「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「天照!!」
タンニーンの吹く火炎の塊のブレスを、天照を使いつつ、消し飛ばしていく……だが、これを繰り返していては、俺の方が不利だろう
天照は、通常よりも眼と体への負担が大きい。しかも、魔力の消費が激しい分、此方が圧倒的に不利だな。対して、あっちはブレスなんていくらでも撃てるだろうからな
「どうしたぁぁぁぁ!! そんなものかぁぁぁぁ!!」
「一々叫ぶな、器が知れるぞ!!!」
タンニーンの打撃を下に避け、腹へ硬質化させた腕で溝内を狙うが、筋肉質な体にはそれが通じないようだ。体は固く、鱗で覆われている為、その攻撃は無意味になった
「せぁ!!!」
「がっ!!?」
上から叩き付けられ、そのまま地面へと埋まるが、直ぐに脱出して、タンニーンの顎を殴り飛ばして下がる。暴れた所為で、段々と周りの木々が消えていく
「ゴホッ!!? ぬぅ……なかなかやりおるな」
「貴様如きに負けるほど、俺も弱くはないんでな。だが、貴様が弱いわけでもあるまい……現に、魔王達もここには近づいていないようだからな」
「当然だ。このような場所で魔王と共に戦うなら、周りを巻き込まないで戦う自信がない。もう少し平地ならば、話は別だろうがな……」
「だろうな。特に、サーゼクスの持つ消滅の魔法……アレを近くで間違って当てられれば、そのまま終わりだ」
魔王とは名ばかりではない。それぞれが、それぞれがそれぞれに合った立場に居る……サーゼクスはいい例だ。あいつの力はルシファーの地位に居るべきものだ
ほとんどの物は知らないが、サーゼクスは超越者と呼ばれる存在……その力は、通常の悪魔とは呼べない程の力の持ち主だった
消滅の魔法を通常の10倍くらいの質で持っているんだったか? いや、量か? 忘れてしまったが、それほどまでに奴は強い
「せいっ!!」
「ふんっ!!」
俺は聖のオーラを纏った拳で殴るが、避けられ空に飛ばれてしまう。それを追いかける前に、上からブレスが放たれてくる
俺はそれを躱し、地面へとタンニーンを撃ち落とす
「やりおる!!」
空中での攻防を繰り返し、そのまま下へと降りてくる。距離を置きながら、少し考え事をしてしまう。さっきから気になるが、俺を見ている者がいるな
「がぁぁぁ!!」
チッ、考え事は後にするか……今の現状で、タンニーンを殺し切る事は出来るかもしれないが、ライザーはともかく、こいつをやれば確実に戦争へとつながる
「だからと言って、何もしないで終わるほど……俺も安くない!!」
聖剣を創造し、タンニーンの体を斬り裂く
「がぁぁぁぁ!!?」
元が龍とはいえ、今の体を形成しているのは悪魔の体だ……そんな体に聖剣が斬り裂かれれば、こうなる事は必然だった
「……っ!! とことん対悪魔武装だな……貴様のその聖剣……」
「サーゼクスから聞いているだろう? 俺の目的を……俺はお前ら悪魔の殲滅が目的だ……」
「なぜそこまでする? 復讐ならば、他の悪魔を巻き込む必要はないだろ!!!!」
「分かってないのはお前だよ、タンニーン。他の悪魔を巻き込む必要はないだと? そんな訳がないだろう」
「何……」
そうさ、巻き込む必要がない事なんて無い。悪魔と言う人種こそ、俺がこの世界から消し去りたい存在なんだよ、必要性は十分にある
「なら、お前は知っているのかタンニーン。人間が何故、戦争を絶え間なく行い続けていることの意味を……知りはしないだろう?」
「それは、自分と相手の正義がぶつかるからで……」
「そうだ、その通りだ。だが、それだけじゃない………………戦いとは人間の根本的な本能なんだよ……自分の敵を作り続けることで、世界は進歩し続ける……そうやって人間は生きているんだ……醜いとは思わないか? そんな下らない者の為に、過去の英雄や意味のない人間たちは死んでいくんだ。繰り返されるこの悪夢が、今もなおこの世界で作り続けられてるんだよ……!! 悪魔も同じさ。同じ過ちを何度でも繰り返す……なら、根元から潰すほかない」
「……もはや、語る意味はないな」
「最初からそうさ。俺は悪の存在であり、お前らは俺が殺したい標的……それ以外に関係性はない」
俺は即座に手をタンニーンに向けて、こう言い放つ
「万象天引」
