仮面ライダーパンドラ   作:ホワイト・ラム

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さて、早速第2話。
今回から大きく物語が動きます。


リバース・メモリアル

「んふふふふ、いいねぇ!!わくわくする香だ!!実に食欲をそそられる!!」

病院の一室、そこに居る霊山寺の部屋にかぐわしい中華料理のにおいが充満する。

嗅いでるだけでよだれが止まらなくなりそうだ。

彼の視線の先には、身長の低い小太りの男。

灰色の髪の毛を三つ編みに束ね、ナマズの様な長い2本のひげ。

そして乳白色の中華服。日本人が少し前まで思い浮かべていたステレオタイプの中国人だった。

 

「アイヤー!チャーハン、唐揚げ、麻婆豆腐お待たせね!!どんどん行くアルよ!!シャチョさんどんどん注文してネー!!」

霊山寺の前に、どんどん料理が並べられていく。

目を輝かせ、霊山寺は蓮華を手にした。

 

「ハイ!!シュウマイ、小籠包、それと春巻きと肉団子の甘酢和えの飲茶セットネー」

お次は点心のセットだ、こちらも霊山寺食べ進めていく。

すさまじい量の料理が次々と霊山寺の胃袋に収まっていく。

 

「んん!!デザートを頼むよ。杏仁豆腐とオーギョーチーとゴマ団子、あとマンゴープリンと、桃まん」

数分後、その頼んだ物すべてが机に並んだ。

 

「素晴らしい味だったよ。ミスターロン、君なら店を出しても十分やっていけるんじゃないかね?」

満足気な顔をして、霊山寺が中国風のシェフを褒める。

 

「けど私の料理、すっごい残してるネ……」

悲しそうに話すロンと呼ばれた男。

その言葉通り、目の前の料理はみな一口二口食べただけで、ほとんどが残ってしまっている。

 

「仕方無いじゃないか。私の胃袋は無限ではない!!

だが、欲はそうではない!!体は必要ないのに、心は求めている!!

もっと!!もっと!!とね?かつて私は、その全てを飲み込む体を手にしたが、奪われてしまってね……悲しい限りだよ。

こうして……水を飲むのも一苦労だ」

そう言って、自身の片手片足となった体でベットを降り、そばの冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し飲む。

 

「アイヤー……人間は怖いネー……

とどまる所を知らないヨ。

けど、もう満足あるか?」

 

「はははは、満足なんてないさ!!あっても一時的なだけ、空腹感と一緒さ。

所詮一時しのぎでしかない!!」

 

「そうアルか……」

悲しそうにロンが目を伏せる。

その姿は欲にとらわれた霊山寺を憐れんでいる様にも見えた。

 

「さぁ!!きたまえ!!私を殺す刺客君!!」

 

「アイヤー、私、バッククロージャーの一人、パイ・ロンね。

お命頂戴スルねー

さよなら、霊山寺……」

ロンと呼ばれた男の体にノイズが走る!!

そして、何か別の物に姿を変える。

 

「はははははは!!!実に楽しかった!!我人生は!!

はははははははははははははははは!!!くくくくくくはははっはっははあああ!!」

バキバキと何かが砕ける音がする。

白い病室が、朱い液体で染まる。

最期の瞬間まで、霊山寺が笑い声を止めることは無かった。

 

 

 

 

 

「はぅ~あ……」

静かに流れる雲、穏やかな河のせせらぎ。

栄度 光一は穏やかな日々を楽しんでいた。

ファミレスの窓から見える、日常の風景にふと、頬を緩める。

 

「いい天気だなぁ……」

 

「ちょっとー!!無視しないでよ!!」

ボオッとして、ドリンクを飲む光一を目の前のクラスメイト琴始 理折が話す。

 

「うるさいなー、今ジュース飲んでるだろ?」

 

「うえぇぇぇ!!ひどいよ!!勉強しに来たんでしょ!?

さ!早く数学と理科教えてよ!!!」

涙目で語る理折の前には、数冊の教科書が並んでいた。

時期はもうすぐテスト期間。今日は二人してファミレスに勉強にきているのだ。

 

「ハナから、教えてもらう前提かよ……」

 

「うー!!しょうがないじゃない!!先生が今度赤点取ったら留年って言うんだもん!!」

ぷんすかと腕を振るう理折のノートには努力したけ形跡は有れど、答え合わせのアカマルは付いていなかった。

 

「はいはい、数学は出来るからちょっと教えてやる」

ペンを持ち、光一が要点を説明する。

ふんふんと理折が何度もうなづきながら解いていくが――

 

「わかったか?理折?」

 

「全くわからん!!」

 

「この鳥頭!!」

理解しない、理折の頭に光一がげんこつを落とす!!

