結局、言えなかった。
謝れなかった。
怖かったんだよ、嫌われるのが...
辛かったんだよ、会えなくなるのが...!
凛ちゃんの為、自分の為に、本当のことを言うべきなのは分かってる。
けど、怖いんだ!
気兼ねなく話せる関係。
それを崩したくないんだ。
僕は選べない。
全てを話して嫌われるか、全てを隠して好かれるか。
どちらにせよ、僕の想いが届くわけないのに。
こんなに辛くて、苦しくて、切なくて。
「勝ち目がない恋」って、こんな感じなのかな?
.....なんて、偉そうに。
○○○○○
「じゃあ、話すね」
「ええ、お願い」
私は今、凛の過去について聞いている。知りたいような、知りたくないような。
でも、知るべきだと思う。凛の為にも、私の為にも。
そうこうしてるうちに、花陽が重い口を開けて、話し始めた。
「....凛ちゃんはね、元々けっこう恥ずかしがり屋さんだったの」
「スカート履いていくと、からかわれることもあった」
「でも、凛ちゃんは全然気にしてなかったんだ。あのときまでは」
「あのとき?」
「凛ちゃんにはね、好きな人がいたの。5年生のとき」
「!...へぇ、凛にもそんなところあったのね」
いけない、口が滑ったわ。
「真姫ちゃん...意外と辛辣だね」
「別にそういうつもりじゃ...!だって凛とそういう話したことないし...」
「しないんじゃなくて、できなくなっちゃったんだよ」
「凛ちゃん、その男の子のことすっごく好きで、可愛い格好見せたいってずっと言ってた。スカート買いに行くのに付き合ったこともあるし...」
「そしていざ見せようって、張り切って登校したら...」
「...馬鹿にされた?」
「それだけならよかったのにね」
「え...?」
「『いつも男みたいな格好してるのにな』って」
「っ!...そういうことだったのね」
「ずっと好きだった人に可愛いどころか『女の子』だとすら思われてなかった。そういうことだよ」
「.....凛」
あなたは、どれだけ重いもの背負ってるのよ。
○○○○○
火曜日、ライブ本番まであと…4日。
凛は今、すっごく驚いてる。なんでかって?それはね...
「えええ!?帰ってこれない!?」
穂乃果ちゃん達が、帰ってこれなくなっちゃったの。
「そうなの、飛行機が欠航になるみたいで…」
「じゃあファッションショーのイベントは?」
「残念だけど、6人で歌うしかないわね…」
6人かぁ...でも頑張らなきゃ!
「それは...急な話ね」
「でもやるしかないでしょ!アイドルはどんなときも最高のパフォーマンスをするものよ!にこっ☆」
「そうだね」
「そうね」
「そうにゃ」
「そうよ」
「そうやね」
「何よこの適当なリアクション!?」
「まぁそんなことは置いといて」
「そんなことって何よ!もう!」
にこちゃん…カリスマ性が…
「それで、センターなんだけど…」
ええっ!
「ファッションショーだから、センターで歌う人はこの衣装でって指定が来たのよ」
そこにあるのは、綺麗なウエディングドレス。
「わぁ〜!」
「綺麗!」
「す・て・き☆」
「女の子の憧れって感じやね♪」
みんながそれぞれの感想を言うなかで、凛はただ固まってたの。
これを着て…歌う?凛が?
嘘だよ。そんなこと、できるわけないよ。
「...これ、誰が着るの?」
「何寝ぼけたこと言ってんのよ。あんたよ、あんた」
「穂乃果がいないとなると、今はあんたがリーダーでしょ!」
やっぱりそうなるよね...こ...これを凛が…
「.....ニャハハハハハ」
「何笑ってるのよ...」
「ハハハ シャーッ! にゃっ!」
「凛が壊れた!」
壊れてないよ!凛は大真面目!
「もう!どうにかしなさいよー!」
捕まるわけにはいかないにゃ!ここは...
「あー!野生のちんすこうが!」
何言ってるのぉ!?こんな嘘に引っかかる人なんて...
「どこ?」
引っかかった!?真姫ちゃん並みにちょろいにゃ!
今のうちに...!全速力!!
「あ!凛ちゃん!」
残念!凛はもうドアの目の前!ここさえ出れば大丈夫...あれ!?
ガチャ! ガチャ! ガチャ!
