永い間ありがとうございました。
ザー……ザー……
降りしきる雨が地面に溜まり、さらにそこに雨が降り注ぎ幾重もの波紋を作り出す。
まるで、夜の眠気が少しずつ少しずつ、正気を失わせる様に……
ほんの、ほんの小さな違和感が、人々を包んでいく……
少しずつしかし確実に……
「どうやら……儂も……此処まで……のよう……じゃ……」
光一と古矢の目の前で、昼重が笑った。
コーン……
手に持っていたコーヒーカップを床に落とす。
最早、何処を見ているのかもわからない様だった。
「あと……gaj……は……meduen………頼ん……だmsdlrnxopq,zmxncbcぞ」
ざざ……
昼重の体から、ノイズが流れていく。
ゼリキッドの影響は、レーザンジのせいか消えておらず、少しずつ町の人間をノイズひいてはクレアシオンに変えていった。
「行こうか……」
「ああ、そうだな。最後の獲物が残ってる」
静かにつぶやいた光一と、対照的に好戦的に古矢が笑う。
「じゃ、俺こっちだから……」
「おう、行ってら」
明日また学校で会う友人の様に、二人はフランクな挨拶をして別れた。
ガチャ……
「あ!光一君、来てくれたのね?理折が待ってるわよ?」
かくかくと壊れかけた機械の様な動きで、理折の母親と思わしき存在が話す。
右半身が潰れた、辛うじて人間型と思える姿の絶えず体からこぼれるノイズ。
声はヴォイスチェンジャーで加工したかのように、かん高い。
「うん、お邪魔します……」
理折母に導かれ、家の二階に上がっていく。
壁や階段が少しずつ、形が狂っていく……
そして、ぐにゃぐにゃに歪んだドアの前に立つ。
「キュピルス……行くぞ……!」
帰ってくるはずの無い、言葉を確かに心に感じ扉を開いた。
「ふーん♪ふーん♪ふーん♪」
半ばで吹き飛んだマジェスティックシャドウの中腹。
そこに、豪華な洋風のフルコースが並んでいる。
その目の前に、白く濁った色をした怪人が座ってフォークとナイフを動かしている。
降りしきる雨のせいで、きれいな焼け目の付いたステーキばずぶぬれになっており、スープにも大量の雨水が入り込み、サラダも水気でベタベタになっている。
他にも、魚料理や、ドリンク、デザート等あるがすべて似たような状況だった。
しかし、それでもその怪人は上機嫌で料理を口に運び続ける。
「やぁ、どうだい?一緒に、食事でも?」
バリ、ゴリ!!
ワイングラスをかみ砕きながら、侵入者に問いかける。
「悪いけど、遠慮するかな」
古矢が、ガロウズドライバーを構える。
「そうか……それは残念だ!!」
レーザンジが勢いよく立ち上がる!!
「変身!!」
古矢がスマフォの様な道具の表面を指ではじく!!!
『イッツ!!ショータイム!!』
サーカスの始まりの様な、ドラムロールが鳴り響く!!
誰も聴いて居ない、無人の町で笑顔を望む道化師の為の音楽が鳴り響く!!
楽し気な音楽と共に、スポットライトが差し込む!!
紫のマントに頭上に輝く王冠!!
白のボディに紫のラインが走る!!
「ほう……ガロウズの力か……」
「そう、コレが兄さんが俺たちに残してくれた姿!!そして俺たちが見つけた答え!!『ガロウズ・アンサー』だ!!」
白濁した怪人と、紫の道化師が今ぶつかる!!
「いらっしゃい……待ってたよ?」
理折が部屋の真ん中で、ベットに腰かけ楽し気に足を振る。
「理折……」
「ははッ!ねー、此処に来たってことはぁ?私と一緒に暮らす気に成ってくれたんだよねー?仮面ライダーさん?」
「違う……俺はもう……ライダーじゃない。
俺の幼馴染を助けるのは、みんなのヒーローじゃだめだ。
理折を救うのは――この俺、栄度 光一だ!!」
「訳が分からないよ!!」
理折がバラの意匠を残した怪人態に変化する!!
茨の鞭を振るい、光一を打ち付ける!!
