花と猫と引っ掻き傷   作: 凛キチ

4 / 10
結構書いたと思ったら10000文字いってなかった。


第4話 「それでも!」

結局、言えなかった。

 

 

謝れなかった。

 

 

怖かったんだよ、嫌われるのが...

 

 

辛かったんだよ、会えなくなるのが...!

 

凛ちゃんの為、自分の為に、本当のことを言うべきなのは分かってる。

 

 

けど、怖いんだ!

 

 

気兼ねなく話せる関係。

 

 

それを崩したくないんだ。

 

 

僕は選べない。

 

 

全てを話して嫌われるか、全てを隠して好かれるか。

 

 

どちらにせよ、僕の想いが届くわけないのに。

 

 

 

こんなに辛くて、苦しくて、切なくて。

 

 

「勝ち目がない恋」って、こんな感じなのかな?

 

 

.....なんて、偉そうに。

 

 

 

 

 

○○○○○

 

「じゃあ、話すね」

 

「ええ、お願い」

 

私は今、凛の過去について聞いている。知りたいような、知りたくないような。

 

 

でも、知るべきだと思う。凛の為にも、私の為にも。

 

 

そうこうしてるうちに、花陽が重い口を開けて、話し始めた。

 

 

「....凛ちゃんはね、元々けっこう恥ずかしがり屋さんだったの」

 

 

「スカート履いていくと、からかわれることもあった」

 

 

「でも、凛ちゃんは全然気にしてなかったんだ。あのときまでは」

 

 

「あのとき?」

 

 

「凛ちゃんにはね、好きな人がいたの。5年生のとき」

 

 

「!...へぇ、凛にもそんなところあったのね」

 

 

いけない、口が滑ったわ。

 

 

「真姫ちゃん...意外と辛辣だね」

 

 

「別にそういうつもりじゃ...!だって凛とそういう話したことないし...」

 

 

「しないんじゃなくて、できなくなっちゃったんだよ」

 

 

「凛ちゃん、その男の子のことすっごく好きで、可愛い格好見せたいってずっと言ってた。スカート買いに行くのに付き合ったこともあるし...」

 

 

「そしていざ見せようって、張り切って登校したら...」

 

 

「...馬鹿にされた?」

 

 

「それだけならよかったのにね」

 

 

「え...?」

 

 

「『いつも男みたいな格好してるのにな』って」

 

 

「っ!...そういうことだったのね」

 

 

「ずっと好きだった人に可愛いどころか『女の子』だとすら思われてなかった。そういうことだよ」

 

 

 

「.....凛」

 

 

 

 

あなたは、どれだけ重いもの背負ってるのよ。

 

 

○○○○○

火曜日、ライブ本番まであと…4日。

 

凛は今、すっごく驚いてる。なんでかって?それはね...

 

「えええ!?帰ってこれない!?」

 

 

穂乃果ちゃん達が、帰ってこれなくなっちゃったの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうなの、飛行機が欠航になるみたいで…」

 

 

「じゃあファッションショーのイベントは?」

 

 

「残念だけど、6人で歌うしかないわね…」

 

 

6人かぁ...でも頑張らなきゃ!

 

「それは...急な話ね」

 

 

「でもやるしかないでしょ!アイドルはどんなときも最高のパフォーマンスをするものよ!にこっ☆」

 

「そうだね」

 

「そうね」

 

「そうにゃ」

 

「そうよ」

 

「そうやね」

 

 

「何よこの適当なリアクション!?」

 

 

 

「まぁそんなことは置いといて」

 

 

「そんなことって何よ!もう!」

 

 

 

にこちゃん…カリスマ性が…

 

 

 

 

「それで、センターなんだけど…」

 

 

 

 

 

 

 

ええっ!