「な!鍵が!なんでにゃ!」
「な〜んでだと思う〜?」
「!」
振り向くと、にこちゃんが目の前にいた。
「さ…さぁ?」
「それはいつもあなたに...捕まえられてるからよー!」
「にゃ....!!」
「どこにいたって無理よ?...捕まえちゃーう!」
「にゃあああああああああ〜!!」
「凛ちゃんもにこっちも元気やね〜」
「希、ちんすこうってどんな生き物か知ってる?どの図鑑にも載ってないのよ!まさか...新種!?大変よ、早く捕まえないと...!」
「絵里ち...」
かしこさ、息しとらんよ。
○○○○○
「無理だよ。どう考えても似合わないもん」
「そんなことないわ!」
みんなそう言うんだよ。でも本当は———
「そんなことある!!!だって凛…こんなに…髪短いんだよ…?」
「ショートカットの花嫁さんなんていくらでもいるよ?」
そりゃあ...いるかもしれないけど...
「そうじゃなくて…こんな女の子っぽい服、凛は似合わないって話」
「アイドルが何言ってるのよ。それに普段はともかく…ステージじゃスカート履いてるじゃない」
「それは!みんなと同じ一緒だし…端っこだから…」
そう、凛は端っこだから。
こんな男の子みたいな子、センターになんかなれないよ。
「とにかく!μ'sのためにも凛じゃないほうがいい!」
μ'sのためなんて嘘。本当は全部自分のためなのに。凛は、ずるいから。
「でも実際、衣装は穂乃果ちゃんに合わせて作ってあるから…凛ちゃんだと手直しが必要ないよね?」
「でしょでしょ!やっぱり凛じゃないほうがいいよ!ね?」
誰か言ってよ、凛じゃダメだって。凛には似合わないって。
「この中で穂乃果ちゃんに近いとなると… 花陽ちゃん?」
「うぇぇ、私!?」
「そうにゃ!かよちんなら歌もうまいしぴったりにゃー!」
本当、妬いちゃうくらいぴったり。
凛なんかより、かよちんが着るべきだよ。
「ええっーー!」
「確かに…急遽リーダーになった凛に全部任せるっていうのも…」
「ちょっと負担をかけすぎな気もするわね…」
「花陽?どう?」
「私は…でも私は凛ちゃんに...」
その後に続く言葉を遮るように、凛はかよちんを励ます。
「やったほうがいいにゃ!かよちん可愛いし…センターにぴったりにゃ!」
「でも…凛ちゃん?いいの?」
かよちん、優しいね。でも、その優しさがつらいよ。
「いいに決まってるにゃ!」
そんなの嘘、凛だって着たい!でも似合わないから。
だから、お願い。
かよちんが着てよ。
そうすれば諦められるから。
「本当に?」
「もちろん!」
お願いだよ。これ以上期待させないで。
凛を、傷つけないで。
「凛…」
「…決まりみたいね」
「え?でも...私は」
「うんうん!」
良かった。これでいいんだよ!凛なんか端っこで十分!あんな可愛い衣装似合わないし!
—————似合わないよね。
○○○○○
「え、天気?あー、相変わらずだよ…それより、イベントは大丈夫そう?」
「ええ、センターは花陽で行くことになったわ」
「花陽ちゃん? 『うわああ! ああぁっ… あああ…』 そっか…」
「どうかした?」
「あ、ううん。頑張ってね!『よしよし… あぁぁ…』」
「勿論よ。あ、そうだ!ちょっと穂乃果に頼みたいことがあるんだけど」
「頼みたいこと?」
「ええ。実は、野生のちんすこうを捕ま『絵里ちがお土産楽しみにしてるって!じゃあ3人とも、沖縄楽しんできてね!じゃっ!』」
「えぇ!?ちょっ、希ちゃん?野生のちんすこうって」
ブチッ!
