仮面ライダーパンドラ   作:ホワイト・ラム

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みなさんお久しぶりです。
しばらく投稿を休んでいたラムです。
今回からまたよろしくお願いします。


理想卿の独裁者

「なんだよこれ……」

目の前の光景に光一がポツリと言葉を漏らす。

光一の生まれ育った町は今はすっかり形が変わっていてしまった。

無数のビルには電工掲示板により正義の素晴らしさや、人がどうあるべきなのかが絶えず流されている。

飛行船からは「ガロウズ」を褒めたたえる言葉と、ガロウズのありがたい言葉が垂れ流されている。

道行く人々も何処かよそよそしい。

 

そんな町に光一は窮屈さを感じずにはいられなかった。

 

「うーん……これは、極小のクラッシュを使った空間操作かな?」

光一の手のキュピルスが興味深そうに言葉を漏らす。

 

「クラッシュって……進化したエラーの事だよな?」

 

「そ!たぶんあのガロウズってのは、今まであった戦闘後と自身の力を共鳴させて一気にクラッシュと同等の力を使ったみたいだね……もっともタダの人間がそんな事できるとは到底思えないけど?」

糾弾するような語気で、自身の視線を古矢に投げかける。

 

「……あー……たぶんコレ半分はウチの社長が原因だわ」

 

「どういう事ですか?」

光一までもが有無を言わさぬ感じで、言葉を投げかける。

観念した、といった様にリアクションを取ゆっくりと古矢が話し出した。

 

「あーっと……一応コレ企業秘密……ああもう!!めんどくせー!!

最初から全部話してやる!!

まず最初にうちの社長が人工的にエラーを再現しようとしたんだよ、クレアシオンを使用して安定したエラーの制作が目的だった。」

 

「懲りずにまたエラーかい?霊山時は本当に馬鹿だな」

キュピルスが馬鹿にしたように口を挟む、その言葉に一瞬古谷が不機嫌そうな顔をする。

光一もキュピルスに同意見だった。

 

「うぐ……結局エラーを完成させた社長はそれをデータに変換して電子ネットワーク上に閉じ込めたんだ……暴れられると困るし管理も楽だったから……それをジョーカーが盗みだしたんだ!!それだけじゃない!!同時に保存してあったパラドクスドライバーも一緒に盗み出して、死刑執行待ちだった凶悪犯の網河 貴政に渡した……そしてそいつ等が暴走した結果がこの町だ……」

 

古矢の言葉にどんどん光一とキュピルスの顔色がわるくなってく。

 

「いったん整理しようか……社長が懲りずにエラーを研究して?みすみすジョーカーに盗まれて?脱走した死刑囚が暴走してるって事?」

嫌味たっぷりで光一が古矢に言葉を投げかける。

キュピルスに至っては「どうしてこんなバカばかり……」とあきれたような口調で話している。

 

「仕方ないだろ?俺も昨日初めて聞かされたんだからよ」

そう言うと古矢が立ち上がり、町の方へと歩き出した。

 

「ちょ、何処へ行くんだよ!!」

 

「決まってるだろ?この書き換えられた世界を見に行く。お互い安否が気になる人もいるだろう?」

それだけ言うと再び古矢は足を進め始めた。

おそらく孤児院を見に行くのだろう。

 

 

 

「ったく……まぁいい、キュピルス俺たちも行こうか?」

 

「ああ、そうだね。無駄っぽいけど」

光一の言葉に脱力気味にキュピルスが答える。

 

「無駄?どういう事だ?」

 

「この世界はあの『ガロウズ』って奴のために書き換えられた世界だ、『よく似た誰か』はいるだろうけど、たぶん本人じゃない。その違和感を最も感じるのはお前だと思うよ?」

 

淡々と話すキュピルスの言葉に光一は焦りを感じ始めた。

背筋を嫌な冷たい感覚が通っていく。

 

「なぁ、ならなんで俺たちは書き換えられなかったんだ?俺と古矢さん、あとお前だけ影響がないなんておかしいじゃないか?」

 

話題を変えるように自身の持つ疑問を提唱する。

これ以上暗い考えは持っていたくなかった。

それに対してキュピルスが、再び口を開いた。

 