 

 

 

「ファッションショーだから、センターで歌う人はこの衣装でって指定が来たのよ」

 

 

そこにあるのは、綺麗なウエディングドレス。

 

「わぁ〜!」

 

「綺麗!」

 

「す・て・き☆」

 

「女の子の憧れって感じやね♪」

 

 

みんながそれぞれの感想を言うなかで、凛はただ固まってたの。

 

 

これを着て…歌う?凛が?

 

 

嘘だよ。そんなこと、できるわけないよ。

 

 

「...これ、誰が着るの?」

 

 

「何寝ぼけたこと言ってんのよ。あんたよ、あんた」

 

 

「穂乃果がいないとなると、今はあんたがリーダーでしょ!」

 

 

やっぱりそうなるよね...こ...これを凛が…

 

「.....ニャハハハハハ」

 

 

「何笑ってるのよ...」

 

 

「ハハハ シャーッ! にゃっ!」

 

 

「凛が壊れた!」

 

 

壊れてないよ!凛は大真面目!

 

 

「もう!どうにかしなさいよー!」

 

 

捕まるわけにはいかないにゃ!ここは...

 

 

 

 

「あー!野生のちんすこうが!」

 

 

 

何言ってるのぉ!?こんな嘘に引っかかる人なんて...

 

 

「どこ?」

 

 

引っかかった!?真姫ちゃん並みにちょろいにゃ!

 

 

今のうちに...!全速力!!

 

 

「あ!凛ちゃん!」

 

 

残念!凛はもうドアの目の前!ここさえ出れば大丈夫...あれ!?

 

ガチャ! ガチャ! ガチャ!

 

 

「な!鍵が!なんでにゃ!」

 

 

「な〜んでだと思う〜?」

 

 

「!」

 

 

振り向くと、にこちゃんが目の前にいた。

 

 

 

「さ…さぁ?」

 

 

「それはいつもあなたに...捕まえられてるからよー!」

 

 

「にゃ....!!」

 

 

「どこにいたって無理よ?...捕まえちゃーう!」

 

 

「にゃあああああああああ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凛ちゃんもにこっちも元気やね〜」

 

 

「希、ちんすこうってどんな生き物か知ってる?どの図鑑にも載ってないのよ!まさか...新種!?大変よ、早く捕まえないと...!」

 

 

「絵里ち...」

 

 

 

 

 

 

かしこさ、息しとらんよ。

 

 

 

 

 

○○○○○

 

「無理だよ。どう考えても似合わないもん」

 

 

 

「そんなことないわ!」

 

 

みんなそう言うんだよ。でも本当は———

 

 

「そんなことある!!!だって凛…こんなに…髪短いんだよ…?」

 

 

「ショートカットの花嫁さんなんていくらでもいるよ?」

 

 

 

そりゃあ...いるかもしれないけど...

 

 

「そうじゃなくて…こんな女の子っぽい服、凛は似合わないって話」

 

 

「アイドルが何言ってるのよ。それに普段はともかく…ステージじゃスカート履いてるじゃない」

 

 

「それは!みんなと同じ一緒だし…端っこだから…」

 

 

そう、凛は端っこだから。

 

 

こんな男の子みたいな子、センターになんかなれないよ。

 

 

「とにかく!μ'sのためにも凛じゃないほうがいい!」

 

 

μ'sのためなんて嘘。本当は全部自分のためなのに。凛は、ずるいから。

 

「でも実際、衣装は穂乃果ちゃんに合わせて作ってあるから…凛ちゃんだと手直しが必要ないよね?」

 

 

「でしょでしょ!やっぱり凛じゃないほうがいいよ!ね?」

 

 

誰か言ってよ、凛じゃダメだって。凛には似合わないって。

 

 

 

 

「この中で穂乃果ちゃんに近いとなると… 花陽ちゃん?」

 

 

「うぇぇ、私!?」

 

 

 「そうにゃ!かよちんなら歌もうまいしぴったりにゃー!」

 

 

本当、妬いちゃうくらいぴったり。

 

 

凛なんかより、かよちんが着るべきだよ。

 

 

「ええっーー!」

 