ビリィ……
「なに……それ……?」
理折が、破れた光一のシャツのしたから出てきたモノを見て震えた。
「たった一つのさえない……やり方さ」
光一の胸には、キュピルスの破片が埋め込まれていた。
「キュピルスを封印することは不完全にしか、出来なかった……
だから、昼重に頼んで――俺の体を……」
「馬鹿じゃないの!?なんの意味が――」
「お前と同じさ、これだけがお前を救える唯一の手段だ!!
うわぁああああああああ!!!」
ゴキゴキと光一の体が変化していく!!
パンドラの姿を歪めた様な、イビツで不確かな姿!!
名付けるなら、パンドラエラーか。
「うをぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!」
「わぁあああああああああ!!」
赤いバラの怪人と、白いパズルの怪人がお互いの体を殴る!!
衝撃でお互いが後ろに後退する!!
しかし闘志はいずれも消えはしない!!
「らぁあああああ!!!」
「はぁあああああ!!!」
拳が、蹴りが……
お互いの体を二体のエラーが壊しあう!!
悲しく、重く、辛く、そして陰惨な戦い。
戦闘における、気分の高揚など全くない!!
お互いに涙を流し、悲しみに心を浸し、痛みに狂い、それでも目の前の敵を倒すために――!!
「うわぁ!!フゥオゥ!!ふぅおう!!」
白い怪人が、赤い怪人の腕を掴みガラ空きに成った、腹に何度も何度も拳を叩きこむ!!
「あ”あ”あ”あ”あ”!!」
腹の近くの茨が刺を生やし、白い怪人の拳を刺し貫こうとする!!
しかし、白い怪人の攻撃は止まらない!!拳から赤い血が流れるが決して止まらない!!
お互い言葉さえ、投げ捨てたひたすら相手を壊すだけのつぶし合い!!
(なんでだ!!なんで俺が、こんな事をしてる!?
仮面ライダーだから?あの日、理折を救えなかったから?レーザンジを止められなかったから?どうして!!どうして俺は、戦っている!!おおおおおおおおおお!!!!)
光一が、涙を流しながら拳を振るう。
「らぁああああああああ!!!」
大きく振りかぶった突きが、理折、ローズエラーを吹き飛ばす!!
「ぐぅぅぅぅうぅぅぅ!!」
ローズエラーが射貫く様な、瞳でパンドラエラーを睨む。
「はぁあああああああ!!!」
両足に力を込めて、一歩、二歩と走る!!
光一の両足に、白いエネルギーが集まっていく!!
(お前の大切な人を救え!!光一!!)
跳ぶ瞬間、何処かで聞いた事のある声が光一の耳に届く。
思わず笑みがこぼれた。
「了解ぃ!!」
ローズエラーの胸に、パンドラエラーの蹴りが突き刺さる!!
「あ、ああ……こ、光……イチ……」
3×3のパズルの様な、ラインが描かれ……それが弾ける様に破裂する!!
「終わった……」
穏やかな顔で、理折が地面にたおれる。
パンドラエラーは、それを穏やかな顔で見下ろす。
パキ……パキ……
軽い音をたて、パンドラエラーの右手に大きなヒビが入り、砕ける。
キュピルスは封印されていると言えど、クラッシュ寸前のエラー。
当然人間の体が、封印の器に足りる訳ないのだ……
光一は理解していた。
この姿になった瞬間から、もう自分は永くないと。
「じゃあな」
最後に取り戻した幼馴染に笑みを浮かべ、その場を後にする。
此処ではない、遠い人のいない何処かで……『消えるために』。
『サモン!!センティーピートゥ!!』
ガロウズAが腰のアスマフォを腕に付けると同時に指を滑らせる!!
アーマーを囲う様に、金色のムカデ型の手甲が出現する!!
「はぁ!!」
鞭のようにレーザンジに向かって、攻撃する!!
「むだ、だぁ!!」
レーザンジが、腕から発するレーザーで、ムカデをはじく!!
「光には、光だ!!」
『サモン!!ホーリー!!』
今度は、ムカデが消え光に満ちた弓が出現して、矢を放つ!!
「うっとおしいぞ!!」
レーザンジが、目の前に壁を作り上げ矢を受け止める!!
「悪いな!!そっちは囮だよ!!」
「な――ツぅ!?」
いつの間にか、空中に投げられていた無数のナイフがレーザンジがを襲う!!
「なんだね!?君たちは!!私の捨て駒に過ぎないくせに!!消えたまえ!!」
レーザンジが飛び上がり、両腕を広げる!!
両腕から無数のレーザーが発射され、空中で2度3度と曲がりガロウズAを付け狙う!!
