「………………黒歌」
「何にゃ、颯真」
「これはどういう事だ? お前は勢力を集めに行くと言ったが……」
俺は目の前の光景を見て、ため息しか出なくなっていた。横に居る黒歌と白音はそれ見て、少しだけ笑い合う。俺の目の前には……
「こんな馬鹿みたいな数の、戦争志願者が居るとはな……」
勢力の塊が出来ていた。現在いる場所は、俺の拠点ではなく、広く開けた地下の空間。そこには、はぐれ悪魔・はぐれ悪魔祓い・はぐれ堕天使……そのほか、神器を持っている人間たちまでいる
俺は額に手を当て、そのまま黒歌と白音になぜこうなったかを聞く
「何をどうしたらこうなった?」
「最初は普通にはぐれ悪魔の全員に届くように、颯真の情報を漏らしただけにゃん。少しずつここに来るようにしたんだけど……」
「どこから嗅ぎつけたのか、教会に所属していた人や、上司に耐えられなくなった堕天使とかも……此処に集まるようになってしまって……」
この数だけで言えば、軽く1万は超えている。逆に言えば、現在の三大勢力にこれだけの不満を持っている存在が居るという事だ
「……顔を知らない奴らに、俺の顔を覚えさせておかなければ、俺を倒そうする奴が出てくる、か」
俺はそのままその場に居るはぐれの前に出る。俺の姿を確認した者達は、喋る事をやめて俺を見つめる……俺は只、この場で思っていることを言う
「……俺は戦争をする。最初は只、ある一人の悪魔への復讐だった。だが、悪魔と言う存在は根元から腐っていると、俺は思った。だからこそ、俺は悪魔全体へ戦争を仕掛ける。これは俺の自己満足だ。この戦争を邪魔するならば、俺はお前らでも容赦はしない。今この場で貴様らを殺してもいい」
その言葉を聞いてもなお、誰一人として不満を言わず、誰一人として顔を逸らさず、俺の言葉に耳を傾け続けている。それを見てもなお、俺の言葉は止まらない
「悪魔を消し去るなら、此処に居るはぐれ悪魔達もそうだ。消そうと思っている……だが、お前らが悪魔陣営の為ではなく、自分の為に生きて、俺を狙わないのならばどうでもいい。何故か分かるか? お前らの勝手だからだ。俺に貴様らの生き方をどうこう言う資格はない。俺の命は俺が決めた道を進むためにある。たとえ、俺がこれまで行ってきたことが、悪と言う言葉になろうとも、それは別にかまわない……俺は正義が嫌いだ。守ると言いながらも、仲間を見捨て、自分の命ばかり気にする奴らの言う正義が大嫌いだ。だからこそ、俺は一人で戦う。戦争を起こす。悪と言う行動と言われようとも、俺は俺が悪であることを望む。この世界は俺を否定した。なら、今度は俺が否定する。俺を否定させ続けてやる……悪であれば、世界に否定され続けるだろうからな……だから、お前らは俺を慕うな、信じるな、想うな……俺を憎み、妬み、恨み、呪え……それでも、俺の後ろから勝手に戦争に参加するのであれば、勝手について来い。それがお前らの選んだ道だ……決して強要しない……逃げ出すならば逃げ出せ……俺はお前らに期待などしない……俺の役に立つかどうかなんてわからない……それでも、俺について来るなら……俺の為に死ぬことが本望なら、俺はそれを否定してやる……死ぬことはゆるさねぇ」
俺はそれを言い切り、そのままその場を去ろうとする。だが、その言葉を聞いて直ぐに、はぐれ悪魔の一人が立ち上がり、言葉を述べる
「それでかまわねぇ!!! 俺はあんたのおかげで、あの糞野郎から解放されたんだ!!! あんたは期待なんかしなくていい!! 俺はそれでも……アンタと共に戦う!!!」
その言葉がトリガーとなったのか、他の者達も叫びだした
「アンタにとって、俺達はそこらに捨ててある塵かもしれねぇ!! それでも、俺はアンタと共に戦い!! そして、奴らに一矢報いる事が出来るのなら……この命はいらねぇ!!!」
「家族を殺されたの!! その仇を貴方様が討ってくれた!!! だから今度は……私達が貴方様の役に立つわ!!!」
「颯真様ー!!!」
「魔帝万歳!!!」
………………信頼すら不愉快だと言うのに、お前らは勝手に俺に期待をするか……愉快な奴らだ……闘って死ぬかもしれないのに、なぜその命を俺の為に使う?