「確かに…急遽リーダーになった凛に全部任せるっていうのも…」

 

 

「ちょっと負担をかけすぎな気もするわね…」

 

 

「花陽?どう?」

 

 

「私は…でも私は凛ちゃんに...」

 

 

その後に続く言葉を遮るように、凛はかよちんを励ます。

 

「やったほうがいいにゃ!かよちん可愛いし…センターにぴったりにゃ!」

 

 

「でも…凛ちゃん?いいの?」

 

 

かよちん、優しいね。でも、その優しさがつらいよ。

 

「いいに決まってるにゃ!」

 

そんなの嘘、凛だって着たい!でも似合わないから。

 

 

だから、お願い。

 

 

かよちんが着てよ。

 

 

そうすれば諦められるから。

 

 

「本当に?」

 

 

「もちろん!」

 

 

お願いだよ。これ以上期待させないで。

 

 

凛を、傷つけないで。

 

 

 

「凛…」

 

 

「…決まりみたいね」

 

 

「え?でも...私は」

 

 

 

「うんうん!」

 

 

良かった。これでいいんだよ!凛なんか端っこで十分!あんな可愛い衣装似合わないし!

 

 

 

 

 

 

—————似合わないよね。

 

 

 

 

 

○○○○○

 

「え、天気?あー、相変わらずだよ…それより、イベントは大丈夫そう?」

 

 

「ええ、センターは花陽で行くことになったわ」

 

 

「花陽ちゃん? 『うわああ! ああぁっ… あああ…』 そっか…」

 

 

「どうかした?」

 

 

「あ、ううん。頑張ってね!『よしよし… あぁぁ…』」

 

 

「勿論よ。あ、そうだ!ちょっと穂乃果に頼みたいことがあるんだけど」

 

 

「頼みたいこと?」

 

 

「ええ。実は、野生のちんすこうを捕ま『絵里ちがお土産楽しみにしてるって!じゃあ3人とも、沖縄楽しんできてね!じゃっ!』」

 

 

「えぇ!?ちょっ、希ちゃん?野生のちんすこうって」

 

ブチッ!  

 

「ちょっ..!希!」

 

 

「絵里ち...多分すごく恥ずかしい勘違いしとる。ウチはそれを皆に見せたくないんよ」

 

 

「何よ、勘違いって!」

 

 

「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「絵里ち…ちんすこうは生き物やない…お菓子や」

 

 

「!...ハラショー」

 

 

 

 

 

 

 

 

○○○○○

 

「わぁーっ!かよちん綺麗!」

 

 

「そ…そうかな…」

 

 

「うん!やっぱりかよちんが一番似合うにゃー!頑張ってね!凛、応援してるから!」

 

 

「あなたも歌うのよ!」

 

 

 

「そっか…あはは…」

 

 

 

 

 

「予想通りピッタリやね!」

 

 

「脇をちょっとだけ絞ったほうがいいかもしれないわね…さぁ!あとはやっておくからみんなは練習行って」

 

 

 

「分かったにゃ!さぁ行っくにゃー!!」

 

 

「なに急に元気になってんのよ」

 

 

「凛はいつも元気にゃー♪」

 

よかった。

 

バレてないよ、凛の本当の気持ち。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあやっちゃいましょうか」

 

 

「うん...」

 

 

「こんな感じかな?」

 

 

「もう少しじゃないかしら…」

 

 

「そうやね…胸は?」

 

 

「そのままでいいわ」

 

 

「花陽ちゃんには少しきつ...なんでもない。この辺もっと絞ったほうがいいかな?」

 

「うんうん」

 

 

「...」

 

 

 

 

 

 

「凛ちゃん…」

 

 

「ねぇ」

 

 

「わぁぁ!びっくりした...どうしたの、真姫ちゃん?」

 

 

「どうするつもり?」

 

 

「どうするっ...て」

 

 

