次回からはまた普通に戻るのでお楽しみを。
物語の時間は僅かに巻き戻る……
絵具をぶちまけゆっくりかき回した様な異様なカラーリングの映画館に、大柄な男が椅子に座っていた。
「ふぅ……体も大分回復してきたぞ」
そう言った再生した腕をぐるぐるとその場で振り回す。
この男の名はギジョア、世界と世界の狭間に生まれた異質な存在『エラー』の元締めにして複数のエラー達のリーダーだ。
「……無理をするな……傷はかなり深い……」
その時扉を開け、やせ形の男が入って来た。
抑揚のない、合成音声の様な感情を感じさせない態度。
幹部エラーの一人、ディヴィノックだった。
「ねぇねぇねぇねぇねぇ!!次は誰が動くんだい?どっちにせよクレアシオンを手にしなくちゃクラッシュに進化は出来ないよん?」
甲高い声が響き劇場の画面に小柄な姿が映し出される。
踊る様にステップを踏み始める。
この男はジョーカー、道化師の名の様に仮面を顔に付けている。
その時ドタドタを音を立て、天井から一人の男が落ちてくる。
ワイルドな風貌に、たくましい肉体を持った男。
最後の幹部エラー、ビスゴーラだった。
「ジョーカー!!俺に良い考えが有る!!全員で表の世界へ行くぞ!!」
ビスゴーラの言葉にすべての幹部エラー達が耳を傾ける。
「なるほど……流石はビスゴーラだ、まさかこの様な作戦を立てるとは……!!」
ビスゴーラの言葉にギジョアが戦慄する。
その作戦は不足しがちなクレアシオンを大量に、しかも無制限に吸収できるものだった。
ギジョアの一言により今まさにその作戦が進行している最中だった。
多数の人間がひしめく街に四人が歩いていた。
前から複数の人間が歩いてくる。
「明日も部活だよ」「先輩、この後ラーメンでもどうっすか?」
「アナター、お仕事お疲れ様!!光ちゃんには言って有るから、デート早く行きましょ?」
「卵を買わなくては……」「牛丼が食いたいなー」
無数の人間の群れを掻き分け、4人は人間のひしめく建物に入って行った。
異様なメンバー達に、入店と同時に他の人間たちは距離を置いている。
暫く無言の時間が過ぎてゆく。
そんな中一人の女が、その四人に近付く。
「……4名でお待ちの……幹部エラー一行様?お待たせしました、御席の方へどうぞ」
その言葉に4人が立ち上がり、大き目のテーブル席へと案内される。
「当店のシステムは御存じでしょうか?」
「(システムだと……?パンドラシステムの様な物か?)」
システムの一言にギジョアの顔が鋭くなる!!
だがその言葉にビスゴーラが答える。
「問題ない!!食べ放題なのだろ?時間は120分、アルコールは無しの飲み放題を4人分くれ」
指を立てて言葉を交わすとウエイトレスは4人分のコップを持って来た。
「ビスゴーラ、さっきのは何の呪文なんだ?まったく理解できないぞ?」
「……説明を要求する……」
全く状況が読めない、ギジョアとディヴィノックが、ビスゴーラに尋ねる。
自信ありげにビスゴーラが話し出すが、そんな3人を無視しジョーカーは席を立った。
「ポテト取ってくる!!」
数分後……
テーブルの上には4人が入手した料理が並んでいた。
「ビスゴーラ、お前の食べている物はなんだ?」
「トントロと言うらしい!!油分が素晴らしいぞ!!一枚やろう」
その言葉と同時にギジョアの更にトントロを一つ押しつける。
「美味い!!こんな物が有るのか……次はそれを取って来るかな」
「ディヴィノック~もっといい物持って来たらどうなの?」
そう言って不満げにジョーカーが、口をとがらす。
そう言われるディヴィノックの皿は一面黄色だった。
「……この、コーンという物はすばらしい……甘みと触感がたまらない……!!」
それだけ言うと、箸で一粒ずつ口に入れ始めた。
「ちぇ~つまんないの~……ねぇねぇねぇねぇねぇ!!ビスゴーラ、僕のお寿司食べない?」
「寿司だと?」
「なんだそれは……」
「むむ?生ではないか!!こんな物を米に乗せるなど!!人間は理解しがたい!!」
そう言いながらも3人ともジョーカーの皿の上のマグロに夢中だ。
意を決するように、ビスゴーラが寿司に手を伸ばす。
「あ、この緑の塊を黒い液体に溶かすんだよ?」
「こうか!!」
その言葉と共に箸で大量のわさびを盛り醤油皿に落とす。
寿司を付け口に含む!!