「……ああ、理解できないな。だが……」
「彼らの眼は……嘘を言ってない」
そうだ。あいつらの言っている言葉は本当だ。嘘をついて来るやつはいくらでも見てきたが、此処まで真っ直ぐに俺に眼を向ける奴は、久しぶりに見たな
俺は手を挙げて、その場が静かになるのを持ち、もう一度……言葉を述べる
「この戦争に勝てるかどうかは、分からないんだ。もしかしたら、負ける可能性だってある。それでも……お前らは、この戦争に参加するのか? こんな屑な俺のためと言いながら……自分の命を捧げてまで……」
本音だ。負けるつもりは毛頭無いが、俺でも神々が何人も同時に来れば、俺だって負ける可能性はある……それを否定すれば、俺は悪魔に打撃を与えることなく、死んでしまうだろう。
だからこそ、俺は自分の力を過信しない。一人の神に負ける可能性は、ほとんどないにしろ。5人も来られれば……俺であろうと負けるかもしれない
「それでもいい!!! これはアンタに救われた命だ!!!」
「死ぬ時は貴方様と共に!!!!」
「三大勢力に、大きな痛みを負わせることが出来るなら……俺達に迷う意味はない!!!」
………………………………そうか
「……邪魔するものは殺す。たとえ、それがお前らであったとしても……だが、お前らが俺の戦争に勝手に介入するなら、それはお前らの自由だ」
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
とてつもない咆哮が響く。それほどまでに、この場に居る者の士気は上がっていた
「……数日後、俺は宣戦布告に行く。お前らはその間、悪魔社会にある仕掛けをして来い。だが、これを行うのは、今この場に居る通常のはぐれではない悪魔達だけだ。お前らに数体の天使を預けて置く。危険が迫ったら使え。俺の作戦がばれるのは、これから先で問題になるからな」
「「「「はっ!!」」」」
「他の者達は、自分の力の底上げとして、修行をしておけ。いいか? 今この瞬間に、己の中にある慢心をすべて捨てろ。そうしなければ、お前らは負ける」
「「「「はっ!!」」」」
誤算は生じたが、計画通りだ……これでいい
あの後、悪魔の存在はそのまま冥界へ戻り、俺の言った物を着実に置いて行っているみたいだ。本当なら、畜生道を使って、やろうと考えてはいたのだが、手間が省けた
他の奴等は地下に残って、そのまま修行を行っている。下級悪魔程度には手こずらない程には鍛えあがっているはずだ……
「後は……」
俺は自分の研究室の方向を見て、そう意味のない言葉を発した。さっき言った通り、俺は負ける可能性がある。それは当たり前だ
いくら俺が強かろうと、それは個での話。あの時の兵藤一誠のように、ある者の想いに答えようとする者達が、俺を全員で狙えば、流石の俺でも負けるかもしれない
だからこそ、俺以外にも……三大勢力へかなりの被害を出せる存在が必要だった。だが、そんな存在を探す気など毛頭ない。元々、俺は一人で戦うつもりだったのだから
戦力増強が出来た今でも、それは変わらない。現在、黒歌と白音が連れてきた者達の中で、頭一つ抜けているほどの実力者は一人もいない
だからこそ、俺は自分でその存在を作り出そうとしていた
「だが……この程度ではまだ足りないな……今の次期、奴らも備えているはずだ……なら、貴重な存在を見つけることもできるかもしれない……力が集まる駒王学園……あそこへ行けば、ヒントが得られるはずだ……」
戦争に間に合わなくてもいい。戦争中に創り出せればそれでいい。焦る必要はない……奴らの戦力が少し減った所へ、俺は戦いを挑めばいいのだから
「……黒歌……」
「何にゃ?」
「俺は少し人間界へ行く。白音を鍛えているのは見ればわかるが、奴らの監視も頼む」
俺は修行中のはぐれ共を指差して、そう黒歌に伝える。その様子を見て、黒歌は少しだけ顔をしかめる
「監視って……裏切らないって……」