「最初から着る気なんてないんでしょう?そこの2人も、調整してる風に見えて、何もいじってないじゃない」

 

 

「!...流石やね...真姫ちゃん」

 

 

「3人とも解りやすいのよ。大体、胸の部分をいじらないなんてありえないでしょ?凛と花陽じゃサイズが全然..」

 

 

「ストップ。真姫ストップ。それ以上はいいわ。...まぁそれはともかく、この事はそのうち皆にも話すつもりだったし、この際はっきりさせましょう」

 

 

「絵里...」

 

 

「まず第一に、この衣装を着るのは凛よ。これは決定事項だら異論は認められないわぁ!」

 

 

「誰も異論はないと思うんやけどなぁ...それで問題は、凛ちゃんにどうやってこれを着せるかってことなんよ」

 

 

「確かにあの調子じゃ、素直に着るとは思えないわね...」

 

 

「でもいくら私たちが可愛いって言っても、凛が自覚しない限り無意味なのよ」

 

 

「あの...」

 

 

「花陽ちゃん?」

 

 

「私は、無理矢理着せるべきじゃないと思う。別に今回着なかったからって...」

 

 

「花陽、嘘がバレバレよ」

 

 

「!」

 

 

「ねぇ、花陽...このままでいいの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○○○○○

 

かよちんが着てくれてよかった!

 

 

なんて考えてる。凛、ずるいよね。

 

 

こんなこと、したくないのに。

 

 

可愛い衣装だって着たいのに。

 

 

でも...

 

 

やっぱり…凛には…似合わないよ…

 

 

だって、かわいくないもん。

 

 

凛は、主役にはなれないよ。

 

 

誰かの隣で咲くような、脇役が一番だよ。

 

 

 

 

 

 

 

○○○○○

 

その日の夜、 穂乃果ちゃんから電話がきた。ライブのことが気になったらしい。

 

 

私も話したいことがあったんだ。

 

 

とっても大事な話。

 

 

「それで結局私が…」

 

 

「そっか…ごめんね、急に電話して、気になっちゃって」

ううん。私も話したかったから

 

「それで、花陽ちゃんはどうするつもり?」

 

 

「私は、凛ちゃんに自分の気持ちを伝える」

 

 

「花陽ちゃんの気持ち?」

 

 

「うん...でも、まだ迷ってるんだ」

 

 

「真姫ちゃんに言われたの…このままでいいのかって。そんなの、良くないに決まってる。」

 

 

「でも凛ちゃん困ってるみたいだし… 無理に気持ちを伝えて、凛ちゃんが傷ついたらって思うと、怖くて...」

 

 

「そっか...」

 

 

「....穂乃果ちゃんだったら、どうする?」

 

 

「え?私?私だったら....」

 

 

「...」

 

 

 

少しの沈黙のあと、穂乃果ちゃんはこう言った。

 

 

 

 

 

 

「んー…それは花陽ちゃんが決めなきゃ!」

 

 

「私が?」

 

「うん!花陽ちゃんが決めることだよ!」

 

 

「もし私が言ったことをそのまますれば、凛ちゃんは傷つかないかもしれない。けど、それじゃ花陽ちゃんの想いは、ちゃんと伝わらないんじゃないかって」

 

 

 

 

 

「花陽ちゃん自身が望むことや、花陽ちゃん自身が決めたことを、花陽ちゃんが、自分の言葉で伝える。私は、それが一番だと思うんだ」

 

 

「私が、望むこと...」

 

 

凛ちゃんに、センターの衣装を着てほしい。

 

 

凛ちゃんに、自信を持ってほしい。

 

 

その為に私ができることは、一つだけ。

 

 

それは凄く残酷なことかもしれないけど。

 

 

それでも、私は————

 

 

 

 

 

 

「ありがとう、穂乃果ちゃん。私はもう逃げないよ。精一杯、凛ちゃんに想いをぶつける。どんなに苦しい思いをしても....必ず、最後まで」

 

 