「悪いが、それはもう対策済みだ!!!」
ガロウズAの言葉と共に、今度はガロウズAの周囲に銀色のナイフが浮かぶ!!
そして、そのナイフがレーザーを反射して、レーザンジを打ち抜く!!
「がぁはぁ……な、なぜ!?」
「アンタの能力は、単純に言えば『光を一時的に物質化する』力だ。
光速で動く物体をぶつければ、確かに威力は高い……
けど!!ただの光の状況なら、ナイフで反射出来るんだよ!!食らえ!」
ガロウズAが、空中に再びナイフを投げる!!
攻撃に移ろうとしていた、ガロウズが止まる!!
「怖いよな!!アンタは!!ずっと痛みを知らない場所で座ってただけだもんな!!
痛みを、他人にさんざん与えてきた痛みを自分で味わう事は、なかったもんな!!」
ガロウズAが再び、腕のスマフォを指ではじいた!!
『サモン!!シプラス!!』
ガロウズAの手に、紫のシプラスボルバーが出現する!!
銃口に三又の矛の形のエネルギーが走る!!
「私にたてつくな!!屑どもがぁ嗚呼ああああ!!!!」
『エラー・ブラストー!!』
レーザンジがプロトボルバーを引き抜く!!
濁った白いエネルギーがほとばしる!!
「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!」」
両者が同時に、引き金を引く!!
全てを飲み込む白いエネルギーの奔流と金色の矛の形のエネルギーがぶつかり合う!!
カァ!!
巨大な光が両者を包む!!お互いのエネルギーが相殺された!!
「はぁああああ!!!」
ガロウズAが走る!!
両足で地面を蹴り、レーザンジを狙う!!
「わ、私に触るなぁ嗚呼ああ!!!」
全身から再びエネルギーを発し、ガロウズAを押しとどめる!!
「まだ……だぁああああ!!」
ガロウズAの後ろにシプラスとジョーカーの姿が重なる!!
レーザンジが、その様子をみて歯ぎしりする!!
「ドイツもコイツも!!私の役に立たぬ……!!私の邪魔を……するなぁああああ!!!!!!!!!キエロォぉぉぉぉぉぉぉぉぉッォ!!!」
「エラー達は、ゴミなんかじゃない!!精一杯生きようとした、生物だ!!」
ジョーカーと、古矢の声までもがオーバーラップする!!
(ジョーカー……よく言った……)
(及第点……)
(ハッ!!今更かよ?)
ジョーカーが心の底から聞きたかった、声が不意に聞こえた。
「バーカ。僕が一番すごいんだよ」
ジョーカーの言葉を聞き終わった瞬間!!
地面が割れる!!
「なにぃ!?」
「呼ばれた……俺はまた!!ここに呼ばれたぞ!!」
地面を突き破るのは、エラー達の王と化したライダー!!
灰色のボディに青赤のライン!!
ルナイザーが、レーザンジを蹴り抜く!!!
ピシッ……!!
レーザンジの体に、ヒビが入る!!
「馬鹿な!!馬鹿な!!馬鹿なぁ!!コレは、ありえない!!ありえない!!わたしは……私は霊山時だ!!天才の霊山時なんだぁあああああ!!!」
人と、人の心を受け継いだ二人のライダーによって、レーザンジが爆散する!!
「終わった……」
「ああ、そうだ……」
古矢と、ジョーカーが足元に倒れる霊山時を見下ろす。
クレアシオンも影響か、前よりも遥かに老人の様に姿になっている。
義手だった腕と、義足の部分が何もなくなっている。
ジョーカーがナイフを構えるが……
「止めた。こんなやつ……」
「殺す価値もないって?」
古矢がジョーカーの言葉を引き継いだ。
「……これから、どうなるの?」
「知らん。どうにかは成る!!」
キエラの言葉を、月跳が答える。
全ての事の後始末が残っている。
「ココなら……」
町の中心地点近くにある高層ビルの屋上に、光一が座る。
もう何時クレアシオンが爆発してもおかしくない。
今、町にひとは居ない。レーザンジの気配が消えた事からもうす町はもとに戻るハズだ。
「いろいろあったよな……」
『ああ……そうだね』
胸のパーツが、生意気な声を上げる。
「お前を一人にしないからな……!!」
『おいおい……やめてくれよ。
そういうのは……恋人にでも言ってやりな』
「何言ってるんだ、ある意味もう、運命共同体だろ?」
『悪いけど……それはごめんだね!!』
ボゴ……ギチ……!!
