仮面ライダーパンドラ   作:ホワイト・ラム

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すいません。
今回で終わりの積りでしたが、もう一週でます。
次こそは――


ハザマの帰還者

霊山寺の使用していた研究室に、3つの影が立っていた。

いずれも人ではなく『エラー』と呼ばれるこの世の矛盾点。

そして、ここはその矛盾点を研究していた男の部屋。

 

「ふふん、まさかこんな所に……」

長身のやせすぎな神経質そうな男、ランドルトが研究資料の棚を倒す。

そこは壁のハズだが、ひび割れ一部が壊れている。

 

「バラン、頼む」

 

「御意」

本来上下関係などない3人の間だが、目的達成間近というだけあって、すんなりいう事を聞いた。

 

キィン――

 

小さく音が鳴り、きれいに壁が切られ小部屋へとつながった。

本来なら作るのは不可能な空間、おそらくエラー達の操るクレアシオンが影響しているのだろう。

 

「はははは!!ここだ、ここにアイツの遺産が有る」

ランドルトが喜び勇んで、部屋の中へと入っていく。

壁には試作機と思わしき、ドライバーが大量に並んでいる。

 

その中の一つ。厳重にしまわれたトランクをランドルトが開く。

 

「見つけたぞ!これぞ、霊山寺の遺産だ!!」

ほかの二人に見せつける様に一つのドライバーを見せつける。

ベルトの形状をしていて、真ん中には縦に切れ目の入った黒い生物的見た目をした球体が埋め込まれている。

 

「これぞ、ゼロドライバー!!周囲の物をクレアシオンに変換し、つけたものに無限のクレアシオン供給を約束するモノだ!!

これさえあれば、我々は――――ぐあ!?」

説明の途中、突如ランドルトが突き飛ばされる。

振り返った視線の先、そこにはパイ・ロンが立っていた。

 

「どうした?興奮しているのか?安心しろ、私が必ずこれを複製してお前たちの分も――」

 

『それは必要ないよ』

突如、パイ・ロンが声を上げる。

しかしその声が、年老いた老人の物で彼本来の声ではなかった。

 

「この声――まさか貴様!?」

 

『ふふふふ、そのまさかさ――私の最後の策だ!!』

 

「うえ!!ご、ボっ……!!!」

パイ・ロンの腹が、妊婦の様に膨れ上がる。

目は白目をむいて、鼻や口からも水が零れ始める。

 

「く、苦し――ガボっ!!

おご!?おごごごごごごごっごおおおおおお!!!!」

パイ・ロンが大量の水を吐きこぼす!!

およそ、本人以上の水を吐き終わった頃、足元にできた水たまりが何かをつかむようにして、ゆっくりと人型へと変わっていく。

 

「どうもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………………………………………………

バッククロージャーのみなさぁんんんんんんんん……………………

おっと、もう二人しかいないんでしたっけぇぇぇぇぇぇ………?」

変幻自在の水のエラー、ゼリキッドだ。

そして――

 

『ふふふ、よくぞここまで来てくれたね。私は嬉しいよ』

ゼリキッドの持つ、白いキューブ。

そこに、死んだはずの霊山寺の顔が浮かぶ。

 

「なぜ……貴様は死んだと、パイロンが――」

 

『ああ、死んだとも。私は死人だ。

そして、これは私の頭脳をコピーした非常用バックアップさ』

 

「ば、バックアップだと?」

 

『生きてる私は、ジョーカーというエラーに、本人が見聞きした物をすべて義手に転送するシステムを持っていたんだ。

私は霊山寺が生きている間すべてをこのキューブに転送していたものさ。

残念だが手足は無くてね。ずいぶん寂しい思いをしたものさ。

だが、そんなこともすべて終わりだ!!ゼリキッド!!!』

 

「はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ………………………

マスター、霊山寺ぃぃぃぃぃぃ………………」

 

「危険だ!!」

ゼリキッドが水の腕を伸ばした時、とっさにバランが剣で攻撃するがゼリキッドの水の体に斬撃など効きはしない!!