「花陽ちゃん...! うん!ファイトだよっ!」

 

 

○○○○○

水曜日、ライブ本番まであと…3日。

 

「ほとんどの人は自分より相手が可愛いって思うものよ。」

 

 

「実際、自分が一番可愛いと思ってる人なんていないでしょ?どんな自惚れ屋よ...」

 

 

「真姫ちゃんが言うと説得力ゼロだにゃ〜」

 

 

「ちょっ...何よそれ!」

 

 

「まあまあ、二人とも落ち着いて」

 

 

私達は、いつものように3人で帰ってる。

 

 

もうすぐ、分かれ道。

 

 

真姫ちゃんの耳元で囁く。

 

 

凛ちゃんには聞こえないように。

 

 

「......真姫ちゃん」

 

 

「花陽......ホントに大丈夫?」

 

 

「平気だよ。それに、これは私が言わなきゃいけないことだから」

 

 

「....分かったわ」

 

 

お願いね、真姫ちゃん。

 

 

「.....」クルッ 

 

 

「?真姫ちゃん、どうしたにゃ?」

 

 

 

「ワタシ、キョウハヨウジガアルカラサキニカエルワネ」

 

 

真姫ちゃん演技下手なのぉ!?

 

 

真姫ちゃんの方こそ大丈夫なの?ドンウォーリーなの?

 

 

 

「え、でも真姫ちゃんさっき『今日は久しぶりにゆっくりできるわね!』とか言ってたよね?」

 

 

「っ!きゅ、急に誘われたのよ!」

 

 

「誘われたって、何に?」

 

 

「プ、プロレスよ!パパが一緒にプロレス観ないかって!」

 

真姫ちゃん、嘘下手だなぁ...

 

 

「真姫ちゃんがプロレス...意外だにゃ。なんてレスラー?」

 

 

「マ、マスクド西木野...」

 

 

真姫ちゃぁん...大丈夫なのぉ...?

 

 

「真姫ちゃんの家ってプロレスラーもいるの!?すごいにゃー!」

 

 

シンジチャッタノォ!? 凛ちゃん...純情だなぁ...

 

 

「と、とにかく!今日はこれで帰るから!じゃあ!」

 

 

そういうと真姫ちゃんは全速力で走っていった。

 

 

「ちょ、真姫ちゃん!?...そんなにプロレス観たかったのかな?まぁいっか、行こ!かよちん」

 

 

「.....うん」

 

 

凛ちゃん、ごめんね。

 

 

でも私、諦めたくないから。

 

 

あの日、私の背中を押してくれた様に。

 

 

今度は私が、凛ちゃんの背中を押すよ。

 

 

 

 

 

 

 

○○○○○

 

「凛ちゃん...本当にいいの?」

 

 

「何が?」

 

 

「センターの衣装だよ」

 

 

「!」

 

 

「お節介だったらごめんね。けど凛ちゃん本当は、あの衣装着たいんじゃないかなって...」

 

 

「凛はもういいよ。かよちんの方が似合ってるんだから、かよちんが着るべきだよ」

 

 

「...私は凛ちゃんに着てほしいな」

 

 

 

「えっ?で、でも凛は髪短いし...」

 

 

「髪の長さと可愛さは関係ないと思う。その理屈だと、ショートカットの女の人は皆可愛くないってことになるよ?」

 

 

「...そんな事言ってないよ!...でも凛は別。だって、凛には可愛い服は似合わないし」

 

 

「そんなことない...!きっと似合うよ」

 

 

「だけど.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「....凛、男の子に生まれたかったなぁ〜.」

 

 

「.....!!!」

 

 

「もしも凛が男の子だったら、こんな苦労しないんだろうなぁ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

ねえ、凛ちゃん。

 

言い訳みたいな「でも」「だって」「だけど」

 

 

決して叶わない「もしも」

 

 

私は凛ちゃんに、そんな言葉使ってほしくない。

 

 

