仮面ライダーパンドラ   作:ホワイト・ラム

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月だけが照らす場所

「ねぇ、キーちゃん。あなた今日まで――幸せだった?」

光一の母親、天樹が皿を洗いながら自身の息子()()()()()()()()()()キエラに話しかける。

 

「うん……幸せだった……今までありがとう……」

敢えて母親の方を向かずに、キエラが無感情な言葉で答える。

母親も母親で何もそれ以上何も言わずに、無言で皿洗いに戻る。

 

「行ってくるよ……ママ……」

 

「うッ……うっつ……どうして……」

静かにしかし確実に母親が涙を流す。

 

キエラも天樹もコレが今生の別れになることを理解していた。

昼の一件で確実に、この家と理折は他の住民に通報されているだろう。

お互いがお互いを監視し、わずかな違反も決して許しはしない。

『正しく在れ、他者よりも、何よりも』

それがこの世界のルールであり、生きていくための処世術である。

 

偽りの親子の最後の会話……これはライダーがくれた最後の時間だった。

扉が開き、誰かが家から出ていくのを理解した。

もう戻りはしない……

 

 

 

「ごめん……待たせたね」

キエラが家の外で待つ光一に声をかける。

 

「ああ、気にしてないよ。コレありがとうな」

そういって光一が手に持ったカップ麺を見せる。

これはキエラが光一に渡したモノだった。

 

「風向きが怪しく成ってきたな……」

キュピルスが、空を見ながらそうつぶやく。

さっきまで月が出ていたが、どんどん雲が出てくる。

ポタリと、光一の顔に雨がかかる。

 

「今夜は……嵐になるな」

誰に言うでもなく光一は、一人空に向かってつぶやいた。

 

 

 

 

 

「――こんばんは」

3人の静寂を切り裂く様に、二人の男が現れた。

一人は神官の様な白い服を、もう一人は昼テンペストとしてパンドラと戦った男だった。

 

「ふぅん……やっぱり来たか、見逃してはくれないよな?」

テンペストに視線を送りながら光一が言葉を投げかける。

 

「ああ、そうとも!私は正義の使者、小さな悪も――」

 

「その口を閉じろ。テンペスト」

醜悪な顔を見せ、口を開くテンペストを横の男が睨に黙らせる。

二人の間には明確な、上下関係が有る様だった。

 

「私もコレが仕事なんです」

その言葉と同時に神官の姿が変化する!!

石膏像の様な白い体、両腕に出現する純白の翼、後光を形にした金色のリングが頭に浮かぶ。

慈悲無き非情の天使、ホーリーエラーだった。

 

「どいつもこいつも……正義正義ってうるさいんだよ!!」

 

『コネクション・シールブレイク!!パンドラシステム・スターティング!!』

叫ぶような光一がベルトにキュピルスを押し込む!!

 

「思考停止野郎どもめ!!そんなに自分のやることを肯定してほしいのか!!」

怒りをぶつける様に光一が、キュピルスの面をはじいていく!!

2面、3面4、6!!全ての面が同時に色がそろう!!

 

『コンプリート!!オールシールブレイク!!センキュー!!プレイザゲーム!!パンドラ・ローディング!!……デットゾーン……』

パンドラが再び姿を変える!!純白から漆黒の戦士へと!!

光一の怒りの呼応するように赤くヒビが全身に走る!!

デットゾーンパンドラだ!!

 

「来なさい……愚かな反逆者よ!!」

 

「ああ!!お前ごときに誰も渡さねー!」

純白の天使と漆黒の狂戦士がお互いにぶつかり合う!!

 

「光よ!!」

ホリーエラーの言葉に反応する様に、右手に光が集まっていく!!

それは光で出来た弓、ホーリーがほほ笑み指を放す。

一瞬遅れて夜の闇を貫く様な、一筋の光が流れる!!

 

「な……にぃ!?」

驚愕の声を上げるのはパンドラ!!

後ろにあった一軒の店が、いとも簡単に吹き飛んだ!!

 

「どうです?私の光は?素晴らしいでしょ?」

 

「おまえ……関係ない人を巻き込んで――」

 

「正義の為の尊い犠牲です」

何の感情もないホーリーの言葉。

パンドラは知り得ない情報だが、ガロウズとまったく同じことをホーリーは言っていた。

 

「躱しますか?これからも、多くの人が犠牲になるでしょうね?」

にやりとホーリーが光一に向かって笑いかけた。

 

 

 

 

 

同時刻、パンドラの戦闘域から逃げたキエラは地下を走っていた。

手筈通りなら、自身の母親と理折は別の所に逃げているハズだった。

3人でバラバラに逃げる、それがキエラ達の作戦だった。

だが、キエラはそうはしなかった、追手たちの前にあえて姿を見せる事で自分自身を囮にしたのだ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

「逃げるねぇ~」

キエラの後ろから、テンペストの声がする。

昼の一件から、テンペストがこちらを追ってくるのは理解してた。

それを理解したからこそ、狭い地下を走っていたのだった。

 

「ニヒィ……」

テンペストがタイミングを見計らって、壁に電流を流し込む!!

