数十、数百の敵を薙ぎ払い、数千の攻撃も受け止めるだろう。

だがその第一級冒険者は参戦できないため、第二級以下の冒険者が応戦するしかなくなる。

 

それでも優位は崩れはしないが、冒険者も人間であり、体力や精神力(マインド)にも限界がある。未だ回復薬(ポーション)も数多く残っているが、無限ではない。あちらの兵も限度はあるだろうが、先も言った通り大陸中が1つの国を攻めているのだ、その差は明らかであろう。

 

このまま持久戦になれば確実にじり貧になる。

 

(いや、それよりも……)

 

指揮官は戦況を聞きながら、あることを考えていた。それは今日、戦いが始まる前に【ヘルメス・ファミリア】からもたらされた推測だった。

 

 

 

 

曰く、『黒竜』を操る者がいるかもしれない、と。

 

 

 

 

馬鹿馬鹿しいと、聞かされた当初は思った。【ヘルメス・ファミリア】の使者も同感であったようだが、彼らの団長の推測である、とのことだ。

 

【ヘルメス・ファミリア】の団長といえば現代の英雄の一人、トキ・オーティクスである。たった1ヶ月でほぼ壊滅していた【ファミリア】をオラリオ屈指の派閥に立て直したという伝説を持ち、その変幻自在な戦い方は終始相手を圧倒する、と言われる冒険者だ。

 

その事を念頭において考えてみると、指揮官にもその推測の根拠が浮かんできた。

 

それは、王国(ラキア)以外の他国がオラリオに攻めてきた理由だ。いくら王国(ラキア)が軍事力に力を注いでいるからといっても、他の国を動かす程の影響力はない。だが『黒竜』の存在があれば、いとも容易く他国を従わせることが可能だ。

さらにこの戦争の期間中、『黒竜』は二度()退()()()()()。千年以上生きていればモンスターも相当な知恵をつけるかもしれないが、二度とも『黒竜』にとって優位な状況であった。引く意味は、少なくとも指揮官が考えられる中では思いつかなかった。

 

(となると、その操る者は、ラキアの者ではない)

 

仮にラキアの者だとすれば、他国を巻き込むなどという策を練らない。『黒竜』をそのままオラリオにぶつけるだろう。そもそもそれほどの力を持つほどの『恩恵』を持っているなら本人が出てくる筈だ。

だがこれまでの戦闘でそういった者は発見されていない。即ち前線に出ていないか、巧妙に姿を隠しているかだ。

 

(ならばこの戦争、勝つためには……)

 

指揮官は東の方角を見る。城壁の向こう、大平原へと思いをはせる。

 

(『黒竜』の討伐が必要不可欠、か)

 

『黒竜』さえ倒せれば彼らの士気も落ち、制圧も容易くなるだろう。もしかすれば、脅されていた国も『黒竜』がいなくなることで戦闘をやめてくれるかもしれない。

 

そんな楽観的な気持ちを頭の片隅に置きつつ、指揮官は呟いた。

 

「頼みますよ、英雄達」




皆さん、ダンまちの10巻の表紙絵はもう見ましたか? 巷ではベル君が闇落ちした、なんて言われています。作者はそんなこと信じたくないのですが、一応予防線を張っておきます。

この話は私の別作品『冒険者に憧れるのは間違っているだろうか』の98話までを元に書いています。原作との間に齟齬が発生しても私はこの路線を走り続けますのでご了承下さい。

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