「言っただろ、俺は誰も信じてない。あいつらが俺を勝手に信じてるだけだ……俺はあいつらの期待に応えはしないし、されても返さない……これはあいつらが望み、俺は見逃しているだけだ。疑いをかけるだけの事はあるんだ。裏切らないと言う絶対的な物はない」
「……分かったにゃ」
俺はそう言い終わり、そのまま外へと行く。後ろの方では、黒歌が溜息を吐きながら、言葉を漏らしていた
「あれだけ忠誠を誓ってる奴らも信用しないって、どんだけ疑ってるにゃん……」
「……全員を疑ってるわけではないですよ、姉様」
「どういう意味にゃん? 白音」
休憩させていた白音が、後ろから話しかけてくるのを見て、黒歌は疑問を浮かべる。あの様子を見る限り、颯真が全員を疑っているのは目に見えているにゃん
「全員を疑っているのなら、姉様に此処を任せないはずです」
「………………」
白音の言う事は正しい。白音が最初に此処に来た時は、初めて作った拠点と言うこともあり、そのまま白音を監視せずに、休ませておいたのだろう
だが、時が過ぎてこの場所にも大事なデータや物、その他の物が置かれているこの場所を、信じてもいない存在に任せるほど、颯真は優しくない
「姉様の事を信用も信頼もしていないかもしれません。ですが、実力などは認めているはずです……颯真さんは、弱い人だろうと警戒心は持ちますから」
「実力が上の私にこの場を任せた、という訳かにゃん?」
「はい」
自信満々に答える白音を見て、黒歌は何も言えなくなって居た。それもそうだ。颯真はその通りの事を想って、黒歌にその場所を任せたのだから
実力が一番上な者にに頼めば、その場の鎮圧などを効率よく出来ると言う意図があったのは確かだ
信用しているという点に関しては、ありえない話だろうが……
黒歌は、目の前で修業している彼らを見る
「もっと気合を入れろ!! 颯真様の邪魔をしない……颯真様の足手纏いにならないほど、我々は強くあらねばならんのだ!!!!」
「「「「「はい!!!」」」」」
「慕われていることを知らないのは、本人だけにゃん」
「そうですね」
誰も信用しないからこそ、相手の本当の気持ちを知る事は出来ない。颯真の唯一の弱点であるこれは、誰にもわからない事だが、黒歌と白音はその点に気付いていた
「何の縁か……何時まで経とうと、この場の空気は綺麗で……そして不愉快な風が吹く……まるで、あの小学校の様だな……」
懐かしく、そして汚らわしい空気を感じながら、俺は駒王学園を訪れていた。様々な人間たちが集い、そして群れてそのまま学園を出て行くさまを見ながら、俺は中へと入る
コカビエルの戦闘の爪痕は、既に消え失せていた。あの場に居た者達は、未来ではかなりの強さに上がる者達ばかりだろうと、颯真はそう思っている
赤龍帝であり、可能性の塊の兵藤一誠を筆頭に、消滅の魔法を受け継ぐリアス・グレモリー。堕天使の光と雷を操る巫女である姫島朱乃
聖剣計画の生き残りであり、聖魔剣という異質な剣を創り出す木場裕香。元教会の人間であり、デュランダルの使い手のゼノヴィア
情報は少ないが、吸血鬼のデイ・ウォーカーと人間のハーフのギャスパー・ヴラディ。だが、こいつは少し魔神の力を感じた……危険な存在の一人だ
そして、俺の対極の存在であり、偽善をどこまでも貫き通す聖女……アーシア・アルジェント……
この者達は、この世界でも指折りの存在へとなるはずだ。だが、それは未来が『あれば』の話だ
その未来はこの俺が潰す
「……!! 意外な人物がいたな……いや、奴が来るのはある意味当然か。何せ、グレモリー眷属には、奴の興味を沸かせるものが、多く存在するのだから……」
俺はオカルト研究部と言う名の部屋へと近づいた時、その近くでデカい魔力を感じた。魔力量・質ともに、かなりの大きさだろう……
俺は驚きはしたが、そこまでの衝撃ではなかった為、そのまま足を進めていく……進んで行けば、俺が感知した存在である……