「ちょっ..!希!」
「絵里ち...多分すごく恥ずかしい勘違いしとる。ウチはそれを皆に見せたくないんよ」
「何よ、勘違いって!」
「…」
「絵里ち…ちんすこうは生き物やない…お菓子や」
「!...ハラショー」
○○○○○
「わぁーっ!かよちん綺麗!」
「そ…そうかな…」
「うん!やっぱりかよちんが一番似合うにゃー!頑張ってね!凛、応援してるから!」
「あなたも歌うのよ!」
「そっか…あはは…」
「予想通りピッタリやね!」
「脇をちょっとだけ絞ったほうがいいかもしれないわね…さぁ!あとはやっておくからみんなは練習行って」
「分かったにゃ!さぁ行っくにゃー!!」
「なに急に元気になってんのよ」
「凛はいつも元気にゃー♪」
よかった。
バレてないよ、凛の本当の気持ち。
「それじゃあやっちゃいましょうか」
「うん...」
「こんな感じかな?」
「もう少しじゃないかしら…」
「そうやね…胸は?」
「そのままでいいわ」
「花陽ちゃんには少しきつ...なんでもない。この辺もっと絞ったほうがいいかな?」
「うんうん」
「...」
「凛ちゃん…」
「ねぇ」
「わぁぁ!びっくりした...どうしたの、真姫ちゃん?」
「どうするつもり?」
「どうするっ...て」
「最初から着る気なんてないんでしょう?そこの2人も、調整してる風に見えて、何もいじってないじゃない」
「!...流石やね...真姫ちゃん」
「3人とも解りやすいのよ。大体、胸の部分をいじらないなんてありえないでしょ?凛と花陽じゃサイズが全然..」
「ストップ。真姫ストップ。それ以上はいいわ。...まぁそれはともかく、この事はそのうち皆にも話すつもりだったし、この際はっきりさせましょう」
「絵里...」
「まず第一に、この衣装を着るのは凛よ。これは決定事項だら異論は認められないわぁ!」
「誰も異論はないと思うんやけどなぁ...それで問題は、凛ちゃんにどうやってこれを着せるかってことなんよ」
「確かにあの調子じゃ、素直に着るとは思えないわね...」
「でもいくら私たちが可愛いって言っても、凛が自覚しない限り無意味なのよ」
「あの...」
「花陽ちゃん?」
「私は、無理矢理着せるべきじゃないと思う。別に今回着なかったからって...」
「花陽、嘘がバレバレよ」
「!」
「ねぇ、花陽...このままでいいの?」
○○○○○
かよちんが着てくれてよかった!
なんて考えてる。凛、ずるいよね。
こんなこと、したくないのに。
可愛い衣装だって着たいのに。
でも...
やっぱり…凛には…似合わないよ…
だって、かわいくないもん。
凛は、主役にはなれないよ。
誰かの隣で咲くような、脇役が一番だよ。
○○○○○
その日の夜、 穂乃果ちゃんから電話がきた。ライブのことが気になったらしい。
私も話したいことがあったんだ。
とっても大事な話。
「それで結局私が…」
「そっか…ごめんね、急に電話して、気になっちゃって」
ううん。私も話したかったから
「それで、花陽ちゃんはどうするつもり?」
「私は、凛ちゃんに自分の気持ちを伝える」
「花陽ちゃんの気持ち?」
「うん...でも、まだ迷ってるんだ」
「真姫ちゃんに言われたの…このままでいいのかって。そんなの、良くないに決まってる。」
「でも凛ちゃん困ってるみたいだし… 無理に気持ちを伝えて、凛ちゃんが傷ついたらって思うと、怖くて...」
「そっか...」
「....穂乃果ちゃんだったら、どうする?」
「え?私?私だったら....」
「...」
少しの沈黙のあと、穂乃果ちゃんはこう言った。
「んー…それは花陽ちゃんが決めなきゃ!」
「私が?」
「うん!花陽ちゃんが決めることだよ!」
「もし私が言ったことをそのまますれば、凛ちゃんは傷つかないかもしれない。けど、それじゃ花陽ちゃんの想いは、ちゃんと伝わらないんじゃないかって」
「花陽ちゃん自身が望むことや、花陽ちゃん自身が決めたことを、花陽ちゃんが、自分の言葉で伝える。私は、それが一番だと思うんだ」
「私が、望むこと...」
凛ちゃんに、センターの衣装を着てほしい。
凛ちゃんに、自信を持ってほしい。
その為に私ができることは、一つだけ。
それは凄く残酷なことかもしれないけど。
それでも、私は————
「ありがとう、穂乃果ちゃん。私はもう逃げないよ。精一杯、凛ちゃんに想いをぶつける。どんなに苦しい思いをしても....必ず、最後まで」
「花陽ちゃん...! うん!ファイトだよっ!」
○○○○○
水曜日、ライブ本番まであと…3日。
「ほとんどの人は自分より相手が可愛いって思うものよ。」
「実際、自分が一番可愛いと思ってる人なんていないでしょ?どんな自惚れ屋よ...」
「真姫ちゃんが言うと説得力ゼロだにゃ〜」
「ちょっ...何よそれ!」
「まあまあ、二人とも落ち着いて」
私達は、いつものように3人で帰ってる。
もうすぐ、分かれ道。
真姫ちゃんの耳元で囁く。
凛ちゃんには聞こえないように。
「......真姫ちゃん」
「花陽......ホントに大丈夫?」
「平気だよ。それに、これは私が言わなきゃいけないことだから」
「....分かったわ」
お願いね、真姫ちゃん。
「.....」クルッ
「?真姫ちゃん、どうしたにゃ?」
「ワタシ、キョウハヨウジガアルカラサキニカエルワネ」
真姫ちゃん演技下手なのぉ!?