 

「これです、これぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…………………………」

ランドルトの持つ、ゼロドライバーを奪い取り倒れるパイロンの腰へと装着する。

 

「………げぼッ……」

操り人形の様に、ぎこちない動きで意識を失ったパイロンが立ち上がる。

 

『はぁ――《《変新》》!!』

バックルの球体が、横に口を開ける様に左右に開いた。

そこにゼリキッドが霊山寺をコピーしたキューブががっちりとかみ合わされる。

そして――

 

ミシッ――パキッ!!バリン!!!

 

キューブをかみ砕く用にして、変身が終わる。

 

『ふぅ――すばらしい……』

そこに立っていたのは、パイロンではなかった。

老人でもなかった。

若々しい青年が、長い黒髪を後ろで縛っている。

鍛え抜かれたしなやかな体には、透き通るようなみずみずしさがある。

 

「な、なぜ――」

 

ランドルトが呆然とする中、霊山寺がランドルトの方を人差し指と中指2本で指さす。

 

「危ない!!」

バランが、虚空に向かって剣を振る瞬間、霊山寺の指先が光った。

 

ピンッ

 

非常にあっけない音がして、バランの剣が折れる。

いや、それだけではない。

 

「ごっぷ……」

バランの腹に、10円玉サイズの穴が開いていた。

クレアシオンを吐いて、バランが半分に成った剣を杖に膝をつく。

 

「ふぅむ、こんなものか……」

 

「あ、ああ……」

怯えるランドルトに、霊山寺が近づく。

 

「なんだね、君は?リーダーを気取ってこの様か?それなら――」

 

パァン!!

 

霊山寺の上げた指、それが何者かに狙撃される。

 

「なんだね、ノックも無いのかい?」

指を再生させる先、振り返ったそこには、シプラスとルナイザーが立っていた。

銃を構えたシプラスが撃ったようだ。

 

「貴様。霊山寺か?」

 

「安心しろ、たいていこういう場合は霊山寺だ!!

もし違ってもぶったおすのには変わりない!!」

ルナイザーの質問を無視して、シプラスが再びトリガーを引く。

 

「ははは、古矢くんか。君はいつも私に利用されてばかりだね?

そのおかげで、この体が手に入ったのだがね!!」

両腕を広げる霊山寺、瞬時に体がクリスタルの様に透き通ってダイヤの様に固くなる。

そして、自らを研磨する様に、不要な部分が削れて行く。

その姿は、ダイヤで出来た人。

胸に、赤く色く光る楕円の形のキューブ。

稚拙な、切込みは龍のうろこを思わせるほどこまやかだ。

 

「さて……私に名をつけねば……何が良いかな?

レーザンジネオ?いや、ダサい。今時ネオはないか……

うーん?」

ゆっくり試案して見せる霊山寺。

ルナイザーがランスを構え、攻撃するが守る素振りすら見せはしない。

 

「ああ!決めた、決めたぞ。私の名を、私の名は『フォーヴィドゥーン』。

エラーにも、人間にも触れることが許されない、禁忌にして究極の存在。

そう!!君たち人間すら超越した存在!!」

 

両手を振るった瞬間、シプラス、ルナイザー両名が吹き飛ばされる!!

 

「君は使えないな……リメイクしておこうか?」

指先を、ランドルトへと向け光を浴びせ掛かる!!

瞬時にランドルトが歪み、悲鳴を上げながらぐにゃぐにゅと変体する。

 

「さて、もっと部下も欲しいな……

産もうか、私の知る限りもっとも強いモノたちを――」

フォーヴィドゥーンが指を鳴らすと、今度は部屋その物が歪む。

そして3の影へと変わる。

 

「くッ!そいつらは――」

ルナイザーが歯噛みする。

 

「剛力と正確さ、相反する性質をもった兵士を――」

 

肩から出る、計四本の煙突。

銀色でライトが一つ目の様についた機械のエラー。ファクトリーエラー

 

「大地を走り、血肉を食らう。この世の理の頂点に立つ兵士を――」

たくましき動物の体を持ち、見るモノを威圧する鬣。

そして血肉を食らうキバを持つエラー。ライオンエラー

 

「世界を支配し続ける傲慢にてしたたかなる兵士を――」

 

青と赤、人体を裏表が逆にしたような異形の戦士。ヒューマンエラー。

 

ルナイザーの目の前に並んだ3体はどれも思い出深いモノだった。

 

