冒険者に憧れる少年の夢   作:ユースティティア

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万華鏡様、ナイフ様よりリクエスト、ベルとアイズの結婚生活を見たい、ということで書いていきます。

相変わらずのクオリティですが、どうか1つ見てやって下さい。


憧憬の果てに

 ベルside

 

 東の空から昇ってきた太陽の光が、部屋につけられている窓のカーテン越しに入ってくる。

 

 長年の習慣からか、いつもこんな朝早い時間に目が覚める。今日は仕事もないからゆっくりしていられる。

 

 体を起こし、隣を見る。そこには一人の少女が眠っていた。処女雪のような白い髪、そして整った顔立ちには、種族がヒューマンでありながらまるで妖精のような雰囲気がある。

 

 片手で少女の髪を撫でる。さらさらとした感触が指を通して伝わってくる。くすぐったそうに身じろぎする少女の様子に、思わず笑みがこぼれる。

 

 ふと、少女の向こう側からも身じろぎする音が聞こえた。目をやると、むくりと一人の女性が目を擦りながら起き上がった。

 

 長く真っ直ぐな金髪、長年見ているにも関わらず、今でも見惚れる顔立ちには、かつてのあどけなさはない。

 

 彼女と目が合う。その金色の瞳は、出会ったころから変わらない光を宿していた。

 ふっ、と彼女が微笑む。

 

「おはよう、ベル」

 

 その声音はとてもやさしいもので。その笑顔はとても愛おしいものだった。

 

 顔に笑みを浮かべ、彼女に挨拶を返す。

 

「おはよう…………アイズ」

 

 僕は、ベル・クラネル。憧れの女性と結婚し、一人の娘を授かった幸せな冒険者だ。

 

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 アイズさ……アイズとの結婚は、まさに僕の人生の中でも最大級の冒険とも言っていいだろう。……というか今でもたまにアイズさんと言ってしまう。そう呼ぶと、彼女は頬を膨らませて怒るのだ。

 

 本題に戻ろう。発端は6年前、『第7次オラリオ侵攻』の時からだ。オラリオと、近隣の諸国全てとの大戦争。

 

 毎度毎度攻めてくる王国(ラキア)はともかく、魔法大国(アルテナ)、海国など、大陸中のあらゆる国々がオラリオに攻めてきたのだ。

 当時、中堅規模だった【ヘスティア・ファミリア】団長だった僕も前線に出た。そこで……あの怪物、『隻眼の竜』に出会った。

『黒竜』によって、オラリオにはかつてないほどの犠牲が出た。そして死闘の末、僕達は伝説の怪物を倒した。

 

 その戦いの中で、僕とアイズは惹かれあった。僕の中の憧憬は、いつの間にか恋慕へと変わっていた。戦いが終わって、徐々に互いの距離を縮めていった。結婚も、真剣に考えていた。

 

 だけどそれを許さない人……否、神がいた。

 神様ことヘスティア様と、アイズの主神ロキ様である。彼女達はかたくなに僕達を引きはなそうとした。

 

 だけど、僕達はそれでも離れたくなかった。それほどまでに愛し合っていた。そして……僕達はオラリオを出た。駆け落ちである。

 あてもない流浪の旅。何にも縛られることのない、二人だけの旅。幸せだった。

 

 だけどやっぱり追っ手は来た。【ロキ・ファミリア】や【ヘスティア・ファミリア】を始めとした、オラリオの名高い冒険者達が僕達を追ってきた。中でもベートさんは特に怖かった。

 アイズはあの戦い以来、冒険者をやめていた。あの美しくも過激な剣さばきは既に失われていた。

 

 だけど、僕は彼女を必死に守った。互いに手を取り、追っ手を払いのけ、世界を旅した。今にして思えば、あの親友がいろいろと見えないところで手を回してくれていたのだろう。そうでなければ、僕達は早々に捕まっていたかもしれない。

 

 そんな生活が1年ほど続いた頃、僕達は新しい命を授かった。

 

 親友に協力してもらい、神様達を説得した僕達は、ついに正式に結ばれた。

 