その瞬間ビスゴーラが目を見開く!!
「素晴らしい!!刺激的な味だ!!」
予想外のリアクションにジョーカーが目を丸くする。
もっともっととわさびを寿司につけ食べ始める。
「この緑の奴は素晴らしいな!!ほらお前も食べろ!!」
そう言った、ジョーカーがにわさびの塊を差し出す。
「いや、僕は遠慮――」
「遠慮は無用だ!!たべろ!!」
箸の先のわさびをジョーカーの口に押し込んだ!!
「……かは!?はぃ、はひ……から……辛い!!水!!水!!」
「どうだ?美味いだろう?」
そう言って笑いながら、新しくわさびを袋から開けそのまま食べるビスゴーラ。
刺激的だ!!と絶賛する。
「どれ、俺も……うっ!?……少しばかりきついな……良くそんなにてべられるな?」
一口たべた、ギジョアが箸を置く、その隣ではディヴィノックが悶絶していた。
「そうか?美味いぞ!!」
そう言って三つ目のわさびの袋に手を伸ばす。
「焼き魚だと……?魚の焼死体ではないのか?」
複雑な面持ちでディヴィノックがの目の前のサンマを突こうとする。
ガシャン!!
僅かに音がし、ディヴィノックが腕を肴の方に構える!!
「何が有った!!」
「敵襲か?」
ギジョア、ビスゴーラが構える!!
実力者のディヴィノックを構えさせる時点で相手は相当の力の持ち主だと解る。
「コイツ……睨んできたぞ!!」
そう言いながら箸を両手に一本ずつ持ち、魚を突こうとする。
本人はいたって真剣な顔をしている。
4人の食事……ではなくクレアシオン補給は続く!!
「甘い!!甘いぞ!!」
「冷たい……なんだこのアイスは……!!」
「ぐはぁ!?頭が!!頭が割れるような痛みが!?」
「やってらんないよ~」
やれやれと言った表情をし、ジョーカーががその場から立ち上がる。
楽しい思い出は過去のものとなる……
複数の、墓石が並ぶ場所で3人の男たちが立っていた。
何もないっていない棺が2人の前に鎮座していた。
「なぜだ!!なぜお前は先に行ってしまった!!お前は……お前はもっと上に行けた筈だ!!」
悔しそうにギジョアが拳を近くの墓石に叩きつける!!
呆気なく墓石は砕け、地面に転がる。
「…………」
その後ろでディヴィノックが静かに目を閉じる。
コレは葬式だ。
嘗て同じ志を持ち、お互いに切磋琢磨した仲間。
ビスゴーラがの葬儀だった。
エラーは所詮、世界のデータの破損部分に過ぎない。
破壊されてしまったら、死体すら残りはしない。
空っぽの棺を3人は見送っているのだ。
先日ギジョア達の元に悲しい知らせが届いた。
パンドラとの戦闘に寄り、ビスゴーラが戦死したのだ。
悲しみに暮れる仲間たちは、葬儀という儀式によってビスゴーラに別れを告げているのだ。
「なぜだ……何故なんだ!!」
涙を流しながら、ギジョアが空の棺に身体を預ける。
尚もその様子をディヴィノックは静かに見守っていた。
(はぁ~家族ごっこか……くだらないね!!)
そんな二人の様子をジョーカーは冷めた目で見たいた。
彼にとってこんなのは茶番以外の何物でもなかった。
無駄な葬儀、無駄な涙、無駄な時間。
この行為すべてに、無意味さを感じていた。
(使えない、クズ共はポイでしょ?壊れたらゴミでしかないのに……あーあ、馬鹿ばっかりだね)
そんな事を考えながら、その退屈な時間が過ぎるのをただ待っていた。
(さぁて……ビスゴーラのお陰で結構使える、クレアシオンは増えたし……アレやっちゃおうか……)
葬式の中でひっそりとジョーカーは仮面の下で微笑んだ。
珍しくほのぼのした、話が書きたくなったので投稿。
実は食事のシーンを書くのが好きなので、こんな話になりました。
少しでもほっこりして下さったら幸いです。