 

「ふぇぇぇ……痛いよぉ、光一が私を傷物にしたよぉ……」

やや大げさなリアクションで、理折が答えた。

 

「知るか!!全くお前は――」

憤る光一と理折そこに店員がやってくる。

 

「お客様、お冷でございます」

 

「あ、どうも……」

水を2つ置いて去る店員。

ドリンクバーで粘る二人に対する遠回しの「帰れ」だ。

 

「仕方ないな、帰るか」

 

「うん!!けど、あと3杯飲んでからねー」

光一の言葉を無視して、理折が席を立つ。

 

「あ、おい――ああ、行っちまった……」

呼び止めるのをあきらめ、片付けを始める。

ノートや教科書をカバンにしまっていく。

そんな中、カバンのつけた白いキューブを溶かしたような物が小さく揺れた。

 

「ははは、学生は学生で大変なんだぞ?」

小さく笑い、それを指でつつく。

激しい戦いの中で、勝ち取った平穏。

そしてその平穏の為に消えていったかつての相棒。

コレはその成れの果て。唯一見つかった確かにこの世に『アイツ』がいた確かな証左だ。

 

ガタッ――

 

その時、不意に机が揺れる。

理折が戻ってきたのかと、顔を上げると、そこに居たのは別の男だった。

 

「あの、席間違ってますよ?」

緑の着流しに、長い髪を後ろで束ねている。

その瞳はむき身の刀身の様に長く鋭い。

 

「あいや、これはすまぬ。(それがし)はそなたに用があり申して――」

まるで自体劇の様な古風な言葉使い。

異様ともいえる雰囲気に光一が小さく頬を引きつらせる。

 

ピロリん~♪

光一の携帯の画面に古矢からのメールが届く、そのタイトルを見た瞬間――

 

「まさか――」

 

「某の名はバラン!!正々堂々、イザ!尋常に勝負!!」

バランと名乗った男の姿が、瞬時に歪んだ。

人型はそのままに、全身が緑に染まる!!

そして西洋の騎士風のマントと和風の小手、ちょんまげの様なパーツ、その姿は和洋の混ぜた剣士。

緑のカラーリングは、草を思わせる。

そして、同じく両刃の長剣を一振り、腰から引き抜く!!

 

「きゃぁあああ!!!」

 

「いやぁあああ!!!」

 

「化け物だぁ!!」

 

「逃げろ!!!」

周囲はまさに蜘蛛の子を散らしたように、パニックに陥る。

そうだ、人々は忘れていない!!かつて自分たちを襲った矛盾の集合体である怪人たちを!!!その身に刻まれた恐怖を!!

 

「なんで――なんでエラーがここに!?」

冷静になって、声を荒げる光一。

そうだ、あの戦いはもう終わったハズだった。

素早く古矢の文面を確認する、そこに書かれていたのはエラーの復活!

そしてその通りに今!!目の前に、敵は迫ってた!!

 

「かつて、多くの同胞を葬りしその力――見せてみよぉ!!!」

腰の長剣に手を伸ばした瞬間、反射的に光一が机と自身のカバンを蹴り上げた!

紙の束とプラスチックの塊が、バランの視界をふさぐ!!

 

「おのれ!!猪口才な!!」

一刀のもとに、教科書机が本来の要素を果たせなくなる。

 

「こ、光一、あれって――」

 

「逃げるぞ理折!!」

呆然とする、理折の手をつかみ光一が叫ぶ。

 

「ちょっと待って、カバンに――」

何を思ったのか、自身のカバンの向かって手を伸ばす理折。

その先にはバランが剣に手をかけている真っ最中だ。

 

「ッか野郎!!」

明らかな自殺行為に、光一が歯噛みする。

思い出すのは、初めてエラーを見たあの日の事。

 

「もう、お前を失いたくないんだ」

少々乱暴に理折を抱き寄せようとする。

だが――

 

「敵に背を向けるとは、戦士の名折れ!!

その無様さをさらさぬように、今ここで死ねぇい!!」

バランのブレードが光一をかばった理折に向かって振り下ろされる。

 

「理折ぅううう!!!!」

 

「だーいじょうぶ!!」

 

ガキィン!!

 

「な!?」

 

「なんだ、この音は!?某のブレードは純粋なクレアシオンの集合体以外をすべて切断するのだぞ!?」

バラン、光一が同時に驚きの声を上げる。

聞こえたのは明らかな金属音。それもそこそこ大きな物の――

 

「へっへ~んだ」

不敵に笑う理折、切られたカバンの中から現れたのは――

 

「パラドクスドライバー!?」

かつての自分が使っていたのと同じベルトとバックル!!

それを腰に巻いた理折がポーズを取る。

 

ベルトに埋め込まれた、四角いキューブ。

それを90度斜めにずらし正方形から、ひし形へ並べ替える。

 

「まさか……」

 

「変身!!」

 

『システムスタート……』

右手を空に掲げると同時に、光が理折を包んだ。

一瞬の静寂の後、そこに立っていたのはパンドラの面影を強く残した戦士!!