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「それで、今に至るって感じかな?」

 

「そうなんだー!」

 

 膝に乗せた少女に自分達の話を聞かせる。かつてお祖父ちゃんにされていたことを、まさか自分がやる日が来るとは夢にも思わなかった。

 

 僕譲りの白髪と深紅(ルベライト)の瞳。アイズ譲りの顔立ち。元気いっぱいの娘、アリアは今年で5才になる。

 子供は目に入れても痛くないと昔言われたけど、うん、実際に授かってみてその気持ちがわかった。

 

「アリア、ご飯だよ」

 

「はーい」

 

 アイズが台所から料理を運んでくる。この6年間で彼女の料理の腕は著しく上がった。……まあ、最初がとても低かったけど。

 

 アリアがピョン、と僕の膝から下り、とことこ、と机の向かいに移動。座る所が高い子供用の椅子にうんしょ、とよじ登る。

 

 みんなで手を合わせて朝食を食べる。

 

「おとうさん、きょうはおしごとおやすみなんだよねっ」

 

 食事中、アリアが嬉しそうに話をふってくる。

 

「そうだよ」

 

「あのね、アリア、おとうさんとおかあさんと3人でピクニックに行きたい!」

 

「ピクニックか~。アイズはどう?」

 

「……うん、いいよ」

 

「だってさ。じゃあ今日は3人でピクニックに行こうか」

 

「やったー!」

 

 椅子の上でぱたぱたと喜ぶアリア。うん、とても微笑ましい。危ないから暴れないの、とアイズが注意すると素直におとなしくなった。うん、とても良い子だ。

 

「……それじゃあ、これから準備するね」

 

「うん、お願い」

 

 朝食を食べ終え、急遽決まったピクニックの準備に取りかかる。

 

「そうだ、アリア」

 

「なーに?」

 

「ピクニックだけど、どこに行きたい?」

 

「んーとねー」

 

 アリアは首を傾げた後、満面の笑みを浮かべて言った。

 

「18かいそう!」

 

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「で、18階層までピクニックに来た、と。……馬鹿だろ、お前」

 

「あはははは……うん、自分でもそう思う」

 

 目の前の親友に呆れられながら僕は苦笑する。

 冒険者の格好で家を出発し、二人を守りながらこの18階層までたどり着いた。……途中で階層主(ゴライアス)討伐に鉢合わせた時はさすがに肝が冷えたけど。

 

 アリアは現在、18階層の草原で、遠征によって偶然鉢合わせた【ロキ・ファミリア】、【ヘルメス・ファミリア】の団員達と遊んでいる。キャッキャッ、と笑いながら駆け回る彼女を見ていると心が安らぐ。

 その笑顔は、仲が悪い神様とロキ様を一時的に仲良くさせるほどの力がある。

 

 向こうでは、アイズがティオナさんやリヴェリアさんと話をしていた。彼女は感情が乏しかった昔よりも、だいぶ笑うようになった。

 

「そう言えば、アリアちゃんって今何歳?」

 

「今年で5才だよ」

 

「そうか……早いなー」

 

 親友、トキ・オーティクスがそんなことをこぼす。

 今年で34歳になる彼は、3人の子供の父親でありながら、今や【ロキ・ファミリア】、【フレイヤ・ファミリア】に並ぶ第3の最大派閥とも言われている、【ヘルメス・ファミリア】の団長を務めている。

 

 団長としては立派な彼だが、父親としては悩みが絶えない。この前も一番下の子供が自分の【ファミリア】に入ってくれなかったとか。リヴェリアさんがいる【ロキ・ファミリア】の方がいいらしい。おかげでそれの愚痴に付き合わされた。経験したことがあるけど、【ファミリア】の団長ってけっこう大変なのである。

 

 そう、僕はもう【ヘスティア・ファミリア】の団長ではない。というのも、駆け落ちした際に自動的に交代となったのだ。今はリリが団長を務めている。僕の次に古参であり、かつ、僕よりもしっかりしているから、という理由らしい。