「ほう……もっと珍しい客が居るじゃねぇか」
「……部下の躾がなっていなかったようだな、研究馬鹿……」
堕天使総督・アザゼル
「そ、颯真っ!!?」
「しかも、赤龍帝とも知り合いか……と言うか、俺よりも警戒されてんじゃねぇか。ま、お前のやって来たことと、その体から滲み出ているドス黒いオーラを見れば、そうなっても仕方ねぇか」
「もとより歓迎してもらうために此処に来たわけじゃない。貴様の部下、コカビエルの様にな……」
「戦争好きが好かれる世の中なんざ、そう簡単には生まれねぇよ」
普通に話していく堕天使総督と世界最悪のSSS級犯罪者を前に、周りの存在は置いてけぼりになる。アザゼルはまだ分かる。部下の不始末で、この場に来ているのは……
だが、颯真に関しては違う
あの日、堕天使コカビエルが連行されてから、魔帝と言う存在……鳴神颯真について、その場に来ていたグレイフィアに教えてもらっていた
その存在は元々、ある小学校で有名な名前であった。その小学校で起こった悲劇を創り出した張本人であり、わずか17年しか生きていない子供が、SSS級の危険人物に認定されるほどの実力を持ってしまった事も……
そして、颯真がこれまでしてきたこともすべて、その場で語られた
SS級はぐれ悪魔の妹の手助け、大量の純血・転生・はぐれ悪魔殺害、教会の聖剣奪取、聖剣計画の崩壊……一番身近な物は、元リアス・グレモリーの婚約者であるライザーへの奇襲
実力はどうなのか、具体的な例を挙げて貰えば、現時点でグレイフィアさんや魔王であり、リアス・グレモリーの兄であるサーゼクスでも、敵わないと言う事も知った
「お前さん、
「貴様らが生み出した技術により、他の人間から奪い取った物だ」
「あ~、俺らの技術で抜き取ったのかよ……お前さん、結構頭が良いんだな。あれは、そう簡単にできるほど、簡単な代物じゃないはずなんだがな……」
「それは貴様らの言うレベルで言えばの話だ。その辺の雑魚共と一緒にするな。反吐が出る」
そんな存在がこのように、目の前で普通に話(言葉はキツイ)をしていると、流石に唖然とするしかなかった
「で……お前さんは何の用で此処に来たんだ?」
「貴様には関係ない……ハーフヴァンパイアを見に来ただけだ」
「ヒッ!!?」
俺の言葉に過剰に反応したものを見つけ、俺はそれがハーフヴァンパイアだと判定する。その姿を見て、最初に思った言葉を口にする
「……お前はなんで女の格好をしている?」
「だ、だって可愛いもん……」
「「ぐわぁぁぁぁぁ!! やめろよぉぉぉぉぉ!! 女でもないくせにぃぃぃぃぃぃぃ!!」」
バカ二人の叫び声が響いたが、それを無視して俺は少しハーフヴァンパイアのヴラディに近づく。その行動だけで、ヴラディは動かなくなる
颯真の体から発せられるオーラと、何よりもその冷たい眼差しを見て、体が硬直して動けなくなっていた
「(精神面での問題を確認。これは俺が危険だと知らせているのもあるが、こいつそのものが対人恐怖症だからというのもある。さらに、デイ・ウォーカーと言う立場でありながら、出来るだけ日差しをよけようとする仕草。これは、太陽そのものに苦手意識を持っている所為……)」
冷静に分析しながら、ギャスパーに段々と近づいてくる颯真の腕に何かが絡みついた。その先を見つめれば、そこには先程叫んでいた男が、此方を見ていた
「昼は会長の眷属である俺達が、学校を守らなきゃいけないんだ。これ以上、うちの生徒に手出しはさせないぜ」
「ほう……蛮勇だな。力の差も分からない小僧が、意気がるのも程々にしろよ」
俺はその眼を見て、こう告げた
「まだ……死にたくはないだろう?」
アザゼルですら、反射的に戦闘態勢に入るほどに、颯真の殺気は鋭さがあった
アンケートの結果、戦争編はラグナロクの後に決定
その時を楽しみにしていてください
では、次回も見て下さい
バイバイ