「ぐおっ!!?」
敵の引力を操り……そのままタンニーンを引き寄せる
「修羅道」
俺は体から新たな腕を作り出し、そこに聖剣の刀を握らせる。そして、引き寄せられてくるタンニーンに向けて、腕を撃ち放つ
「ぐはっ!!?」
「安心しな、タンニーン。お前を殺しはしないさ……只、俺と戦って簡単に帰られても嫌なんでな……そのままボロボロになってくれ。抵抗なんて無駄だ」
聖剣は腕ごとタンニーンの腹に刺さり、そこからは血が流れ出ている。タンニーンは直ぐに抜き取るが、まだ万象天引の能力は続いてる
そのまま引き寄せられたタンニーンは、聖のオーラを纏った拳で殴り飛ばす
「このっ!!」
「無駄だと言ったはずだ」
タンニーンは吹き飛ばされる直前に、俺に向けてブレスを放つが、俺はそれを普通に受け止める
「餓鬼道」
そのブレスを吸収して、そのままその場に立つ
「……化け物めが……!!!」
「何とでも言え……そんな化け物を生み出してしまったのは、お前の所の悪魔だ。まぁ、今更名前なんてのはどうでもいいがな……」
今更、そいつが死んでいようが死んでいまいが……俺には関係ない。俺の目的は悪魔の殲滅。この世から、悪魔を消す事だけだ
「龍を舐めるな!!!」
「ッ!! ほう……これほどまでとは……」
俺の目の前に広がるのは、隕石かと思うほどのドデカいタンニーンのブレス……何時の間に空中に居たのかは知らないが、これ程までの威力、そうそうお目に掛かれないだろう
「だが……やはり甘いな……」
俺は自分の目を輪廻写輪眼へと変えて、その炎を目視する……そうすると、その炎は一瞬にしてその場から消えた……いや、空へと方向転換した
「な……なんだと……」
「生物には作用しない禍津日だが、生きていないものにはいくらでも作用する。お前が吹いたブレスも、例外なく俺の支配下に置かれる。炎の重力を操り、そのまま空中へと方向を変えただけだ……」
だが、禍津日はこの程度の能力ではない。この程度ならば、六道の天道でも代わりは出来る
「禍と言われるこの能力、お前に攻略できるか? タンニーン」
「っ!!」
そこらの雰囲気が一瞬にして変わった。それはどうなったのかは分からないだが、それはとてつもない力によって動かされていることが、誰の目にもわかる
「禍津日はどんな物の引力も重力も奪う……つまりそれは、そのものの操作権を持つという事……なら、こんな事も出来る」
俺は空を見上げ、目視した。本来、戦闘中によそ見などするのはもってのほか、だが……これが戦闘を大きく変えるものに変化した
「……これは……!! 神の技か……!!」
「これがお前ら愚かな悪魔が呼び起こした、絶望の力だ……」
激しい豪雨、それによる雲の発生と雷雲……そして、前方にはそこにある筈のないもの……竜巻が巻き起こっていた。それを見る奴らの目は、疑いでしかなかった
「こんな事が……!!」
「雲の性質を変えてやり、そのまま空気の温度上昇……竜巻を発生。そして、豪雨を振らせて、雷雲を呼び起こす。さながら人工の嵐……これが、俺の禍津日だ」
俺とタンニーンの戦闘で撒き散らされていた木々や岩が、竜巻に巻き込まれていく。そのまま竜巻の中でぼろぼろに崩れ、塵となった
「風を巻き起こすだけなら簡単だった。だったら、嵐を起こすこともできると踏んだんだ……どうやら、間違いではなかったらしいな……」
「……これほどまでとは……」
「流石にこれだけの事をしたんだ……貴様ら悪魔も、もう黙っていられはしないだろうな。いや、天使や堕天使も……黙っていられるほど、馬鹿でもないか……」
俺はそう言いながら、タンニーンを目視する……
「っ!! がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
するとどうだ。タンニーンは腕を押さえて、その場に倒れ込む
「どうだ? 腕を圧し折られた気分は……」
俺はタンニーンの腕の中にある、骨だけを目視した。通常は無理だが、相手をレントゲンの様に見る事が出来る。だから、俺は相手の骨に禍津日をかけて、そのまま圧し折る事が出来る
「……き、貴様……!!」
「この辺にしておこう……これ以上暴れれば、神話の奴らも黙っていない……神々を相手にするには……まだ時期が早すぎるんでな……だが、分かったはずだ」