走る稲光は、壁に手をついたキエラに容赦なく襲い掛かる!!

 

「イギィヤァ!?」

はじかれた様に壁から手を放すキエラ。

掌からは血が流れていく。

 

「フヒィ……たのしいなぁ……さぁさぁ!もっと逃げな?ほかの奴らはお前が終わった後にまわしてやるからさぁ!!」

醜い顔を見せテンペストが更に電流を壁に流し込む!!

スパークした火花がキエラに降りかかる!!

 

「ライダー……僕に……勇気を!!」

ここに来る前別れた、勇者の姿を思いキエラは背中の竹刀を入れた袋を触る。

キエラは知っていた「自身は弱い存在だ」と。

ライダーにも、ガロウズにも遠く及ばないと……

だが心は、心だけは!!

決して負けないと強く誓っていた!!

 

狭い地下をキエラは逃げていく。

自身の無力を噛みしめ、弱さと向き合い、それでもほんの僅かでも自身を愛してくれた者たちを生かすために……

 

やがて広い場所に出るキエラ、山重の店の前でライダーをここまで案内したばかりだった。

 

「おやぁ?もう逃げないのかなぁ?」

 

「……ここで……勝負だ!!」

逃げ続けたテンペストに向き直り、背中の竹刀を左手に強く握る!!

 

「勝負ぅ!?お前が?私にぃ?嬲り殺しの間違いだろう?」

テンペストがだらりと舌を伸ばし、キエラを見据える。

彼の脳裏には『負ける』事など考えていなかった。

目の前の獲物をどう、調理しようか。それだけが彼の目的だった。

 

「……僕は……もう逃げない!!僕に、僕に居場所をくれた人たちを今度は――僕が!!」

瞬間少年の姿が変化する!!青いベストの様な服にボタンの様に現れるスイッチ。

自身を閉じ込める様な格子状の、ヘルメットの様なパーツ。

最後に両手に出現する、半透明のフィン!!

 

嘗て消えていった扇風機エラーの姿がここに戻ってきた!!

 

「なんだ?エラー?我々と同じ?……いや、違うな!!

我々とは違う!!完全にエラーのみの存在だな?

何処から、迷い込んだ?それとも偶発的に復活したのか?

まぁ、いいか……やることは変わらない!!」

 

獰猛な笑顔を向け、テンペストが跳ぶ!!

 

「腕一本!!」

高く振りあげた足が、キエラの腕をとらえる!!

 

「グぅ!」

腕の表面にヒビが入り、キエラがわずかに顔をしかめる!!

 

「なんだぁ?痛いのか?一丁前に?人間ですらない、残骸のくせに!?」

テンペストが更に拳を振るい、キエラの体を殴り続ける!!

 

「はぁ、はぁ……痛いよ……すごく痛い……けど、僕はあきらめない!僕を……人として扱ってくれた、みんなの為に!!」

両腕のフィンが動き、かまいたちを発生させる!!

 

「はん!?なんの積りだぁ!?」

テンペストが腕を振るうと同時に出現する極小の竜巻!!

それがあっけなくキエラのかまいたちを消していく!!

 

「なぁなぁ?お前エラーだよな?家族ごっこは楽しかったか?

ん?なーんにも知らない奴らの中に家族として入って楽しかったか?

許せないよなぁ?家族の情を利用するエラーなんて……

お前は卑怯者だよなぁ?」

 

「がはぁ!?」

楽しそうにテンペストが倒れたキエラを踏みつける!!

 

「違う……僕は……利用したわけじゃ……」

 

「違わないさ!!お前は卑怯者だ、卑怯者で人のやさしさを利用するごみだ!!」

何度も、何度もテンペストがキエラを踏みつける!!

 

「おやぁ?これは?」

テンペストが、キエラの懐から落ちた紙を見る。

ソコにはキエラと、光一の母親、さらには理折そして光一本人が笑って映っていた。

今日の昼、理折に頼まれた撮った写真だった。

 

「ふん、偽りの思い出だ」

テンペストがその写真を指先から出る、火花で焼き払っていく!!

 

「消したいなら、消せばいい!!けど……僕は絶対消えない!!お前を倒して!!またみんなで!!」

 

ボロボロの体で、キエラが再び立ち上がる!!

弱り切った体、しかし目は、心は死んでいない!!

 

目の前の悪を倒せとキエラの心が痛いほど叫ぶ!!

あの日、あの日みたヒーローの様にと強く願う!!

強さとは心だ!!他者を守る心こそが真の強さ!!