凛ちゃんには、強くいてほしい。

 

 

いつも私の隣にいてくれて、守ってくれた。

 

 

そんな、強くて可愛い「女の子」でいてほしいから。

 

 

だから、ごめんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「呆れた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ...?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かよちん...今なんて...?」

 

 

「『呆れた』って言ったんだよ」

 

 

「かよ.....ちん.....?」

 

 

「男の子に生まれたかった?馬鹿馬鹿しい。そんなこと欠片も思ってないくせに」

 

 

「...!!」

 

 

「凛ちゃんは、ずるいんだよ」

 

 

「...っ」

 

 

「凛ちゃんだってすっごく可愛いのに、自信がないのを私達に押し付けて逃げてるんだ。それって卑怯だよね?」

 

 

「わかってるよ!凛だってそれぐらい.....!!」

 

 

「いや、わかってないよ。『自分には似合わない』って決めつけてれば楽なんだよね?傷つかなくていいもんね?」

 

 

「ちっ、違っ...」

 

 

「違わないよ」

 

 

「....」

 

 

「....凛ちゃんは、自分を否定されるのが怖いだけの臆病者だよ」

 

 

「.....」

 

 

「凛ちゃんのそういうところ、見ててイライラするんだよね」

 

 

「っ!....」

 

「本当は怖いだけの癖に、人のせいにして逃げてばかり。そんな...凛ちゃんなんて.....!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....大っ嫌い!!」

 

 

 

「!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...そっか。今日は早く帰らないと!じゃあね!」

 

凛ちゃんはそう言って、昨日みたいに逃げようとしてる。

 

 

ここで逃げたら、凛ちゃんはもう...

 

 

そんなの絶対にいやだから。

 

 

昨日みたいに、諦めたくないから。

 

 

お願い、凛ちゃん————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃げないで!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「........っ!!!かよちん..!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「臆病者の凛ちゃんは、もう見たくないよ!」

 

「一緒に踏み出そう?一人で辛いなら、私もいる。真姫ちゃんもいる。それに、μ'sのみんなだって!」

 

「どんなに辛くても支えてあげる!」

 

「だって...!私は本当の凛ちゃんと、歌ったり踊ったりしたいから!」

 

「.....だからもう、逃げないで ?」

 

「.....」

 

「私、こっちだから....また明日」

 

「.....うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○○○○○

凛は今、公園のベンチに一人で座ってる。

 

 

「はぁ〜......」

 

諦めと涙が混ざったため息を吐き出す。

 

 

 

 

凛、かよちんに嫌われちゃった。

 

 

今すぐ家のベッドで泣きたいくらいなのに、

 

 

まっすぐ帰る気にはなれなくて。

 

 

 

 

 

 

———かよちんが、あんな事言うなんて。

 

 

わかってるよ、このままじゃいけないことは。

 

 

踏み出さなくちゃ、何も始まらないことも。

 

 

今逃げたら一生後悔することも、全部わかってるよ。

 

 

———それでも、やっぱり怖い。

 

 

...いつだったかな?

 

 

ことりちゃんと海未ちゃんが、穂乃果ちゃんにピーマン食べさせてたっけ...

 

 

穂乃果ちゃんいつもピーマン残すから、いい加減克服させようって。

 

 

海未ちゃんが押さえつけて、ことりちゃんが口に押し込む。ことりちゃん、すっごくいい笑顔してて...

 

 

......嫌なこと思い出したにゃ。

 

 

あの時は、なんでそんなに嫌なんだろうってずっと思ってた。

 

 

でも、今ならわかる気がする。

 

 

苦手なものってさ、理屈じゃないんだよね。

 

 

好きになることが、理屈じゃないように。

 

 

頭で理解していても、心が拒絶する。

 

 

どんなに突き放しても、心が求めてる。

 

 

そんな気持ち、少しはわかるよ。

 

 

でもね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛のそれは、ピーマンよりもずっとずっと苦くて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お気に入りだった服が、前のように似合わない。

 

 

鏡の中を見つめて、ため息をついて。

 

 

「思い出」なんて呼べない日々。

 

 

スカートはタンスの奥にしまったまま。

 

 

まるで、飛べなくなった魔女みたい。

 

 

『馬鹿なこと言わないでください。滅茶苦茶可愛いですよ』

 

 

なんでだろう?