「憶測だけど、パラドクスドライバーのおかげだ……パンドラシステムには世界を移動する時に出るであろう影響を無効化する力がある、おそらくそのおかげだね」

 

「って事は俺と古矢さん以外は全員知らない奴って事か?」

 

「いいや?僕の知る限りもう一人候補がいるよ」

 

「候補?」

 

「そ!この事件の原因の一人」

 

 

 

 

 

町を見下ろす高層ビル、その最上階で霊山時がソファーに座っていた。

何かを思い出した様に立ち上がり、壁にある小さなモニターの電源を入れる。

 

『なんの御用でしょうか社長』

 

「すまないが朝食はまだかね?」

モニター越しから女性の声が聞こえてくる。

実はこのやり取りもはや数度繰り返されたものだった。

 

『お食事はもうすでにお持ちしました、次の食事は12時半になっております、それまで業務を』

それだけ話すとプチンと音がして電源を切られた。

 

「まったく……私が食べたいと言うんだ何か持ってくるべきだろう」

若干不機嫌な表情と声色で中央にあるテーブルを見る。

そこには小さな土鍋におかゆとネギやゴマ、梅干しなどの薬味それと具のない吸い物がおかれていた。

質素、非常に質素な食事だった。

 

「ふぅむ……出かけようにも……」

霊山時は、扉に目を向ける。

そこには外からロックがかかっており外に出ることはできなかった。

幸いトイレは常備されているし、壁際には冷水器があるし、その隣の壁には小さなエレベーターがあり食事を運んでくるため困る事は少ないのだが。

 

「ああ、私の望む食事としてはすこし……いや、かなりもの足りないな。

カリカリに焼いた肉厚のベーコンに高級卵の目玉焼き、味噌汁、白米を腹いっぱい食べないと私は調子が出ないのだよ……」

そんなことを呟くと、ロックが解除され一人の男が入室してくる。

その相手を視界に収めた。

 

「やぁ、網河君。調子はどうだい?」

 

「おはようございます、社長」

それはガロウズの変身者にしてこの世界の創造者、網河 貴政だった。

 

 

 

「モーニングを二つ」

手早くモニターに注文をし、テーブル上に食事が並べられる。

メニューは、ホウレンソウとベーコンのソテー、トースト、サラダ、コーヒーだった。

 

「さて君はもう少し食事に気を遣ったらどうだい?」

霊山時がコーヒーをかき混ぜながら、網河に話しかける。

 

「贅沢は心にまで染みつきます、質素で倹約な生活を……そうする事で心を美しく保てるのです」

サラダを食べながら網河が、霊山時に話す。

 

「ふむ、君は昔から少しばかりまじめすぎる。面白味が足らない!!心にもっと余裕を持ちたまえ」

自身のサラダのトマトを網河の皿に押し付けながら、霊山時が口を開いた。

 

「それこそが、私の良さですよ。真面目、勤勉、精錬潔白、人がこうあるべきだという条件をすべて揃えています」

コーヒーを口に含みながら、網河がほほ笑んだ。

 

「その結果がこの世界だ……と?」

今度は網河の皿からベーコンを取ながら霊山時が視線を網河に投げかける。

 

「そうです、私の選んだ親衛隊によりこの世界は管理されている!!争い、犯罪がなく努力が報われ、最低限の生活がある!!まさにこの世界は理想卿となった!!私だ、私のおかげだ!!」

 

『Yes マスター、貴方の努力の賜物です』

網河をたたえる電子音声が、網河のポケットから電子音声が響く。

その声に霊山時が興味深そうに話す。

 

「ほう、XEPか……その様な性格になるとはね」

 

『始めまして、ミスター霊山時。私はジャリブ、現在マスター網河の理想のお手伝いをさせていただいております』

網河の取り出した、スマートフォンの様な機械に天秤の様なものが表示され音声が流れだす。

 

「さて、しゃべりもそろそろ終わりです。私はまだあなたを殺しはしません、では私は仕事が有るので失礼します」

ソテーの残った汁をトーストで拭い、最後にコーヒーを飲み網河が社長室を後にした。

 