 ちなみに、僕がオラリオに帰った後もリリが団長を続けている。正直に言うと、面倒になってしまったのだ。ほら妻も子供もできたし。

 

 最近のリリはすっかり苦労人になってしまった。というのも、ことあるごとに神様がホームを抜け出し、アリアに会いに来るのだ。それを連れ戻しに頻繁に家に来る。……本当にごめん。

 

「さて、それじゃあそろそろ行くか。おーい、お前ら。そろそろ行くぞー」

 

「えー、団長、もうちょっといいじゃないですかー」

 

「あほ、俺達だけならともかく、今回は【ロキ・ファミリア】との合同遠征なんだぞ。これ以上は先方に迷惑がかかる。そんなにアリアちゃんと遊びたかったら、遠征が終わった後、75階層の攻略の土産話を持って行け」

 

「はーい。じゃあアリアちゃん、またね」

 

「ばいばーい!」

 

 踵を返して団員達とともに去っていくトキ。

 

「あ、そうだ。ベル」

 

「ん? 何?」

 

「子供が小さい頃に母親ばかりに世話を任せていると、大きくなった時に、お父さん嫌い、と言われることが多いらしいぞ?」

 

 そう言って今度こそ去っていく。……うん、良いことを聞いた。今度、リリに休みを増やしてもらえないか交渉しよう。

 

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 18階層でのピクニックを終え、帰宅すると、神様とロキ様が家の前にいた。

 

「あ、ロキさまとかみさまだー!」

 

「おおっ、アリア君! おかえ──」

 

「アリアたーん! お帰りー!」

 

 あ、ロキ様が神様を押し退けてアリアに飛び付いた。ロキ様に高い高いしてもらって、アリアはご満悦のようだ。アイズもこの光景に馴れたのか、微笑ましそうに見ている。

 

「こらー! ロキ、何をするんだー!」

 

「なんやドチビ、居たんか。小さすぎて気づかんかったわー」

 

「なんだとー!」

 

「むー、ふたりともけんかはめっ!」

 

「「はーい!」」

 

 仲が悪い神様達を鎮める娘は、既に【天使の微笑み(エンジェリック・スマイル)】なんていう二つ名が、オラリオで秘かに広まっている。父親として嬉しい限りだ。

 

  その後、神様とロキ様は、アリアとしばらく遊んだ後、リリに引きずられて帰っていった。

 

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 すーすー、と静かな寝息が耳を通り抜ける。先程まで騒いでいたのが嘘のように寝静まっている。アリアの手を握りながらその姿に微笑む。

 

「ベル」

 

「ん? 何?」

 

 アリアを挟んだ向かい側、同じく手を握るアイズは、僕と同じように笑みを浮かべていた。

 

「……私、今幸せだよ」

 

 真っ直ぐにこちらを見てくる彼女は、本当に綺麗だった。

 

「ベルと結ばれて、アリアを身籠って、家族3人で暮らして。こんな日がくるなんて思わなかった」

 

「……僕も」

 

 なんだか消えてしまいそうな彼女の頬を撫でながら言葉を紡ぐ。

 

「僕もアイズと結ばれて、アリアを授かって、本当に幸せだよ」

 

 そっと、アイズの手が僕の手を握る。目を細める彼女がとても愛おしい。

 

「……お休み、ベル」

 

「お休み、アイズ」

 

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 少年は青年となり、その憧憬は恋慕へと変わった。

 

 そして、少年の背中にあったスキルは……永遠の眠りにつくかのごとく、その効果を失っていた。




いかがだったでしょうか? 上手くリクエストに応えられたでしょうか?

さて、今回ちょこっと出てきた『第7次オラリオ侵攻』。これは翔威様からいただいたリクエストなのですが……次回の番外編からこれを長編という形でやっていきます!

という訳で番外編の予告! オラリオVS世界with『隻眼の竜』!お楽しみに!

ご意見、ご感想お待ちしております。またリクエストの方も募集しております。

リクエスト内容は感想欄または個別のメッセージから随時受け付けております。こんなクオリティでもいいという人はぜひください。よろしくお願いします。
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