 

強い思いは奇跡すら起こす!!

不要と破棄されたモノ達が、崩れていく……

キエラの思いに共鳴し、一つに成っていく!!

 

「お前を――許しはしない!!」

全身の傷が修復される!!折れた竹刀が日本刀の様に変化する!!

思いこそが強さ!!他者を守る心が正義!!その両方を纏った一撃は希望の一撃!!

 

刀をテンペストに振り下ろす!!

 

「ふぅん……で?」

キィンと音がして、日本刀が折れる。

テンペストが平然とした顔で、キエラを見つめる。

 

「勝てると思ったのか!?お前ごときが!?ははははは!!これは傑作だなぁ!!」

 

「ぐわぁ!?」

呆然とするキエラを、蹴り上げるテンペスト。

思いだけでは、届かない次元もある。

 

キエラの後ろ、正確には天井が抜け落ちパンドラが下りてくる。

 

「が……はぁ……」

地面に叩きつけらた、パンドラが変身解除に追い込まれる!!

ベルトからはじき出された、キュピルスが悠然と追いかけてきたホーリーに拾われる。

 

「なんで……」

呆然とするキエラの前を、ホーリーが口を開く。

 

「テンペスト、まだ遊んでいるのですか?こちらはもうすでに終わりましたよ?」

 

「申訳ありません、予想外の抵抗がありまして……」

恭しくテンペストが頭を垂れる。

キエラは、無言で倒れる光一を見ていた。

 

「……らい……だー……」

痛む体を引きずり、光一の前に立つ。

両手を広げかばう様に、2体のエラーに向き直る。

 

「なんだ?そりゃ?」

 

「無力ですね」

テンペストがホーリーが同時に腕を振るう!!

光線がキエラの頬を焼き、疾風が体を容赦なく吹き飛ばす!!

 

壁に叩きつけられ、そのまま山重の店の近くに落ちる。

 

「お前たちは……正義じゃない……僕は……もっと強い正義を知っている!!偽物のお前なんかとは違う!!」

それは嘗て、キエラが消える前にパンドラが言った言葉と似ていた。

キエラという偽りの存在は、確かにライダーから正義の心というバトンを受け取っていた。

 

 

 

 

 

そしてそのバトンは新たな、モノに受け継がれる。

 

「そのセリフ――何処かで聞いた事が有る……遠い昔の様な、近い様な……

なぁ?誰が言ったんだ?」

 

キエラの肩を抱く男がそこにいた。

彼はずっと、光を待っていた男だった。

 

「仮面ライダー……正義の、味方……」

 

「ああ、ああそうだ……覚えている、覚えているぞ……あの日も。あの場所も光と風が――」

その男が、一言一言かみしめる様に、歩きは始める。

目を閉じ、風を吸い込むように深呼吸をする。

 

「お前たちの……風は、光は不愉快だ……」

男が二人のエラーを睨みそうつぶやく。

 

「貴様!!言わせておけば!!」

 

「ふん、しょせん廃棄された者たちの戯言」

 

 

 

「お前の心を受信した……手伝ってくれるか?」

 

「うん……一緒に……行こう――()()()()()

キエラが空気に溶けるように姿が消える。

男の手には一本のベルトが握られていた。

ベルトを腰に巻き付ける、バックルに横長な楕円の月が出現する。

それと同時に黒い闇が周囲に、発生し始める。

暗い、暗い闇の中に誘う様に、すべてを閉じ込め溶かす様に――

 

「……違うな……俺は、俺たちは今!変わる!!―――――変――ッ身!!」

男が両手を振るい、バックルを叩く!!

楕円の月が、満月と三日月に別れる!!その間から出現するのは深紅の風車!!

闇を吹き飛ばす様に風車が回る!!

闇を切り裂く様に二つの月が光輝く!!

 

光の無い地下を優しく大きな光が照らす!!

 

漆黒のボディに走るシルバーの骨の様なライン!!

悪魔の頭蓋を思わせる様な、2本角のヘッド!!

 

それは正義の存在ではなかった。

悲しみを生む為の、幸福を踏みにじる為の存在だった。

光の中に消えていった破壊者だった!!

 

だが!だがその破壊者は!!心を手に入れた!!

やさしさを受け取った破壊者は今!!弱き願いを守る守護者へと変わる!!

 

「敵対存在確認――戦闘準備完了。掛かってこい、正義の味方ども!!お前らが正義なら、俺は悪で構わない!!」

 

キエラの持っていた日本刀を騎乗槍に変化させエラー達に突きつける!!

 




タイトルで予想していた人がいるかもしれない、ルナイザー復活編。
もともと、出す予定はもっと後だったんですが、予想してくる人がいたので。

「隠す必要ねーな」という事で復活。
派手に暴れまわってもらいましょう。
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