「はぁ、前々から彼は視野が狭いと思っていたが……やれやれ、今回はどうなるやら?」

一人残された霊山時が誰に話すでもなくつぶやいた。

 

 

 

 

 

「ああ、もう!!なんだよここ!!」

街中を歩く光一が声を上げた。

やたらとしっかりした世界、誰もが敬語で話し、他者を必要以上に思いやっていた。

まるで、『人として正しいこと』をを強制されたかのような世界だった。

 

「うーん?僕にはわからないけど、こういう風になっちゃいけないのかい?」

キュピルスが光一に疑問を呈す。

 

「いけないってか……なんていうんだ?『悪い部分も含めて人間』っていうか、『強制されるやさしさに意味は無い』っていうか……とにかく居心地が悪いんだよ!!」

 

「それはお前が、悪人だからじゃないのか?」

にやにやとキュピルスが声を出す。

 

「な!?くそパズル――」

光一が声を荒げようとした時、()()()()()()()()()()()()

 

「イエーィ!!わ・た・し!!ダーッシュ!!」

その声を聴いて光一は全力で振り返った!!

長い髪に翻るセーラー服、活発そうで人懐っこいほほ笑み、そして何処かおバカな雰囲気のする言葉使い。

 

「うそ……だろ……?」

その姿は現実世界では意識不明で眠っているはずの――

 

「理折……?」

事始 理折だった。

理折は全力で走り続け一つの家の前で立ち止まった。

 

「勝利のヴィクトリー!!」

そのまま、両手を広げグリコのポーズをする。

 

「えへへ~また私の勝ちだよね?キエラ!!」

 

「……早……い……追いつけない……よ」

振り返ると同時に理折の背後から小柄な少年が走ってくる。

彼女とは対照的に、おどおどした自身のなさげな少年。

ダボつく学生服に、竹刀を入れる袋を背負っている。

 

その姿は正しくビスゴーラに吸収され消えたはずの――

 

「千風 キエラ……?なんで?どうなってるんだ」

 

「あら、理折ちゃん、キー君おかえり」

理折の立ち止まった家の扉が開き、光一の母親 栄度 天樹(てんじゅ)が姿を現した。

非常に仲良さげに話している。

 

「ここは再構築された世界だ!!いくら似ていてもアレは偽物――」

キュピルスが止めるが光一は二人の観察を止めたりしなかった。

その時一陣の風が4人の真ん中に吹き荒れた!!

 

顔をとっさに抑えた光一の視線の先には、さっきまでいなかった男が立っていた。

白い何処か神官を思わせる様な服装だった。

 

「住人ナンバー 00732638事始 理折!!貴様信号無視をしたな!?住人から通報があったぞ!!ルールを破る物はこの世界に不要だ!!地下世界送りと成ってもらうぞ!!」

すさまじい剣幕で理折に男が迫る!!

キエラも理折も震えだしてしまった。

 

「ご、ごめんなさい……ゆるして」

 

「無理だ、観念しろ!!」

男が懐から、天秤を溶かして固めた様な銀色の物体を取り出す。

 

「刑罰の時間だ!!」

それを投げると同時に、引かれるように男の体内にその物質が溶け込んだ!!

 

風が舞い上がり、水がまき散らされ、雷が鳴り響いた。

男の姿は風を視覚化した様な物に包まれ、藍色の怪人となっていた。

 

「は……はひ……テンペスト……様」

 

無言でテンペストが右手に現れた藍色の竜巻の様な曲剣を振りあげる!!

そしてそのまま理折に、振り下ろした!!

 

キィン――

 

金属同士がぶつかる音が周囲に響いた。

 

「僕は忠告したよ?こいつは偽ものだって?」

次に響くは皮肉屋な生意気な声。

そして最後に響くのは――

 

「偽物でも構わない!!俺にはもう理折を見捨てることはできない!!」

正義を守る戦士の決意の声!!

仮面ライダーパンドラ!!ここに参上!!

 




最近はライバルライダーも強化される時代ですね。
ディープスペクターのカッコよさにやられた作者です。

角が鹿っぽいのは秘密。
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