「そして、それを束ねる!!」

瞬時にその3体が歪む。

丸く粘土でも固める様に、乱雑に集まりぐにぐにと不快にゆがむ。

 

「2体とも誕生に少しかかるようだ。

どれ、先に城を作ろうか?」

 

地面に滑る様に倒れ込むと、大穴が開く。

たったこれだけで、ハザマの世界との間を開けてしまったのだ。

フォーヴィドゥーン、ゼリキッドが穴に飛び込んだ。

 

「おいおいおい!!」

 

「脱出するより、責めた方がチャンスだ!!相手はまだ、不完全なはずだ!!」

広がる穴に、ルナイザーが自ら飛び込んだ。

飽きれる様にして、シプラスも後を追う。

 

 

 

 

 

同じくハザマの世界にて――

 

「あててて……ひどい目に遭ったわい」

尻をさすりながら、昼重がぼやく。

ロイターの能力で店ごとこの世界へ落とされたらしい。

 

「また、ここに来るとはな……」

見渡す限りの、廃墟の町。

光一が懐かしそうに、目を細める。

 

「うわーい!!たーのしー!!」

キャッキャ言いながら、理折がはしゃぐ。

 

「おいおい、あんまり――」

そこまで言って、光一が息を飲んだ。

理折がまるでターザンの様に、紐のぶら下がって遊んでいた。

いや、ここまでも良い。問題なのはその紐が理折本人の手から出ている事だった。

その姿は、まさしく過去に理折が変異したエラーその物で……

 

「おい、ソレ!!」

 

「ん~すごい便利だよ?」

心配する光一を他所に、少し離れたモノを茨でつかんで見せる。

危機感が無いのか、それともエラーの力を使いこなす才能が有るのか……

 

「あ!思い出した!ここって、私がいた所じゃない?」

理折がそう言いだし、適当に走り始める。

 

「あ、あった!」

何げなく差し出した、パーツを見て光一が戦慄する。

それは、破損したキューブの一部。

 

「ここに……この場所にあったのか……」

探せばもっと見つかるかもしれないという淡い希望が出てくる。

 

「なんて、偶然……」

 

「偶然じゃ、ないかもしれんぞい?」

同じく近くで見つけたのか、破片を昼重が二つ持ってきた。

 

「偶然じゃ、ない?」

 

「そうじゃ、縁というやつじゃよ。出会うべき者は最初から決まっておるんじゃ……

お前は、再びコイツと出会う定めじゃったんかもな?」

光一の手の中、壊れた破片が集まっていく。

 

「そうだよな……俺が、俺が今――」

光一が、破片そ探そうとした時複数の影が、3人を囲む。

 

「mzfffkwodhrffrldiei」

意味の無い言葉の羅列。ノイズたちだ。

 

「くそ!こんな時に!!」

 

「こ奴ら、明確な意思を以て攻撃してきとる!!司令塔がいるハズじゃ!!」

昼重が近くにあった瓦礫で応戦する。

 

「わ、私が――」

 

「ならん!嬢ちゃんの体は不安定じゃ、それがこの世界にきて顕著に成っとる!!

不用意な変身は無用じゃ!!」

理折ががバックルを構えるが、昼重が止める。

 

「mんbvckjhfせrft!!」

ノイズの攻撃が、光一に当たろうとする時、寸前でノイズが大量に消滅する!!

 

「なにが?お前は、バラン!!」

 

「ふっ……くぅ……無事の様だな……」

開けた視界の中、光一の前にバランが立つ。

しかし、腹に穴が開き自慢の剣も真っ二つに成っている。

 

「これは、お前の仕業――って訳じゃないよな?」

 

「すまんな、某は汝らを助けに来た……」

明らかに無理をして、バランが笑う。

 

「これは一体、どういう事なんじゃ?」

 

「霊山寺が動き出した……某らの計画を乗っ取り……」

その一言で、光一はすべてを察した。

あの男はまだ、生きていると。

 

「あいつ、まだ……」

怒りに震えるが、未だノイズたちの包囲は止まらない。

 

「せめてもの、護身に使うがいい」

バランが布を巻いた剣の切っ先を渡す。

折れた方はいまだに自分で持っている様だ。

 

「バラン……」

 