真姫ちゃんの方こそ大丈夫なの?ドンウォーリーなの?
「え、でも真姫ちゃんさっき『今日は久しぶりにゆっくりできるわね!』とか言ってたよね?」
「っ!きゅ、急に誘われたのよ!」
「誘われたって、何に?」
「プ、プロレスよ!パパが一緒にプロレス観ないかって!」
真姫ちゃん、嘘下手だなぁ...
「真姫ちゃんがプロレス...意外だにゃ。なんてレスラー?」
「マ、マスクド西木野...」
真姫ちゃぁん...大丈夫なのぉ...?
「真姫ちゃんの家ってプロレスラーもいるの!?すごいにゃー!」
シンジチャッタノォ!? 凛ちゃん...純情だなぁ...
「と、とにかく!今日はこれで帰るから!じゃあ!」
そういうと真姫ちゃんは全速力で走っていった。
「ちょ、真姫ちゃん!?...そんなにプロレス観たかったのかな?まぁいっか、行こ!かよちん」
「.....うん」
凛ちゃん、ごめんね。
でも私、諦めたくないから。
あの日、私の背中を押してくれた様に。
今度は私が、凛ちゃんの背中を押すよ。
○○○○○
「凛ちゃん...本当にいいの?」
「何が?」
「センターの衣装だよ」
「!」
「お節介だったらごめんね。けど凛ちゃん本当は、あの衣装着たいんじゃないかなって...」
「凛はもういいよ。かよちんの方が似合ってるんだから、かよちんが着るべきだよ」
「...私は凛ちゃんに着てほしいな」
「えっ?で、でも凛は髪短いし...」
「髪の長さと可愛さは関係ないと思う。その理屈だと、ショートカットの女の人は皆可愛くないってことになるよ?」
「...そんな事言ってないよ!...でも凛は別。だって、凛には可愛い服は似合わないし」
「そんなことない...!きっと似合うよ」
「だけど.....」
「....凛、男の子に生まれたかったなぁ〜.」
「.....!!!」
「もしも凛が男の子だったら、こんな苦労しないんだろうなぁ...」
ねえ、凛ちゃん。
言い訳みたいな「でも」「だって」「だけど」
決して叶わない「もしも」
私は凛ちゃんに、そんな言葉使ってほしくない。
凛ちゃんには、強くいてほしい。
いつも私の隣にいてくれて、守ってくれた。
そんな、強くて可愛い「女の子」でいてほしいから。
だから、ごめんね。
「呆れた」
「えっ...?」
「かよちん...今なんて...?」
「『呆れた』って言ったんだよ」
「かよ.....ちん.....?」
「男の子に生まれたかった?馬鹿馬鹿しい。そんなこと欠片も思ってないくせに」
「...!!」
「凛ちゃんは、ずるいんだよ」
「...っ」
「凛ちゃんだってすっごく可愛いのに、自信がないのを私達に押し付けて逃げてるんだ。それって卑怯だよね?」
「わかってるよ!凛だってそれぐらい.....!!」
「いや、わかってないよ。『自分には似合わない』って決めつけてれば楽なんだよね?傷つかなくていいもんね?」
「ちっ、違っ...」
「違わないよ」
「....」
「....凛ちゃんは、自分を否定されるのが怖いだけの臆病者だよ」
「.....」
「凛ちゃんのそういうところ、見ててイライラするんだよね」
「っ!....」
「本当は怖いだけの癖に、人のせいにして逃げてばかり。そんな...凛ちゃんなんて.....!!」
「.....大っ嫌い!!」
「!」
「...そっか。今日は早く帰らないと!じゃあね!」
凛ちゃんはそう言って、昨日みたいに逃げようとしてる。
ここで逃げたら、凛ちゃんはもう...
そんなの絶対にいやだから。
昨日みたいに、諦めたくないから。
お願い、凛ちゃん————
「逃げないで!!!!!」
「........っ!!!かよちん..!?」
「臆病者の凛ちゃんは、もう見たくないよ!」
「一緒に踏み出そう?一人で辛いなら、私もいる。真姫ちゃんもいる。それに、μ'sのみんなだって!」
「どんなに辛くても支えてあげる!」
「だって...!私は本当の凛ちゃんと、歌ったり踊ったりしたいから!」
「.....だからもう、逃げないで ?」
「.....」
「私、こっちだから....また明日」
「.....うん」
○○○○○
凛は今、公園のベンチに一人で座ってる。
「はぁ〜......」
諦めと涙が混ざったため息を吐き出す。
凛、かよちんに嫌われちゃった。
今すぐ家のベッドで泣きたいくらいなのに、
まっすぐ帰る気にはなれなくて。
———かよちんが、あんな事言うなんて。
わかってるよ、このままじゃいけないことは。
踏み出さなくちゃ、何も始まらないことも。
今逃げたら一生後悔することも、全部わかってるよ。
———それでも、やっぱり怖い。
...いつだったかな?