 

「仮面ライダー!!リオルちゃん!!!参上ぅ!!」

かわいらしいポーズを取り、光一の方を向いて手を振ってくる。

 

「おまえ……なんで……」

 

「そんなの、後々!!今はこっち!」

リオルが腰の横にある警棒の様な物を取り出す。

そして、ベルトのバックルを右に90回す。

 

『コネクターロード……GUN……』

警棒が曲がり、銃の様な形へと変化した。

 

「ありゃりゃ!反対だったか~」

しかし、呼び出したたかった物とは違ったようで困惑気味に話す。

 

「どうやら其方も戦士の様だ。先ほどの非礼詫びさせてもらう。

イザ、尋常に勝負!!」

バランが踏込み、リオルの胸アーマーを斜めに切る!!

金属音がして、リオルが吹き飛んだ!!

 

「いったーい!!」

 

「ふん、まだまだ青いな……」

 

「なんだとぉ~!!」

手にした銃をバランに向けて、発砲する!!

しかしすさまじいスピードでバランはその弾を切断し、あるいは回避していく。

 

「むん!!」

 

「きゃぁああ!!」

踏込の高速の斬撃がリオルを襲う!!

攻撃のたびに、火花とリオルの悲鳴が上がる!!

そこには圧倒的な実力差があった。

 

「おい!!しっかりしろよ!!戦えないんなら逃げろ!!」

光一が叫ぶが、悲し事に今は武器を持っていない。

無力な事に戦う術を持っていないのだった。

 

ガシャーン!!

机を倒し、目の前にリオルが投げ出される。

 

「おい、逃げるぞ。さすがにやばい――」

 

「逃げないよ?私は」

リオルの言葉に、光一が固まる。

 

「なんだだよ!!勝てないなら逃げろよ!!

お前は本来こんな事する必要自体無いんだよ!!」

 

「そんなことないよ。聞いたよ光一の事、骨董品のおじいさんから。

みんなの事守るために、戦ったんでしょ?大切な友達を失ってまで私の為に戦ってくれたんでしょ?光一は、本当にヒーローだよ。

けど、けど今は私がヒーローだから、ヒーローが居ないなら今度はほかの人が守らなきゃ!!!」

ふらつきながら、リオルが立つ。

その姿は確かに仮面ライダーだっただろう。

 

「見事な心構え。汝を過小評価していたことを謝ろう。そして敬意をもって汝を討つ!!」

バランがブレードを高く掲げる!!

 

「はぁ!!!」

 

メシャン!

 

リオルの頭上めがけて、振り下ろそうとした時、後ろの壁が壊される!!!

その音に、バランが手を止める。

 

「見つけたよ……」

 

「目視確認。なるほど、バッククロージャーってのは嘘じゃなかったのか……」

壁を突き破って姿を見せたのは、前半分が黒い羊、後ろ半分が大型のバイクと云う異形のマシン!!

そこにまたがるのは二人組の男たち。

 

「何やつ!?神聖なる戦いに乱入とは無粋な!!」

 

「問題無し。俺も、いや『俺たち』もライダーだ」

男がバイクを降りるとき、いつの間にか後ろに乗っていた少年の姿が消えていた。

代わりに男の手には、黒いバックルのベルトが握られる。

 

「なに――」

 

「変――――ッ身!!」

素早く巻いたベルトに楕円の月が浮かぶ!!

男の手刀により、その楕円の月が二つに割れる!!

一つは新円に!!もう一つは三日月の形に!!

その二つの月の間から真っ赤な風車が現れ風を起こす!!

 

「ぐわっ」

 

「くッ!」

光一、理折両名が風の勢いに目をつぶり、再び開くとそこには漆黒の戦士が!!

ライダー風のヘルメットに二つの赤い複眼!!頭部に伸びる山羊、あるいは悪魔を思わせる角と頭蓋を模したフェイス!!

全身に骨の様なデザインが施される!!

その腕には闇を溶かし固めた様な騎馬槍!!

 

「其方の事は風のうわさで知ってる……!!

懐造エラーの――――」

 

「否定する。言ったはずだ!!俺はライダー!!

仮面ライダールナイザー!!」

もう一人のライダーが、立ち上がった。




バッククロージャー同盟説明。

バラン。
古風な侍風の格好をした男が変身する、ブレードエラー。
和洋の剣士を合わせた姿をしていてイメージカラーは緑。
モチーフには草も含まれている。

音と光で攻撃するランドルトとは正反対で、特殊な能力を一切持たない腰の剣でのみで戦う。強いてあげるならクレイアシオン操作で、刃こぼれを直せる程度か。
おのれの技のみで戦うシンプルに強いエラー。

名前の由来はバラン。
コンビニのお弁当に入っている緑のプラスチックの草っぽい『アレ』
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