俺はタンニーンを見ながら、そのまま告げる
「お前ら悪魔は……とんでもない人間を、呼び起こしてしまったと……」
先日の事件。パーティー会場近くに起きた謎の嵐。その正体は、他の悪魔に心配をかけないように処理されたようだが、上層部と魔王……そして、未来を担う悪魔達にはその正体が知らされていた
その現状は、とある人間が一人で巻き起こした現象だと……誰もが信じられないと言い、その現実に戦慄する。人間が起こせる業ではないと……
だが、タンニーンがおっている怪我の重さと、あの場に魔狩りと言う人間が来ていたことが証拠になり、誰もがそれを否定できなくなっていた
それを人間と呼ぶものは一人もいなかった。言えば超人だの、現人神だの、馬鹿みたいな前と言われ続ける。だが。魔狩りがその人間であることが分かっている為、名前の改名が決まった
『魔帝』
魔王を超える現象を起こす人間ならざる技、それによって名づけられた
クラスはSSS級へと引き上げられ、その名は冥界に、天界に……そして神々の元へも届くほどに、圧倒的な存在感を出していた
「魔帝か……また、物騒な名前を付けやがって……不愉快にもほどがあるだろう……だが、あの現象が奴らにそれほどの危険を悟らせたのならば、別にいいか……」
数日で、世界中から狙われているとは……しかも、今度は神にまで恐れられるとはな……
「力を試せたのはいい成果だ……後は、仕掛ける時を間違えない事だな」
だが、気になる事はまだある。あの時、タンニーンとの戦闘中……戦闘ではなく、俺を見ていたんだ。通常ならば、戦闘へ気が行くはずだが……
あの時、俺を見ていたのは俺を殺そうとした悪魔だろう。あの場に居たという事は、グレモリーの婚約式に来ていたという事だろう
「魔力質は分からない。あの時、嵐を起こしたのは失敗だったか?」
だが、いくら悔いようとも変わりはしない……次に期待するべきか……
「……次からは、戦争に身を投じることになる……最後だ……あの場所へ行き、自分の想いを再確認する」
涼しい風が吹いているな。ああ、懐かしく……そして、不味い空気だ……この街の空気は何時まで経っても変わらない。俺が居なくなろうとも、な
俺は自分が変わった街へと足を運んでいる。自分の想いが揺らがない事は分かりきっている。だが、それが絶対だという事は無いのだ
だからこそ、俺は今この場所へと赴き、そして自分を再確認して、自分の道を突き進まなければならない……それの為に、必要な事だ
「まだ……潰れていなかったんだな。あの謎の事件以降、此処は取り壊されたと思っていたんだが……」
俺が通っていた腐った学校。中からは楽しそうに話し合う声が聞こえる。俺が聞いていた声とは違い、すごく楽しそうな声だ
聞くたび聞くたび……この声を途絶えさせたいとすら感じてしまう。自分をこのような状況に追い詰めさせた、あの屑共の声に似ているから
「………………」
もはや幽霊の噂になるほどに、俺の事件はこの学校に残っているらしい。開けてはいけない部屋からは、俺が殺した奴らの声でも聞こえるのだろう
街並みは少し変わった。いや、変わらざるを得なかったのだろう。あの時、自分の娘、息子……もしくは、先生と言う立場であった者達の恋人は、直ぐのこの場を去った
そして、新しい人間たちがここに来て、今と言う世界を作り出しているのだろう
「………………」
一度だけ、小さい頃に夢を見た……自分の家族が全員優しく、そして誰も何処にもいかなかった。いつもそばで笑っている母親、俺に運動させようとする父親の三人家族
そして、俺が通う小学校に一緒に登校する幼馴染の真奈。いつも明るく、誰にでも好かれる奴であり、俺を引っ張ってくれる存在
学校では、楽しくクラスの皆で過ごして……先生の授業を受ける。居眠りして怒られて、給食をみんなで食べて、放課後みんなで遊ぶ
家に帰れば、家族が笑顔で迎えてくれて、家族仲良く夕食を食べて、一日が終わる。そう言う世界が、会ったかもしれないと、小さい頃に想い、夢見た
「……ありえはしない。もう過去は変えられない……ようやく俺は、この地で始まった出来事に……終止符を打つ事が出来る……」
この身がどれほど汚れようと、どれほど悪だと言われようと、俺は俺の道を進み続ける。誰にも邪魔はさせない。これが俺の歩む、道だから……!!