光一の胸から、キュピルスのパーツが落ちる。
いつか見た、エラーの姿に変わる。
「お、おい……何を……」
「しってるか?パンドラの箱には最後に希望が残っているんだよ。
この希望……なんの為にあったと思う?
『絶望の世界に光を残す為の保険?』それとも『絶望して諦めてしまえば、楽なのにそれをさせない為の最後の悪意?』
ねぇ、どっちだと思う?」
「おい?キュピルス?何をいって……」
『レーザンジからのプレゼントさ。いざという時の対暴走措置……
【ラスト・ホープ】』
キュピルスが真っ黒な小さなキューブを取り出す。
「お、おい!!まさか……!!」
『【ありがとう】と言っておくよ……僕は満足だ』
にっこりと笑って、キュピルスがビルから跳び降りる!!
「お、おい!!」
光一が手を伸ばすが、もうその距離は届かない。
「キュピルスゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
『さようなら……僕は……満足だ……』
落ちてゆく中で、天を仰ぐキュピルス。
その時、雲が晴れ明るい陽射しが差し込んだ。
『ああ……この世界は、やっぱりきれいだ』
そう言って満足気に笑い、黒いキューブを握りつぶした。
半年後……
「コーイチ!!学校!!行くよ!!」
理折が、光一の家の前でカバンを振り回す。
「わーかったよ……それよりも――」
「あ”」
ボゴン!!
カバンが理折の手を離れ、道路上に教科書がぶちまけられる!!
「あわわわわ!!拾って拾って!!」
理折が、慌てて教科書を拾う。
光一が教科書に手を伸ばした時、別人の手によって教科書が渡される。
「ハイ、教科書。全く全く全く全く全く全く全く全く……
君たちは馬鹿だねぇ~?」
ヘラヘラとイラつく、声でこちらを馬鹿にする女子がニヤ付いて立っていた。
「あー城下さんだ!!お兄さんは一緒じゃないの?」
理折がうるさく話す。
「ボクの兄かい?やめてくれよ、あんな牛丼狂いと……ボクみたいな美少女が一緒にいる訳ないじゃないか~」
城下と呼ばれた、少女が笑うが……
「なんだ瑠璃?俺は不満だってのか?」
後ろから来た、古矢に頭を捕まれる!!
「ちょっと、ちょっとちょっとちょっとちょっと!!放してよね!!」
城下が不満げに、唇を尖らせる。
城下 瑠璃。彼女はジョーカーが変化した姿だった。
今は古矢と同じ孤児院で働いてるらしい。
というか性別が女だったことに、光一が驚いたんだが……
「よう」
光一たち一行の前に、黒いバイクが止まる。
月跳が、ヘルメットを外し光一に手を振る。
「あれ?どっか出かけるんですか?」
大荷物をゆびさして、光一が話す。
「旅に出る、俺はこの世界の事を知らないからな」
「ま……まって!!」
その時、後ろからキエラが走ってくる。
同じく荷物を持っているが……容赦なく月跳がバイクを走らせる!!
「お前は人間達の中で生き続けろ!!じゃーな!!」
キエラを置いて、何処か遠くへと走り去っていった。
「ば、ばかぁ!!」
涙を流し、キエラが叫ぶ!!
実はこれ、もう何度も見た光景。
月跳は、基本的に月末になると帰ってくるのだ。
やれやれと言った顔で、光一が見送る。
「ねー、光一!!それ、なぁに?」
理折が光一のカバンにぶら下がる、白いキーホルダーを指さす。
「これか?コレはな……俺の親友との思い出なんだよ。
半年探して、やっと見つけたんだ」
そう言って光一が笑う。
(スカしてるねぇ?)
白いキーホルダーから、そんな声が聞こえた気がした。
ひとまず、これでこの作品は終了です。
最終話で主人公がライダーに成らないとは……
ベルトをしているだけがライダーじゃ、無いよねー的な感じで解釈してください。
初期から、大分変ったと思います。
ビスゴーラはジョーカーを吸収して、キマイラエラーとして登場予定だったり……
ギジョアとディヴィノックが、レーザンジの強化アイテムになる予定だったり……
ゼリキッドは当初、昼重の護衛エラーだったり……
度重なる変更に会った作品です。
皆さん、またいつか!!