 

 

お世辞だってわかってるのに。

 

 

お世辞であって欲しくない。

 

 

あの人に言われる「可愛い」だけは、本心であって欲しい。

 

 

これが、恋なのかな?

 

 

だとしたら、「勝ち目がない恋」だよね。

 

 

辛いよ。

 

 

苦しいよ。

 

 

切ないよ。

 

 

会いたいよ...

 

 

 

「お花屋さん...!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛を、助けて。

 

 

 

 

 

○○○○○

 

私、ちゃんと言えたよ。自分の気持ち。

 

 

後悔はしてない。でも...やっぱり...!?

 

 

「!」 バッ! 

 

気配を感じて振り向くと、そこにはーーーー

 

 

真姫ちゃんが立っていた。

 

 

「...!真姫ちゃん...なんで?」

 

 

「本当はすぐ帰るつもりだったんだけど...気になっちゃって」

 

 

「ひょっとして、全部聞いてた?」

 

 

「...ごめん」

 

 

「.....そっか。でも大丈夫。私、後悔してないから。それに、凛ちゃんがうじうじしてるのが歯がゆいのは本当だし、それに..!?」

 

 

それはあまりに突然だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真姫ちゃんが、私を抱き締めてくれたの。

 

 

そして耳元で、こう囁いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「....よく頑張ったわね、花陽」

 

 

「っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ずるいよ、真姫ちゃん。

 

 

せっかく我慢してたのに。

 

 

こんなことされたら————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.......っ!!!....あぅっ.....!うぅ...!!!」

 

 

涙、止まらなくなっちゃうよ。

 

 

 

 

「うぅ..!うあぁぁぁ.,..!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐすっ...!りんちゃん...!!ごめんなさい...!ごめんなさい.....!!ごめんなさい.....!!!!」

 

 

私、最低だ。

 

 

凛ちゃんに、あんな酷いこと言っちゃった。

 

 

こんなこと、していい筈がないのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

————それでも私は、凛ちゃんの力になりたい。

 

 

凛ちゃんが「大切なもの」を無くそうとしてるのに、黙って見てなんかいられないよ。

 

 

もしかしたら少しだけ、髪が短いのかもしれない。

 

 

もしかしたら少しだけ、お淑やかさがないのかもしれない。

 

 

もしかしたら少しだけ、女の子らしくないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

でもね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰か」が偉そうにいう「常識」なんて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時と共に移ろう、不確かなものだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなものに、惑わされないで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今」の凛ちゃんに一番似合う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「服」や「恋」や「生き方」から、

 

 

 

 

 

 

 

目を逸らさないで。

 

 

 

 

 

 

 

 

探すことをやめないで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言い訳みたいな「でも」「だって」「だけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吐き捨てた道は、行き止まり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、出口はすぐそこにある。

 

 

 

 

 

 

 

 

追い越されてばかり、飽きるでしょ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一緒に突き抜けようよ、女子ロード。

 

 

 

 

 

 

 

 

———私は、信じてるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐすっ...!凛ちゃんっ.....頑張れっ....!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界一可愛い、私の親友。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星空凛を、信じてるから。

 

 

○○○○○○○○○○

ガーベラ

 

科・属名: キク科ガーベラ属

和名: ガーベラ

別名: アフリカ千本槍(センボンヤリ)、花車(ハナグルマ)

英名: Gerbera, African Daisy, Transvaal daisy, Barberton Daisy

 

花言葉は「前を向いて」

 

 

 

 

 

 

 




「皆凛好きー」を流行らせたい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。