「汝らは戦う意思はなかった。それを巻き込んだのは某らの不徳。

どうか、許されよ……」

バランはせめてもの恩返しとばかりに、ノイズの群れに飛び込んだ。

 

「ぐぅ!がぁ!」

力量ではバランの圧勝だが、多勢に無勢。

少しづつ、バランが押される。

 

「……くそ……なんで俺は……」

光一が歯ぎしりする。

手の中には、砕けたキューブの破片。

集めて修復すれば、ひょっとしたらと思うが圧倒的に足りないものだらけ。

修復の為の機材、材料、そして霊山寺が施したキュピルスに対するロック。

 

もう、何度か分からない無力感だった。

 

「あ!おい、何してる!!」

再びベルトを持ち出した理折から、バックルを取り上げる。

変身は危険と言われたばかりのハズだ。

 

「何時まで、こうしてるの!!光一が戦わないなら私が戦う!!」

 

「やめろ!!死にたいのか?いや、死ぬよりもっとひどいことが――」

 

「関係ないよ!!だって、だって今助けを求めてる人が、いるんだよ!?

戦う力が有るなら、私も――ううん。

この子だって、そう言ってる!私にはわかる!!」

キュピルスの破片を持って、理折が話す。

 

『――――――』

何処かで、懐かしい皮肉やの声が聞こえた気がした。

 

「!?今のは――

そうだ、これが俺の役目だ……それは、俺が選んだ役目だ!!

俺が、俺がヒーローとして選んだ道だ!!ほかの誰かにそれを歩ませないために!!

俺が迷う一瞬で、誰かが消されない為に!!

そうだ、始めるんだ。今から、今この一瞬からもう一度!!」

カバンにつけられた、キュピルスの封印されたかけらを手にする。

もう一方の手に持つは、バランの剣。

そう、純粋なエラー以外を壊すその剣だ!!

 

「うわぁあああああああ!!!」

キューブに剣を突き立てる!!

切れ目が現れ、クレアシオンが漏れ出す!!

 

「何時まで寝てるんだ相棒!!!

行くぞ!!俺たちの手に!!選び取る回答を!!!」

ひび割れた、キューブの核を握りつぶす!!

 

その瞬間、すさまじい風が吹く!!!

 

その風は、ハザマの世界を駆け巡り。

バラバラに散った、パーツを引き寄せる!!

 

「行って、ライダー」

理折が自身のベルトを光一に渡す。

光一はそのベルトを巻き、高く掲げた腕を振るう。

 

「行こうぜ、相棒!!」

1つ、2つ、3つ、破片が風に乗って光一の手に集まる!!

消えたはずの力が、今再びその手に!!

 

「おやおや、ずいぶん時間がかかったじゃないか?」

そして、響く皮肉屋の声。

その声に、光一が小さく笑う。

 

「ちげーよ。おまえが寝すぎたんだ。じゃ、いつもの行くぞ?」

 

「ああ、久しぶりにやろうじゃないか」

光一がベルトに、四角にキューブを押し込む!!

 

「「変身!!」」




キャラクター紹介。

フォーヴィドゥーン
ハザマの世界に生まれた新たな存在。
エラーでも人間でもない存在。

霊山寺の頭脳のコピーに、周囲の物を無限にクレアシオン変換するゼロドライバーが融合して誕生した。
全身がダイアの様にクリアなパーツで、龍のうろこの様な緻密な掘り込みが有る。
クリスタルで出来た人型にした龍に頭を取って、人間の顔を付けたデザインと言えばわかりやすいか?

イメージとしては、異物、異端、異質をもとに、霊山寺の持つ強欲さ=貴重品=ダイア+龍=最強生物を足した。
真ん中の、赤い球体は知恵の実=リンゴ&唯一残った人間らしさ=心臓のイメージ。
体が鉱物化しているので、もはや食事の必要すらない。
なんだかんだ言って、一番怖いのは人間というパターン。

光一がキュピルスと手を取るなら、こちらは一人ですべてを自分の好みに合わせて島存在。


余談。
パイロンのエラーとしての姿はドラゴンエラー。
ロンは中国語で、龍らしい。烏龍茶とかから思いついた。

ロイターはロイター盤から、跳び箱のジャンプ台みたいなアレ。
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