ことりちゃんと海未ちゃんが、穂乃果ちゃんにピーマン食べさせてたっけ...
穂乃果ちゃんいつもピーマン残すから、いい加減克服させようって。
海未ちゃんが押さえつけて、ことりちゃんが口に押し込む。ことりちゃん、すっごくいい笑顔してて...
......嫌なこと思い出したにゃ。
あの時は、なんでそんなに嫌なんだろうってずっと思ってた。
でも、今ならわかる気がする。
苦手なものってさ、理屈じゃないんだよね。
好きになることが、理屈じゃないように。
頭で理解していても、心が拒絶する。
どんなに突き放しても、心が求めてる。
そんな気持ち、少しはわかるよ。
でもね。
凛のそれは、ピーマンよりもずっとずっと苦くて。
お気に入りだった服が、前のように似合わない。
鏡の中を見つめて、ため息をついて。
「思い出」なんて呼べない日々。
スカートはタンスの奥にしまったまま。
まるで、飛べなくなった魔女みたい。
『馬鹿なこと言わないでください。滅茶苦茶可愛いですよ』
なんでだろう?
お世辞だってわかってるのに。
お世辞であって欲しくない。
あの人に言われる「可愛い」だけは、本心であって欲しい。
これが、恋なのかな?
だとしたら、「勝ち目がない恋」だよね。
辛いよ。
苦しいよ。
切ないよ。
会いたいよ...
「お花屋さん...!」
凛を、助けて。
○○○○○
私、ちゃんと言えたよ。自分の気持ち。
後悔はしてない。でも...やっぱり...!?
「!」 バッ!
気配を感じて振り向くと、そこにはーーーー
真姫ちゃんが立っていた。
「...!真姫ちゃん...なんで?」
「本当はすぐ帰るつもりだったんだけど...気になっちゃって」
「ひょっとして、全部聞いてた?」
「...ごめん」
「.....そっか。でも大丈夫。私、後悔してないから。それに、凛ちゃんがうじうじしてるのが歯がゆいのは本当だし、それに..!?」
それはあまりに突然だった。
真姫ちゃんが、私を抱き締めてくれたの。
そして耳元で、こう囁いた。
「....よく頑張ったわね、花陽」
「っ!」
ずるいよ、真姫ちゃん。
せっかく我慢してたのに。
こんなことされたら————
「.......っ!!!....あぅっ.....!うぅ...!!!」
涙、止まらなくなっちゃうよ。
「うぅ..!うあぁぁぁ.,..!!」
「ぐすっ...!りんちゃん...!!ごめんなさい...!ごめんなさい.....!!ごめんなさい.....!!!!」
私、最低だ。
凛ちゃんに、あんな酷いこと言っちゃった。
こんなこと、していい筈がないのに。
————それでも私は、凛ちゃんの力になりたい。
凛ちゃんが「大切なもの」を無くそうとしてるのに、黙って見てなんかいられないよ。
もしかしたら少しだけ、髪が短いのかもしれない。
もしかしたら少しだけ、お淑やかさがないのかもしれない。
もしかしたら少しだけ、女の子らしくないのかもしれない。
でもね。
「誰か」が偉そうにいう「常識」なんて、
時と共に移ろう、不確かなものだから。
そんなものに、惑わされないで。
「今」の凛ちゃんに一番似合う
「服」や「恋」や「生き方」から、
目を逸らさないで。
探すことをやめないで。
言い訳みたいな「でも」「だって」「だけど」
吐き捨てた道は、行き止まり。
でも、出口はすぐそこにある。
追い越されてばかり、飽きるでしょ?
一緒に突き抜けようよ、女子ロード。
———私は、信じてるから。
「ぐすっ...!凛ちゃんっ.....頑張れっ....!!」
世界一可愛い、私の親友。
星空凛を、信じてるから。
○○○○○○○○○○
ガーベラ
科・属名: キク科ガーベラ属
和名: ガーベラ
別名: アフリカ千本槍(センボンヤリ)、花車(ハナグルマ)
英名: Gerbera, African Daisy, Transvaal daisy, Barberton Daisy
花言葉は「前を向いて」
「皆凛好きー」を流行らせたい。